【祝! 同人コミカライズ化】異世界交易チートで街中の女を孕ませてみた 作:ヤラナイカ―
今年の新年2月2日より本作の同人コミカライズ、「聖女セシリアの堕淫」が販売になります!
それを記念しまして、Fantiaのみでの公開だった【特別編】を更新していきます。
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プロローグ「ついに催眠の杖を手に入れる」
ダナンの街を襲われて怒り狂った荒土健太は、悪党として本気を出した。
王都に立ち戻り、アラド商会の態勢を立て直すと同時に反攻作戦を開始した。
政治的にはむしろ健太が支援しているシコシュ・マクブリス宰相が強いものの、健太の宿敵である王女エリザベートは王族であるため、その直属のレッド・リボンズ騎士団を追い落とすことはできなかった。
ならばと、起死回生の策を求めて、王女エリザベートや、レッド・リボンズ騎士団の弱点を探し回ったのだ。
しかし、さすが相手は王宮に暮らす王族と王家に仕える貴族である。
弱点も付け入る隙きも、大金持ちではあるもののいまだ平民である健太には簡単には見つからなかった。
だが、あの時襲いかかってきた健太の宿敵の中に一人だけ近づきやすい平民が紛れていた。
宮廷魔術師マリーナ・ルクス。
封魔の魔術師の異名を受け継ぐ、若干十五歳の天才魔法少女である。
王宮に出入りして立派な屋敷を与えられているとはいえ、その身分は平民だ。
健太が近づき罠に嵌めるにはちょうどいい人間だった。
マリーナについて、その弱点を調べ尽くした健太は、ついに密かに会うことに成功する。
封魔の一族を蝕む病気を治す薬があると言って近づいたのだ。
ビタミン剤(一瓶三千円)を《異世界交易チート》で出す。
「本当に、我が封魔の一族の宿痾である軟化症がこんな薬で治せるのですか」
「ええ、近頃は王都でも評判になっているようだから、アラド商会が医療にも通じていることは知っているはず」
「しかし、エリクサーでも治せない奇病が……」
「くる病の原因は、ビタミンDの不足なんだよ。それ、単なるビタミン不足だから」
むしろ魔法の万能薬エリクサーでも治せない病気と聞いてピンときたのだ。
さすがの万能薬エリクサーも、ビタミンは合成できないらしい。
くる病によるカルシウムの摂取不足による骨粗しょう症は、エリクサーで一時的に骨の湾曲や骨折などを状態回復できても、ビタミン不足のままであればまたすぐ臥せってしまうことになる。
つまり、封魔の一族は高価なエリクサーを常時使用することとなり、それでも治らずに体調は徐々に悪化していくことになる。
マリーナが若くして、母親から封魔の魔術師の地位を継がざるを得なかったのもそのせいだ。
封魔の一族は、寿命がとても短いらしい。
たかがビタミン不足で人が死ぬなんてと思うが、日本でも江戸時代にはビタミンB1の不足による脚気でたくさん死んでたので、中世程度の文明レベルしかないこの国では起こって当然のことなのかもしれない。
「ビタミンって、なんです?」
「まあ説明してもわからないだろうからいいか。治療に必要なビタミンDは太陽を浴びれば自然と合成できるんだが、どうやらお前達にはそれができない問題があるんだろう?」
「我が偉大なる封魔一族は、特異体質故に日を浴びることはできないのです!」
ふむふむ、その説明でわかった。
マリーナにしろ、日中から黒いマントに黒い魔法使いの帽子を被って日光が当たらないようにしている。
恐ろしいほど透き通った青白い肌をしているが、日光を苦手としているらしい。
代々王家に仕えて、特殊な魔法を使える血族のようだし、ここは中世ファンタジー世界だ。もしかすると吸血鬼の血が混じっている家系なのかもしれない。
吸血鬼の吸血行為は、もしかすると日照不足によるビタミン不足を補うために行われることだったのだろうか。
まあ、そんなことは学者が考えればいいことだ。
「ともかく、毒ではないのでその薬を試してみるといい。心配なら、動物に飲ませて確かめてもかまわない。多量に飲めば身体に毒にもなるが、少量ならむしろ健康にいいからね」
毒ではないと健太が見せつけるように飲んで見せても、半信半疑のようだった。
しかし、一族の難病に難渋して藁をもすがる思いのマリーナは、ついに母親に飲ませてしまう。
