宝石1つ
彼には復讐が全てだった。
村の仇を取りさすれば、あとは日常が待っている。
そう、思い込んでいた。
人を呪わば穴二つ
同じ穴の狢
復讐と力を求めた燃えカスは力に成り下がる。
知らず、自我を削ることを彼はいつか知るのだろうか。
ー境内奥
早朝
季節は一巡した。
息が白く染まるのは朝のみとなった。
身を縮めた寒さは様相を変える
朝の冷気は眠気を引き締めた。
チャクラの修練は一層の実を結んだ。
魔力の運用に腐心した俺にとっては相性の良い力だった。
著書では年上が苦戦していた訓練を躓くことなく完了した。
なにが功を奏するのか分かったものではなかった。
努力はいつか実を結ぶ。今回は望んだ形で成果を得た。
これは立派な教訓だ。
はやてに勧められた影分身の術
覚えてよかった影分身の術
今では1千体くらいまでなら呼び出せる。
この術は技術系の鍛錬に主眼を置く俺と相性が良い。
日本各地で俺が修行中だった。
俺は創作の主人公みたくチャクラのタンクだ。
チャクラを再定義するならば
俺が最初に持ち始めた類のエネルギー
だから世界にチャクラをもたらせば、自然と俺が最大限の力を持つ。
恐らくそういうことだ。
つまり分け与えない限りチャクラに限って世界最強。
それが俺の立場だった。
口寄せの原理の解析なんかをやっているからあくまでも最大値だが、
理論上の最大成長速度は普段の1千倍にも昇った。
そんなこんなで槍の扱いは一層の流麗さを醸し出した。
流れるような動作
間合いを悟らせない足運び
変幻自在な持ち手の位置
かと思えば恨みを晴らすような苛烈な突きの応酬。
槍の残像に炎まで纏いだした。
爺さんに胸を張ることができる技前だった。
俺の槍を止められる人間などいない。
槍1本でカーキの集団を殲滅できる自負がある。
愛着もあるから一層槍には熱が籠った。
今では大人もこれを見に来た。
いつだったか
境内の奥に立派な朱槍が置かれていたことがあった。
俺の手作りの槍と並べるように置かれたそれに腹を立てた俺は
その槍を試すようにふるいまくった。
穂先の付いた槍は普段よりも重くて踏み込みが甘くなった。
次の日にも朱槍は置いてあった。
前日わざわざ境内まで持って行ったのにまた、並べるように置いてあった。
ふと、槍マンという与太話を思い出した。
まさか。な
そう思い朱槍を振るう。
風を切るぴゅっぴゃっという美しい音を立てる
何度も槍を作り直した俺にとって
槍のバランスの修正は慣れっこだった。
昨日のうちに修正を終えていた。
その週はずっと朱槍のお世話になっていた。
付きまとう朱槍に愛着さえ湧き始める。
そんな日々を送っていたある日の鍛錬
呼んでもいないのに朱槍の持ち主が現れた。
刀袋を携えだ男性2人と女性が1人
女性は疲労を隠せていない。
強ち与太話も否定できんな。
そう思い槍のことや怪しげな3人の素性を尋ねた。年長者は俺のファンらしかった。
実践的でいて力の抜けた足運びをとても褒められた。
まるで爺さんを称えているようで俺はすっかり上機嫌になった。
なぜか俺の槍の師匠や技術の話へと話題は移され、
師匠は無念の死を遂げたこと
師匠の無念を晴らすべく、背を追いかけるようにして修行を続けていること
戦術は自ら組んでいることをずいぶんぺらぺらと喋った。
結果、俺の話ばっかりで
槍を持って来たおっさんは高町さんで俺のファン
これしか分からなかった。
年季の違いというものだった。
あれよあれよと技術交流やら模擬戦の話となって恭ちゃんを仮想敵とした模擬戦をした。
恭ちゃんさんと呼ばれてむきになった彼は素早い短刀捌きででこちらを翻弄した。
そして遂には巧妙に隠したワイヤーで俺を仕留めるのだった。
恐るべき使い手
模擬戦と言ったにも関わらず暗器を持ち出し
年下を圧倒して満足気だった。
悔しいが、恐るべき使い手だ。
そうこうして
高町さんには攻め手の甘さ
手の内の見切りの甘さを指摘された。
