ークラナガン ジャックの部屋
ジャックは夢と分かっていても見るのが辛い出来事を見る。
夢の中ではやてが見知らぬ局員と寄り添う姿。彼女の腕にはかつてプレゼントしたアクセサリーは無い。代わりにあるのは銀の指輪。対面する彼とは対照的にとても幸せそうだ。
見たくない。そう思っても気になってしまう。現実世界でも考えないようにしてもどうしても浮かんで消える。今、あいつはどうしているのだろうかと
夢の中のはやては幸せそうだ。彼女の腕の中には生まれたばかりの子供がいる。
頭が真っ白になる。もしかしたらと考えてしまう。受け入れがたい光景。彼女は微笑み、彼に別れを告げる。手を取り合い、去ってゆく2人
待ってくれと懇願するも声は届かない。
彼らが去った地には何もない。ジャック一人だった。何を考えても場面は切り替わらない。彼の過去未来に深く根差した彼女の存在が無い。
寒さを感じる。とても嫌な感覚の中現れるのは亡者達。彼が見捨てた者達だった。皆、どこかを目指して歩いてゆく。彼らと共に歩く。はやてが去った方向とは異なる方向。
何も言わない。彼らはジャックの方を見向きもしない。
何かを言われるのが恐ろい。彼らに逆らわないように歩く。彼らに自身の存在を否定されれば、ジャックに残るものは何もない。
閉塞感と不安を感じながら、目が覚めるまでひたすら夢の中で歩く。
「…」
覚醒したジャックは無言でソファーから身を起こす。不安に耐え切れず錠剤を口に含む。グラスを持つ手は小刻みに震える。
「ふううー」
深く息を吐く。手にはポケットのなかでしおれた煙草。手は未だぷるぷると震えている。煙を吸い込むたびに彼の顔に安堵が宿る。朝食はこれでいいかと考え始めるジャック。
「ぅううー」
暫くすると部屋の奥から全裸にシャツ一枚の少女がトボトボと歩いてくる。色気は無い。彼女はぼさぼさの頭に腫れた目で何かを探す。
放置するわけにもいかず立ち上がるジャック。
「おら。その奥だ」
彼は背中を押して風呂場へと追いやった。
「うー」
彼女は右手を挙げて風呂場へと去ってゆく。
「ったく」
ベッドの周りには脱ぎっぱなしの衣類。それらをまとめて水音のする風呂場へと運ぶジャック。ふと、動いている間は心が軽くなるのを感じる。案外すぐに忘れるものなのかと返って悲しくなった。
新たに煙草を一本取り出して口にもってゆく。震えは無い
「ふうー」
「…ねえ。」
水の音が止む。後ろから声が掛かる。振り向くと扉からずぶ濡れのフェイトが顔を出している。すりガラス越しにスタイルのいいからだが見える。
「タオルない?」
「ああ。」
バスタオルを取り出し、持ってゆくと彼女は素早く風呂場の扉を閉じた。
フェイトがシャワーを終えて脱衣所から姿を現す。
「はあ…スカート皺になってるよぉ」
彼女はしきりに自身の後ろを気にしながらぼやく。
「脱ぎ捨てればそうなるだろ?」
わかりきったことをとジャックは思う。
「うん。…そうだ!お礼だ。ご飯作ってあげるね?」
少し間を置いてフェイトが提案する。
「家にはなにもねえよ」
ジャックは顎で台所を指し示す。
「嘘?冷蔵庫、開けるよ?」
フェイトは冷蔵庫や戸棚を調べる。
「…なにもない」
全て空っぽだった。冷蔵庫は新品の匂いがする。
「外で食ってけよ。仕事だろ?」
「うん…」
フェイトは当てが外れたような顔で頷いた。
その日の夜。
「おじゃまします。」
荷物を手にしてジャックと共に部屋に戻るフェイト。晴れない顔のジャック
「なあ。もういいだろ?」
彼女は今日もバーに押しかけた。当然、店側は長居してほしくないので彼とともに帰される。そして彼が家に帰ったことを確認したいと言ってついてきた結果、現在に至るのだった。
「うん。もういいかなー?」