程なくして元気になる母親、それでは自分もと飲んで見れば、これまでの骨や筋肉がきしむような痛みが嘘のようになくなってしまった。
そして、この世界で、ビタミン剤は荒土健太からしか手に入れることはできない。
まあビタミンDを多く含む食事でもおそらく解決したんだろうが、健太の目的は善行ではなくマリーナを薬漬けにすることだ。
「クックックッ、宮廷魔術師マリーナ。薬がもっと欲しければ、何をやればいいかわかってるよなあ」
「この卑劣漢!」
なんとでも言うが良い。
俺を殺そうとした報いは受けてもらうぞと、健太は悪党の顔で笑うのだった。
※※※
……というわけで、近づいただけで国家反逆罪により死刑といういわくつきのダンジョン『王家の谷』の入り口にやってきた。
「アラドの旦那、ほんとにやるんですか?」
そう言うのは、闇の仕事を請け負う闇ギルドのSランク暗殺者ダグラスだ。
リーダーのダグラス達の言葉に、パンクロックバンドみたいな格好をしている世紀末な面々も頷く。
「まさか、闇ギルド最強のパーティーともあろうものが、怖気づいたわけじゃないだろうな?」
「だってここは、近づいただけで王家の呪いで死ぬって噂ですし」
何が呪いだ。
健太は、鼻で笑う。そんなものがあるわけない。
「おい、マリーナ。王家の呪いだとよ。本当にそんなものがあるのか?」
「それは本当にあるのよ」
「ええ、ほんとなの!」
予想外の言葉にびっくりする。
そっか、ファンタジー世界だから呪いがあるのか!
「王家の呪いは、ダンジョンの入り口に近づくごとに少しずつ心身にダメージを喰らうもの。でも、この私、偉大なるマリーナ・ルクスの封魔の力で封じてます!」
「そ、そうか……」
あぶねえ。
マリーナがいなきゃ、危うくお陀仏だったところだ。
つか、マリーナも先に言えよ。
闇ギルドの面々も、ビビりまくって青い顔をしている。
「アラドの旦那ぁ!」
「チッ、うるさい! お前らも高い前金を払ってるんだからガタガタ言うんじゃねえよ。この『王家の谷』を管理しているのがこのお嬢ちゃんなんだから、絶対大丈夫なんだよ」
そう言う健太に、マリーナは怪訝そうな顔で言う。
「ところで、ちゃんと約束は守ってくれるんでしょうね!」
「ああ、『王家の谷』でお目当ての物を手に入れたら、一生分の薬をやるしビタミン剤の作り方も教えてやる」
「……わかったわ。じゃあ、『王家の谷』の封印を解く。封魔の末裔、マリーナ・ルクスの名に置いて!」
なんだそのヨガみたいな妙な決めポーズは。
昔の芸人みたいに滑稽なんだが……。
「お、おう。頼むぞ」
当惑した健太がそう言うと、ゴゴゴゴッと音を立てて、岩が動いて洞窟の入口が現れた。
「もう開いた」
「え、さっきの変なポーズが、封印解除だったの?」
「変なポーズじゃないです! 封魔一族に伝わる開封の秘術なんですよ!」
明らかにムッとした様子で怒ってくるマリーナ。
なんか魔法のことになると、急に饒舌になるよな。
「す、すまん」
あまりの剣幕に思わず謝ってしまった。本当に、変なやつだな。
なんとなく会話がしずらいというか、きっと友達少ないタイプだ。
ただ、封魔の魔女マリーナは、物怖じしないタイプではある。
邪悪なパンクロックバンドみたいな格好の闇ギルドのパーティーにも全然ビビッってないのは凄いか。
むしろどちらかと言えば、闇の暗殺者のダグラス達のほうが萎縮してしまい、マリーナとは直接話さないようにしている様子だ。
どうやらダグラス達は、王家の呪いとやらが怖いらしい。
本来なら健太も恐れるべきなのだろうが、ここに来るまでにあらゆるマジック防御の魔道具を買って備えている。
その中には、呪いに対する抵抗力を付与する魔法具もある。
すでに王家の姫を敵に回しているのだから、それでダメならもう無理だろうという開き直りもある。
まだ薬をもらわなければならず、ここで健太が死んでも困るマリーナは、ペラペラと王家の秘密を語る。
「私ができるのは封印を解くまでですよ。王家の谷の魔道具に手を出せば、エンシェント・ガーディアンが出現します」
「そういう話だったな」
エンシェント・ガーディアンとは、この谷の鉄のように固い岩盤で出来ているゴーレムのようなものだそうだ。
「お前達、エンシェント・ガーディアンとは戦えるんだろうな?」
ここに来るまでにできる限りの準備をして、《異世界交易チート》まで持っている健太だが、所詮は一人だ。
