※この作品はR-18です。

消し炭の男   作:Christmas

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Green Dayのpeacemakerをイメージして書きました。
PCの方は別タブで聞きながら読むことをお勧めします。


17th Nightmare -6-

ー魔導産業施設 素材加工工場

 

砂漠の渓谷に近代的な工場が建っている

 

魔導素材工場と呼ばれた建物

 

施設には赤いピックアップトラックが複数駐車してある。

 

夕暮れ時の無音の大地に音が割り込む

 

低い音を響かせて真っ直ぐ守衛に突き進む1台のバイク

 

熱に浮かされるように止まらない加速

 

徐々に近づくそれは神秘的な光を宿す

 

乗り手は右手に炎を掲げていた

 

炎は膨れ上がり、対象を喰いつくさんとその身を移す

 

燃え上がる詰所

 

火達磨になった守衛達がよろよろと詰所から這い出る。

 

乗り手は無遠慮に施設に乗り付ける

 

ジャックは詰所の目の前で堂々とバイクから降りる。

 

目の前には建物が2棟、その奥には工場らしき大きな白い建物が1つ

 

彼の周囲には火の粉が舞い上がり逆立つ髪は怒りを隠さない。

 

背後では爆発を伴い空気が鳴動する。

 

右手にはピストル

 

手前の建物のガラス扉を無言で通過する。

 

「!どちら様で」

 

受付の小さな窓から職員が尋ねる

 

「ナナリーはどこだ」

 

目を吊り上げて怒鳴る

 

ジャックは銃床で受付の窓を砕いて職員を引きずり出す。

 

「ナナリーはどこだ!!!」

 

胸ぐらを掴む手を離して顎を肘で殴りつける。

 

「きゃああー!!誰か!!誰かあああああ!」

 

受付奥の職員が事務所の奥へと逃げ込む。

 

見送るジャック

 

「ナナリーはどこだああああ!!!」

 

ドォンドォン

 

薬莢が転がり金属音が響く。

 

火の粉をまき散らす彼の瞳孔は開ききっている。

 

ナナリーはどこだと訪ねて回る。

 

扉を見つけ次第蹴破るジャック

 

破壊を繰り返すたびに衝動が強くなる。

 

一層吹き上がる火の粉

 

怒りを知らしめるために扉を蹴る脚に力が籠る

 

愛した女を想うたび、彼の消し炭の心は燃えがる

 

奴らを殺せと衝動が押し寄せる。

 

復讐を

 

甘美な復讐を

 

ジャックの心は愛と憎悪に燃え上がる。

 

炎をまき散らす彼の進む先々で銃声が闇夜に木霊した。

 

 

 

施設を必要以上に破壊して進む

 

壁も扉も階段も

 

報復のために破壊する

 

怒りを伴い破壊の限りを尽くす。

 

近づく破壊はその場の者を恐怖させる

 

扉を開けながら長い廊下を歩くジャック

 

「そこまでだ!!!」

 

6人の武装した警備員が駆けつける。

 

彼らの持つ小銃は魔笛となってジャックの炎を焚き付ける。

 

一人が左手を上げて指示をしようと目配せする。

 

その先には5人の男の頭部が地面に転がっている。

 

誕生日ケーキのロウソクのように直立して血を吹き出す。

 

ぱたりぱたり

 

「ナナリーはどこだ」

 

ジャックはショットガンを拾うと男の口にバレルを突っ込む

 

「あぐ、うううあ、あ」

 

「ナナリーはどこだああああああああああ!!!」

 

ザクロのように裂けて飛び散る血液

 

返り血で黒く染まるジャックは奥の建物へ進む。

 

死体からグレネードをむしり取った。

 

復讐の炎が身を焦がす。

 

愛した女を想うたび、彼の消し炭の心は燃えがる

 

奴らを殺せと衝動が押し寄せる。

 

復讐を

 

甘美な復讐を

 

響く銃声は途切れることなく続く

 

 

 

大きな金属扉は閉ざされている。

 

バリケードで固められていた。

 

炎で溶かされた扉の隙間を覗くと長テーブルや食器の返却口が見える。

 

職員が狂ったように保安署へ連絡を入れる声が聞こえる

 

奥には怯えた表情の職員たち

 

発砲音や爆発音に怯えて縮こまり、震える瞳でジャックを見上げる

 

「俺の奢りだ」

 

そう言うとジャックはグレネードを投げ込みその場を後にする。

 

ころころと甲高い音を立てて球体が奥へ奥へと転がり込む

 

早く来てくれと保安所に叫ぶ声が一層声を大きくして続く

 

グレネードに気づいた者の甲高い叫び声が聞こえる

 

炎と無数の破片が吐き出され食堂は血に染まる。

 

ジャックは服の裾を焦がして次へ進む

 

食堂からは音が消えた。

 

報復を

 

報復をしろと炎のように焚きつける

 

愛した女を想うたび、彼の消し炭の心は燃えがる

 

