※この作品はR-18です。

【祝! 同人コミカライズ化】異世界交易チートで街中の女を孕ませてみた   作:ヤラナイカ―

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第二章1「勇者の父、荒土健太」

 さて、荒土健太が女騎士団とエリザベート姫への復讐を完遂したと時を同じく。

 王国南方で、聖女セシリア率いる伝説の冒険者パーティー『エターナル・メイデン』が高位魔族デーモンロードを倒して王都に凱旋してきてしまった。

 

 健太が王都でエリザベート姫をやっつける一方で、セシリア達も教会に健太を勇者の父として認めさせるために戦功を立ててきたのだ。

 まさに本妻にふさわしい大活躍であり、それは健太も嬉しい。

 

 だが、王都健太がやらかしたのは、女騎士団(+女兵士も多数)を全員孕ませるという、セシリアの許可がない盛大な浮気とも言えるわけで、そのことはすでに知られてしまっている。

 なんと言い訳しようかと、さすがの健太も困ってしまった。

 

 ろくなアイデアも思いつかないまま、健太の子を抱いたセシリア達がやってきてしまう。

 輝く銀髪の長い髪を風になびかせる聖女セシリアは、いそいそと健太の待つ王の城の階段を上がる。

 

 ともに凱旋したSランク戦士ユリアに赤子を預けると、セシリアは紅玉を思わせる瞳に涙を浮かべて感激の面持ちで待っていた健太に向かって駆け寄ってくる。

 妊娠出産で、セシリアのたわわな巨乳は十七歳にして、トップバスト九十七センチ、Gカップにまで成長していた。

 

 輝ける美少女が、大きなおっぱいをゆっさゆっさと揺らしながらやってくる。

 健太は、複雑な感情がいりまじった思いでそれを待つ。

 

「ああ、健太様!」

 

 その柔らかい身体をギュッと抱きしめて、健太は彼女の名前を呼ぶ。

 

「セシリア……」

 

 セシリアもまた、万感の思いをこめてつぶやく。

 

「健太様、おあいしとうございました……」

 

 セシリアの第一声はそれであったか。

 健太のために身重のセシリアが必死に戦っていた間、健太がやっていたことと言えば盛大な浮気である。

 

 それなのにセシリアは非難めいたことなど言わず、ただ会いたかったと言ったのだ。

 その健気な言葉を聞いた瞬間、健太は覚悟を決めて言う。

 

「セシリア、結婚しよう!」

 

 さんざん女騎士団への復讐だ何だ言っても……。

 結局の所、セシリアの居ない間に浮気をやらかしてしまった健太には罪悪感があった。

 

 特に、元騎士団長のミレーヌには深い情けをかけてしまった。

 気持ち的にも浮気であり、しっかりと孕ませてもいる。

 

 とてもではないが、ただ復讐しただけだと言える状況ではない。

 そのことをセシリアに、一体なんと詰問されるかと怖くなった健太は、先手を打って保証を与えることにしたのだ。

 

 セシリアを本妻とする。

 結婚式をやって、聖女セシリアこそが健太の唯一の妻であると内外に示す。

 

 これなら、セシリアも許してくれるのではないか。

 いや、これは誤魔化しにすぎないけど、それでも誤魔化されてくれ!

 

 そう思って、健太は結婚を口にした。

 それに対して、セシリアは戸惑った様子で言う。

 

「健太様……あの、私と結婚するという意味を、わかっておられるのですか?」

「何がだ」

 

 聖女と結婚するのは、教会的に難しいという話だろうか。

 それも、権威と権力と催眠の力を兼ね備えた今の健太になら可能なはずだ。

 

「フェラルーナ教会の教えでは、結婚できるのは一人だけです。貴族であれば側室を置くことも可能ですが、それでは……」

 

 なんだそんなことか。

 

「もちろん、覚悟の上だよ」

「救国の英雄ともなった健太様のご活躍であれば、王女様との結婚も望めるかもしれません。それなのに、私を選んでくださるのですか?」

 

 王女との結婚なあ。

 相手がビッチなエリザベート姫でなければ、そうしてもいいと考えていた。

 

 しかし、考えてみれば健太は国王になりたいわけではない。

 国王など責任が重くなるだけだ。

 

 健太は、ただ豊かな生活をして、いい女とセックスしまくりたいだけなのだ。

 勇者の父親である高位貴族として、そして王国軍の総統としてアレシア王国を裏から支配する。

 

 そちらのほうが、ずっと自分らしいと健太は思えた。

 

「国の英雄として認められた今なら、聖女であるセリシアとも結婚できるだろ。俺は王女よりも、お前が欲しいんだよ」

 

 それは健太の、心よりの本心である。

 

「健太様……。私は、あなたと出会えてほんとに幸せです」

 

 一国よりも自分が欲しい。

 まるでロマンス小説のような甘い言葉に、セシリアは感激してむせび泣き、健太の胸に顔を埋める。

 

「俺もだよセシリア」

 

 ついに、誰はばかることなく健太とセシリアは結ばれることができるのだ。

 セシリア結婚ルート選択で間違いなかった。

 

 完! めでたしめでたし!

