※この作品はR-18です。

消し炭の男   作:Christmas

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17th Nightmare -2-

ー第17管理世界

 

織村総士はこの世界の首都アールムへと到着した。

 

高地特有の乾いた空気が彼を迎える。

現地の季節は冬

 

惑星の関係上第17世界には年2回の夏がある。

アールムは夏のたびにまとまった雨が降る。

冬は乾燥した気候だ。

 

アールムは標高の高い土地に発生した都市である。

かつて2大勢力が度々この高地で覇権を争った結果物流が発生し、商業が盛んに行われ始めた。

そこへ両勢力の民が入植して複雑な文化が生まれる。

近代都市のクラナガンとは違い、異国情緒に溢れた美しい都市だった。

 

しかしそれは数年前までの話だった。

 

いつからか反社会勢力が武力を持ち、治安が脅かされた。

現地政府が対応していたものの、先ごろ遂に手が足りなくなった。

結果街は荒れ、文化的な遺産が破壊され始める。

 

その様子は管理世界で広く報道され、人々の知るところとなる。

 

平和なニュースが報道される裏でアールムの人々は安全を求め、自ら土地を離れていった。

 

運が良い家族、恋人たちは遠隔地へ避難した。

悪ければ白昼堂々男が殺される。

 

すり、強盗、誘拐、そして殺人

 

首都にも関わらず治安は乱れる

 

今では道行く人に第17管理世界のことを尋ねれば有名なテロリストを思い浮かべる人間が多い。商業と文化のイメージを持つのは年配の人間だけだ。

 

美しい街は落ちぶれた。

総士を迎えるのは乾いた空気と寂れた街だった。

 

総士の表情は冴えない。

 

 

 

陸戦魔導士として名を挙げた彼には特務任務が下りた。

第17管理世界で現地政府による民間人への武力介入が起きているので仲裁をせよという命令

もはや管理局の顔として活躍する彼が抜擢された理由は誰もが下手に彼を攻撃ができないからだという。

 

正義の広告塔とも呼べる彼を攻撃することは宗教の偶像を踏みにじる行為に等しい

管理世界で彼を攻撃する人間など正気を失っていると言えた。

 

 

特務の依頼に所属部隊の管理職連中は喜んだ。昇進間違いなしと誉めそやし、激励した。

 

一方で先輩局員とは余り親しくはない。総士の階級が上がってしまい、先輩として指導できる空気ではなかった。

彼らも戦闘以外にも色々教えてやりたい気持ちはあったがそんな機会を与えまいとばかりに総士は指名される。

 

1件解決すればまた1件

 

2週で1件解決できたのなら3週間で2件の介入はできないかと各部隊から応援要請が入る。

 

 

協力先の戦況は押され気味なことが多かった。総士は専ら現場の指揮官から防衛や撤退の作業を指示された。

 

総士は危険な状況でも堅い防御と圧倒的な魔導で戦線の維持に貢献した。

 

それぞれの任務で経験を知識として吸収する彼は現場では重宝されたし感謝もされた。

彼は自分の仕事に誇りを持っていたので精力的に働いた。

 

戦いが続くたびにいつか抱いた理想や生きる目的などは頭から抜け落ちた。

ただただ目の前の苦境を切り拓く。

 

 

 

 

総士は時間があるのでアールムのポートから離れて市場へ向かう。

特に理由はなかった。賑やかな声につられただけだった。

 

転戦を繰り返すうちに彼は気が付いた。

自分に好意的な人達がいる一方で恨む者もいることに。

 

局内で嫉妬や僻みがあることは慣れていた。

小学校でもよくあることだったからだ。

 

予想に反したのは現地の住民の視線。

 

直接ものを言われるわけではない

 

しかし有名になればなるほど総士は派遣先の住民から冷たい目で見られる。

 

今だってそうだ。向かいから歩く手を繋いで歩く母娘

彼らは監視するように目を細めて総士へと視線を流してすれ違う。

 

彼は思うのだった。自分はこんな顔を見るために戦っているのかと

 

総士の表情は冴えない。

 

 

 

総士はなんとなく露天を眺める。

アールムはガラス工芸でも有名だった。なのはやフェイトに何か土産を渡すのもいいかと色とりどりの装飾品を眺める。

 

「はあ?高過ぎんだろ!!弾の方がよっぽど安いじゃねえかよ」

 

総士の隣でアールムの民族衣装を着た少年が店主に息巻いて抗議した。

 

ジャクソン・サンダースだった。

 

「冗談言うな!子供は知らないかもしれんが、職人の殆どが逃げちまってんだ。そうなりゃ自然とこうなるんだよ。」

 

店主は信じられないという顔でなだめる。

 

「嘘つけよ。じゃあなんで銃はクソ安いんだよ?」

 

ジャックは疑わし気に店主を睨む。

 

「わしが知るかそんな事!需要と供給ってもんだよお客様」

 

ジャックは尚もしつこく食って掛かる

 

「逆だろ逆!それなら銃のが高いね。ガキでもわかるぜ。おっさん」

 

