※この作品はR-18です。

消し炭の男   作:Christmas

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Dying in vain -7-

女神像が破壊された上に警備システムを上書きされたことでナーガの治安維持システムは破綻した。

 

もともとロボットスーツを警備用のAIに直結することで自動的に維持されていたからだった。

 

当然治安だけではない。施設の警備も同様だった。

 

介護施設などの維持管理はすべてロボットスーツで行われていた。

この星には狂ったシステムに従う人間はいなかったからである。

 

結果、ロボットスーツの老人たちは強制の勤務から逃れて街へ流れた

それを見た若者たちも今が好機とばかりに施設から脱走したのだった。

 

街の至る所で破壊行動が見られた。

 

 

 

「おい!ジャック。いつまでそうしているんだ!」

 

ジャックは仇討を果たしてからその場を動かない

総士がジャックの肩を揺らす。

 

「しっかりしろ!」

 

総士はジャックを平手打ちする

 

「!総士」

 

見上げるジャック

 

「しっかりしろ!今この暴動を抑え込めるのは俺たちだけだ!システムの復旧を急ぐぞ!」

 

「あ、ああ。任せろ。今復旧する」

 

慌てて端末を操作するジャック

 

彼は知らないかもしれないが街では命が消え始めていた。

 

「悪い。なんか一気に疲れちまったみたいだ」

 

「いい!その代り何度だってぶってやる。」

 

総士は憮然とした態度で断言する。

 

「とりあえず街に出よう。今まで抑圧されていたんだ。若い奴らがロボットスーツを持ちだしたら取り返しがつかない!」

 

「ああ。…行こう。総士」

 

 

 

「お前らばっかりいい思いをしやがって!どうせすぐにいなくなる世代だろ!未来を散々食い物にしやがって!」

 

若い人間達が老婆に石を投げる

 

ロボットスーツを来た爺が老婆を庇う

 

「やめんか!ワシらは法律に従っただけだ!お前さんたちも含めて投票したじゃろう?」

 

老人は立ち向かった

 

「あんな選挙インチキに決まっている!どうせいくら投票しても俺たちは!」

 

石を投げるのを止めない

 

「かー!まさか投票もしとらんのか!あんたたちは!ワシらが国に意思を示す数少ない手段じゃぞ!?」

 

驚き、動きを止める爺

 

「!い、忙しいんだ、直接出向かなきゃあいけないなんて制度が悪い!」

 

「そうよ!投票のルールが私たちの生活に合っていないんだわ」

 

そうだそうだ社会が悪いと抑えつけられていた不満を吐き出し、何故か老人に悪意をぶつけ始める

 

「かー!この人に石を投げる理由にならんわ!」

 

息を巻く老人

 

「うるさい!偉そうにしやがって!お前の乗っているそれは、俺たちが稼いだ金の塊だぞ!」

 

そうだそうだと更に勢いづく

 

「先の短いあんたみたいのに金が使われていい訳がない」

 

「私の赤ちゃんを返して!!」

 

「老人の保護なんか止めちまえばいいんだ!」

 

老婆を守る老人

 

必死に何かを守る若者たち

 

混乱は止まらない

 

 

 

「おい、ジャック!システムは!?」

 

街の上空を飛ぶ2人目指す先はヤスオの家

 

「動いてる。だけど連携していたのは主要な部分だけだ。それ以外は女神像を壊したから追いつかねえ!」

 

女神像を破壊したことが仇となった。

治安維持活動を強制されなくなった老人たちは無秩序に街を歩く。

彼らを避けるように上がる黒煙

 

総士は眼下の惨状に顔を顰め、自分にできることは無いかと逡巡する。

 

『織村!!』

 

「うわっ」

 

驚くジャック

レジアスから通信が入った

 

『織村、すぐにウチの連中が現地入りする。』

 

「ぁん?…まさかあらかじめわかっていたのかよ?」

 

「!」

 

ジャックの呈した疑問に怒る総士はレジアスを睨む

 

『それもあるが、織村の報告を使ったのだ。その日のうちに派遣は決定させた。』

 

おかしいと噂があっても今まで誰も動けなかった。権力を逆手にとって動員を抑える勢力がいたためだった。

潜入して口実を提示したのは総士の手柄だ。

 

敵対勢力の有力者が阻んだが所詮は肩書だけの人間相手だ。

内情の問題さえ報告されればレジアスの思惑通り進んだ。

 

『明日、直接報告に来い』

 

2人の周囲で次々と局員が暴動の制圧に掛かる。

 

結局、社会の混乱に対して、彼らは何もできなかった。

 

 

 

ーヤスオ宅

 

「!急ぐぞ」

 

ジャックはヤスオ宅前の荒らされた様子に焦る

 

仇討の成功を報告するまで無事でいてくれと急ぐジャックと総士

 

「爺さん!」

 

食堂へ入ると

 

ヤスオは、散乱した食器をかき分けるように血溜まりを作って倒れていた。

壁に背を向ける大人しそうな3人の男と目が合う。

 

誰が何をしたのか状況が語る。

彼らはわざわざ介護用ロボスーツを持たないものを選んで老人に復讐をしたのだった。

 

チリチリ

 

火の粉が漏れる

 

「!ジャック、それよりも爺さんは!?」

 

ジャックははっとして駆け寄る。

 

ヤスオは苦痛に目を見開いたままこと切れていた。

さぞ、無念であっただろうと察せる表情だった。

 

「うぅっ…爺さん」

 

ジャックはせめて安らかに、と老人の瞼を降ろした

 

ようやく恨みを晴らせたというのに、あんまりだ。

ジャックは涙する。

 

