※この作品はR-18です。

消し炭の男   作:Christmas

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幕間1 汝の名は女

ー地球 ジャックの自宅

 

休日だが家族たちは仕事で不在のある午前中

 

ジャックは初夏の陽気の元で届いた荷物に打ち震える。イケナイことしている気分にドキドキする。

 

彼のイケナイ行動を咎める家族は不在だ。

 

 

ジャックはフリーランスの魔導士として依頼を受けている。

受注も納税も今ではほとんど1人で行っている。

そのせいか前回は金額に騙されて過大な依頼を引き受けてしまった。

 

しかし得たものは大きい。

前回の報酬には色をつけられていた。

目標金額へ一気に近づいた。

 

貯金はいつかクラナガンに定住をしたいという彼女のため

 

実はジャックは家を建てるための資金を稼いでいるのであった。

 

目標金額に近づく通帳を見ると、ほんの少しなら

と浪費心が目を出す。

 

散々世話になったのにバイクの世話をしていない

 

思い浮かべるのは電装が貧弱な彼の愛車

 

ヘッドランプの明かりが弱いような気がしていた。

もし、都市部で走ることになったら。

もし、対抗車両が気づかず迫ったら

もし、行き届いた世話をされた同型の車両が信号待ちで並んだら

 

ちょっとだけ

 

ヘッドランプを変えるだけ。

 

大丈夫。

安いから大丈夫。

多分自分でできるから。

誰にも触らせたくないから。

 

 

「これ、か?案外簡単だな」

 

庭先に止めたバイクの正面で恐る恐るボルトを外していくジャック

 

「わ、これ戻せるのか?」

 

カバーから漏れる配線に焦る。

 

「あ、取れた」

 

カバーと配線が離れた。

 

「おお。」

 

ソケットで再度接続して感動するジャック

 

「55W?使えんのかよ。」

 

交換したものは元の装備と少し違うようだった。

 

迷いなくカバーを戻し、正面から確認する。

ライトカバーの黄ばみが気になりだす。

 

「…これでいいのか?」

 

エンジンを掛けないとわからない。

しかし自分がエンジンを掛けているところを見られるとまずい気がする。

イケナイことが誰かにばれる気がした。

 

「明るいしなあ」

 

本当は夜が良いけど仕方がないとジャックはセルを回した。

 

「あの。」

 

とでも言うように息を吹き返す

 

どどどどどというエンジン音には懐かしさを感じる。

 

「おい。」

 

いそいそと優しい顔で正面に回るジャック

 

「おお!眩しい!!」

 

ヘッドランプからは眩しい白い光。

ジャックは興奮してデバイスを取り出す。

 

オイルタンクに肩を回し、恋人との自撮り2ショットのような格好でシャッターを切る。

 

「はやてに言うよ?」

 

カシャー

 

2つ折りの携帯電話を持ったフェイト・テスタロッサが冷えた目で見下ろす。

 

 

 

「それで?何の用だ?」

 

最も見られたくない人物に遭遇し気落ちしたジャックは泣く泣くエンジンを切った。

 

「依頼。フリーランスのくせにドキュメントの確認もしないの?」

 

「ちっ」

 

悪態をつくジャックはデバイスを操作する。

フェイト・テスタロッサの指示に従うつもりはないがプレシア・テスタロッサの電撃が恐ろしい。

 

「俺は仕事はきっちりこなすつもりだ。」

 

モニターをスクロールさせるジャックは冷めた目線に無表情を返す

 

「内容さえちゃんとしていりゃあな。」

 

嘲るような顔でフェイトからの依頼を表示する。

 

「?ダダこねると母さんに言うよ?」

 

弱みを突くフェイト

ジャックも負けていない

 

「じゃあ聞くけどよ。確かにガサ入れの経験はグレアムのとこでみっちり積んだぜ?だから知っているんだが、こういうのは事前の準備が必要なんだ。」

 

「くどい。さっさとして」

 

お前と問答したくないとフェイトは先を促す。

 

「…デジタルデータぶっこ抜けって言うけど通信規格が分かんねえなら無理だ。何だ?お前俺に手ぶらで行けってか?」

 

「…」

 

フェイトは黙る。

 

「大体なあ、こういう仕事はフリーランスの人間に頼むもんじゃあねえよ。お前らには情報担当官様がいるじゃあねえか。」

 

「…」

 

フェイトは黙る

 

「それにお前、位置情報以外にも建物の見取り図とかも無えのはなんだ?俺を迷子にしてえのか?ああ?」

 

「…」

 

「…」

 

悔しそうに歯を食いしばるフェイト

冷汗を流すジャック

 

「いや、しかし。あれだ。その…よくわかったなこんな辺鄙な所の工場なんて。流通網から辿れそうにないのにな。お前すごいな!さすが執務官。今のうちに恩を売っとかないとな!ははは…」

 

「…」

 