奴らを殺せと衝動が押し寄せる。

 

復讐を

 

甘美な復讐を

 

食堂から這い出る職員の頭を打ち抜く銃声が響く

 

 

 

「ナナリーはどこだああああああ!!!」

 

ジャックは天井に向けて発砲する

 

薬莢が転がり金属音が響く

 

手近な扉を開ける。

 

民兵が身を寄せ合う。

 

奥には薄緑の液体で満たされた巨大なガラス容器

 

まるで林のようにそびえるそれは規則的に並んでいる

 

民兵たちは震えながら自分は違うと言いたげな表情でジャックを見つめる

 

ふるふると首を横に振る彼ら

 

ドウンドウンドォン

 

薬莢が転がり金属音が響く

 

「ナナリーはどこだ!!!」

 

扉を蹴破る

 

薬品の香りがつんと鼻をつく

 

拘束椅子に縛り付けられた病院着の人間。

 

頭の蓋を?がされてむき出しの脳に電極がたくさん繋がれている。

 

虚ろな目はやや上を向いている

 

紫色の口は半開きのまま力なく動きが無い

 

乾燥した頬は放置された時間を物語る

 

おぇぇぇぇええ!

 

ジャックは吐瀉物で衣服を汚す。

 

「ナナリーは、どこだあああ!!!」

 

否定するように

 

「ナナリーはどこだ!!!」

 

こいつはナナリーではないと言うように吠える

 

薬莢が転がり金属音が響く

 

「どおおこなんだああああああああああああああああああ!!!!!」

 

上空向けて怒りを放つ。

 

愛した女を想うたび、彼の消し炭の心は燃えがる

 

奴らを殺せと衝動が押し寄せる。

 

復讐を

 

甘美な復讐を

 

彼は空に向けて発砲を繰り返す。

 

 

 

 

 

ー白い工場

 

建物を蹂躙しきったジャックは最後に工場を訪れる

 

先ほどまでの建物は食堂や事務を担っていた。

工場には職員がいないのか静かだった。

 

稼働を止められた工場のラインが奥深くまで続く。

 

人影はない

 

ジャックは奥の区画へ移動する。

 

機械油の臭う暗い金属製の階段を上る

 

カツンカツン

 

機械類は停止し、人間が見当たらない工場では移動音が目立った。

 

「?ここは」

 

階段を上った先の区画は電力が通っており、内装も趣が異なる。

 

武骨な工場ではなく塗料で白く染められた長い廊下

 

無臭の空間が長く伸びる。

 

ジャックは廊下を赤い足跡で汚した。

 

搬入口だろうか、観音開きの巨大な扉が先にある。

 

ジャックはそっと扉を開く

 

扉は見かけによらず重い

 

何かを閉じ込めるような造りの扉の奥

足元に窪んだ床がある。

 

両サイドには隔壁が待機している。

 

いざというときには2重扉が機能するようだ。

 

ジャックは扉をくぐって開けた空間へ進む。

 

荷物をここにまとめるのか、部屋の両側には扉がいくつもの取り付けられている。

 

さらに空間を進む。

 

天井は高く、ガラス張りのアリーナ席のようなものがある。

 

作業の監督でもするのだろうか。

 

 

避難経路を示すランプが薄暗い空間で自己主張する。

ランプのジジジと言う不規則な音とジャックの呼吸

 

そして背後では隔壁が機能した。

 

「!」

 

閉じ込められる。

 

突如室内に明かりがつく

明かりに目がくらみ目を庇うジャック

 

『何かお探しかね?』

 

いやらしく笑う声が部屋に響く

 

「?誰だ!」

 

ジャックは周囲を見渡す。

 

『上だよ。侵入者君』

 

「!テメエは…!!」

 

火の粉が濃密に膨れ上がる

 

亡霊が囁く。

 

殺せ

 

奴を殺せ

 

殺さねばお前を愛さない

 

殺さねばお前は我らの子孫ではない

 

愛と憎悪に膨れ上がる復讐の炎

 

忘れもしない。

 

村を襲ったカーキの男

 

「テメエエエエ!!!!!許さねえ!!ふざけんなぶっ殺してやる!!!」

 

目を見開き、髪を逆立てるジャックは見上げて吠える。

 

ガラスの向こう側の男は仕立ての良いスーツを見せつけるようにのけぞって笑っていた。

 

『っわはっは!何だね?誰だ?何せ覚えが多すぎてな!!はっはっは!!!』

 

『まったく!どの時の生き残りかね?堪らんな!!!よく来てくれた。がはは!!!』

 

「!テメエェェェェェ!!!!」

 

ピストルを向けて乱射する

チャンバーへと口寄せされた弾丸が箱から次々と吸い込まれていく

 

ビシビシと音を上げるガラス

 

とうとう箱が空になりピストルはスライドを引いたまま停止した。

 

バレルは過剰な発砲に耐え切れず白煙を上げている。

 

ガラスは依然きれいなまま

 

『はっはっは!もう終わりかね?』

 

