原初の記憶をご存じだろうか。
物心ついて
つまり本当の意味で人間となったときの記憶だ。
右も左もわからぬまま、1個体のヒトが僕と成った。
その時の記憶のことだ。
ー地球 日本国 某所
興味があった。
複雑な線がつながった、探求心をくすぐる物体に興味があった。
その感情が行動を支配したのはこれが初めてだった。
調べたい
理解するまでじっくりと
調べたい
幼い故に衝動を抑えきれずに
つい手にとってしまった。
ここから、全てが始まった。
そう思える瞬間だった。
「あばばばばばばばb」
動力の源という分析は正解だが
生身で動力に触れると制御が奪われるということを学習した。
これが僕の原初の記憶だった。
「あばばばばばばばb」
「ジャック!?すぐにコンセントを放しなさい!」
コンセント
と呼ばれる物体を認識した。
ママが僕を助け起こしてくれた。
「「あばばばばばばばb」」
嫌な予感がする。
このままでは良くない気がする
僕を真摯に助けようとしてくれた存在は小刻みに震えている
コンセントを壊さなくてはいけない
そう判断して意識をコンセントに向ける
「!」
何故か燃やせる気がして、燃やした。
強く念じることで燃やせるらしい。
ママはこうしなかった。
だからきっと僕にしか使うことのできない方法
自由を取り戻した体でそう理解した。
ー爺さんの家
ここは母方の実家らしい。
僕が火を扱う才能があるということで改めて顔見せをしたのだそうだ。
村
いや、集落、部族
そういった表現をするべき家屋が並んでいる
その集合の中央には炎で囲われた大きな石像がある。
なんだか親しみを感じた気がする。
簡素な住居が雑然と並ぶなかを一番奥まですすむとが爺さんの家があった。
家とは違うにおいがする。まるで木を焼いているような独特の匂いだった。
爺さんは村長という肩書らしかった。
怖い顔をしてそんな顔のままママと話をしていた。
ふと、
爺さんの家に座る場所が少ないことに気が付く
家族か友人が少ない
そういう寂しさを抱えた人間ではないのだろうか。
もしそうならば怖いのは外見だけかもしれない。
そう判断した。
爺さんは言った。
「お名前は?」
正解だったようだ。
「、、、ジャック」
その日爺さんはそれからいろいろと世話を焼いてくれた。
肩車で村を散歩してくれた。
硬い葉っぱを口に当てて音を鳴らす遊びを教えてくれた。
カブトムシを捕まえて見せてくれた。
単純なものであれこれと刺激をくれる爺さんに
僕はすっかりなついてしまったようだった。
原初の記憶と近いからだろうか、後になってもこの日の出来事を鮮明に思い出す。
爺さんの方から見るいつもと違った景色、安心させてくれる声色
太ももに刺さって痛い頭の飾りつけ
こちらを見上げる両親の笑顔
いつまでたっても忘れることのできない記憶だった。
こうしてすっかり爺さんを好きになった僕はたびたび村への旅行をせがんだ。
家にいるような落ち着きと、家では学べないことを教えてくれる爺さん
僕はすっかり魅了され、同時にいろいろなことを吸収していった。