ークラナガン 八神家新居
「まいったなあ…」
修学旅行が終わって間もない週末。ジャックは自室で携帯電話を見つめて苦悶の声を上げる。
端末の画面には月村すずかからのメールが表示されている。要約するとお礼がしたいから家でもてなしをさせて欲しいということ。
ジャックは悩む。昔馴染みとはいえ彼女を持つ自分が同年代の少女の家に行くのは常識から見て正しいのかわからないのだ。しかし彼女を連れていくことはできないだろう。すずかとアリサを救出したのがジャックだとは知らないことになっている。従って彼女に相談することすらできなかった。
「やっぱり後ろめたい」
彼はそう判断すると素早く返信する。彼女に悪いからと断りの連絡を入れる。
即座にすずかから返信があった。アリサ、すずかともに家の面子があるので申し訳ないが敷居だけでもくぐってほしい。そういうことだった。
それでも断ろうと彼はもう一度返信をする。すずかの事情など本来知ったことではない。彼にとって一番ははやてだった。それでも彼女に悪いから。と連絡を入れる。
すずかの答えはしつこい誘いの謝罪、そして改めてはやてに相談してから誘うということ。
はやてに知られるリスクにジャックは慌てて返信をする。本当に一言二言話して帰るだけならと、返信をするのだった。
ー地球 月村邸
一目で格式が高いことがわかる調度品の数々を冷めた目で眺めながら応接間へ通されるジャック。知識のある人間が見れば興味をそそられるのだろう。しかしジャックにとっては人物画も磁器も見飽きたし、そもそも多くの世界で仕事をする彼は美術品への目が厳しい。彼は美術品を通して文化を推察するのが好きだったがここの調度品はその背景がばらばらだ。冷めた目で調度品から目を離し、出された紅茶に手を付けた。
「まったく。随分したたかになったよな。おまえ」
ジャックは上目遣いで睨みながら対面のすずかを見やった
「へへ。ごめんね?」
すずかは余裕そうに小さく笑う。
「でも、ジャック君もお仕事でこういうの慣れてるでしょう?」
「?いや、こういうのはねえな。もっと汗臭い連中ばっかりだぜ。」
すずかの質問にジャックはちらりと目線を上げて答える。
「え!じゃあこういう場に招かれたらどうしてるの?」
驚くすずか。体面を気にすると言った彼女が招いた相手はどう考えてもこの邸宅に招かれるに相応しい恰好ではない。ダルダルのランニングシャツは良くて普段着、悪くて部屋着だ。しかも足元は秋口だというのにスリッパではないか
「?構える必要あんのか?来いって言われて来てやって、それだけだろ?」
肩を竦めて笑うジャック。来いと言われて来た客をもてなすイベントなのだから招かれる側に心構えも何もないと笑う。
「!全然ダメだよ!!場所に合わせた恰好をしないと!!」
珍しく取り乱したすすずかはテーブルに詰め寄る
「?でも文句言われたことなんか今までないぜ?」
今までの仕事はほとんど普段着や土着の衣装で済ませていた。例え招かれても少し笑われるだけで概ね好意的に招かれたと記憶していた。
「絶対に言われなかっただけだよ!!そのままじゃあ変な評判が立っちゃうよ!!」
「お、おう」
すずかの剣幕に押され気味のジャックはカップを置いてソファーまで後退する。
「来て。せめて最低限の恰好だけでも覚えてもらうから!!」
すずかは厳しい顔つきでジャックの手を掴むとついてくるようにと宣言する。彼女は昔はやてから聞いていたのだ。ジャックは押しに弱いと
「待ってくれよ、おい」
文句を言いながらもぐいぐい引っ張られるジャックは碌に抵抗もできずにすずかの私室へと連れ込まれた。
ーすずか私室
甘い香りの漂う部屋。シンプルで均一な質感のはやての部屋とは違い、全体的に柔らかい印象に整えられた室内。
すずかは相変わらず厳しい顔つきでジャックと対面する。
「とりあえず平服はこれでいいよ。」
すずかは家のメイドに取らせた男物の服をベッドに広げて示す。
「…つってもその国の仕来りがあんだろ?」
結局は場所場所でドレスコードが変わるのではないかと指摘するジャック
「こういうのは誠意が見えればいいの。なのにジャックの服、どの世界でも失礼だと思うもん!」
ランニングシャツを引っ張って身を寄せ抗議するすずか。彼女を押しのける訳にも行かず、ジャックはたじろぐ
「…もう!それでね。ネクタイはこれでいいと思うよ?」
彼女はジャックの首元に手を伸ばしてネクタイを合わせる。
「ん、なかなか届かない。」
ネクタイをジャックの首に回したいのか抱きつくような格好になる。ジャックは彼女から香る香水の匂いにドキッとする。改めて考えると扉の内側にはジャックとすずかしか居ない。すずかは懸命に手を伸ばし、彼女の息がジャックに何度も掛かる。
「お、おい」
ジャックは徐々に興奮する自身を自覚してすずかに注意を促そうとした。が、
「!きゃっ」
集中していたところに急に声を出されたせいか、彼女は驚き、ジャックの胸元に飛びついた。
「わ、悪ぃ。まだ、怖いもんな」