「そう簡単に終わらせるかよ」

 

悪辣に笑い、腹の底から呪詛を吐くように呟く。

ゆっくりと槍を握るジャック

 

もはや彼には殺意しか残らない

 

『おっとそういえば誰かを探しているようだったな!!どれ、私が協力してやろう!!がははははは!!!!!!』

 

『扉を開けろ!!!』

 

男が命令する

 

「!」

 

辺りの扉が一斉に開く

奥から歩いてくるのは探していた赤い髪、病院着の女

 

ナナリーが10人、ジャックをゆっくりと包囲する

 

「じゃっく」

 

「じゃっく」

 

「じゃっく」

 

『わははははは!!!さあ!君が探しているのはどのナナリーかね!!好きなものを選んでいいぞ。どれも一緒だがね!!がははははは』

 

ジャックは1人1人見る。

誰を見てもナナリーに違いない。

 

「!なんで。どういうこった!!」

 

「「に、げて」」

 

彼女たちはよろよろと歩きながら何かを訴えかける

 

「「逃げて!」」

 

首から上が一斉にサッと動き叫ぶ

 

『出力を最大にしろ!!』

 

男が指示するや否やナナリーたちはびくりと身を震わせる。

 

動きを取り戻したナナリーたちは一斉に飛び掛かり

 

どぱぁん!!どぱぁん!!どぱぁん!!

 

次々と目の前で爆散する。

 

ジャックの足元に血糊と指や耳朶が飛来する。

 

『がははははははははははは』

 

もはや火の粉ではない。彼の周囲は火が揺らめく

 

「があああああああああああああああああああ!!!!」

 

『ああ!お前はあの時の炎使いか』

 

ジャックは陽炎の向こうから叫び声を上げて壁を駆け上がる

 

「殺す!!!!殺してやるぁぁあ!!!!!!」

 

『ガルアーノ様、転送の準備が整いました。』

 

槍を振るい、ガラスを消し飛ばす。

 

その向こうには

 

誰もいなかった

 

「うあああああああああああああああ」

 

コンソールも紙媒体の資料も巻上げ燃え上がる。

 

ごごごごごご…

 

微振動が伝わる。

 

「!っちくしょう」

 

お決まりの証拠隠滅の自爆が始まっている。

 

そう判断したジャックは悪態をついて工場を脱出する。

 

 

 

ー守衛前

 

ジャックはバイクにまたがり崩れていく施設を見守る。

バイクのエンジンの振動か

 

それとも崩れる施設の爆発音か

 

ナナリーの命は弄ばれた。

尚且つ仇を目の前にして取り逃がした。

 

冷たい夜風は傷ついた心に沁みた。

 

ジャックの心を温めてくれるのは一定のリズムを刻むバイクだけ

 

 

 

『ジャック!』

 

「…」

 

バイクにまたがり放心していると総士からの通信が入る

総士はテント村にいるようだ。

 

ジャックは答えない

 

『見ろ!見つかったぞ!』

 

総士は嬉しそうにレリックを見せる

 

総士がカメラの向きを変える。

 

はにかんだ赤髪の少女。

 

民族衣装の上に武骨なロングジャケットを着ている。

 

「!ナナリー?ナナリーなのか!!どうして!」

 

『お前のお土産が役に立ったんだよ』

 

ナナリーは必死に拘束から腕を引き抜いたのだった。

彼女は血だらけの右手で発砲したのであった。

 

『悪いが切るぞ。これから提督と交渉だ。』

 

 

 

ーテント村

 

総士は充実感を覚える。

 

成長を実感する。

 

自分で考えて行動した。

経験豊富な者を頼り、隠されたキーアイテムを押収

誘拐された少女を救出した。

 

魔導砲が撃たれなければジャックと2人で土下座をして回らないといけないな

そう思いながら小さく笑う。

 

でも悪くないかもしれないとも思う。

 

全力で捜査をして

ドタバタして

言われた以上をやってのける自分のなんと格好いいことか

 

言われた通りの仕事をこなして恨まれ、戸惑っていた自分のなんと情けないことか

 

総士は自らを満たす未来にまるで心に風が通るような穏やかさを感じた。

 

 

「提督。織村陸曹です。直ちに魔導砲の発射の見送りを要求します。」

 

総士は直球で要求する。

自らの成果は後回しにした。

 

『!無理だ。現在エネルギーの充填が完了している。貴官はそのまま退避しろ。』

 

「!提督。この通りレリックを」

 

『馬鹿者がッッ!!!たったの1つではないか!!まだ残っていたらどうするのだ!!!我々が守るものはなんだ!!!!次元世界の平和が我々共通の理念だろう!!!寝ぼけたことをいうもんじゃあないぞ若造が!!!』

 

「あ、」

 

激昂する提督

 

モニターの向こうでは準備の完了を告げる声

 

空が白む

 

『貴官はしばらくそこで反省をしていろ!!!』

 

怒りとともに通信が切られた。

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