※この作品はR-18です。

消し炭の男   作:Christmas

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管理局小話 第四話

ー管理局地上本部

 

「それはいけませんな。」

 

レジアス・ゲイズは委員会に招致されていた。

 

協議に行き詰まりがあったためだ。

 

「全く、金の亡者どもめ!」

 

委員の1人は怒りのやり場を求めて憤る。

 

レジアス・ゲイズはため息を吐きながらもしょうがないと思案する。

 

ただでさえギル・グレアムが民間人の強力なレアスキル保持者を擁して暴れ回っているのだ。

それだけでも頭が痛いというのにまたもや問題が浮上していた。

 

事の発端は実に根の深い問題だった。

それは第17管理世界の資源の価格交渉だ。

 

管理局はその創成期において魔導社会の推進によって地位を得た。

 

管理局のスローガンはこうだ。

魔導社会は質量兵器に依存した社会と比較して環境に優しい

 

これによって魔導社会はクリーンというイメージを植え付けた。

 

確かに事の起こりはそれで正しく、職員は正義感に満ちた高潔な人間が集まった。

 

しかしクリーンなシステムを大規模化した結果、無視できないコストが発生する。

魔導を優位せしめる要因である外部処理装置の魔導デバイス

その製造に欠かせない素材の高騰が始まったのだ。

 

組織を拡大し、民生品の需要も高まった結果だった。

 

魔導素材は投機商品の目玉となり、製造、卸業は盛んに投資が行われた。

素材は魔導社会の根幹だ。

いくら価格を吊り上げようと買い手がついた。

全盛期には個人が素材を直接取引し、闇素材まで流通していた。

現在でも安全資産として金融商品扱いされている。

 

割を食ったのは当然、管理局だった。

彼らは当時の数少ない次元航行艦を使用して新たな鉱脈を模索した。

不安定な情勢の元、日々の業務を縫って資源を捜索した。

 

やがて彼らの正義は実を結ぶ。

 

当時管理外世界だった、現第17管理世界にて鉱脈を発見する。

 

当然、管理外世界に航路を作ることには反対意見もあった。

正義をなすために自ら法に背く行為だった。

 

彼らは結局現地政府を介して魔導素材を取引する方針で妥協した。

 

現地政府は当時は管理外世界ということもあって魔導素材の資源価値など知りもしない。

せいぜいセラミック素材程度の認識しかなかった。

管理局側の担当官は当然、破談となれば別世界との交渉をちらつかせた。

 

こうした外交努力の結果、管理局は魔導素材の価格を裏で操作することに成功する。

 

贔屓の卸業者を介して徐々に引き下げられ、魔導素材の投機的な動きはなりを潜めた。

 

 

しかしこの問題は数年前に再燃した。

第17管理世界が取引価格の引き上げを一方的に宣言した。

 

管理世界となってから噂があったのだ。

管理局は卸業者を介して自分たちの利益を搾取していると。

 

管理局は彼らに対抗して取引量を引き下げ、在庫を解放した。

 

しかし第17管理世界は魔導社会を基盤としていなかった世界だった一方で

多くの管理世界はより多くの魔導士、魔導デバイスを要求する。

 

当然、こうした値動きを事前に知っている製造、卸業者はこれ幸いにと価格を吊り上げる。

需要は増え続けるため彼らの業績は鰻登りだった。

投機的な対象として再び注目され始めていた。

 

早々に白旗を挙げた管理局サイドは泣く泣く要求を受け入れ、

市場は落ち着きを取り戻した。

魔導素材は下落幅は小さいがすぐに引き締めに遭う安定資産として認識され始めた。

 

仲介手数料によって潤っていた管理局サイドには当然不満があった。

 

設立当初の穏健派や正義を掲げた人間はもういない。

トップに君臨するのは局内の出世レースで多くの正義を蹴落とした人間たちだった。

 

魔導素材の仲介業の利益をポケットマネーとするのは彼らにとっては受け取って当然の利益だった。

そのために上り詰めたと言っても差支えが無い。

 

故に

 

「許せん!」

 

醜い腹を垂らした委員は許せない。

彼らの取り分を奪う第17管理世界政府が憎い。

 

見かねたレジアス・ゲイズは進言する。

 

「民間業者に金を掴ませて現地政府を取引から弾いては?」

 

「それはもうやった!だがあの亡者どもは揃って価格を釣り上げた。民間の方は手数料を請求してきおったわ!忌々しい。」

 

なるほど、と彼は思った。悪だくみはここの豚の専門分野だ。この程度は当然考えていた。

 