フェイトは動じない。

焦るジャック

 

「いや、でも実際よく見つけたもんだな。お前が始めたヤマか?」

 

「…」

 

こくんと頷き涙を拭ったフェイトは静かに言う。

 

「資材の生産と在庫…」

 

「?それだけじゃあ何もわかんねえだろ。」

 

フェイトはふるふると首を横に振る

 

「釣り合わなかったから」

 

「あ?」

 

ジャックには話が見えてこない

 

「出荷と」

 

「え…」

 

フェイトは世界中の生産、出荷のモニターを行って需給の差異を見つけ出したのだった。

だから分かったのは恐らく兵器工場であること、そしてその場所だけ。

 

動かせたのは身分の無いフリーの魔導士

 

「化けもんかよ…あんた普通じゃあないぜ?」

 

「…普通にしてたら逮捕できない奴もいるって知っているから」

 

フェイトはジャックを睨みつける。

 

かつて問答無用に襲いかかってきたジャックを睨みつける。

 

「…」

 

ジャックは無言で両手を上げた。

 

 

 

ー管理外世界 仮称:工場外壁

 

上から確認すると真っ平な施設

均一に続く外壁はなんとなく堅そうだ。

無機的なで非常にシンプルな造りの施設には送電盤も見当たらず、凹凸が無い建物はケーブルの存在を悟らせない。

 

『おいおい。こいつはやばいやつなんじゃあねえのかよ?』

 

オプティックハイドで隠れながら、ジャックはフェイトに相談する。

 

『流通誤魔化してる上に建物の構造が警戒心丸出しじゃねえか。悪いことは言わねえ。引き返そう』

 

『大体捜査とは言えあの手の施設にたったの2人は無茶が過ぎるぞ!』

 

『黙って』

 

ジャックは依頼主に逆らえない

 

『…了解。だが、やばくなったらお前さん連れてさっさと帰るぜ?』

 

そう言ってジャックはフェイトの肩を軽く叩き、壁に向かう。

 

『!触らないで。はやてに言うから!絶対に!』

 

『はいはい』

 

ジャックは面倒くさそうにチャクラを流して内部の探知を始める

 

『!そうだ。母さんにも言うから』

 

『それは困るなあ』

 

ジャックはそう言いながらフェイトに建物内のデータを渡した。

 

『人間がいねえ。本格稼働前の今なら何とかなるかもしれねえ。お前マジでお手柄もんだな』

 

『…それなら今回は情報をデジタル情報を抜くだけ。突入する時にはあなたのことも呼ぶから。』

 

『はああああ。はいはい』

 

ジャックは肩を落としながら壁沿いを歩き、マンホールを下りる。

地下通路にあるケーブルの繋がる箱を破壊してハブの差込口を確認する。

 

(?…なんだこりゃあ)

 

時間が無い上に援軍も無いので素早く切り上げるジャック

 

 

 

ー地球 翠屋

 

2人は一旦地球へ帰還した。

 

「それで、どうだったの?」

 

執務官の制服姿のフェイト

 

「ああ。おめでとう。当たりだよ」

 

機械油と埃で汚れたランニングシャツとハーフパンツ、裸足にサンダル姿のジャックはテーブルに相席する。

 

「抜いたデータを渡しとくぜ?オンラインの端末で開くなよ?どうなるかわかんねえ」

 

頷くフェイト

 

「あと、個人のメイン端末にも極力移さない方がいい。」

 

「…それで?」

 

どうだったのかと尋ねるフェイト

 

「ああ。お前の言う通りだ。兵器工場だろうな。稼働前の」

 

「?稼働前」

 

頷くジャック

 

「ドキュメントばかりだったし、送信先がJSとかの伏せ字が多くて意味がわかんねえことばっかりだが、恐らくは稼働の準備についての指示だろうな。」

 

「これで戦闘にならずに検挙できれば一躍局内の有名人だな?」

 

からかうジャック

 

「…別に嬉しくない」

 

すこし照れるフェイト

自力で調べ上げたので例えジャックからでも褒められて悪い気はしなかった。

 

和らぐ雰囲気にジャックは背もたれに体を預けた。

 

「さ、仕事は終わりだ。」

 

「?」

 

フェイトはきょとんとした顔でジャックを見る

 

「おいおい仕事!俺は仕事として手伝ったんだ!報酬はしっかりもらうからな」

 

フェイトはああそのことがあったかと口を開く。

 

「言ってなかったけど、報酬以外にも母さんがジャックにって、これ。仕事仲間のお土産だって。」

 

モニターに映されるのは使い込まれた大型の3輪バイクが3台

 

「ジャンク品だから部品取りにするといいって」

 

ジャックは高鳴る胸を抑える。

 

「好きでしょ?男の子って、こういうの」

 

微笑むフェイト

 

彼は、フェイトもこんな顔するんだなと思うのであった。

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