【祝! 同人コミカライズ化】異世界交易チートで街中の女を孕ませてみた 作:ヤラナイカ―
「あっ、あっ、スパイク。もっと……」
「リサ……」
布ずれの音と、若い男女の嬌声。
健太が夜に一人寂しく豪華な食事を取りながら、盗聴器で隣家の音を聞いてみると、夫婦の営みの真っ最中であった。
一年前の健太なら、この音声だけでオナニーしていただろうが、さすがにそんな気になれない。
もうリサーリィは自分の女だと思っているから、旦那のスパイクに嫉妬するだけである。
「あっ、ああ……スパイク、ああっ!」
「リサ、愛してるよ!」
激しい布ずれの音が聞こえたかと思ったら、ようやく終わった。
愛してる、愛してる、うるせえよと健太は思う。
そんな言葉、言う相手もいなければ言ってくれる女もいないのが健太である。
世界一の金持ちになっても、手に入らないモノはあるのだ。
例えば、爆乳ハイエルフな良妻の愛情とかである。
しかし、手に入らずとも奪うことはできる。
そんな仄暗い気持ちでほくそ笑むしか、今の健太にできることはない。
しばらくして、夫婦の会話が聞こえてくる。
「また十日ほど、領主様のところに行かないといけないんだ」
「またなのですか。つい先月もオーク討伐で、留守にしたばかりですのに」
「ごめんねリサ。領主様の街のほうにもモンスターが出たらしくて、手伝いに行かなければならない」
「愛しい妻を置いて、お忙しいですのね」
最愛の夫の出張と聞いて。
すねてみせるどこまでも可愛らしいリサーリィ。
「ごめん。いいニュースもあるよ。この前のオーク討伐でも活躍したから、もしかすると僕もそろそろ騎士叙勲を受けることになるかもしれない」
「そうですか。あなたの出世は嬉しいですけど」
「なんだ、喜んではくれないのかい。ただの警備隊長じゃなくて、領主様の正騎士になれば給金だって少しは良くなるかもしれないよ」
「私は、お金よりあなたとの時間が大切ですわ」
「そう言ってくれるのは嬉しい。もちろん、君との時間を第一にするよ」
「約束よ?」
すねてはみたが、仕事ならばどうしようもないことを、リサーリィも理解している。
「本当に、リサみたいないいところの娘が、どうして僕みたいなうだつのあがらない警備兵の嫁にきてくれたやら」
「スパイク、あんまり自分を卑下なさらないで。あなたには、あなたの良い所があるのよ」
本当にそうだよと盗聴している健太は吐き捨てるように言った。
長年に渡ってダナン街の警備隊長を務めているスパイクは、二十七歳の若さで街の名士であり、実質街のナンバースリーぐらいの地位だ。
それだけではなく、かなりのレベルのイケメンでもある。
ダークブラウンの髪色、目鼻立ちの整った凛々しい顔立ち。
剣士としての長い経験で培った身体つきは壮健で、細身に見えて実戦的な筋肉が付いている。
落ち着いた大人の物腰に、血気盛んな若々しい正義感を秘めている。
この街にめちゃくちゃ貢献している大商人の健太と比べても、剣を持ってモンスターとカッコよく戦うスパイクのほうが街の民衆に尊敬されている。
その上で、爆乳ハイエルフの人妻を持ちながら、他の街娘にもモテまくってるのも許せないところである。滅びてしまえと健太は念じた。
「だって、僕なんて冒険者のランクで言えばシルバーだし、高位の精霊魔法が使えるリサは、それだけでゴールドクラスの実力者だろ。エルフの里に言ったら、女王様なんじゃ……」
「はい、そこまで。確かに私はエルフの里に行ったら、女王どころか神様扱いされちゃうけど、あなたは私の大事な旦那様なんだからもっと偉いのよ。私がエルフの女王なら、あなたは私の王様だわ」
また、布ずれの音が聞こえる。
きっと、裸で抱きしめあっている。
「まったく、リサには敵わないな」
「私は、あなたの全てが好きよ。私が惚れたスパイクは、いつも弱い人達や子供達のために身体を張って戦っている素敵な人だもの。あなたが兵士でも、騎士でも、私はどちらでもいいのよ」