「…っお前ら!!」

 

総士は3人の男を睨みつける

 

「ひっ俺じゃあない!俺が殴ったときはまだ動いてたはずだ!!」

 

「違う!違う違う」

 

「!お前が一番!」

 

情けない若者たちは罪を擦り付け合う。

 

力無く肩を落とす総士とジャック

 

こんな人間のためにあなたは立ち上がったはずじゃあないのにと

 

「お前えら!!!この人は、この人はなあ!お前えらのことを助けてやりたくって!一人ぼっちになってもここで俺に助けを求めて来たんだ!!!」

 

激昂するジャック

 

「「「…」」」

 

居心地が悪そうにする3人

自分たちに責任は無いとでも言いたげだった

 

「爺さんだって!!この国の被害者なんだぞ!!!」

 

彼は息子の命を国に奪われ、

敵討ちを依頼したのだ。

 

ジャックは涙が止まらない

 

「今までたったの一人で戦っていたんだぞ?自分たちの世代に責任を感じて、あんた達の未来のために!!!」

 

友達の死体を弄ばれても逃げ出さず、

自らの世代の過ちに気が付き、彼は行動に移したのだ

上手く言うことを聞かない体を呪いながら

 

「なんとも思わねえのかッッッ!!!!!」

 

「「「ひぃ」」」

 

彼らはただただ情けなく、怒鳴るジャックに怯えるだけ。

殺さないでくれ。と無表情で立ち尽くす総士に助けを求めるのだった。

 

ああ、爺さん。

せめて俺たちだけはあなたの意志を忘れない。

ジャックと総士はそう思うことしかできなかった。

 

ジャックは涙を拭かずに総士に言う。

 

「総士、爺さんに墓、つくってやろう?」

 

総士は無言で頷く

 

「息子さんの墓探してよぅ、、2人に、いい墓、つくってやろう…」

 

悲しみを噛み潰し、ジャックは言い切った。

 

「っ、、ぅん」

 

総士は声にならない声で同意する。

 

「なあ総士、」

 

総士はジャックに目を合わせる

 

「ちゃんとレジアスさんに報告してよぅ、爺さんの頑張り、無駄にしないようにしてくれ…頼む」

 

ジャックは絞り出すように哀願した。

 

「…ぐっ…ぁあ」

 

総士は歪む視界を空へ向けて、声を返した。

 

 

 

ー管理局地上本部

 

「入れ」

 

命令通り後日総士はレジアスに面会した。

 

「失礼します。」

 

毅然とした表情で入室する総士

 

「鎮圧については目を通したな?これからは局の指導の元、暫定政府が管理を担当する。」

 

「はい。確認積みです。」

 

淡々と返事を返す総士

 

「そうか」

 

そう言って姿勢を直すレジアス

 

「では、答えを聞こうか。あの地で見たことはお前にどう見えた。お前はあの混乱の中何ができた?何を思った?」

 

「はい。自分の未熟さを知りました。おっしゃる通り、知った気になっていたことを自覚しました。今回の任務で、管理局の肩書でしか遂行できない任務の尊さを、実感致しました。」

 

脳裏には無念の死を遂げた者たち

フリーランスの身ではせいぜい1人2人の検挙が精一杯だった。

しかし管理局の介入では大勢の人間を守ることができたのだった。

 

総士はそのことをようやく実感する。

 

「うむ。」

 

神妙に頷くレジアス

 

「辞職の件、配慮していただきありがとうございました。」

 

総士は深く頭を下げ、続ける

 

「自分は、あのような悲劇から民間人を守りたいです!!!受け取った意思を無駄にしたくありません!!次は、自分はどちらへ行けばいいですか!!」

 

苦悩を吐き出すように懇願する

 

「…学べたようで何よりだ。あの老人の件は残念だったが、あの手の悲劇はここクラナガンでも起きている。知っているだろう?人員の偏りが原因だ。」

 

「…」

 

総士は黙って次の言葉を待つ。

 

「休暇を許す。しばらく心を落ち着かせろ。」

 

「!ですが、自分は」

 

慌てる総士。

止まってしまえば老人の意思を裏切ったような気がしたのだ

 

「その意思は絶対に曲げるなよ?織村。まだ先は長い」

 

レジアスの目は力強く総士を射抜く

 

「せめて、貴様にはここまで来てもらわねばな?」

 

とんとんと執務机に指を突くレジアス

 

彼はにやりと総士に笑いかけた。

 

 

 

ーナーガ郊外

 

ジャックと総士は墓参りをしている。

2人で協力してヤスオの息子の墓を聞いて回り、

金を出し合って弔った。

 

目の前には周りの墓石とは明らかに異なる立派な墓が建てられている。

 

墓前には瓶詰にされたガルアーノの肉片

 

「ジャック。あの時俺たちにできたことって何だったと思う?」

 

「…さあな。俺はあれ以外には何もできなかったと思うぜ?」

 

ジャックは手を合わせ、目を瞑った。

 

なおも総士は尋ねる。

 

「俺は、この人達のために今、何ができる?」

 

総士は遠くを見つめて尋ねた

 

「知らねえよ」

 

何を思うのか、ジャックは真剣な面持ちで言い放つ

 

「いつかここに誰も来なくなるのかな?」

 

「多分な」

 

ジャックはそっけなく答える。

 

「そうか、、でもそれでいいのかな」

 

総士は墓石に刻まれたヤスオの名を見つめる。

 

「俺たちだけは忘れない。それだけできっと無駄じゃあなくなるだろうさ」

 

2人はただ、墓石を見つめるのだった。

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