攻め手を見切らずに間合いを作るのは自殺行為だそうだ。
実際ワイヤーにやられた。
それからも丁寧な指導をしてもらった。
技術を磨くだけでは仇討ち能わずだそうだ。
経験不足の俺は必ず足元を掬われる。
身内を人質に取られることを考慮すると立ち回りも重要で、
見敵必殺を心掛けろとか
獲物は決して逃すな。地の果てまで追い詰めて必ず殺せ
逃せば誰かが泣くことになる。
医療忍術、研究しないといけないかな。
頭が下がる思いだった。
年長者の考えには目も覚める思いがした。
仇討ちに成功したら高町さんにも報告しないとなそう思った。
ー私立聖洋小学校
俺は現在3年生に進級していた。
クラスメイトには3年連続で佐藤がいた。
佐藤には貸がいろいろできてしまった。
昼休みのサッカーや図書館の鬼ごっこに俺を誘ってくれたのは佐藤だった。
俺の家を秘密のエロ本庫にしたのも佐藤だ。
お陰で自宅は清潔だ。いつ誰が来るかわからないから。
とりあえず、こいつは俺のお目付け役だろうなと想像した。
佐藤の前歯、今年は生え揃っていた。
イカ頭も同じクラスだ。
あいつと聖洋3大美少女をセットで運用することにしたらしい。
負荷分散を狙っていると分析した。
どいつもこいつも離すとうるさそうだしな。
悪魔と金髪とは未だに折り合いがついていない。
班が一緒になれば別の班員経由でないと話をしなかったし
大好きだったドッヂボールではチーム構成に関わらず俺を殺しにかかった。
多分、去年月村にヘッドショットを決めてヴィクトリーに沸いたのがそもそもの発端だった。
当然女子からは総スカンで男子からは英雄扱いだった。
俺は男子と女子の間に溝を作る問題児に違いなかった。
今日も変な臭いがする教室でクラスメイトと馬鹿をする。
日に日に頭が悪くなっているような、
悪くない日常を送っていた。
ー午後
体育だ。
2時間ぶっ続けの体育だ。
ネタが尽きればもちろんドッヂボールだ。
跳び箱やマットをこなした後で
チームを変えて延々とドッヂボールをした。
月村と金豚を今日こそ仕留める
いつかの恨みを晴らす。
以前金豚を徹底的に狙って外野送りにしたことがあった。
豚は俺の背後に張り付いて悪魔と豚の無慈悲な投球を披露した。
脚を狙われたと勘違いした俺の下腹部を剛球が捉えた。
計画的な犯行だったはずだ。
股間に青タンができてキレた俺ははやてに盛って伝えた。
聖洋小学校のドッヂボールは女子が積極的に金的を狙うんです。
月村って子が主導しているんですぅ。と
今頃スーパーや商店街連中が心配して最悪PTAに挙げられるだろう。恐怖しろ
そして今日は負けない。
二番煎じではあるが、悪魔金的ペアの作戦を実行する。
男子全員の球を俺に集める。
無慈悲な投球で2人とも傷ひとつ無い頭を吹き飛ばしてやるぜ!
事態を察知した担任は俺と悪魔金的を同じチームにした。
俺が捕球しようとすると金的が騒いだ。
悪魔は俺と外野の間へ積極的に回り込んだ。
俺より速い!さっきまで俺の後ろの方いなかったか?
俺は最後まで諦めなかった。
時間いっぱいボールの行方を追った。
俺は最後まで体育館シューズをキュッキュッと鳴らして
ーだれか、助けて下さい!ー
ーうるせえ!黙ってろ!ー
教室へ戻った。
完封された。
ー放課後
「ジャックってさー。去年まではマジで臭かったよなー。今はもはや別人だよな」
馬鹿話の最中こんなことを言われた。
「え?俺臭かった?」
「皇とお前で教室はやばかったんだってば」
まじかよ。それはへこむって、、、
「でもなんかあったのか?こんだけ身なりが変わるとか変なの」
ああ、そうかはやてに拾われたのはもう去年ごろだっけ
「ああ、家事が得意な子と暮らし始めたんだ。それまでは俺んち無茶苦茶だったからな?水周りなんて真っ黒だったんだぜ?」
茶化すように教えてやる。
「ええー!おまえ夫婦かよ?」
馬鹿がはやし立ててきた。
そこかよ!食いつくところそこかよ!
