【祝! 同人コミカライズ化】異世界交易チートで街中の女を孕ませてみた 作:ヤラナイカ―
第一章1「ことのあらまし」
荒土健太(あらどけんた)三十一歳童貞の夏のことであった。
クソのような会社で、クソのような仕事をさせられている派遣社員である健太は、会社の片隅で一人腐りきっていた。
「なんでハケンの俺が、深夜残業やらなきゃいけないんだよぉぉ!」
時刻はすでに午前零時を回っている。
正社員はみんな帰っている。
多量の仕事を抱えて終わらない、一人デスマーチに突入している健太は、帰れずにお泊りコースであった。
うちはまともな会社じゃない。
正職員にも満額の残業代が出ないのだから、派遣社員の健太に出るわけがない。
それなのに、一人で深夜のサービス残業を強いられている。
これ違法労働じゃね。偽装請負ってやつだろ?
お前は仕事ができないから残ってやれとか好き勝手言いやがって、何で俺も大人しく従ってんだよ!
ストレスマックス、ストレスマックス、ストレスマックス、マックスハート!
「サービス、サービス~♪ って、うるせー死ね!」
テンションがおかしくなっている健太は、誰もいないオフィスでひとしきり騒ぐと、もうどうでもいいと机に突っ伏した。
ふと気がつくと、パソコンの画面上に謎のポップアップ広告がでている。
おかしい。
会社のネットワークは、こんなあからさまに怪しい広告が出るエロサイトなどには、通じないようになっているはず。
広告には『フェラルーナへの異世界転移者募集中! いまなら《異世界交易チート》付いてくる』と表示されている。
よくあるネットゲームか?
「もういいや、はいはい参加、参加、参加、参加ぁぁ!」
やけっぱちになっている健太は、参加のボタンをマウスでカチカチカチカチ高速連打する。
これがウイルス入るサイトでもかまわないや。
異世界転移、上等じゃねえか!
いっそ会社のパソコン壊れちまえ、いや会社ごと壊れちまえ、こんな国、こんな地球壊れちまえ!
そんな勢いで、ドンドン注意事項を読まずにYESボタンを連打して進める。
気がついたら、会社のオフィスではなく変な場所に来ていた。
「なんだぁ、外? 昼?」
見上げると、空は澄み渡るような青空だった。
さっきまで夜だったよな。
「おい、変な格好の兄ちゃん。邪魔だから、つったってないでどいてくれよ」
「はあ、馬ぁぁ?」
おっさんが引いているのは荷馬車である。
そういや、道路もなんか石畳、ここはどこなんだ。
「なんだ頭の可哀想なやつか」
大変失礼なことを言われながら、健太を避けて横を通り過ぎる荷馬車とおっさん。
馬車、中世ヨーロッパ風の街角。
ここはどう見ても小説や漫画やアニメでお馴染みの……。
「本当に異世界転移しちゃったのかよ」
異世界の街角で、パソコンを持った背広姿の底辺サラリーマンが呆然とたたずむ。
ここから、荒土健太の人生逆転劇が始まった。
※※※
異世界転移に答えた健太に与えられた能力は、《異世界交易チート》である。
最初、手に持ってたパソコンで使える能力かと思ったが、パソコンの画面で見なくても使える能力であるとわかった。
手持ちの商品を日本円に変えて、日本円で商品が買える商業スキルだ。
「つまり、これで金を稼いで生活しろってことだな」
たまたまなのか降り立った街が、アレシア王国の王都アレシアだったことは幸いだった。
都会なら商売がやりやすい。
問題があるとすれば、財布には二千円しか入っていないこと。
さあ、最初の購入を何にするか。
健太は「高く売れるもの、高く売れるもの」と市場を練り歩いて、半日ほど吟味した。
ここでも健太は、頭の可哀想な人扱いされてしまったが、知ったことじゃなかった。
この一手に、生き死にが掛かっているのだ!
後から考えれば、そんなに悩むこともなかったのだが、この時の健太は必死だった。
そして、選んだのが織物屋。
なんかよくわからないが、やたら布製品が高かったのだ。
「ここでは、布の買取なんかもしてくれるのか?」
「おう中古品の買取もやってるぞ。衣服はボロボロになっても直して使えるし、衣服じゃなくても布だったらなんでも買いとるよ」
なんか店員に、こいつはよっぽど金に困ってるのかと、哀れみの眼で見られた。
着ている背広は薄汚い安物だけど、浮浪者には見えないはずなんだけどなと健太は落ち込む。
「これなんだが……」
おそるおそる、千円で購入したミニタオル四枚セットを差し出してみる。
安物だが一応こっとん百パーセントとか書いてあったんで、まともな品のはず。
「おっ、なんだこりゃ。中古品じゃないなこれ、うむ立派な綿だ。これなら一アレンでどうだ」
「一アレン?」
「あんた外国の人か、この国の金貨だよ。それともふっかけてんのか。あーわかった。これはいい品だしな。一アレン五十ケントゥムだ」
健太がこの国の単位をよくわからないのが伝わったらしく、金貨一枚と銀貨二枚を差し出してくれる。
「千円のタオルが、金貨と銀貨になるのか?」
「こっちだって商売なんだから、そんな変な顔してもこれ以上は出せんぞ。この金貨一枚と、銀貨二枚で交換だ。嫌ならよそで聞いて回れ、ここより高く買い取とる店なんか王都中探してもねえからな」
「あっ、いや。じゃあこれで売らせてもらうよ」
「ありがてえ! またなんかあったら絶対うちに持ってきてくれよ。他所の店より高く買い取るからな」
健太が渡した品が良かったらしく、店員はやけに愛想よく金を握らせてくれた。
「さて、金貨と銀貨を日本円に変えてみるか。おっ、金貨が一枚一万二千円に、銀貨が二枚で二百八十円……すげえ!」
銀貨の買取額がやけに安かったので、金貨で取引しなきゃならないが。
バスタオルを買売しただけで、十倍以上儲かってしまった。
「もっと儲かる商品はないかな。この軍手の束とか、安そうでいいんじゃないか」
健太は、次は安くなっている軍手を大量買いして織物屋に持ち込む。
「お、なんだ兄ちゃん。こんどは、布の手袋をこんなにたくさんか。待て、ひとつひとつ調べるから……ちゃんとみんな使えるな。よーし、これなら奮発して四、いや五アレン出してやるよ。今後もうちに頼むな」
そうこう繰り返しているうちに、健太は大量生産の安いシャツなどの販売も初めて、王都の織物相場が大混乱に陥るほどの騒ぎを起こすのだった。
のちにアラド商会の産業革命と言われる商業戦の始まりであった。