※この作品はR-18です。

消し炭の男   作:Christmas

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Dying in vain -2-

ー第8管理世界 転送ポート

 

総士は結局レジアスの下に就いた。

連絡や手続きは一切していない。

それを理由に解雇されてしまえばかえって好都合だった。

 

「こっちも冬か」

 

第8管理世界、転送ポートのある首都ナーガの現在の季節は冬。

運のいいことに周囲の惑星の造りは地球と酷似している。

 

しかしナーガの公転軌道と他の惑星の公転軌道、恒星との距離の都合上季節や昼夜の寒暖差は地球の比ではない。

そこで現地では岩をくりぬいたような建築形式を発展させてきた歴史がある。

 

ナーガを上から眺めるとそこにはまるでただ荒野と道路しかないように見える。

しかし実は、荒野にある小山に見える構造はすべて建築物である。

 

総士はこの地独特の赤茶けた壁の列挙する街へ降り立ったのだった。

 

「さて、社会と言ってもなにを見れば…?」

 

そうつぶやく総士の目の前には平日の朝の首都というのに人間があまり多くない。

クラナガンの住民が見れば間違いなく首都とは思わない光景だった。

 

道路脇の武骨な車が哀愁を誘う。

 

第8管理世界は工業で名を馳せた世界だ。

特にナーガで生産される部品は精度が高いことで知られる。

 

魔導デバイスに限らず多くのアーティファクトの生産を支える工業国だったはずだ。

 

「なのに…」

 

その工業国に人間が見当たらない。

ロボットばかりの街を期待したが建物と街並があるだけだった。

 

 

 

総士は腹ごしらえと情報収集を兼ねて食堂を探した。

 

「ここ、やってますか?」

 

「おう。すわっていきな」

 

厳めしい老人の店主が小粋に返した。

 

「お客さん外の人だね?」

 

それなりに名が売れていると思っていた総士は面食らう

自分のことも知らないのかと

 

「え?ええ。よくわかりますね?」

 

「ここの人間ならすぐにわかることさ!どこの世界だ?」

 

途端に態度を崩す老人。

自分の身なりに変わったところが無いか探す総士

 

「本局で勤めています。」

 

「はああ。若いのに立派だねえ。」

 

「いえいえ、大将には敵いません。」

 

「ははは!嬉しいことを言ってくれるね」

 

総士はカウンター越しに老人に尋ねる。

 

 

 

「初めて来たんですが、ナーガには人が住んでいないんですか?」

 

「いやな、昔はそれこそごった返していたよ。」

 

「?失礼ですがそんな風には見えませんね」

 

総士は疑問を返す。

 

「誰でも年をとるもんさ」

 

老人はそう言って笑う。

 

「?ではもう」

 

「勝手に殺すんじゃあない!うちらはロボットテクノロジーのおかげで医療水準も高い。みな生きとる」

 

なるほどと総士は納得する。

 

「では、若い人は?」

 

「ん?なんだ兄ちゃんナンパか?」

 

老人は総士をからかう

 

悲しそうな顔で

 

「違います。ただ、余りにも人間を見かけないもので」

 

「ははは!悪いね冗談さ。…若え連中のほとんどは施設さ。」

 

「?ここは工業国では?」

 

またも疑問を返す総士

工場とかどこかの企業ではなく施設という言葉が引っかかる。

 

「そうさ。だが今じゃあ産業は全部ロボットに働かせてんだ。昔気質の職人なんざいやしねえ」

 

老人は吐き捨てるように言った。

 

「では、まさか本当に?」

 

「ああそうさ。ロボットは機械の面倒を見れるが話し相手は務まらんだろう?」

 

「!まさか」

 

「…ああ。残念だがね」

 

第8管理世界の現実

 

「そうさ。若い連中は全員奴隷だ。」

 

 

 

老人は粛々と狂った現状の経緯を伝えた。

 

「いつ頃だったかな。社会的な弱者を救済するってんで俺たちに権利を確約するって奴らが台頭し始めたんだ。」

 

「そりゃあ俺たちは大賛成したもんさ。職を失っちまえば明日も無い身だ。それに厳しい気候のこの星だろ?皆後ろ盾が欲しかったのさ」

 

「なるほど」

 

総士は頷く

 

「こぞって投票したもんだよ。誰もが幸せな社会を想像したね。」

 

社会的な立場を保証してもらえるのだ。

自身に何かあっても守ってもらえるのならば賛成もする。

 

