※この作品はR-18です。

消し炭の男   作:Christmas

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奉仕の見返り

ー管理局 無限書庫中継ポート

 

「さあ、ついてきて。」

 

現場の検証に立ち会えないジャックは早々に転移させられた。

数々の命令無視は現場検証には邪魔でしかなかった。

 

ポートに到着した彼はグレアムの使い魔達と接見した。

彼女たちは挨拶もそこそこに、ジャックの手を引っ張った。

 

「お、おい!」

 

「時間ないんでしょ。急ぐよ?」

 

「?な、なんだよ」

 

髪の短いほうが急かす。

彼女の後頭部には見覚えがあった。

確か、最近通信で彼女の姿を見たような気がした。

 

道すがら、説明を受けた。

 

はやての容態が急変したらしい

 

蒐集をしなければ持ち主のリンカーコアを蝕み死に至らしめる、

そんな闇の書の機能が働き始めていた。

 

リーゼ姉妹は急きょ海鳴へ赴き、守護騎士達に蒐集するように促したそうだ。

 

聞かずとも家族達の答えは分かり切っていた。

主想いの彼らは迷わず蒐集する。

 

いざとなれば人間からも奪うだろう。

 

「…はやては、無事か?」

 

「今のところはね。でも、急がなきゃまずいよ。年を越す前に完成させないと命の保証はできないの。」

 

あと2ヶ月

 

「はあ…だから、お父様が集めた情報を見せてあげる。持ち出しはできないから暫く籠ることになるわよ?」

 

髪の長いほうが優しく教えてくれた。

 

 

 

ー管理局 無限書庫

 

「はい。これ」

 

次々と書類を渡される。

 

彼女たちは情報を隠ぺいするべく、関係書類を隠していたらしい。

散発的にどこだっけとかこれでしょ馬鹿とか聞こえてきたかと思うと

 

「はい、これ」

 

といって読み切らないうちに資料が追加された。

 

「な、なあ!」

 

堪らず助けを求めて声を掛ける。

せめて関係部分のページ番号だけでも聞きたかった。

大半が直接関係のない項目だった。

 

不慣れなジャックは、翻訳魔法を使う集中力が切れてしまいそうだった。

 

「うるさい。集中しろ」

 

短いほうに静かに怒られる。

ジャックは理不尽を感じる。

 

「ほとんど関係ない記事じゃねーか!」

 

髪の長い方が冷ややかにジャックを見る。

 

「あなた、私達の時給、想像できるかしら。」

 

「…」

 

グレアムの世話になっている手前、払えるわけがない。

善意の協力に文句を言えるほど、彼は図々しくなれなかった。

 

「なら、ならせめて…書くもの、とか、ねえのか…?」

 

ジャックは恐る恐る尋ねた。

 

姉妹は目を合わせて感情を共有する。

 

「バカじゃないの?今時手書き?」

 

「あなたどこ出身だっけ?」

 

結局端末の操作まで教わったジャックは姉妹に頭が上がらなかった。

 

 

 

ー1週間後

 

ジャックは苦労していた。

大体の情報が掴めたとは言え、それで書を修復することなどできるはずはなかった。

 

正式な名称や管制人格の存在、搭載された機構

 

資料を読み込み、現象や仕様を理解した。

 

それだけだった。

 

持ち出し厳禁であるため、彼は資料の内容にあった事件や事象を記憶しなければならない。

トラブルの際には史実に基づいた判断をする必要があった。

 

「クソッ!結局何が原因か分からねえ。」

 

いくら資料を洗っても、ある時から狂いだしたことしか伺えない。

 

無限に主を食らい、世界を破壊して旅をする悪意の書

 

夜天の魔導書はなぜ悪意に飲まれたのか、見当がつかなかった。

 

 

 

「ジャック・サンダースとは、お前か?」

 

スーツ姿の職員が武装局員を連れて積まれた資料の間から話し掛ける。

 

「あ?おっさん誰だよ?」

 

「貴様は次元管理法に違反した。次元世界の平和を揺るがした罪は重い。本日を以て管理外世界への流刑と処す。」

 

男は一方的に宣言をする。

 

「待てよ!グレアムだ!ギル・グレアムが俺を知ってる!そいつに、」

 

「ギル・グレアム氏は横領の疑いで全職権を停止している。さっさとこいつを連行しろ。臭くてかなわん」

 

そう言って男は心底嫌そうに背を向けた。

 

「離しやがれ!クソマラどもが!てめえらの妹の耳の穴まで犯してやる!離せ!クソが!」

 

納得できないジャックはなおも抵抗をしようと試みた。

 

「!いいのか?こっちはグレアム氏以外にも貴様の関係者も全員拘留できるんだぞ?貴様がしでかした罪はそれほどに重い!」

 

ジャックはとうとう諦め、首を垂れる。

この場で暴れれば蒐集は停止するかもしれなかった。

 

そうなれば、愛する彼女の命は日々消失する。

 

彼には選択の余地が無かった。

 

 

「…連行しろ。…全く。鼻が曲がりそうだ。」

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