今回は末尾に、シュターナのプロフィール付きです。
――――ヴァーミル国内、とある郊外の古屋敷。
盲目の少女は、今までにないほどフラつきながら、窓を拭いていた。
「ハァ、ハァ、…ハァ、ハァ。これで…全部拭けた…」
しかしシュターナは、今拭いた窓に指をつけ、軽く擦った。盲目である彼女は汚れを見て確認する事ができない。それゆえ一枚拭き終わるたびにこうして確認し、再度指紋汚れをふき取るために布をはしらせるという二度手間が必要だった。
「つ、次は……二階の廊下……」
今日は “ 久々に ” 来客がない。ここ毎日、夜は訪問客が絶えず、シュターナはその “ 接待 ” に追われていた。正直もうボロボロであったが、彼女に安息などありはしない。
持ち上げたバケツの重みが、容赦なく彼女の上半身を床に引く。倒れそうになるのを踏ん張る彼女に、意地悪くその肩に自重をかける者がいた。
「おーう、シュターナ。ちょっと付き合えよぉ。旦那様に聞いたが、今日はフリーなんだって?」
男性使用人が絡んでくる…それも気配からして一人ではない。彼女は嫌な予感しかしなかった。
――――夕暮れ、屋敷の一室。
「…ぁ…う……ぁ…、あ…はぁ、はぁ…」
「へへへ、本当にいい “ 便器 ” だぜ、お前は? おーおー、小便垂らして、ちゃんと掃除しとけよー、ハハハッ」
強姦、そして精ではなく尿を注がれて下腹部が圧迫され、苦しい。彼らの非道の行いは今にはじまった事ではないが、それでもシュターナが救われないのは、そんな報いを彼らではなく、理不尽にも彼女が受ける事になるからである。
『シュターナ! シュターナ!! 掃除をほっぽってどこにいったんだい!!』
「おおっと奥様だ、とっととズラかるぞ。…へへ、今日の奥様は特に機嫌が悪いからなぁ、がんばれよーデモニア、ヒャッハハハ!」
とても貴族に仕える人間の言動とは思えない彼らが部屋を後にした後、最悪はやってきた。
当然、その癇癪を向けられるのは他でもないシュターナである。
――――屋敷の地下牢。
ビシィンッ!! バシッ!!
「ひぐう!! …お、お許しを…お、奥様」
「お黙り、このデモニアが!! 掃除をサボるだけでなく、汚物で部屋を穢すだなんて…いい機会だから、徹底的教育してやるわ!!」
ドバチィンッ!!
「ひぃいいっ! げほっごほっ……ぁ、ぁ…ぅ……」
ムチを振るう夫人は、もとより醜悪なその顔をさらに歪ませる。近頃まるで夫に相手にされず、屋敷内においても退屈を持余してためていた鬱憤。
要はそれを晴らしたいだけにすぎない。理不尽な攻撃が、シュターナの全身にムチの痕を刻んでゆく。
ビシィッ! バチィンッ!! バシンッ!! ブチィッ!!
「んぐうう! あぁっ、お、やめ…くだ…、ひぁあああッ!!!」
ムチは拷問にしてはあまりに攻撃的に過ぎる。本来、拷問は情報を引き出す等を目的とし、対象を死に至らしめないように痛みを与える事が求められる。だが夫人にそんな知識も、ムチを扱う技術もあるわけがない。
彼女はあらん限りの力と憎しみを込めてシュターナを打ちまくる。ただでさえ弱りきっているシュターナの心身は、ピークをとうに過ぎていた。
「はぁはぁ、そうよ……この、この私がこんなつまらないな毎日を送るのもシュターナ、お前のせいよ!!」
強烈なムチ打ちは何時間も続いた。
醜いがゆえに夫にも相手にされず、使用人どもは内心何を考えてるかわからない。貴族令嬢として生まれ、よくある政略結婚の果てに、夫人の欲望を満たす生活はなかった。
恵まれた日々を過ごしていても、その欲深さは醜悪な顔面にあらわれ、不満から愚痴と不平をのたまわせる。そして理不尽にもその不満の捌け口を、立場の弱い者へと当り散らす、身も心も醜い女……
ふと気付けば、両腕を鎖につながれて吊るされているシュターナは、まるでボロ布が吊り下げてられているかと見間違うほどの酷い有様で、すでに声一つあげなくなっていた。
「……何勝手に寝てるの、奴隷の分際でっ、このデモニアがぁ!!!」
ヤ ミ ノ ナ カ ノ カ ガ ミ
「――――ッッ」
それは夫人が振るった瞬間に最高の手ごたえを感じたほどのムチの一撃が、シュターナの命を打ち消そうとした瞬間だった。もしムチが少女の顔に触れていたなら、その頭部が醜く削れたであろう狂気の一撃。
しかし、音もなくその頭が吹き飛んだのは………ムチを振るった夫人の方だった。
――――翌日、拷問部屋。
「……お、奥方様……」
