※この作品はR-18です。

消し炭の男   作:Christmas

69 / 78
Fall in apart ー2ー

ーアーケード街

 

ジャック一行は早々に寺院や仏閣巡りを切り上げてアーケード街へと足を向けた

思い出づくりのためにも不適当だと判断を下したのだ。建築物の外観を見て楽しむ行為は現地でなくともできる。そのうえ慣れない遊びよりもいつものばか騒ぎの方がずっと楽しいのだ。一行は1つ目の目的地を回っている最中に満場一致で目的地を変えたのだった。

きょろきょろと辺りを見回す男子中学生一行

 

「流石にここは関西感あるなー」

 

ジャックはつい感想を口にする

 

「確かに関西っぽい。ってか大阪っぽい。」

 

うんうんと佐藤が同意する。

 

一行はアーケードを見上げて感心する。中途半端に寂れた天井や両脇に据えられた造花の飾り、漬物屋がかなり目に着く。焼き物は鰻ではないが何かの魚らしい。飲食店の古風な扉、品書き。それらすべてが土着の文化を匂わせる。雑多な品揃えは関西らしさを表す。

 

「旅館の女将さんも話してみたら関西弁だったぜ?京都弁だ!って怒られそうだけどさ」

 

「セックスの時も京都弁なんかな?」

 

「誰か行って来いよ」

 

一行はいつもの下らない話しをしながらアーケードを進む。途中立ち寄った店でお決まりの木刀を購入したり、土産代を着服して服を買ったり、良く分からないおもちゃを買ったりした。

 

ジャックは思う。これから先、進学をしたり就職をしていつか彼らと離れることになるだろうと。

しかし悲しい反面、それぞれの将来を約束する別れだ。勿論ジャック自身の未来を含む。

 

いつかの高町士郎への相談を思い返す。

自身の未来を進み、その過程で弔いを済ませる。

ジャックの行いはあくまでも自身のエゴによって動機づけしてよかったのだ。

 

その過程で友人と束の間の平和を謳歌する素晴らしさを感じる。

今までのように復讐一辺倒の自分ではない。

彼は下らない時間を愛おしく思うのだった。

 

「てか買い物帰りに行くべきじゃね?」

 

友人の1人が今更なことに気が付く

 

「…半日これ持って歩くのかよ」

 

大きな白いビニール袋を下げたもう一人の友人が呟く

袋からはピカピカの木刀が生えている。

 

「やばい。明日使える金が無い…」

 

そういう者の両手にはプラモデルの入った大きな紙袋

軍資金と呼んでいた彼の所持金は彼の夢の対価となった。

 

哀れみの目。

今更だが、彼らが帰宅後に何らかの制裁を受けるであろうことは想像に難くない。

 

「ジャックも結構買ってんなー」

 

「そうか?」

 

ジャックは大きめのビニール袋を下げている。

 

「まあ、八つ橋しか入ってねえからな。まだ金に余裕があるぜ?」

 

「好き嫌いねえと思ったら八つ橋が好物だったのか…?」

 

「ま、まあな」

 

ジャックは曖昧に同意した。

 

「…にしても味がバラバラじゃね?」

 

何故か八つ橋を切り口に追及を受けるジャック

 

「ああ。流石に飽きるからな」

 

冷静に流すジャックは話題を変える材料を探す。

何故ならお土産の八つ橋ははやてとの話しから始まったもの

どうせなら色んな味を食べたいと要望を受けているのだ。

友人に彼女との遊びをオープンにする気はない

 

何か無いかと上を見る。

相変わらず白いプラスチックが続いている。

特に変わったものはない。

 

左を見る。

カラフルな和菓子がケースに並べられている。

こういった土産を買ってみても面白いと思うが不可能だ。

カウンターの向こうに誰もいない。きっと店主は奥の座敷でお茶とお菓子をたのしんでいるのだろう。

 

右を見る。

シャッターが降りている。

 

どうやら和菓子屋の話で切り抜けるしかないだろうか。

羽二重餅の食感の話に繋げればオッパイ談議に持ち込めるかもしれない。

 

ジャックはオッパイへと意識を誘導しようと口を開く

 