「勢いがあったもんであいつら一気に国政を牛耳ってな?」

 

「あいつら、ですか?」

 

「ああ。今の政権与党の連中さ」

 

それでな?と老人は続ける。

 

「味を占めたのか、あいつら老人に媚び始めたのさ。何でもかんでも高齢者様って具合にな」

 

「しかしそれなら」

 

堪らず問う総士

 

「ああ。若い奴らは勿論選挙の時には大反対したもんさ。陰では息苦しい世の中を作る連中に抗議してたよ。あくまでも陰ではな。大人しいのさ。あいつらは」

 

「でもって俺たちは絶対数が多いもんで若い連中の意見を潰しちまったのさ。だってそうだろ?誰でも自分を優先してくれる連中を応援するさ。」

 

「確かに、仕方がないのですかね?」

 

同意する総士

 

「ああ。だがな、さらに狂ったことが起こり始めた。」

 

「ある高齢者を転ばせちまった若え男が自殺したのさ。なんでかわかるかい?」

 

尋ねる老人

 

「その状況ですから、彼の家に抗議が?」

 

「いや。ここの老人連中もそこまで腐ってはいねえさ。」

 

老人は否定する

 

「では、何が?」

 

「賠償と医療費の請求だ。社会的弱者への加害ってことで一生働いても返せない額を請求されたのさ。」

 

「!まさか!」

 

驚く総士

 

「いや、確かに医療費は高いんだ。高齢者ならそれから一生の入院生活だからな?だがおかしいのはここからなんだ」

 

身を乗り出す総士

 

「返す見込みのない男に対して裁判所が命じたのは無期限の介護奉仕さ。もちろん外になんか出られやしねえ。一生な」

 

「!そんな馬鹿な。」

 

暗い顔の老人

 

「馬鹿な話が起きてんだよ。実際な。外の連中には分からねえだろうな。産業はロボットがやってんだ。産業国に観光客が来るわけも無し、わかるわけがねえよ。」

 

「そんな…」

 

「それからは早かったな。ガチガチに固められた若えの達は結局奴隷のような身分で働くことを義務付けられたよ。」

 

「!で、でも子供は?子供はどうなるんです?」

 

余計に表情に影を落とす老人

 

「親が世話できるわけねえだろ?勿論施設に集められるのさ。」

 

「!まさか」

 

「ああ。それも奉仕活動するのさ。肉体労働じゃあないぜ?演劇とか遊戯とかをさせるらしいぜ?そうしたらな?勝手に高齢者の世話を義務だと感じ始めるらしいんだ。」

 

「なんてことだ…」

 

ひきつった顔で老人は続ける。

 

「まだあるんだぜ?結婚出産するだろ?施設には若い男女がいるわけだからな?その子供、どうなると思う?」

 

「…」

 

総士は聞きたくないとばかりに首を横に振る

 

「引き渡されちまうんだよ俺たちに!ペットみてえにな!!!」

 

「!…」

 

総士はがっくりと肩を落とす。

こんな世界を見せたレジアスを恨む。

 

 

 

「どういうことだ!!!」

 

店を出た総士はレジアスに通信を繋いで怒鳴りつける

 

『口を慎め織村。今日から私はお前の、上官だ。』

 

冷めた目で見下すレジアス

 

「くっ…申し訳、ありません。」

 

『声が小さいぞ。年でも食ったのか?』

 

「!!申し訳ぇぇ!!!御座いませんでしたッ!!!」

 

総士はモニターに怒鳴りつける。

 

「中将!この現状は何ですか!なぜ!こんなものを見せるのですか!!」

 

『ふむ。やはり何かあったか。報告しろ。いつまでもガキできると思うな。』

 

総士は吐き出すように報告する。

この国で起きている異常な事態を

 

『なるほどな。で?』

 

「?でとは何ですか!!我々に一体何ができると言うんですかッッ!」

 

激昂する総士にイラつくレジアス

 

『お前は鳥か何かか?それとも私を上官とも何とも思っていないのか?』

 

「?なんの話しですか」

 

総士は問う

 

『はぁああ…2度言わせる馬鹿がどこに居る。裏をとれ。そう言ったはずだがな。』

 

「!あ、」

 

『あ、ではないわあああああ!!!!さっさと行かぬか!!!この租チンの包茎野郎ッッ!!!!!!』

 

総士は慌てて通信を切った。

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