「肝に銘じるよ」
「だから、出世なんてどうでもいいから無事で帰ってきてね。領主様のお屋敷のメイドなんかと浮気しちゃダメよ」
「家でこんなに美しい妻が待っているのに、他の女に目移りするわけがないさ」
もう十分だと、健太は盗聴器のスイッチを切った。
とりあえず、十日ほど夫のスパイクが留守にするとわかっただけで十分だ。
ラブラブ夫婦の会話を聞くのも限界だった。
ほんと独り身には堪える。
※※※
「おや、アラドさん。これは偶然ですね」
「ああこれはどうも、朝早くから今日もご苦労様ですなスパイク警備隊長殿。ちょうど俺も、店に向かおうと思ってたところなんですよ」
翌朝、家の前で出勤が重なったのは偶然ではない。
盗聴で家を出る時間を合わせて、様子を見るためにわざと出てきたのだ。
スパイクの二メートル近い長身を見上げると、健太は劣等感を感じる。
こいつ、歳下のくせにと思うのだ。
歳を考えても落ち着いた物腰は、五歳年上の健太よりよっぽど大人びて見える。
ダークブラウンの髪をかき上げ、微笑みに白い歯を光らせる仕草が、また様になっている。
完璧イケメンだな、このクソやろう。
この甘いマスクで、結婚して落ち着く前はさぞ女を泣かせてきたのだろう。
いや、今も泣かせているのかもしれない。
ダナンの街にも、スパイクのファンって女はいっぱいいる。
警備に歩いていると、街娘から黄色い声援が飛ぶほどだ。
その上で、永遠にハタチの若さを保っている爆乳ハイエルフまで嫁にしているんだからもう欠点はない。
いや、たった一つだけ欠点があった。
近所で聞いたわかったのだが、スパイクとリサーリィの夫妻は、結婚して五年も経つのに子宝に恵まれていない。
この世界の書物を詳しく調べたところ、エルフは長命なせいなのか子供ができにくい傾向がため、近年では減少傾向にあるという記述もあった。
希少種族であるハイエルフの情報は少ないが、繁殖力は高くないのかもしれない。
それにしたって、毎晩夜のお勤めに励んでいるのは、盗聴で聞いた通りである。
五年もセックスし続けて子供ができないなんて、スパイクのほうが種なしなんじゃないかと健太は思う。
童貞のくせに、俺ならばリサーリィをきっと孕ませられるという謎の自信があった。
「それにしても立派なお屋敷ですね。羨ましいなあ、僕もこれぐらいの大きい家に住みたいものです」
健太としては、家なんか交換してやるから嫁をくれよと言いたいところである。
「いやあ、大きいだけで独り身だと持て余してましてなあ」
「そうですか。僕達夫婦も、いまならこの家で十分なんですけどね」
やがて子供ができたら、もっと大きな家に住みたいというわけか。
その願い叶えてやるよと、健太は心の底で暗く笑う。
「さてと、引越しの挨拶もできてよかったですが……」
そう言って、話を打ち切ろうとした健太に、スパイクは思いついたように言ってしまう。
「そういえば、僕はこれよりご領主様のお屋敷に十日ほど赴任しなければなりません。ご近所のよしみで、どうぞ留守の間よろしくお願いします」
何をよろしくしろというのか。
まるで、空き巣に泥棒に入れというようなものである。
「それは心配でしょうな。あのリサーリィさんなら滅多なことはないでしょうが、もちろん大事ないように気をつけておきますよ」
「篤志家のアラドさんにそう言っていただけると安心です。妻はハイエルフと呼ばれる希少種族なので、どうしても悪者に狙われがちでして」
健太は我慢しきれず、ニヤリと邪悪な笑いを漏らしてしまう。
いままさに、その悪者が目の前にいる。
「ご近所同士は、助け合いですからね。スパイクさんが留守の間は、この荒土健太がしっかりとお助けします。どうぞ奥さんにもよろしくお伝え下さい」
「ご助力感謝いたします。では、公務に行ってまいります」
妻と同じでお人好しのスパイクは、爽やかに微笑んで一礼すると。
健太の密やかな悪意にまったく気づかずに、隣町にある領主の屋敷へと向かってしまうのだった。