※この作品はR-18です。

消し炭の男   作:Christmas

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煉獄世界 -5-

ー時の庭園 玉座の間

 

彼らは示し合わせたように海鳴で出会った。

 

目を合わせるだけで同士であることはすぐに分かった。

 

世界と心中することだけが彼らの自由と尊厳を勝ち取る手段だった。

 

「駆動炉を起動してきたわ。」

 

カレンは淡々と告げる。

 

「陣もできた。」

 

マリは無表情で答える。

 

「これで全部だ。」

 

皇は雑に3つのジュエルシードを放る。

受け取ったカレンは喜んだ。これで12個

 

「いいわ。さあ、一緒に始めましょう。」

 

3人は陣の内側に入り、儀式魔法を発動させる。

 

 

ーアースラ グレアムの部屋

 

「ジャック。彼らの目的はなんだと思う?」

 

英雄は確認するように問う。

 

「俺はあいつらの同類じゃあないぜ。」

 

それを聞いて英雄は肩を落とす。

 

「頼むジャック。せめて、次元世界だけは救ってやってくれ。関係のないものは巻き込んでほしくはない。

きっと彼らは我々がどのように説得しても」

 

「自我を選ぶだろうな。」

 

英雄はただ、俯いた。

 

 

ーアースラ ブリッヂ

 

彼らのデバイスは正規品だった。

無改造のそれは位置情報を発信する。

 

任務中に行方不明になるのことを防ぎ、

司令室では戦況をリアルタイムに確認する機能だった。

 

「確認しました!時の庭園内部から局員の信号を検出。照合結果からマクドナルド姉妹の所持するもので間違いありません。」

 

俺はプレシアさんに確認した。

 

「あそこの動力って、電気じゃなくて魔力だよな?」

 

彼女は苦い顔で同意をした。

きっと、いろいろ思い入れがあるからだろう。

法務執行機関に見られたらまずい思い入れが。

 

「おっさん!間違いねえ。あいつらジュエルシードを励起させるつもりだ。」

 

狙いは恐らく、、、

 

「!おいおっさん!ふんっ!シャキッとしやがれ!、、、少なくともまだ、俺はここにいるんだぜ?」

 

おっさんは虚ろな顔で女性陣の尻を見つめていた。

気合いを入れさせるためにおっさんのふくらはぎに蹴りを入れた。

 

「!ああ、そうだな。そうだったな。

、、、回線を繋げる準備をしておけ!執務官と武装隊は準備が出来次第突入。駆動炉を抑えて敵の動きを封じろ。

ジャックは先行してジュエルシードを押さえろ!」

 

グレアムは許可を得るように、リンディ・ハラオンへ視線を向ける。

彼女は無言で頷いた。

 

「よし!次元振が予想される!執務官たちは危険な状況になったら帰還できるうちに切り上げろ。」

 

「なるべくこちらで押さえますが、ジュエルシードの数によっては長くは持ちません。」

 

リンディ・ハラオンは補足した。

 

「じゃあ、おっさん。いいんだな?壊して。」

 

何を、とは言わない。

 

「構わん。私も受け取ったプレゼントは虚数空間に落としたことにしている。」

 

「へっ、上等じゃあねえか。」

 

俺は武装隊の後に続いた。

 

「皇を頼む。」

 

見送る織村はそう、走り去る俺に声をかけてきた。

 

 

 

情報官が報告する。

「!通信つながりました。」

 

「映して下さい。」

 

「、、、こちらは時空管理局です。あなたたちは現在住居不法侵入を犯しています。

直ちに儀式魔法を中断して投降して下さい。」

 

彼らは一様に脂汗を掻き、儀式に集中していた。

3人の魔力が同調せず、

ジュエルシードのリンクに時間がかかっていた。

 

グレアムは前に進み出て説得を試みた。

 

「久しぶりだな。マクドナルド姉妹。マリはお姉さん子をやめたようだね?」

 