現地政府の取った行動は実に簡単だった。

民間会社に見逃す代わりにピンハネを要求した。

第17管理世界は官民一体となって資源を有効に活用した。

 

結果、今回も管理局サイドは降参するかに思えた。

 

「むう、では思い切って内乱でも起こしては?」

 

「なに?どういうことだ?流通網を失ってしまえば価格高騰のいい口実だ!」

 

レジアス・ゲイズの顔に冷えた唾が飛ぶ

彼は気にせず、冷静に答える。

 

「麻薬の密売組織が鎬を削る際に使う手です。若い構成員を唆して敵対組織の内乱を誘発するのです。当然彼らに組織統制はできないので後からでも市場を食えるのですよ。」

 

委員は激昂の様相を呈した。

この醜態を晒しても彼らに正義があるのかと彼は感心した。

確かにこの方法を取ってしまえば多くの民間人が犠牲となるだろう。

管理世界の治安維持組織が主導する計画としては本末転倒だ。

 

委員は言う。

 

「その程度の介入は行って居る!奴らは傀儡政権にしたところで変わりはせん!何度やっても同じだ!」

 

目の前の豚はさらさらと虐殺を示唆した。

自らの利権を守るため、管理局の秘匿部隊を組織して内乱を誘発していた。

 

彼が半ば冗談で上申した計画を既に実行していた。

 

腐りきっている。

 

彼は率直にそう思う。

自身も正義を志し、そのために親友を裏切り、正義の英雄を貶め、あざ笑った。

だが、頂上に上り詰めるにはまだ足りなかった。

 

頂上に居座る豚はここまで腐っていた。もはや同じ人間とは思えない。

 

彼らは自らの利益を守るため。

椅子に座ったまま快楽に肩まで身を埋めるためだけに

 

どこかの世界の平和な世界を

将来を夢見て汗水たらして働く人間の支える家庭を

将来に目を輝かせて両親に語りかける子供たちの未来を

将来を誓い合った若者たちの希望を

 

豚の餌へとなり下げた。

 

何たる外道か

 

およそ許されざるこの行為は正義の巨塔のその頂きで行われた。

 

「では…では管理局の介入、そこから自治権の取り上げです。実質植民地にしましょう。テロ組織を構成し、治安の安定を妨げるのです。現地駐留と称して現地政府の活動を阻止すれば永年の資源管理の利権を手にできるでしょう。」

 

レジアス・ゲイズは、外道へ堕ちることを選んだ。

親友に背を向けた彼は、止まらない。

立ち止まることは彼の努力への裏切りだった。

なにより豚を屠ることができる人間はもう、彼しかいない。

 

管理局のトップを葬ること。

 

レジアス・ゲイズに残された数少ない正義だった。

そのためには自らも外道へと身を堕とす。

 

信用を勝ち取り、喉元を食いちぎる覚悟だった。

 

委員は満足げだった。

 

「合格だよ。レジアス君!君は素晴らしい!前から思っていたが君こそ我々の希望だ!早速取り掛かってくれ。また昇進をしておく。特務隊への指揮権を君に譲ろう!」

 

何を嬉しそうに

権限の委譲は耳にやさしい尻尾切りでしかない。

まだ下っ端として使われる。

 

今に見ていろ

 

全員必ずあの世へ連れていく

 

彼は、決意を隠すように俯き感謝の口上を述べた。

 

 

「と、いけません。こちらも報告がありまして」

 

「ああ、そう言えば連絡があったな。なんだ?」

 

レジアス・ゲイズはコンソールを叩き、とある収支報告書を表示する。

 

「先日こんなものを見つけましてね」

 

彼は脅しの材料として十分な証拠を揃えていた。

あまり自分を見くびるな

自分の能力は貴様らをも挫くと証明するように

 

「…~ああんイッっちゃう~淫らな高校教師の輪姦学校…?それがどうした」

 

「…確認のサインをご覧ください。」

 

その場にそろった委員は全員が身を乗り出してモニターを覗いた。

 

「…でかしたぞ。レジアス・ゲイズ。おめでとう。君には中将の地位を確約する。満場一致だ。そうであろう?」

 

委員は全員満足げな表情だ。

これで次元世界は彼らの独壇場。

独立したチームが狩場を荒らすことはもうない。

 

なぜなら、

英雄が管理外世界で大量のエロ本を経費で購入していたのだから。

更迭するには十分な証拠だった。

 

「今すぐに本局へ通達!更迭の用意をしろ!」

 

「…例の民間人は流刑に処すのが良いのではないか?例の魔窟に閉じ込めろ。」

 

豚は醜く腹を揺らし、猛々しく吠えた。

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