闇ギルド最強の実力者と言われてるダグラス達が、盾役くらいは務めてくれないと困る。
「アラドの旦那。俺達もプロだからそこは安心してくれ。俺達は元冒険者家業が多くて、墓場漁りの経験もある。エンシェント・ガーディアンは、ほとんどストーンゴーレムと一緒だったんだな」
やっぱりダグラスは、小娘に過ぎないマリーナにビビッているらしく、直接ではなく健太を通して聞いてくるのに苦笑する。
人はわからないものを恐れるという。
封魔の魔術師って肩書は、よくわからない異世界の冒険者達には怖いのかもしれない。
「動きはそこまで早くない。でも、数が多い」
「数なら大丈夫だ。アラドの旦那、俺達はただ敵を引きつけて喰い止めればよかったんですよね?」
「ああ、囮として敵を引きつけてくれれば十分だ」
「ならいけます。俺達もプロなんで!」
ならよしと頷くと、俺達は『王家の谷』の奥まで続く。
ダンジョンとは名ばかりで、やたらだだっ広い空間の真ん中に、宝物庫があるだけだ。
まあ、冒険者を入れるダンジョンではないのだからこれでいいのかもしれないが……。
「ここが王家の宝物庫よ! 凄いでしょう!」
なぜか、マリーナが偉そうに自慢気に言う。
確かに綺麗に磨かれた巨大な洞穴は、美しさはある。しかし、なぜマリーナが自慢げなんだ。
管理を任されてるだけで、自分で作ったわけではあるまい。
まあ、ツッコむのも面倒なので放っておこう。
「マリーナ、あれはどこだ」
「あの中央の台座に納められているのが、アリシア王国の宝物の中でも禁忌中の禁忌である『催眠の杖』よ」
俺は、台座のガラスをハンマーで叩き割ってその杖を手にする。
鑑定のスクロールを使い、効果を確かめる。
ちゃんと『催眠の杖』と表示されている。
効果は、あらゆる人間を完全な催眠状態へと落とし込むマジックアイテムだ。
その威力は強力で、一生作用するのだが、欠点は一対一じゃないと使えない。
また、一度に命令できるのは一回だけと鑑定書にある。
つまり多人数相手に一気に催眠にかけるってことが出来ないようだ。
使用回数は九回ほど残っているが、回数制限は別のスクロールを使って増やせるので欠点にならない。
健太が集めた裏社会の情報によると、今より二百年ほど以前。
この『催眠の杖』を使って王族や大司教を操って王家転覆をたくらんだ野心家がいたらしい。
完全催眠なんて使えたら、そりゃもう誰だってそうするよな。
軽い状態異常でモンスターを眠らせたり操ったりするつもりで作ったマジックアイテムが、偶然強力過ぎる効果になってしまったという噂もある。
まあ当時の詳しい事情は王国の黒歴史になってしまったので、それ以上は調べてもわからなかった。
わかっているのは、この杖を手にした貴族の男が野心に取り憑かれ、王家に反逆して失敗して歴史から消されたということだけだ。
そのクーデター計画は、成功ギリギリのところで阻止された。
それ以来、さすがにアリシア王国も警戒したのか、この『王家の谷』に『催眠の杖』を封印して、その悪の催眠術師を打ち破ったという封魔の一族に代々守らせているのだ。
他にも、世に混乱をもたらすと判断された王家に都合の悪い様々なアイテムがここにはあるようだ。
じっくり禁断の宝物庫を見学したいが、セキュリティが動きだしたようでゴゴゴゴッと辺りが揺れ始めたので後回しだ。
なんと、驚いたことに辺り一面の壁そのものが敵だった。
身長五メートルから六メートルの岩の塊のゴーレムが、次々にこちらに向かってくる。
三百か、それとも四百か。
一瞬で総数が数えられないほど多いということだけは分かった。
「これは、多いな。ダグラスいけるか!」
「もちろんだ。注意を引き付ければいいだけならな」
ダグラスの筋肉質なでかい図体でも、五メートルの巨大なゴーレムに比べたら小人みたいなもんだ。
それでも、ちょこまかと動き回ってゴーレム達を翻弄し始めた。
よく引きつけてくれる。
「どうするの? 私も攻撃魔法を使ったほうが良い?」
「まあ黙って見てろ」
健太は、《異世界交易チート》でロケットランチャー(十二万円)を山のように購入する。
まずは、これが通用するかやってみるかとロケットを向ける。
「あのゴーレムの額の文字が弱点」
「ほう、良いことを教えてくれた」
プシュー! と激しい音を立てて燃焼ガスが出てロケットが飛来した。
それは、即座にゴーレムの頭にドンッ! と命中して爆発した!