ムチを片手に持ち、大の字に倒れている死体。しかし首から上は頭が吹き飛んでなくなっている。冷たい石畳には頭部が一撃のもとに吹き飛んだ事を示す、勢いよく飛び散った血の痕が残っていた。
「「…………」」
夫人の行方をさがしていた使用人達は、その凄惨な死骸を見て、誰も声をあげられずにいた。
「……その死体は、妻か?」
「! だ、旦那様! は…はい、頭部が失われておりますが、お召し物は間違いなく奥様のものかと…」
しかし屋敷の主人たる彼に妻の死を悲しむ様子は見られない。所詮は政略結婚の上での関係でしかなく、むしろこの心身とも醜い女は、兼ねてよりお荷物にしか見ていなかったのだから、その無残な死骸を前にしたところで、ふさわしい最後だと嘲笑すらこみ上げてくる。
問題は妻の死ではない。誰がどのように殺したか、だ。
「シュターナがやったのか?」
「……そう思うのが本来ならば当然かと思うのですが、それにしては不可解な点が」
使用人達も夫人にはあまりいい印象を抱いていなかっただけに、その死を悲しむ者はいない。仮にシュターナが殺してくれたというのなら、この件ばかりはデモニアへの偏見を越えて、賞賛してもよいと思っている者も多い。
だが、状況から考えてシュターナには無理なのだ。それが大きな問題だった。
「まずシュターナの腕輪ですが、さきほど正常に作動している事を確認しました。破損もしていません。両腕は見ての通り鎖につながれていますし、あの状態では奥様を攻撃する手段は、彼女には何もありません」
魔力を抑制する腕輪がある限り、魔法を用いることはできないし、両腕が繋がれている以上、殴ったりする事も不可能だ。もっともシュターナの腕力で殴ったところで、たかがしれている。唯一自由がきくと思われる両脚は、ムチの痕だらけで力なく垂れ下がっているし、腕を同じ理由で、蹴って攻撃したところでたいした攻撃にはならないだろう。
「そして、何よりシュターナは気絶しています。さきほど侍医が診たところ、奥様のムチ打ちによる気絶である事も確認されていますから、奥様が殺されたのは、シュターナが気を失った後、という事に……」
それはつまり、夫人を殺した犯人は同じ拷問部屋にいたシュターナではなく、他の誰かという事になる。屋敷内の人物か、あるいは外部から侵入した第三者の犯行の可能性が出てくるのだ。
「……ふむ、まあいい。使用人を検めるのは後回しでもかまわん。まずは外部犯の可能性で屋敷内を調べろ。盗難や窓の破損などがないか、手分けして探して回れ」
「は、はい! …あ、あの…シュターナはいかがいたしましょうか?」
「降ろして侍医に見せろ。奴隷とはいえ高い金で買ったのだ、簡単に死なせるのはもったいない。それに “ 妻よりは ” 役に立つからな」
この時、誰もが犯人は使用人の誰かだろうと思っていた。夫人は嫌われていたし、殺意を覚えるほどのご無体を受けた者も少なくない。
夫である彼も、夫人殺しの犯人を追及する気はなかった。むしろ煩わしい者がいなくなって嬉しいのだから、使用人達の中に犯人がいようとも構わないし、咎める気はない。だからこそ、使用人達よりも外部犯の可能性で調べさせる事を指示したのだ。
しかし、彼らは知る由もない。夫人を殺したのは他でもないシュターナである事を。その身に秘められた力は、彼らの予想を遥かに超えている事を。彼女の中で目覚めた魔力が、振るわれたムチに反応し、己の生命を守らんと無意識ながらに爆発した結果だったのだ。
< ヤミ ノ ナカ ノ カガミ >
―――本来は、魔力の篭った道具(主に魔剣など)を媒介とし、媒介が有する力を増幅して、意識を道具に投影し同調させることで、強力な魔法を引き出し、使役する事ができる能力である。媒介の持つ力が強力であるほど使役できる魔法が無尽蔵に強大化していくため、自在に扱える知識と力があれば、最大最高の魔法の一つとなりえる可能性を秘めている。
シュターナは無意識化においてこの能力を発動し、夫人のムチと同調し、振るわれて空を舞っている最中に保持していたムチの力を何倍にも増幅して夫人に返していた。
彼女が秘めたるこの強大な能力は、いまだ誰も知らない。シュターナ自身すらも。
この日、奴隷の日々より脱却できる力は、彼女を縛る真なる鎖を断ちはしなかった。
――――数日後、寝室。
「うう! …はぁ、はぁっ、はぁ…」
「痛むか? すまないな、妻の癇癪には私も前々から困っていてね。だが、その悩みは解消された、本当に不慮の事故というものは恐ろしいものだな、ハハハ」
