「小咲、入るぞ。」
少し躊躇いがちに、曇りガラスの向こうから楽が声を掛けた。
「う、うん。いいよ楽くん。」
小咲は、気恥ずかしさで思わず湯船の中で入り口に背を向けた。かたんと折り戸が開く音がして、楽がバスルームに入ってきた。2、3度湯船からすくった湯で身体を流した後、楽が湯船に浸かる。将来、子供たちができたときのことも考えて、浴室と湯船は大きめのものにしていたため、二人で入っても余裕がある。
「なんか、こうして二人で風呂に入るのって久しぶりだな。」
心なしか楽の声も少し緊張しているように聞こえる。楽も自分と同じ気持ちなのかと思うと、少しおかしくなって小さく笑いがこぼれた。
「そうだね。」
少し緊張していた身体から力が抜け、そっと背後の楽に身体を預ける。背中に感じる楽の身体から、お湯の温もりとは異なった優しい温もりがじんわりと伝わってくる。
「楽くん。」
楽の肩にこてんと頭を預けながら、小咲は何となく夫の名前を呼んだ。
「ん?」
「ふふっ、なんでもない。呼んだだけ。」
「なんだそりゃ。」
背後で楽が苦笑する。
―――こんなのを幸せって言うんだろうな・・
大好きな人の温もりを誰よりも近くで感じることができる。この幸せをいつまでも感じていたいと小咲は思った。
「小咲。」
後ろで楽が身じろぎする気配がすると、わずかに湯面を波立たせて楽が体の向きを変えた。小咲の身体を足の間にすっぽりと納めると、後ろから優しく抱きすくめられる。小咲のお腹を抱くように添えられた楽の手の平から、優しい温もりが伝わってくる。楽の左手が小咲の右頬にそっと触れるとほんの少し力が入った。小咲は振り向きつつ目を閉じると、ゆっくりと楽が唇を重ねてきた。
「ん・・・」
小咲は、身体を楽に預けながら、自分の頬に添えられた手にそっと自分の右手を重ねる。添えられた楽の手にまた少し力が入り、同時にゆっくりと舌が挿し入れられた。小咲もまた、楽の手に添えた右手に力を入れ、楽の舌に自分の舌を絡めていった。
しばらくの間、二人は息を荒げながら貪るようにお互いの舌を求め合った。攻守を変えるように、時には小咲の方から楽の口腔内へ舌を挿し入れたりもした。そのうち、小咲の下腹部に添えられていた楽の右手がゆっくりと上がってきて、小咲の左の乳房を包み込んだ。それだけで小咲はさざ波のような快感を感じていた。乳房の頂にある乳首も、直接見なくてもはっきり分かるほどに勃起している。そのぴんと勃起した乳首を楽の中指がこねるように転がした。
「んんっ!」
その強い刺激に身体がびくんと跳ね、唇をふさがれたまま声にならない喘ぎを上げる。昂ぶっていた身体に火が灯り、きゅうっと子宮が収縮するような甘い感覚とともに、じわりと膣の中に湿った熱が広がるのを感じた。
「今日はどうしたんだ?触る前からこんなに乳首を硬くして?」
唇を離して、楽が意地悪く耳元で囁く。その間も楽の右手は、小咲の乳房をやわやわと揉みしだきながら、こりっこりっと乳首を転がしている。
「やっ・・・、そ、そんなの、あんっ・・・、うそ・・・」
恥ずかしさに、思わず否定の言葉がついて出るが、そんなことは小咲にも分かり切っていたことだった。乳首をこねられる度に、小さな水音と共に小咲の喘ぎ声が浴室に響く。
「嘘じゃないよ。小咲も分かってるくせに。」
そう囁きながら、自分の左手に添えられていた小咲の手を取ると、「ほら・・・な?」と言いながら右の乳房に持って行き、小咲の中指と薬指の間に乳首を挟ませると添えていた手に力を入れた。楽の手に押される形で乳首がきゅうっと圧迫される。自分の指に挟まれた乳首は、芯が入っているかのように硬く尖っていた。
「あっ、やだ。いじわる・・・しないで・・・。」
「でもこれで小咲も分かっただろ?」
「もう。バカ・・・。」