モニターの向こうで姉妹は声に反応した。

 

「お久しぶりです。提督。変わらず、お元気そうですね。」

 

「立場上、実戦には出られんがね。」

 

姉妹の表情は剣呑なものだった。

 

「さて、それだけのジュエルシードの励起だ。

我々もただではすむまい。

知っているかね?君たちのお母さんは今も、君らの帰りを待っているそうだよ。

親まで巻き込むことはないだろう?」

 

この言葉が引き金となった。

姉妹に足りなかった世界への憎悪が3人の絆となってリンクが完成した。

駆動炉のバックアップを得た魔方陣が機能を始め、

ジュエルシードが浮き上がった。

 

「!やめなさい。今なら間に合う!君たちの帰りを待つ人間が、きっと待っている!」

 

カレンは儚げに微笑む礼を言う

 

「いつも、私たちに良くして下さってありがとうございます。提督。私たちはずっと、あなたのことが」

 

 

 

「大嫌いだったのよ。」

 

 

グレアムは言葉に詰まり、

視線を下げた。

 

やはり、無力だった。

 

意思を固めた存在に対して説得することはあまりにも無力であり、

失礼だった。自我の否定に他ならない。

 

英雄は崩れなかった。

 

今も痛むふくらはぎは未来の命の力を示していた。

 

 

 

 

 

「皇!お前まで一体どいうともりだ!」

 

織村は吠える。彼の心は若かった。

幼い心は蔓延る悲劇を知らない。受け入れない。

 

「織村ぁ。お前はいいよな。俺と同類の癖に。幸せそうに暮らしやがって。」

 

織村はなおも吠える。

 

「皇、お前だってやり直せるじゃないか。お前の評価、前よりもずっとよくなっている。お前も!」

 

「あの場所で願ったんだろう?理想を!」

 

諦め顔の皇は

「なあ、織村ぁ。俺の話、聞いてくれよ、、、」

 

つらつらと彼の人生を語った。

両親は彼を嫌悪した。

地球の反対側で家庭を構築しなおした。

 

存在そのものが呪われていること。

何をしようが人々は彼を嫌悪すること

 

「お前は、知ってるか?」

 

皇は続ける。

お前は知っているのか?

 

一人暮らしの寂しさを

寂しく努力しても何一つ報われない虚しさを!

 

アメリカから従妹が来て、

彼と恋に落ちるラブストーリーを夢想した。

彼に残った希望だった。

 

しかしアメリカから訪れたのは従兄だった。

 

彼は唯一嫌な顔をせずに話を聞いて、満足そうに料理を平らげた。

一緒にバスケットボールもした。

始めて対等な人間を得たようで嬉しかった。

 

バスケットボールをした後

コートのある公園のシャワールームで

彼に純潔を奪われた。

 

行為が済んだら従兄は観光に出かけてそれきりだった。

 

彼が抱いた全ての希望は残酷な形で降り注ぐ。

 

「なあ、教えてくれよ。織村。呪われた人生を終わらせる方法を。教えてくれ。」

 

虚ろな彼は尋ねる。

理想を信じる織村は

 

「お前は、、、」

 

予期せぬ悲劇に口をつぐんだ。

 

 

ー時の庭園 玉座の間

 

「よお、先輩方」

 

アースラクルーの努力は一歩遅かった。

浮き上がったジュエルシードが励起しあい、魔方陣が歪に歪み始めていた。

 

空間が鳴動し始める。

ジャックのときとは比べ物にならない規模の励起現象

臨界してもいないのに軋みが発生していた。

 

ピシリピシリと音が鳴り、

まず天井が崩落の兆しを見せる。

 

臨界したジュエルシードが陣から放たれれば無事では済まないことは明らかだった。

 

「悪ぃな。これも、仕事なんだ。」

 

ジャックは力の発現を誤魔化すために槍を掲げた。

 

「ふんっ!」

 

オプティックハイドで精霊の炎でジュエルシードを焼き尽くした。

それだけで魔方陣はただの魔力回路だけになった。

 

空間の鳴動はなおも続く

 

だが、規模の増大は無い。

 

 

と、マクドナルド姉妹の妹がジャックを見つめながら前に出る。

魔方陣は解除された。

 

姉の隣に並び立つ彼女は

視線を左に動かした。

 

ダアァン!