シュターナを気遣うかと思えば、うっとおしい妻がいなくなって清々しているといった様子で彼は腰を突き上げる。
「んぐぅっ!! …はぁはぁ、い…いえ、お、奥様のことは…はぁはぁ、んぐっぅ、な、なんだか申し訳ございませんでした」
「お前が謝る必要はない、シュターナ。さぁ忌々しいことは忘れて、今宵も私を楽しませてもらうぞ」
馬乗りになっているシュターナは、全身のアチコチにまだ包帯を巻いたままだ。比較的軽傷の部分にもムチの痕がまだ残る。最終的には綺麗に治ると侍医は言っていたが、屋敷の主たる彼は、怪我を負った少女を犯す背徳的な悦びに目覚めつつあった。
そして以後、シュターナの身から傷が消えると、適度に怪我を負わせて犯すという危険な遊びを覚えてしまう。
夫人が死んだ事は、シュターナにとっても日々の苦痛が少しだけ和らいだ。しかしそれも長くは続かず、今度は虐待的な性欲に目覚めた主によって新たな苦痛を与えられるようになる。
月のない暗黒の夜は未だ明けはしない。だが、彼女の中で積もりゆくものは、確実にいつか来るであろう満月の輝きに反映される事だろう。
そして今度は自分に向けられる事になるとも知らずに、彼は己の悦楽を満たし続けてゆく。しかしシュターナは、それに刃向かう事は出来ない。それでも奴隷の身より介抱される時は、多くの時の果てに発現した夫人の時ほど長くはかからないだろう。
何せシュターナの知られざる力は、一つではないのだから……
―――Next.
「な、なんだ、その瞳は!!? しゅ、シュターナお前は―――」
見据える視界に、長年自分を虐げた者たちの姿は映らない。
その心に願った者の姿―――炎の先に、見えぬはずの盲目の先に、確かにその姿を捉える。
「王子さま―――――」
ほぼ裸に近い、もはや衣服の役目を果たせないほどボロボロの布をかろうじて纏い、燃え盛る屋敷の残骸の中を、フラフラと歩き出す。
「~~~ッッ!! シュターナ、やはりこの、デモニアがッ」
草原へと踏み出そうとした彼女に襲い掛かる刃。
無防備な少女にその切っ先が触れる―――前に、彼はそれを妨げる。
「な、いつの間に!?」
「やれやれ、何がどうなってるのかわからんが。……少なくとも、女の子を刺そうとするのは許せるもんじゃないよな?」
「団長! まったく急に飛び出して無茶するんじゃないわよ…って、燃えてる! 燃えてるって!!」
追いついてきたリリウムに指摘され、己のマントが燃えている事に気付く彼。仮初めとはいえ貴族装束だ、しかもレティシアからの借り物。決して安くはないだろうそれの弁償を考えると頭が痛い。
だが庇われたシュターナの目には、夜空を背景に炎を纏いし、精悍なる王子様にしか見えていなかった。
―――to be continued
==プロフィール===========================
シュターナ
本名:シュタリア=ライラック
年齢??
T142 B83(E-) W54(UB63) H83
リラでの身分:???
身分 :奴隷
能力1:ヤミ ノ ナカ ノ カガミ
能力2:???
容姿イメージ:デモニア版カイゼル
(不幸な分、成長具合はいろいろとこっちのが上。
精神年齢はカイゼルよりやや夢見がち。
そのせいかカイゼルは彼女にお姉さんしたがる)
既存キャラとの関係性:
なぜかゼネア、シェスカルナ、ルーデシアは頭が上がらない様子。
物凄く大事に扱おうとする。
そんな中、リィゼは3人がどうしてそんな態度で接するのか
よくわかってないらしく、精神年齢が近しいせいか気軽に友達。
団長ラブ勢なので、他の団長ラブ勢から睨まれるかと思いきや、
いるだけで他のラブ勢がピリピリした際の仲介&癒し要員に。
過酷な半生の経験から、性的知識と経験は全キャラ随一。
が、その控えめで無垢な性格と、幼い精神年齢からくる無邪気さから、
不意にぽっと出した一言で女性陣を黙らせ、
紅潮させてしまったりするなど場を支配する力は最強(本人に自覚なし)
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本小説のオリジナルキャラのプロフィールは、こんな感じで出していこうかな、と思ってマス。
もちろんゲームには出てきませんよー。
なお本二次創作小説の原作であるブレイヴガールレイヴンズRは
http://bg-r.mimolette.co.jp/
からどうぞ。