言いながら、小咲はさらに楽に身体を預けていく。楽は小咲の後ろから首筋や耳たぶに口づけしながら、小咲の乳房を自由になった両手で愛撫する。初めて身体を重ねてからの数年間のうちに、楽は小咲の身体をすっかり把握してしまっている。緩急をつけながら的確に小咲の弱いところを攻められると、その度に小咲は喘ぎを上げ、腿をすりあわせるようにしながら腰をくねらせる。
やがて、楽の手がゆっくりと下がっていき、小咲のぴったりと閉じられた内腿の間へと潜り込んでいく。内腿に手を挿し入れられた瞬間、小咲の身体が小さくぴくんと震え、一瞬足に力が入る。しかし、楽が差し込んだ手に少し力を入れると、促されるままにゆっくりと足を開いていった。そして、小咲を挟んでいた楽の両足よりも大きく足を広げられると、閉じられないように楽の足で固定されてしまった。
「こんな格好、恥ずかしいよ・・・。」
後ろにいる楽からは見えることはないが、正面から見ると小咲の全てが晒されてしまっているはずである。
「でも、こういうのも小咲は興奮するんじゃないの?」
楽が耳元で囁きながら、小咲の内腿を股間に向かって撫で上げる。
「あんっ。楽君のいじわる・・・。」
小咲の内腿を撫でた手は、そのままじわじわと股間へと迫ってくる。羞恥と期待で小咲は内腿を震わせている。しかし、そのまま割れ目へと到達するかと思われた指先は、その手前、大陰唇の縁で止まってしまう。思わぬ「おあずけ」をされてしまった小咲が
「あ・・・」と小さく切なげな声を上げた。楽は、その声が聞こえなかったように、小咲の大陰唇の形を羽毛のようなタッチでなぞっていく。楽の指先から与えられる微かな快感に小咲は小さく喘ぎを漏らしながらも、そのもどかしさに次第に腰をくねらせていく。
「ねえ、楽君・・・」
小咲が潤んだ目で背後の楽を振り返った。
「ん?」
「・・・お願い。」
「何が?」
楽は、何を『お願い』されているかは分かっていたが、あえてとぼけて聞いてみた。
「・・・って。」
小咲が俯きながら消え入りそうな声でささやいた。しかし、楽は「聞こえないよ。」とでも言うように、じらすような触れ方で大陰唇への愛撫を続けている。
「触って・・・欲しいの・・・。」
「小咲はどこを触って欲しいの?」
羞恥で真っ赤になっている小咲の耳元に囁いた。
「わかってるくせにぃ・・・。」
小咲は、恥ずかしさの中にも甘えるような声で言うと、自分の大陰唇に触れていた楽の手を取り、うっすらと開いた割れ目の中心へと導いていった。
「んっ。」
楽の中指が割れ目に触れた瞬間、小咲の身体がぶるりと震えた。小咲は楽の手の甲に自分の手を重ねると、自分の中指で押さえるようにして割れ目に触れている楽の中指を谷間へ沈めた。
「やっぱり小咲はエッチだ。すごく濡れてる。」
「うそ・・・。お湯だよ・・・。」
「そう?でも、お湯はこんなにぬるぬるしてないと思うけどなあ。」
言いながら、楽が割れ目に沿って指を滑らせる。思わず小咲が「あうっ!」っと声を上げた。小咲も自分の性器が濡れていることは分かり切っていたことだった。楽が浴室に入ってくる前からずっと疼いていたのだから。
「ほら、小咲も触ってごらん。」
そう言うと、楽は重ねられていた手を入れ替えて、小咲の中指を割れ目に沈める。
「あんっ。だめ・・・。」
熱い肉の谷間に埋められた指に、はっきりとしたぬめりの感触があった。楽は、指を重ねたまま割れ目を上下にぬるりぬるりと小咲の中指を滑らせる。楽が主導権を握っているとはいえ、快感を生み出しているのは紛れもなく自分の指だ。そう考えると小咲は、まるで自慰を見られているような感覚になった。
「こ、こんなのやだぁ。楽君の指でしてぇ。」
あまりの恥辱に耐えきれず、とんでもない言葉が突いて出た。
「やっと素直になったな。ご褒美にいっぱい触ってあげる。」
楽が右手を割れ目に滑らせる。同時に左手を乳房に這わせると乳首を指先で挟んで転がした。
「はうぅぅ・・・」
小咲は待ち望んでいた刺激に、身体を反らせながら歓喜の息を吐いた。そして楽の方を振り向くと、薄く開いた唇の間に舌を覗かせながらキスをせがんでいくのだった。