 

マリの側頭部から血肉が飛び出した。

彼女は無感情な目を開いたまま地面に倒れて痙攣した。

姉を壊してしまった自責の念はこうして晴らされた。

 

救われたような表情のカレンは愛おしそうにシルバーフレームの銃身を撫でる

視線はジャックへと向けたまま。

まるでオーラルセックスをするかのように銃身を喉までくわえ込んだ

 

ヴァガァン!

 

彼女は死してなお美しかった。

綺麗に延髄を打ち抜いた彼女の傷口は長髪に隠れ、

タイトスカートから覗く長い脚と流れるような美しい黒髪は芸術的だった。

死体になってもなお艶やかな彼女は、ようやく尊厳を得ることができた。

彼女が望んだ尊厳を得た。

 

 

「わああああああああ!」

 

皇は美しい死体から震える両手で拳銃を受け取った。

 

彼は覚悟を決めたように素早く行動する。

顔をクシャクシャにして涙を流しながら。

 

「わああああああああ!」

 

恐怖に打ち勝つ力を求めるように

促す言葉を待ち望むようにジャックを見つめて

眉間にむけて未だ熱持つ銃口を押し付けた。

 

「わあああああああ、」

 

ダアァン!

 

泣き顔のまま、覚悟を決めた表情のまま、彼は倒れこんだ。

 

こうして彼らは最後にはその人生を捧げた。

身に余る神秘を持ったその魂をあるべき場所へと返納した。

死は彼らに永遠の安息を約束したのだった。

 

こうして彼らは、煉獄のような世界からの脱出に成功した。

 

 

なぜ、ジャックが彼らを野放しにしたのかは、彼にもわからなかった。

ただ、もし自分なら誰かに見届けてほしかった気がしただけだった。

なぜかと問われてもうまく言えそうな気はしなかった。

 

収まらない次元振を避けて、

 

崩落する時の庭園から誰一人欠けることなく帰還した。

 

 

 

ーアースラ ブリッヂ

 

「なんで見殺しにした!」

 

織村はジャックの襟首を掴んで壁に押し付ける。

 

「なんで助けなかった!なんで!あんまりだ!あいつは、皇は!」

 

感情を抑えきれない彼は決壊した。

ジャックはぼそりと答える。

 

「あの時は、ああするのが一番いいと思ったんだ。」

 

ただ、その瞳に迷いはなかった。

 

「なんで!なんで!こんなの酷過ぎる、、、!」

 

膝を折る織村を見つめたジャック・サンダースは

上手く伝えることのできない未熟さを呪い、ひっそりと自我を育てた。

 

「ジャック。」

 

毅然とした態度のギル・グレアムはジャックに呼びかける。

彼は悲劇を前に膝をつき、そのたびに立ち上がった英雄だ。

 

「よくやってくれた。、、、有り難う。」

 

感極まった彼はジャックを抱きしめる。

 

彼は全て知っている。

このような経験は1度や2度では済まされなかった。

立ち上がるたびにこの類の悲劇に直面した。そこに確かに存在する人の尊厳の大切さを知っていた。

 

「、有り難う。」

 

 

 

ジュエルシードを発端とした騒動はこれにて終結した。

次元振は3度確認された。

未曾有の大事件だった。

犠牲者は3名。

検挙者は1名

 

時の庭園からの通報で発覚した事件は持ち主の名前を取ってこう呼ばれた。

プレシア・テスタロッサ事件と

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