ー風呂
湯船に浸かるのはいつ以来だ?
爺さんとこでは水浴びばかりだったし
海鳴では鍛錬帰りの池での遊泳と晩のシャワーだけだった。
水を掬って頭を洗うなんて本当に久しぶりだ。
自然と気持ちが浮ついた。
「なんなん?それ」
湯船に入れてやると
八神は僕の股間を指さした。
僕の股間には
真上を向いた硬い槍がついていた。
確かに、これは尋常ではない。見なかったことにしてもらえていると思っていた。
「お、男はこれがついてんだよ!まじまじ見んな!」
八神の裸を見ると突然ちんちんが硬くなった。
「?おとんのはもっとぶーらぶらしとった。」
やばい
「こ、子供はこういうもんなんだ。大人は、違う。ぶーらぶらだ。」
「ふーん。」
頼む。
「ま、ええわ。いつもと違うて地べたを這わんでええし。んーーっ♪」
頼む。
伸びをしないでください。
いろいろ目に着くんです。
丸っこい足回りは男子のそれとはやっぱり違うなとか
股にちんちん付いてないんだなとか
気持ちよさそうに笑う顔をみるとこいつかわいいなとか
「まじまじ見んな。」
怒られた。
ぶーらぶら
「?ぶらぶらしとるで」
ー八神の部屋
「一緒に寝るで」
体を拭いてやって
着替えて皿を洗って
八神はそう言った。
聞けよ。勝手に決めるなよ。
「い、いや、そこまでしてもらうのは悪いし、俺は一階で寝るよ」
風呂での件もある。
子供とは言え、八神は女だ。
緒にいるのは恥ずかしい。
それに俺は最近自室まで上がる必要性が全くないことに気が付いて一階で眠っていた。
脱衣所の床でも毛布に包まれば眠るには問題なかった。
だからこれ以上譲る気はない!
「あほか!」
えぇ?怒られた?
「地べた張ってベッドまで行け言うんか?朝の支度は階段まで這って行くんか?」
「一緒に寝ます。」
僕が馬鹿だった。
八神の家だからか
それともあまりにも見当違いの常識を指摘されたせいか
ペースを乱されて、ここへ来てから八神ばかりが主権を抑えている。
「でも、朝は早くに出ないとな。日課があるんだ。」
「日課?何すんの?」
怪訝な顔をされる
これ以上俺から主権を奪えないぞ。
「鍛えているんだ。トレーニングをしに出掛けなきゃ。そのあとは一応、学校もある。」
「学校はしょうがないけどトレーニングは夕方でええやん。晩飯ぐらい作るで?今日の夕飯もまだ残っとーし。明日も家に来てくれな困るで?」
「いや、夕方は人が多くて気が散るから朝しかできない。」
まずい流れだ。
八神からすると矛盾があるらしい。
「?学生のトレーニング言うたら夕方と違うか。部活の練習で走っとる人今日も見たで?」
「いや、その集中しないと、」
「見られたら困ることでもしとるんか!?なおさら朝はここにいてもらうで。」
ま、まずい
鍛錬を取り上げられれば俺には何もなくなっちまう。
また燃えカスに逆戻りだ。
「八神、魔法って信じる?俺は魔法使いなんだ。駆け出しの」
「そか、君かも男の子やもんな?」
八神に優しい声が戻った。
「あの、そう言うんでは、」
「カメハメ波」
「え?」
八神はにやけた面でこっちを見てきた。
「いつか見せてな?」
「分かった。だから明日の朝は出掛けるよ。なるべくすぐに戻る。」
「うん」
戻る
そう言うと途端に八神は嬉しそうにした。
やっぱり笑うと可愛いなこいつ
怒ったら手を付けられないのにな
こうして俺に首輪が嵌まった。
ー2階 八神の部屋
八神をベッドへ運ぶ
再認識した。
こいつすごいな
寝転がるとまるで違う。家とはまるで違う。
ベッドには枕と布団しか置かれていないし
シーツに汚れもない
変な臭いがする俺のベッドとは大違いだ。
むしろなんかいい匂いがする。
「くんくんしてるとほんと犬みたいやな?」
「!誰が」
「はいはい。電気消すで?」
「、、、おう」
眠くなってきた。
「うちははやていうんよ?表札の八神しかわからんかったやろ?」
そういえば名前を教えてなかった。
お互いどこか遠慮があったからだろうか。
「ジャック。ジャクソン・サンダースだ。」
「外人?」
「見える?」
俺の髪は黒に近いし瞳の色は黒色に近い茶色だ。
「へへ、見えんね?」
「お、おい」
八神が腰をつかんで引き寄せてきた。
シャンプーのいい匂いがする。
「お休み。ジャック。」
「ああ、お休み。はやて」
たぶん八神は嬉しそうな顔をしていた。
寝息が聞こえる。
誰かの寝息が心地良い。
今まで知らなかった。
誰かの温もりを感じることがこんなに幸せなことだなんて。
この幸せな気持ちははやてに拾われなければ知ることなんて無かったはずだ。
復讐が終わったら
きっと壊れていた。
俺の魂を回収するならば復讐の後だろう。
俺の懐に入れた以上
はやてを泣かせたくない。
復讐が終わったら。全部終わったらここへ帰ろう。
それまでは終わるわけにはいかなかった。
明日の鍛錬も身を入れる覚悟を決める。
もっと力を!
「、、、ぶーらぶら、、ぷふふっ!」
、、、どうやらこいつに遠慮は要らないらしい。