こいつら嫌いじゃないけど度が過ぎる
一斉に俺を煽り始める。
パパーとかそりゃねえだろ
「夫婦じゃねえ!」
否定しても無駄だ。
ますます頭の悪い反応が帰ってきた。
「否定すんなよー。好きなんだろー?そいつがー」
ひひっと笑いながら食い下がる。
こいつら先週のトレンドはウンコマンで今週はこれで遊ぶつもりかよ
「悪趣味な笑い方はやめろ。大体、俺はあいつを愛してんだ!そんなに茶化すなよ?」
教室は、静かになった。
すっかり暗くなってしまった。
いつものように鍛錬を終えて愛しい彼女の家へ向かう。
体が完成しないうちは鍛錬の内容は技術系に限定している。
今日より長時間励むのは影分身のお仕事だ。
寂しがりやな家主は今日も無理難題で困らせてくるだろう。
構って欲しくてあの手この手でこちらを惑わす彼女に俺はすっかり夢中になっていた。
2人でソファーに並んで本を読んでいれば膝に頭を乗せてきた。
テレビを見ていれば抱っこをせがんだ。
湯船には一緒に浸かりたがるし
料理の味を褒めるととびきりの笑顔をくれる。
塾の会費はお金の無駄だと糾弾し、めでたく解約となった。
それもこれも彼女が俺に甘えてきているようでたまらない。
はやては最近益々元気だ。
俺と同じ様に後見人がいるらしく、電話で楽しそうに俺との生活を報告している。
後見人に男が喜ぶ甘え方を教えてもらっているみたいだった。スケベな後見人だ。
そう言えばはやてとは対照的に俺は木偶のおっさんとは技術的な話ばっかりで
学校生活のことを聞かれても無視するかうるせえで済ませていたことに思い至る。
思えば木偶は最初から俺のことを心配していたのかもしれない。
昔の手紙は去年台所のヌルヌルを拭くときにティッシュ代わりに使って捨てていた。
”こう見えて私は英雄と呼ばれている”とか偉そうに書いてきて、うさん臭くてムカついてたっけ。
大体スケベなおっさんが英雄なら海鳴はそれこそ英雄だらけだっつの。
まあ、久しぶりに手紙でも書くか。学校で悪ガキ率いてエロ本集めとか馬鹿やっていると書けば木偶も少しは校正するだろうし。
と、
ー誰か、助けて!ー
どこかで聞き覚えのある念話が入る。
探知をしてみると動物病院から何やら気配がする。
濃密な魔力
しかも大雑把でいて異様に純粋な魔力だ。
都合がよろしいことで。
もし上手く取り込めば魔力のタンクになるかもしれない。
そう思い立ち現場へ向かう。
そこには強烈でいて無駄だらけの黒い靄と、それと対峙するフェレットがいた。
「そこのh」
瞬身の術で接敵
そして口寄せした槍で靄を突きまくる。
3度4度と突いた時から黒い霞がちぎれ飛ぶように散っていく
常識外れの接敵に靄はただただ攻撃を受け入れていた。
「野ぁ郎ぉぉ!そいつをぉ、寄ぉ越せぇぇぇ!」
火を纏った朱槍にはわずかながら精霊の力を纏っているのだろう。
靄で大事に囲っている物が露見する。青い宝石だった。
この調子で蹂躙すれば一方的に殺せそうだ。
そのままあっけなく形を失った靄は霧散した。
「弱い!」
俺のものだ。
手早く魔力の元栓を封印した。
楽勝だな。
木偶のフェレットは新しい怪我を一つも負っていなかった。
こいつは運がいいみたいだ。
「あばよ」
「まってくだs」
遅くなったらはやてに怒られちまうだろうが。
「黙れ。殺すぞ」
「ひっ」
雑魚に蹂躙されていたほどの雑魚フェレットはびくっと動いてそれっきり動きを止めた。
ダメ押しに真っ赤な瞳で睨みつけると遂にはフェレットは閉口した。
やりすぎた。