この世全てが憎い
少女が、どことも言いようのない空間で望んだもの
それは容姿、家柄、そして大魔力
それはコンプレックスを穴埋めする望み
容姿のせいで学生生活は青春とは程遠かった。
美人以外は求められない。
平凡な容姿をした彼女はそれでも誰かに必要とされたかった。
褒めてもらいたかった。
彼女は社会を上り詰めることで満たされると信じた。
美しい女性が彼女の幼馴染のピロートークを自慢げに話していたらしい。
彼女は密かに幼馴染との未来を妄想するのが楽しみだった。
噂を聞いて妄想を止めた。
早く成功して幸せになりたい。求められたい。そう思った。
一層身を削った。
順調に進学した。
進学しただけでおだてられるような一流の会社だった。
学業はなおも継続した。
褒められたかった。
周囲が興味のある分野を開拓する中
彼女は成績を重要視した。
学期が終わるたび、一様に並ぶ評定のアルファベットは彼女を励ました。
彼女はその優秀さ故に早期卒業した。
同期との椅子取りゲームは彼女の優位性を可視化する。
とんとん拍子に一流企業の椅子に収まった。
業績に貢献し、主任昇進は過去最速。
これで私も認められる。求められる。
これから幸せになれる。
しかし、昇進は止まった。
彼女は管理職の適性が低かった。
責めて責めて恐怖の鞭で突き進む彼女についてゆく人間などいなかった。
彼女には理解できない。
管理職適正など後付けに違いない。
人事は茶飲み会議的に進められ、気に入られる人間がのし上がる
そう思えてならなかった。
ここでも彼女のコンプレックスは容姿だった。
成人すると女性的な魅力も一般教養の扱いだった。
経験のない彼女には気配りも異性を惹きつける仕草もファッションも無かった。
彼女は懇願した。求められるために
のし上がるために。
もっと美を
身元を証明する家柄を
例の世界ならば功績を重ねるための大魔力を
彼女は目覚めて安心した。
これで私も
別の少女はがいた。
同じようにどことも言いようのない空間で彼女が望んだもの
可愛くなりたい
あのアイドルのように皆に愛される容姿が欲しい
魔法少女になってみたい
少女は幼い
アイドルがスクリーンの裏で一体どのような目に遭うのか
現実の世界を動かすものは、きれいごととは程遠いことを彼女は知らなかった。
彼女はアイドルと同じ目に遭うだろう。
それは外見に相応の対価だろう。美しいほど悲惨なものだ。
皆に愛される容姿は愛されるだけにとどまらない。
愛を求めるものには疎まれる。
彼女は目覚めて喜んだ。これで私も!
俯く男性が望んだもの
それは容姿と神秘の源流
男性は容姿に自信を持てなかった。
自分の不幸は容姿に起因するように思えて仕方がなかった。
容姿のせいで仲間はずれ
容姿のせいで笑われて
容姿のせいで孤独な青春を送る
容姿があれば。
望みの容姿があればきっとヒーローのような生活ができる。
青春時代に確かに見た
スポーツが取り柄なだけの男
ちょっと整った顔をしただけの痛い男
そいつは小柄で可愛い女の子と、帰り道に手をつないでいた。
容姿があれば、あいつと同じ土俵に上がれる。
彼はいつも妄想していた。
英雄の力でヒロインを守って、惚れた女性に押し倒される
そんな人に好かれる妄想をしていた。
彼は目覚めて決心する。今度こそは!
穢れを否定する青年がいた。
彼があの空間で望んだもの
漂着する先の世界の終わりを知っていた彼は願う。
悲劇を無くしたい。
そして彼が望むのは悲劇を切り裂く奇跡の騎士。
非道を切り裂く凛とした騎士を目標にしたかった。
奇跡をもたらす雫も要求した。
車椅子の少女を、悲劇の融合騎を救う情報を求めた。
彼は夢想する。
悲劇を切り裂く英雄の姿を
責務に燃える自らの意思の炎に薪をくべた。
自分の世界に悲劇は要らない。
自分の大切な人には傷ひとつ付けさせない。
彼は目覚めるまでもなく、意思の炎を燃やし続ける
彼は目覚めて祈りを捧げる。
奇跡の力をもたらした超常の力への感謝の祈りを