そう言って靴を脱ぎ、奥へ進むフェイト
「!おい」
彼女はベッドの脇に荷物を置いた。
「?何」
呼び止められたフェイトは不思議そうに見返す
「お前、ここで何する気だ?」
怪訝な顔のジャック。フェイトはまるで自分部屋に住み込もうとしているのではないかと警戒する。再開するかは決めていないが仕事柄、彼女の存在は好ましくない。大体これでは誰も連れ込めないではないか。
「?母さんはいいって言ったよ?」
何の問題があると言いたげなフェイト。首を傾げる
「!俺は許可してねえ。大体、…ッ」
言いかけてやめるジャック
「大体なに?…もうとやかく言われないんだよ?」
不思議そうにするフェイト。彼が言いかけた言葉ははやてに悪いということだろう。苦々し気な顔がそれを表している。
「ごめんね。思い出したくないよね?」
ばつが悪そうにするフェイト
「別に…もう気にしてねえよ。そんなの」
「…」
黙って見守るフェイト。
「それよりお前、毎日来るつもりか?それならこっちに引っ越せよ」
話題を戻すジャック。彼は爛れた私生活が誰かに漏れるのは避けたかった。
「うーん。海鳴の家は皆気に入ってるし母さんが心配するから…それにここ、近いんだ」
朝に弱い彼女は開き直る。譲る気配は無い。その様子に肩を落とすジャック
「大丈夫だよ!誰にも言わないし、あっちに帰れない時にお邪魔するだけのつもりだよ?」
「局員だろ?早めに帰ればいいじゃねえか」
「それが出来れば苦労しないよ!!」
彼女なりに思うところがあるのか、一転して攻守が逆転する。
「とにかく!誰にも教えないから!ね?お願い?」
「…」
頭を下げたまま、上目遣いでちらりと顔を確認するフェイト
「もう好きにしてくれ」
ジャックは議論を放棄した。
この日以降、日を置いて度々フェイトが押しかける。
知り合った女とはホテルで会うしかない。家でするとたまにベッドを使う人間が怒るのだ。鉢合わせになって女に逃げられた日もあった。彼女が泊まると翌朝は起こされ、朝食を作らされる。とにかく手間がかかるのだった。
「…」
ジャックは自宅で琥珀色の液体を見つめて思う。悪くない。と
手間がかかり、色々と立ち回らなければならない。それでも慌ただしい時間はつらい過去を忘れさせた。
「何を考えてるの?」
穏やかな顔で空いたグラスにウィスキーを注ぐフェイト。傍らには既に空になった瓶が置かれている。
何度もフェイトが突撃して来るのでバーで飲みづらくなったジャック。結局は自宅で酒を飲み、彼女は咎めるでもなく話し相手になるのだった。
「そろそろ仕事始めようかと思ってよ…」
「うん。いいんじゃないかな」
グラスを傾ける。すかさず足される液体
「敵討ちも、終わらせねえと」
「敵討ち?」
フェイトは減った酒を注ぎながら、首を傾げて尋ねる。
「ああ。」
酒のせいか、口が回るジャック
「昔、俺がいた村が皆殺しにされた。せめて首謀者だけでも、首を挙げたい」
「うん…大事な人だったんだね。」
フェイトは穏やかに同意する。
「ああ。皆、よそ者の俺に良くしてくれてよぉ…最後は皆俺を庇うようにして死んで、皆、俺の目の前で…」
ジャックは頭を垂れる。
「あと1人。終わらせないと」
言いながら涙するジャック
「うん。できるよ。ジャックなら」
優しく諭すフェイト
「ああ。」
同意するジャックの手は震えている。氷がグラスにぶつかり、カチカチと音を立てる。
「怖いの?」
「…」
ジャックを見遣るフェイト
「…やるのは、怖くないんだ。」
グラスを見つめたままのジャック
「ただ、終わったら、どうなっちまうのか、わかんねえ。それが…怖い」
「…」
フェイトは心配そうにジャックを見遣る。