「なあ、それより」

 

「おいなんだあれ?」

 

一行の目の前にはアーケードを横切る道路があるはず。

しかし道路沿いに群衆ができている。

まるで有名人でも来ているかのような異様な人だかり。何か大きな事故が起きた様子もない。

しかも彼らに動きはない。一様に道路を塞ぐようにしながら携帯端末を確認しては近くの人間とお喋りをしている。ただ群れているだけだった。

 

「おいおっさん。こりゃあ何の騒ぎだ?」

 

一行が目を付けたのは、群衆の端から背筋を伸ばしながら奥を何度も覗いている男。

彼は自転車を押している。きっとアーケードの奥に用事があるのだろう。しきりに向こう側を覗いている。

 

「ん?ああ。しばらくここは通れそうにないよ?何でもここに集まればお金を貰えるって噂が流れてるみたいだよ。」

 

そうこうしていると路肩のバンがクラクションを鳴らして荒々しく人をかき分ける。

 

「おじさんもお金貰いに来たん?」

 

そう尋ねられるがすぐに違うとわかる。

バンの後方で紙幣らしきものが投げられたことで車道が空く。

しかし男は相変わらず道路の向こう側を気にしている。

 

「あんた何見てんだ?」

 

ジャック一行も道路の向こう側を覗くが徐々に視界が開けるアーケードしか確認できない。

 

「いやぁ君たちぐらいの別嬪がいたもんで気になってね?」

 

男が照れながら尚も覗きを続ける。と、今度は嬉しそうに激しく手を振り始める。

 

「別嬪?」

 

 

「うへぇ、ロリコンかよ」

 

一行も疑問を感じながらもアーケードに目を凝らす。

図らずも話題をオッパイへ流せそうな期待を膨らますジャック

 

「!あれ?」

 

誰かが気が付く。

 

「!アリシアさん?」

 

困惑した顔で手を振る知り合いの女子連中だった。

小さなビニール袋を提げている者もいるが皆、荷物は軽そうだ。

人数が少ない気がするが別行動だろうか

 

ようやく一行は女子と遭遇する。

彼らは荷物で一杯の手を振る。

隣には嬉しそうに手を振る男

 

『そのおっさん誰や。さっきっからニヤニヤしよって。気持ち悪い。』

 

はやてから念話が入る。

 

『知らねえ。ずっと見てたってよ。』

 

『え。キモ』

 

即座に嫌悪感を示すはやてにたじろぐジャック。

気になってもあまり彼女のことを見つめるべきではないことを悟る。

 

『ねえ、ジャック。その人だれ?』

 

『うん。こっちは大変なのにちらちら視界に入って気になるの』

 

フェイトとなのはからも念話が入る。

2人からは若干の苛立ちを感じ取ることができた。

 

『さあ。お前らのことをずっと見てるってよ』

 

『『え。キモ』』

 

はやてに続いて二言で同じ言葉を放つ2人

ジャックのことを貶めたわけではないのにいたたまれない気持ちになるジャック

 

そんなジャックの気持ちも知らず、彼女たちは手を振るのを止めてひそひそと話し始める。

 

悲しそうに手を振るのを止める男

 

アーケードの向こうから嫌悪感を露にした顔で女性陣がやってきた。

皆、露骨に男を避けるようにして歩いてくる

 

「よ、よお。久しぶり」

 

佐藤が少し照れながらも一番槍を獲得する。

その他の男子は好みの相手は目の前にいるが一番になるのを臆するのだった。

一番槍は男性なりのアピールポイントだった。

 

「うん。しっかし相変わらずやなー。あんたら」

 

とうとう自身の勘違いに気が付いてしまったのかトボトボと去ってゆく男性

彼は去り際にもチラチラと振り返りながら美少女を目に焼き付けていった。

 

一方で嬉しそうに返事をするはやてはそのままジャックの方へ足を進める。

後ろに控える女性陣は、照れる男性陣とは対照的に一行の荷物を見て呆れ顔をする。

 

「それより!こいつ借りてくでー」

 

そう言ってはやてはジャックの八つ橋を持つ方の手を引いて一行から引きはがした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。