その瞬間、びっくりしたダグラス達は動きが一瞬止まり、自動人形のようなゴーレム達も驚いたように動きが止まった。
もしかしたら、ゴーレムにも知能のようなものがあるのかもしれない。
それとも、エンシェント・ガーディアンと言うくらいだから、長い時間のなかでゴーレムにも心が芽生えたか。
まあ、そんなことはどうでもいいか。
「ダグラス、この調子で潰していくから囮を頼む!」
「わ、わかった!」
プシュー! ドカン!
プシュー! ドカン!
健太はロケットランチャーをぶっ放し続けて、次々にゴーレムの頭を粉々に吹き飛ばして動きを停止させた。
「すごい魔法……」
「これは魔法じゃねえんだけどな」
ともかく数が多いから無駄口叩いている余裕はない。
ちょっとでも油断していると押し切られてしまうので、健太はとにかく必死になってロケットランチャーをぶっ放し続けた。
そこらじゅうがもう、使い捨てたロケットランチャーの残骸でいっぱいになってしまった頃。
ようやく最後の一体が、頭を撃ち抜かれて活動を停止した。
「ふう……」
最後の方になると集中が途切れて、外しまくってしまった。
ダグラス達に命中したら大変なことになっていたところだ。
そうであっても、その分の依頼料は払っているので恨みっこなしだが、きっちり仕事を果たしたやつには報いないと気分が悪い。
どうせ、金ならもう腐るほどあるんだからいくらくれてやってもいい。
「終わった。一体これは、どういう魔法?」
そう聞いてくるマリーナに、今が一番隙きがあるなと感じて、俺は『催眠の杖』を振った。
「まだ終わっちゃいねえよ」
「あっ、あっ……」
マリーナがぼんやりとして、瞳の焦点が合わなくなった。
さて、催眠ってどうやらいいんだろ。とりあえず、命令してみるか。
「マリーナ・ルクス。『お前は俺の命令に絶対服従するんだ』いいな?」
俺がそう命じると、マリーナは意識を取り戻して驚いたように言う。
「ひ、卑怯!」
「何が卑怯だ」
「だって、終わったら無事に帰すって……」
どうやら、一回に命じられるのは一度だけで『催眠の杖』を使って催眠にかけられたという意識は残ってしまうようだ。
この辺りの制限も、以前に使った人間が王国の支配に失敗した原因だろう。
「確かにそう言ったなマリーナ。でも、『催眠にかけない』なんて言っちゃいない」
「そんな……」
約束は守る。
終わったら、一生分の薬をやるしビタミン剤の作り方も教えてやるさ。
でもそれはそれ、これはこれだ。
さて、見た感じ変わったようには見えないが『催眠の杖』が効いているかどうか確かめてみよう。
「お前これが終わったら、どうするつもりだったんだ。俺をこのまま済ますつもりはなかったんだろ。ちゃんと教えてみろよ?」
「私にはアラドの薬が必要だった。でも、薬の製法さえ聞き出せば、あとは待機しているレッド・リボンズ騎士団に連絡して始末させる」
「そのために隙きを窺って、準備を整えてたってことか。連絡の手段は?」
「そうよ、連絡はこの魔法の伝書鳩を騎士団長のミレーヌに飛ばせば、すぐ駆けつけてくる」
「言っとくけど、俺が許さない限り連絡はするなよ」
「わかった」
ほら、やっぱり催眠かけておいてよかったよなあ。
これで、罠に嵌められることはなくなった。
よし、これでようやく一仕事完了だな。
「アラドの旦那、ひぃ!」
俺がマジックバッグを投げてやると、大の男のくせに闇ギルドのSランク暗殺者ダグラスは悲鳴をあげてのけぞりやがった。
「なんだよ。成功報酬を渡そうってのに、何だその顔はダグラス」
「え、なんだその……。俺達を、その『催眠の杖』とやらで操ったりはしないのか?」
