「ただいま~。」
玄関からいつもの声が聞こえる。
「は~い。」
そして、小咲もいつものとおりに返事をすると、パタパタとスリッパを鳴らして玄関に向かう。
「お帰りなさい。あなた。」
笑顔で玄関に出ると、いつもどおりの大好きな夫の姿。
夫の名前は一条楽。高校の同級生だ。初めての出会いは5歳の頃だが、あまりよく覚えていない。中学生になってから再会し、気が付いたら好きになっていた。付き合い始めてから聞いたのだが、楽も中学生の頃から小咲のことが好きだったらしい。お互い、両想いであることに気付かないまま、波乱万丈の高校生活の大半を費やした。やっとのことで想いを打ち明け、楽の大学卒業とともに結婚した。
「ご飯の準備できてるよ。お風呂も沸いてるけど・・・どっちがいい?」
楽の黒カバンを受け取りながら尋ねる。いつものやり取りだが、今日は少しだけ『ご飯』に力がこもっている。
「う~ん、先にご飯かな。」
小咲の思いを察したのかどうかは分からないが、小咲の期待どおりに『ご飯』を選択してくれた。
「お疲れ様。今日はお仕事大変だったみたいね。」
少しだけ見上げなければいけない楽の顔は、いつもより少し疲れて見えた。
「ん、まあな。でもたいした事ないよ。」
これもやはり小咲を心配させまいという気遣いなのだろう。こんなちょっとした優しさを自然に見せることができる楽だからこそ、小咲は好きになったのだ。
「おおー!今日はやけに豪華じゃないか。」
ダイニングテーブルに並んだ料理を見て、楽が思わずといった風に声を上げた。
「ふふ、だって今日は年に一度の結婚記念日だもの。がんばっちゃった。」
壊滅的という表現が控えめに聞こえるくらいの料理の腕前だった小咲だが、今はそこそこ自信を持って人前に料理を出せるくらいに成長した。
高校卒業後は、学力の問題もあって、楽と同じ大学を受けることは早々に断念した小咲だったが、かといって楽と違う大学に通う気にもならず、実家の和菓子屋と『将来』のことを考えて、料理の専門学校へ通うことにしたのだった。その甲斐もあって、楽はいつもおいしそうに小咲の料理を食べてくれる。時々、昔を思い出したように「小咲の料理のウデもあがったよなぁ~。」と、からかわれるがそれもまた幸せだった。
そして、今日はもう一つ『特別』を用意していた。結婚記念日ということもあって久し振りに楽を誘ってみようと思った。しかし、久し振りということもあり、なんとなく気恥ずかしい。
「・・・ねえ、楽くん。」
なんとなく目線を外して、結婚前の呼び方で楽を呼んだ。
「ん?」
「よかったら、ご飯の後・・・久し振りに一緒にお風呂に入らない?」
エプロンの裾を指先で弄りながら、伺うように上目遣いで楽を見る。
「・・・え?」
楽は一瞬、何を言われたか分からないといった表情を浮かべたが、内容を頭の中で理解すると、少しだけ赤くなりながら、小咲と同じように少しだけ視線をずらすと「お、おう。」とだけ答えた。
「よかった!じゃあすぐにご飯の支度するね。」
小咲は恥ずかしさをごまかすように努めて明るくふるまいながら、小咲はキッチンへ向かった。
夕食を終えると、食器を手早く食洗機に放り込み「恥ずかしいから、先に入ってるね。」と楽に伝えると、小咲は着替えを持ってそそくさと脱衣所に入った。
「ふう、やっぱり久し振りだとちょっと緊張するな。」
胸にパジャマを抱くようにして、とん・・・と脱衣所の壁に寄りかかる。
「でも、楽くんとお風呂だ。ふふ。」
嬉しさを噛み締めるように、胸に抱いたパジャマに顔を埋める。その瞬間、下腹部の奥がきゅうっと甘く疼き、わずかにだがじんわりとした温もりが降りてくるのを感じた。
「・・・やだ。」
一緒にお風呂に入るということは、まず間違いなく『そういう状況』になるわけだが、身体の方が早々に反応してしまったことが恥ずかしくなり、小咲は頬を染めた。
―――私って、やっぱりエッチなのかな・・・
小咲は、楽のことを考えると身体の奥が疼いてしまうことがあった。いつからなのかはよく憶えていないが、はっきりと自覚したのは中三の頃だった。特に生理前は、ベッドの中で楽のことを考えていたりすると、身体の奥に甘いもどかしいような疼きと、そこからじんわりと溢れてくる温もりを覚えた。
初めて自慰をしたのもやはり生理前のことだった。その日はいつもより胸が張っていて、感覚も少し敏感になっていた。ベッドの中で楽のことを想いながら、枕をぎゅっと抱きしめたときだ。
「う・・・んっ。」
パジャマの下でキャミソールと胸の先がこすれて甘い電流が走った。少し締め付けられるのと、ワイヤーの固い感触が苦手な小咲は、寝るときはいつもブラジャーを外していたが、今までにこんな感触を味わったことはなかった。
―――なに、今の・・・
初めての感触に、小咲はおそるおそるパジャマの上から右手で左の乳房を包み込むように触れてみた。最近、少し成長してBカップになった乳房は、生理前だからか少し張っている。そこからゆっくりと乳房のカーブに沿って、掌を上げていく。指先がパジャマ越しの乳首に触れた瞬間、再び胸の先から電流が走り身体がぴくんと震えた。パジャマ越しにも乳首が硬くなっているのが分かる。プールのときや冬の寒い日に乳首が硬くなることはあったが、そのときの感覚とは全く違っていた。その感覚を確かめるように、親指と人差し指の先で乳首を摘んでみた。
「あっ・・・」
思わず声が漏れ、咄嗟に口を押さえた。
―――うそ、今の声・・・私?