「…大丈夫だよ。私がいるし、母さんも、アリシアだってジャックの味方になるから。だから、ね?大丈夫だよ。」
背中をさするフェイト。ジャックは祈るようにグラスを持ち、恐怖と嬉しさに涙する。誰にも頼ることもできず、破滅の道とわかっても進むしかない。しかしそんな自分を支えてくれる者がいる。嬉しい。そして何よりも安心を覚える。
「大丈夫。」
彼女は微笑み、グラスを酒で満たした。とくとくという音が心地よかった。
「大丈夫?」
肩を貸し、ベッドへと導くフェイト。ジャックの足取りは覚束ない。
「ああ。悪ぃ…」
ふらふらとベッドへと向かう。
「はい。座って?」
「ううぅ…」
虚ろな顔で言われた通りに座るジャック。フェイトが隣に座り、背中をさする。
「本当に、大丈夫?」
下から覗きこまれる。上気した顔は、幾分近い。それを咎める理性は酒に殺されている。
彼女は背中をさすりながら、反対の手でジャックの右手を握る。
「ねえ…?」
そっと近づくフェイト
もはや息が掛かる距離になっている。
虚ろな顔でフェイトを見る。
「…」
独特の雰囲気になり、ジャックは条件反射でフェイトをベッドに引き込み、倒れた。小さな肩に手を回して力強く抱き寄せる。
「んっ!」
無意識のまま、唇を重ねる。お互い酒臭い。
「んんっ!」
舌を絡め合い、一旦顔を離す。
「…」
「…」
黙って見つめ合う。
ジャックはそのまま服を脱ぎだし、それを見たフェイトは布団を被って同じく服を脱いだ。
「…」
フェイトはそっと布団から顔を出す。
「!わっ」
ジャックは無言で布団をはぎ取った。
露になる肢体。ジャックの本能に一気に火が付く。すらっと伸びた手足、メリハリのついた腰つきはデスクワークに従事しているとは思えないほどだった。隠すのが間に合わなかった乳房は上気した鎖骨とのコントラストが艶やかだ。
「は、恥ずかしいから!」
今度はフェイトがジャックを引き込む。見られまいと首元に抱きついた。
「ああ。」
ジャックは低い声でフェイトの腰回りを触る。
「!もう…!くすぐったいよぉ」
囁くフェイトは嬉しそうに身をよじる
「ん、ねえ…」
「…」
顔を離すフェイト。彼らは見つめ合うと口づけを再開する。
抱きつきながらフェイトはジャックの背中へと手を遣る。ごつごつした体つきはいかにも男性らしく、肩回りの筋肉に触れると尚更興奮を高めた。
「ん、んんっ!」
フェイトは両脚をもじもじとさせながらくすぐったい感覚に悶える。ただ触られているだけ。それだけのはずなのに、行為のいやらしさを強調するようで興奮が高まり続ける。
「あっ」
ジャックは急にフェイトを解放し、彼女の両足の間に自身を割り込ませた。
体液でべとべとに濡れたそこは抵抗なくジャックの性器を受け入れる。
「うっ!つぅう。待って、ぇ、ジャック!」
痛みが気になり、何とか声を出して制止するフェイト。しかし彼女の小さな声は逆効果だった。弱弱しい少女の声は我を失った男を掻き立てる。
上になり、激しく腰を振るジャック。フェイトはしがみつくようにして耐える。
「う、っう、う、あ、あぁ!」
痛みと、知らない感覚に知らず声を上げる。ジャックは更に力強く腰を打ち付ける。何度も繰り返される破裂音。
「くっ…おおおおおっ」
一層激しくなったかと思うと彼は腰を押し付け、背を反らした。
「ぁっ…へ?ぁ…」
訴え続ける感覚が停止し、戸惑うフェイト
保健体育で習った行為。その意味に思い当たるフェイト。ゆっくりと抜かれる男性器から遅れるように零れる白濁液。満足したのかジャックは彼女に覆いかぶさるようにして寝息を立てた。酒臭い寝息がフェイトに掛かる。
彼女は股間に手を遣り、生暖かい液体を指で確かめる。
「…」
彼女はそれを確かめると布団を被って寝息を立てた。