「しねえよ。そんな約束じゃねえだろ。闇ギルドを敵に回すつもりはない。そのマジックバッグに、全員分の成功報酬は詰め込んでやったから」
一生暮らせる金と、偽造の身分証明書。
北方のアーガマ帝国への通行書、ならびにそこへの転移の魔法のスクロール。
高飛びセットだな。
「そ、そうか。アラドの旦那なら、俺達を『催眠の杖』とやらで操って、その王国の騎士団と戦わせたりするんじゃねえかと……」
「まあこんな光景見せられたら、そう疑うのも無理はないな。だが俺はこれでも商人だ。、約束はしっかりと守る。このマリーナとの約束も、ちゃんと守ってはいる」
こいつは、俺を殺そうとしたから、これからその報いを受けさせているだけだ。
約束自体は守るし、こいつらの病気を治せる薬は提供してやる。
健太はそう言って、封魔の魔女マリーナをとりあえず土下座させている。
「……疑って済まねえ。この何でも入るマジッグバッグも一財産だと思うが、こんなものまでもらってしまっていいのか?」
「ああ、お前達はこいつと違って最後まで裏切らずに仕事を完遂してくれたから、それはサービスにしておくさ」
そう言いながら、健太はマリーナの頭を踏んでいる。
「私もやることやったのに!」
「マリーナは、俺を二度も殺そうとしやがったから、こうなって当然なんだよ」
「最低、最低男!」
催眠をかけられて、従わされても心までは従っていないマリーナは暴言を吐いている。
まあこっちの方がやりがいがあっていいな。
あとでその小さい身体に、たっぷりとわからせてやろう。
「ふふ、なんとでも言え……。ダグラス、俺はこれからアレシア王国を征服する」
その言葉に、飛び上がって驚くダグラス。
「そ、そんな恐ろしい計画。俺達に聞かせないでくれよ! あー! 俺達はなにも聞いてない、聞いてないからな!」
健太は思わず笑いだしてしまう。
有能な暗殺者のくせに、ダグラス達はとても臆病だ。
俺がイメージする暗殺者と全然違うが、現代の知識でも実際のスパイとかって地味だって聞いたことがある。
無謀なやつはすぐ死ぬし、臆病だからこそここまで生き残ってこれたということか。
「だからさ、お前達みたいな有能な闇ギルドの人間とは友好的に別れたいのよ」
王国を奪う計画が、成功するとは限らない。
そうなれば、健太は彼ら闇ギルドの暗殺者達と同じように国外脱出をはかることになる。
そこまで考えての用意周到だ。
敵を無駄に増やす愚は、もう痛いほど経験したからな。
「それはありがたいが、俺達はもう闇の仕事から足を洗うんだ。もう血なまぐさいことは二度とゴメンだ。田舎に行って、花でも眺めて静かに暮らしたいんだ」
「俺はまだそこまで老け込む気にはなれんが、いつかはそういうのもいいかもしれんな」
スローライフってやつか。
仕事に疲れた人が多い昨今の異世界では流行らしいが、煩悩に満ち溢れた俺には似合わないかもなと健太は不敵に笑う。
「だから、もうアラドの旦那とは二度と会わないことを祈ってる。俺達の仕事はここまででいいんだな?」
「ああ、お前達はいい仕事をしてくれた。顧客として満足してるよ」
逃げるように、転移の魔法のスクロールを使って消えるダグラス達。
またいつか依頼するよとは、可哀想なので言わないでおいた。
「……そうならないことを、俺も祈りたいもんだ。ほら、お前はそこに這いつくばれマリーナ!」
「うわーん! なんでこんなことに! 誰か助けてー!」
這いつくばったところを、椅子代わりに健太に座られている封魔の魔女マリーナの叫びが、『王家の谷』にこだまするのであった。