今まで聞いたことのない、甘く濡れた声だった。それが自分の口から出てきたものだとは信じられなかった。そして、同時に感じたはっきりと言い表せない甘美な感覚。その感覚に誘われるように、今度は中指の腹で乳首を転がしてみる。
―――・・・んっ
辛うじて声に出すことは堪えたが、さっきよりも明確に快感を覚えた。ゆっくりと乳房を揉みながら乳首を刺激すると、さざ波のように快感が押し寄せる。
―――やだ、私、何やってるんだろう・・・
不意に、自分がとてつもなくいやらしいことをしているのではないかという罪悪感にかられて手を止める。
―――でも、恋人ができたら、こういうこともされちゃうんだよね・・・。一条君も男の子だ
から、やっぱりこういうことしたいのかな・・・。
言い訳のようにそんなことを考えながら、指先で乳首を転がした。すると、片思いの相手のことを意識したためなのか、さっきよりも快感が強くなったように感じた。同時にパジャマ越しではもどかしくなり、パジャマのボタンを外して前をはだけると、キャミソールの下に手を差し込み、直に乳房に触れてみた。
「んんっ・・・」
乳首は、自分のものではないかのように硬くしこり、掌で触れているだけなのに切なくなるような甘い快感を生み出していた。そして、下腹部の温もりも拡がっていく。指先で乳首を転がすと、パジャマ越しのときとは比べものにならない強い快感に身体が震え、「はあっ・・・」と声が漏れた。下腹部の温もりが実態を伴って、じわりと降りてくるのをはっきりと小咲は感じた。一瞬、生理が始まったのかと思ったが、生理特有のどろりとした感じではなく、どちらかというと小水が滲んできたような感覚だった。
―――うそ、まさか漏らしちゃったの?
初めて味わう感覚に、思わず確認のために右手をショーツの下に潜り込ませてしまった。
「あんっ!」
中指が性器に触れた瞬間、ぬるりと指が滑り、その刺激に身体が震えた。中指にまとわりついた液体は、小水とは明らかに異なるぬめりを持っていた。
―――なにこれ、濡れてる・・・?
そして、それ以上に小咲を驚かせたのは、性器に触れた瞬間に駆け上がってきた快感だった。確かめるように縦割れに沿って中指を滑らせると、快感で無意識に腰が蠢いてしまう。
一旦、快楽を意識してしまうと指の動きを止めることができなくなってしまった。自慰の仕方など分からなかったが、最初に触れたように性器の縦割れに沿って中指を動かすたびに身体が震え、膣の奥からぬめりが溢れてくる。
「あっ・・・、あ・・・んっ・・・」
初めて味わう強い性感にどうしても声が漏れてしまう。階下で寝ている両親に聞こえてしまわないように、小咲は枕に顔を埋めた。初めて触れる性器の中は、信じられないくらいに熱を持ち、次々とぬめる液体を溢れさせている。ぽってりとした大陰唇に挟まれた中指は、すっかりぬるぬるに濡れてしまい、いやらしいぬめりは性器の外にまで溢れようとしていた。
―――下着が汚れちゃう・・・
小咲は、一旦ショーツから手を抜くと、パジャマと下着をずり下げた。少し迷ったが、もう深夜だから親が部屋に入ってくることもないだろうと考えて、まとめて足首から抜き取ってしまう。同時にキャミソールを首までたくし上げると、胸元も露わにした。
―――こんな格好して、恥ずかしい・・・。
そう思いつつも、左手を乳房に這わせ、右手を触りやすいように少し開いた股間へと挿し入れる。掌にふわりとした陰毛の感触を感じながら、中指を大陰唇の間で滑らせる。同時に左手では、ゆっくりと乳房を揉みしだきながら硬く尖った乳首を指先で転がした。
「ふぅぅ・・・、うっ、うんっ・・・」
枕に顔を押し付けながら、声が漏れそうになるのを必死でこらえる。一方で身体の方は、更なる快感を求めて無意識のうちに徐々に足が開いていく。初めはぴったりと閉じていた割れ目もうっすらと開き、ピンク色の粘膜をわずかに晒している。割れ目の中にとっぷりと溜まったぬめりは、指の動きに合わせてわずかにではあるが、はっきりと聞こえるほど粘液質の淫らな水音を立てていた。初めて聞くその音の淫らさと、それを発しているのがまぎれもなく自分の性器だという恥じらいで小咲は赤面してしまう。
ふと枕から顔を上げると、部屋の反対側に置いてある姿見に映った自分と目が合った。その瞬間、あまりの恥ずかしさに、小咲は再び枕へと顔を埋めた。
―――わたし、すごくいやらしい顔してた・・・・・・
鏡に映る自分の顔は紅潮し、快楽に溺れた今までに見たこともない蕩けた表情を浮かべていた。その表情が脳裏から離れず、一層顔が熱くなる。しかし、羞恥心とともに、興奮も昂まっていることもはっきりと自覚できた。股間に這わせた指の動きも大きくなり、小咲の興奮の昂まりを表わすように淫靡な水音も大きくなっていく。煌々と照らされる明かりの下で小咲は息を荒げ、時折抑えきれない喘ぎを漏らす。小咲は小さく身体をくねらせながらも股間と乳房から生み出される快感に溺れていった。