時は過ぎ去り、ジャック達は中学へ進学した。
エスカレーター式に進学した彼らは共学制から男子校と女子高に別れた。
変わったのは学業だけではなく住まいも変わった。
八神家の面々は管理局に勤務している。
地位を確立するほどに、住まいが地球にあると通勤や家族の時間の減少が負担となったのだ。
そのため八神家は勤務を優先してクラナガンに居を構えたのだった。
卒業後は進学を考えているジャックも主にはここから旧邸へ転移してから登校している。
そんな彼の悩みは数年前に解決した。
復讐は自らの問題で死んだ誰かの弔いの手段として彼が選び取ったものと認識を改めたのだ。
そう認識するとフラッシュバックに苦しむことも減ったのだ。
仮に仕事の都合で離れる日があろうとも夢で魘されることは減った。
彼は少なくとも自らの過ちを受け入れる覚悟はできそうだからだった。
問題があるとすれば彼の弱みを知ったヴォルケンリッターの騎士達にからかわれること。
八神はやてとの邂逅を具体的に知らない彼らからすればようやく合点がいった彼の脆さは可笑しかったのだ。
そして事情を知った八神はやてには時たま幼子のように扱われる。
ある日の夜には魘されていましたと言われれば恥ずかしげもなく世話をされる。そうしてジャックが恥を掻くのは最早日常の一コマだった。
ー地球
季節は秋
日中は夏の日差しを残し、木々は実を付ける頃
ジャックは6人の男子グループを率いて画一的な都市を歩く。
碁盤目状に整えられた通りは地図を見れば感動するが、いざ街へと赴き目的地へ辿り着くには意外に労力が要る。
盆地特有の熱気に加えて秋の日差しも相まって一行は汗だくだった。
彼らが目指すのはとある寺院
満場一致で行ってみようと企画したもののイメージと異なる街並みのせいでテンションは低い。
彼らの後方には近代的なビル群が立ち並び、狭く凹凸だらけの歩道。路肩には無秩序に駐車された車に縦横無尽に走行する2輪車たち。事前のイメージとはかけ離れた光景に皆肩を落とす。歴史都市を謳っている割には作り物感が拭えない古都だった。
彼らは現在修学旅行中であった。
学校の教育方針で旅行の計画はある程度まで生徒たちで企画できた。
仲良しグループで日程を詰める楽しみに一行は毎日が輝いていた。
有名な観光地へのイメージややりたいことは頭からいくらでも湧いて出た。
男子校ならではのばか騒ぎで行きのバスの中は騒がしかった
「大丈夫。女子がいる!」
汗を拭いながらそう励ますのは小学校から付き合いのある友人
「…ああ。日程は被ってるらしいから、どっかで会えるはずだぜ」
ジャックは相槌を返して士気を維持する。もう観光ではなく性欲でしか街を楽しめない。
「まじか!アリサちゃん会いてえー」
「OPP見てえな~」
下品な話題でも騒げれば何でもいい。
退屈な観光地で彼らはだらだらと歩みを進めるのだった。
ーとある古都
管理局組のメンバーも全員が修学旅行に参加していた。
最後の思い出にと彼女たちは全員が休暇を取ってグループ行動を共にしていた。
彼女たちは面倒ながらもバスを利用しているため全員が休暇として観光を楽しんでいた。
「総士君とはあんまり会えていないの」
高町なのははしょんぼりと愚痴を漏らす。
団体行動が終わった途端、道中はこの手の話で持ちきりとなる。
「確か総士君って、今は広報やったな?そんな忙しいん?」
はやては疑問を返す。織村総士は首都防衛隊に所属したと聞いていたが、最近では広報担当官として顔を売り始めていなかっただろうかと
「兼務なの」
バスが停車し、プーと電子音が鳴り静寂が訪れる。
高町なのはは返す。それは片手間だと
「え?じゃあ総士はまだ…」
これに反応したアリシア・テスタロッサ
髪を結び、バレッタで束ねる様は早くも大人らしさを感じさせる。
再度発進するバス
「うん。」
なのははしゅんとして続ける
「おかしくない?入院中に急に顔見せなくなったなと思ったら出向して、退院して接点探ってたら兼務だよ?アプローチのしようもないよ…」
「「…」」
一堂は憐れむも、更に悪い状況の2人が励ます
「あんたはまだましよ。私達なんて住んでる世界が違うじゃない。どうしろってのよ!」
「そうだよ。この間なんてメールも電話も無視されて挙句の果てには携帯落としたって手紙が来たんだよ!なのはちゃんは通信できるだけマシだよ!!」
揺れる車内でアリサとすずかは励ましと怨嗟の声を上げる。
彼女たちは総士の状況を知ることすら難しいのだった。
「フェイトは?あんたは総士となんかあったの?」
アリサはやさぐれたような様子で問い詰める。何かあったら報告をしろとにじり寄る。
「え?私?…うーん。別に何もないかな」
急に話を振られて焦るフェイト
「嘘。何もしてないの?」
すずかが信じられないという顔をする。
4人は小学生の頃から総士を巡って鎬を削った仲だった。
今更脱落者が出ることに一同が驚愕する。
「まあ、確かに総士君はあの調子やもんな。フェイトちゃんみたいに別の相手見つけた方が賢いんと違うか?」
はやては苦笑いで同意を示す。
総士は誰がアプローチを掛けても照れるだけで靡かないのだ。そのうえ多忙ならばどうしようもないだろう。
「あんたはいいわよね?あいつ資産家まがいの収入なんでしょ?嫌になるわよ」
アリサははやてに絡む。
ジャックが謎の役員報酬を得ていることはごく最近明かされていた。
「いっそのことあいつが総士とくっつくんじゃないの?もうそれでいいわよ!」
やけくそになったアリサははっきりすればそれでいいと言い放つ
「そう言えば総士君が来れないって連絡入れた相手って…」
なのはがまさかという顔ではやてを見ながら切り出す
「うん。ジャックだね」
フェイトが同意する。
総士の事情を一番知っている人物はジャックだけだった。
「「…」」
はやてに視線が集中する
「あいつ、やっぱりそういう趣味あるんじゃないの?」
「だ、ダメだよ。」
「…」
疑わし気なアリサに少し嬉しそうなすずか
せわしなく手元を動かして総士にメールを送るなのは
「ないない。その辺の管理はうちがしっかりしとるもん。」
はやては笑いながら否定する。彼女はジャックの女性関係に不安を抱きつつも家族から報告も受けている。彼女なりにジャックを管理下に置いているのだ
「ふーん。そうなんだ」
フェイトはそう言ってはやてに目を向けた
「?どしたん」
はやてはこてんと首を傾ける
「ううん。何でもないよ?」
フェイトは笑顔で返す。
「うん?そういばフェイトちゃん、総士君意外に良い相手見つけたん?」
はやてはなんとなくフェイトに尋ねる
「!え?私聞いてないよ!」
アリシアがフェイトに詰め寄る。
「誰なの?所属は?」
なのはも加わりフェイトはもみくちゃにされる
そうこうしているうちにバスは目的地へと到着するのだった。