すずかはつい最近に誘拐されたばかりなのだ。恐怖体験からのフラッシュバックに理解のあるジャックは彼女を気遣う。
「うん。ごめんね?」
「いや、別に気にしねえよ」
顔だけ胸元から離したすずか。ジャックは彼女の謝罪を流す。
「ん」
何を思ったのか彼女はジャックに手を回して抱きつく。
「…」
抵抗せずに受け入れるジャック
「ん…優しいんだね?」
「そんなんじゃねえよ」
ぶっきらぼうに返すジャック。現場に居合わせていた彼は少しだけ罪悪感を感じていたのだった。
「えいっ」
調子に乗ってジャックの首元に手を回し、ぎゅっと抱きつくすずか。柔らかい肌や胸、細く長い髪の感触、香水の匂い、女の匂いがジャックの五感や雄の本能を刺激した。
「んー!安心した。かな?」
満足したのかぱっと身を離してはにかむ彼女。一方でジャックは満たされない悶々とした感覚に陥る。
「…もういいだろ?」
そう言い踵を返すジャック。これ以上ここにいるのは良くないと残った理性が訴えかけるのだ。
「待って!!」
彼女は追いかけ、背中に抱きつく
そのまま正面に回ると服の裾を摘まむ。
「お礼、まだあるの」
すずかは俯き呟くように言う。
「?なんだ」
突然のスキンシップに悪い気がしないジャックは足を止めてしまう。
「来て?」
彼女はジャックをベッドの方へ引っ張りながら名目を述べる
「夏に皆で遊んだ時、仕事でいなかったでしょう?」
すずかが言うのは今年の夏のお泊り会。総士がいなかったのでジャックも仕事を入れて逃げ出したのだ。
「水着。見て?」
「?」
ドキッとするもそれらしいものはベッドには見当たらない。ジャックへと身を寄せるすずか
「…服の下にね?着てるの」
すずかとジャックの目が合う。彼女はジャックの手を握り、自身の胸元へと導く。
「脱がして、いいよ?」
自然と視線が彼女の胸元に向かう。白いブラウスの小さなボタン。よく見ればうっすらと素肌が透けて見える。段々と薄れていく理性。流されまいと必死で踏みとどまるジャック
「んふ。大丈夫だよ?水着だもん」
耳元で囁くすずかに理性が負けを認める
「そうだな!水着なら大丈夫だ!」
ジャックは高鳴る鼓動の導くままにすずかのブラウスのボタンを上から外していく
「うん。水着だから。」
彼女は手を握りながら熱っぽい目でジャックを見つめる。
真っ白な鎖骨が露になる。
強張る手はボタンに掛かる手を自身へと引き寄せてしまう。
自然と胸に当たってしまう手
「あん」
「!悪い」
色っぽい声にドキドキするジャック。
「へへ。…えっち」
「っ」
脱がすだけだ脱がすだけだと必死で言い訳を考えるジャック。そうでもしないと襲いかかってしまいそうだった。
ボタンを全て外し終えた。なんとか本能を理性で抑え込むことに成功したジャック。
ブラウスの隙間から覗く白い肌、露わになったビキニは刺激が強い。
彼女は俯きながらジャックを更に引っ張る。
「ねえ。ジャック君も脱いでよ?」
「お、おう」
なぜか言われるままに服を脱ぐジャック
「こっち見ちゃダメだよ?」
背を向け合う両者。
「脱いだ?」
「お、おう」
頭が真っ白になりそうなジャックはなんとか返事をする。
「じゃあ、いいよ?」
上半身裸になったジャックが振り向くと全裸になったすずかが両手で胸と股を隠してもじもじしながら立っている。
「!もう!脱いでって言ったのに!!」
「わ、悪い!!」
そのまま急いで全裸になるジャック。
すずかは見られまいと彼にくっつく
「「…」」
それから彼らは碌に言葉を発することはなかった。簡単な口付けを済ませるとそのままベッドに押し倒し、ジャックは彼女の全身を丁寧にリップする。明確に反応する彼女の仕草と声を前に、彼の理性は全くの無力だった。つんと香る彼女の股間は十分すぎるほどに濡れていた。結局口づけから射精まで碌に会話をすることなく行為を終えてしまう。
「へへ。しちゃったね?」
すずかはベッドに横になる彼の胸元から恥ずかしそうに声を出す。外は暗くなり始め、窓は秋雨に晒されている。
「ああ。」
ジャックはぼーっとしながら彼女の綺麗な髪を撫でながら答える。2人の吐息と雨音だけが響く。
「初めてなの」
ジャックの胸元を指先で撫でながら囁く
「すごく、気持ちよかった」
恥ずかしそうに身を寄せるすずか
「そうか。」
ジャックは考える。何故こうなってしまったのかと。総士にも注意されていたのに、油断して流された結果またやってしまった。これからどうすればいいのかと考えてしまう。結局彼女を裏切ってしまった。しかも今回は仕事先で会った女ではない。共通の友人に手を出してしまったのだ。もしばれれば自分は今度こそ追い出されてしまうのではないかと恐怖する。
「…はやてちゃんのこと、考えてる?」
身を起こし、尋ねるすずか
「ああ。」
「もし、何かあったら私がなんとかするよ?」
ジャックの顔は晴れない。裏切ってしまった罪悪感で潰されてしまいそうだった。
「安心して?」
すずかはジャックの頭を覆うように抱きしめる。
「…大好きだよ」
愛おしそうに抱きしめる。