とうとう店主は顔を真っ赤にしてわめき散らす。

 

「うるせえ!金が無えならとっとと帰れ!!」

 

「ふーん…」

 

堪えた様子もなく物色に戻るジャック

 

「おい。もめごと起こすな」

 

「お、え?総士か?」

 

「ああ。仕事先が一緒になるなんて初めてだな!」

 

ようやく総士の表情が晴れる。素の自分で接することのできる友人の存在が嬉しかった。

 

「そうだな。」

 

「んー、、おっさん。これ」

 

ジャックは再び店主に向かうと青いガラス細工の首飾りを突き出す。

 

「…坊主、金あんのか?」

 

店主はぶっきらぼうに尋ねる。

 

「ひいふうみい…と。だー、わかりくい!!これで足りるかよ!?」

 

「おお!毎度。」

 

店主は渡された金額に表情を変えて感謝した。

 

「行こうぜ。総士」

 

彼らは露店から離れ人ごみの方へと向かった。

 

 

 

露店を離れてオープンテラスの席へ座る。2人の他に客の姿は無い。

道行く人々は2人のことなど皆眼中にない。俯き、速足で往来を行く人々

 

「ここ、お茶も面白くてさ。ほら」

 

美しいガラス細工のポットで茶葉が躍る。透き通ったガラスポットは茶葉によって緑色を見せる。

 

「淹れ方はわかんねーけど。よっと」

 

ジャックは総士にお茶を勧める。

 

「お前は、、どっちに着く?」

 

総士は浮かない顔で尋ねる。

 

ジャックは衣装を見せびらかして笑う。

 

「見りゃあわかんだろ?レジスタンスの連中さ」

 

「…」

 

総士は黙って手元のコップを見つめる。

 

「おい。俺は捕まっても起訴されねえから心配すんな。」

 

ジャックはフリーランス故に交渉材料集めに抜かりが無い。

何があっても家族のもとに帰る手段を持っている。

 

「だが、それではお前の経歴が、」

 

「彼女か!」

 

ジャックは鋭いツッコミを入れる

 

 

「で?お前の方はなんか掴んだか?」

 

向かい合う総士に尋ねる。

 

「いや、まだ何も」

 

「は?まあ、いいか」

 

「とりあえずこの街、なんかおかしくねえか?」

 

ジャックは尋ねる。

 

総士にも言いたいことはわかる。

治安が悪化しているにもかかわらず、街は機能しているように見えた。総士が駆り出されるには少しだけ平和な印象を受けたのだった。

 

「武器が安すぎる。」

 

ジャックは言う。

 

「この辺には工場なんかはないんだぜ?」

 

「?」

 

総士はだから何だと言いたげだった。

 

「…ついて来な」

 

 

 

ジャックは総士を路地裏へ引っ張った。

木箱を漁る男性の背中が見える。

 

「おっさん。なんか武器くれよ」

 

ジャックは木箱を漁るスキンヘッドの大男に大声で尋ねる。

 

「ああ?あぁ、武器か?こいつでどうだ?共通通貨で50でいいぞ。坊主ぐらいのガキは皆これだぜ?」

 

ジャックは総士の方を見る。

 

「な?その気になりゃあガキでも買えるぜ?」

 

ジャックは銃を手に取りスライドを引く

 

「固ってえなこれ。どこから仕入れたんだよ?」

 

「あぁ、知らねえ。卸の連中に聞いてみるか?」

 

仲介もされているのに武器が安いのだ。今の状況では誰もが欲しがる武器が安い

 

ジャックは店主に銃を返すと更に注文する。

 

「いやいい。それよりも拳銃にしてくれよ。小銃なんて使う連中とかいい的だぜ?」

 

「わはは!違いない」

 

総士はなんとなく、ジャックの手が震えていたように見えた。

 

 

 

「毎度ぉ!」

 

野太い声で見送られて路地裏を後にする。

ジャックは自動拳銃2丁と弾薬を2箱買って満足気だった。

 

「フェイトにばれたら目出度く御用だな。」

 

「!おいやめろよ縁起でもねえ」

 

気が楽になった総士はジャックをからかう。

 

「…使うのか?それ」

 

総士は寂しそうな顔でジャックを見る

 

「だから彼女かっての。土産にすんだよ。」

 

ジャックは顔を逸らして歩みを進める。

 

「で?」

 

ジャックは総士に尋ねる。

 

「ああ。確かに妙だな。」

 

総士はいつもただ請負って、戦って、そして帰還していただけだった。ジャックもそうだと思っていた総士は感心する。

 

「お前は仕事前、いつもこんなことをしているのか?」

 

「ああ。情報官様がついてねえからな。」

 

ジャックは皮肉っぽく呟く。

 

「それに、クライアントも揺すれるようになってようやく2流だって教えられたんだ。」

 

「ああ、先輩に教えられたのか?」

 

なんとなく、総士は安心した。

 

「ああ。皆頼りになるぜ。」

 

「、、そうか」

 

 

2人は総士に呼び出しが掛かるまで街を歩いた。

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