 

 しかし、健太の胸に顔を伏せたままで、セシリアが小さくつぶやく。

 

「ところで健太様は、多くの騎士団の女騎士と子作りしたと聞きましたが……」

 

 その言葉に、ギクッと健太が震える。

 ついに、浮気の追求がきたか。

 

「あ、ああ……」

 

 健太は、ごくりと息を飲む。

 

「……私も、素晴らしい行いだと思います。次世代の勇者を育む母として騎士団の女性はもってこいですから、もちろんこれは、そういう女神様の思し召しなのですよね?」

 

 セ、セーフ。

 健太を信じ切っているセシリアは、自ら都合のいいように解釈してくれた。

 

「そ、そのとおりだ! これも女神フェラルーナ様の神託なんだ! わかってもらえて嬉しいよ!」

 

 すぐさま神託をでっち上げる健太。

 女神の遣わした異世界からの来訪者であり、セシリアが信じ抜いている健太が、自分の意思でただ女騎士団をレイプしたなどとは決して思わないということなのだろう。

 

 本当に、セシリアがチョロくて助かった。

 まあ、騙されなかったとしても、健太にはまだ奥の手がある。

 

 最悪、セシリアを『催眠の杖』でいいなりにすることもできた。

 実はすでに、背中には『催眠の杖』を忍ばせたりしているのだが……。

 

 いやダメだ。

 セシリアに催眠は使いたくない。

 

 すでに『錯誤の杖』で騙しているとは言え、セリシアには心からの本心で自分を愛して欲しいと健太は思う。

 

「しばらく合わない間に、健太様はたくましくなられましたね」

「そ、そうかな」

 

 女騎士団を全員孕ませる勢いでセックスしたのも、かなりの運動量だ。

 この世界は、やはり文明が中世レベルなので、いくら「楽に生きる」を信条にしている健太も普段の生活にそれなりに体力を使う。

 

 日本にいた頃よりは、少しは身体も締まってきたかなあと思っていたところだ。

 好きな女にそう褒められると、嬉しい。

 

「内乱を防いだ王都でのご活躍も、耳にしております」

「いやセシリアこそ、魔族の大物を倒したんだって。やはり、凄いな。さすがは聖女だ」

 

 お互いに相手を褒めそやし、愛を語り合う瞬間。

 だから、健太がそれを破る者が来る気配に気が付かなかったのも当然と言えた。

 

 健太の後ろから回り込んできて、にゅっと顔をのぞかせたのは赤髪の元気少女ティリアだった。

 寄りにも寄ってセシリアより一歳若い赤髪の元気少女ティリアが、健太とセシリアの間に割り込んでくる。

 

「健太様!」

「ティリアちょっと待て、今俺はセシリアと……んん!?」

 

 催眠によって健太をこよなく愛するようになったティリアは、健太が他の女を抱いているという嫉妬もあったのだろう。

 普段3Pでも4Pでも許している健太だから、これくらいのことはやってもいいという空気になっているのだ。

 

「んちゅー!」

 

 セシリアとの間に割り込んできたティリアは、いきなり健太にキスしてくる。

 ま、まずい。

 

 これではセシリアよりも、若い女と浮気をしていたと言わんばかりだ。

 とにかく、ティリアを同時に引き剥がして事態の収集を図らねばならない。

 

 しかし、間の悪いことに、ティリアの後に来た副団長のペシミアまでが爆弾を投げかけてくる。

 

「健太様。喜んでください、赤ちゃんができました!」

 

 よりにもよって今その報告か! と、心のなかで悲鳴を上げながら、健太は頭を抱えたい気分になる。

 健太の子を産めば念願の団長になれると思っているペシミアだ。

 

 喜ぶのはわかるが、その嬉々とした笑顔。

 セシリアの前で、大変まずい。

 

「ペシミア、その話は後にしてくれ……」

 

 健太はペシミアに向かって手のひらを突き出して、たしなめようとする。

 しかし、隣からさらに艦砲射撃を食らう。

 

「健太様! ボクも、大好きな健太様の赤ちゃんできたよ。大事に育てるからね」

「ティリア、お前もかよ!」

 

 確かに、女騎士にはみんな妊娠検査薬を渡してその使い方を教えてるので、妊娠したらすぐわかるはずだが、今その報告か!

 健太は、セシリアの顔を見るのが怖い。

 

「セシリア、これは違うんだ……」

 

 しかし、目の前にいるものを見ないわけにはいかない。

 セシリアは、びっしょりと冷や汗をかいている健太に向かって微笑みを向けて言う。

 

「何も違わないでしょう。騎士団の皆様が、健太様のお子を身ごもったという話は、私も聞いております。仲良きことは、良きことですから」

 

 セシリアは両手を合わせて聖女らしく笑っている。

 ……けども、いつもは光り輝いている紅玉の瞳がどんよりと色を失っている。

 

 ゾクッと、健太の背筋が凍る。

 騎士団に命を狙われた時などよりずっと怖い。

 

 これはいけない!

 健太は、大声で言う。

 

「みんなに、ここで宣言しておく。俺は、聖女セシリアと結婚する! セシリアだけが、俺の嫁だからそのつもりで……」

 

 セシリアの反応が怖くて語尾が弱くなってしまったが、健太のそんな様子にセシリアは深くうなずいて両手を組んで嬉しそうに言う。

 

「もちろん、信じています。女騎士のみなさん、確かティリアさんとペシミアさんといいましたね。健太様の妻となるセシリアです。どうぞよろしくお願いします」

 

 セシリアは、伯爵令嬢でありフェラルーナ教会から聖女の称号を授けられている聖職者だ。

 上下関係に厳しい副団長のペシミアは、深く跪いて言う。

 

「ハッ! かの名高き聖女セシリア様に直接お声がけいただくなど、光栄の極みであります!」

 

 慇懃な副団長のペシミアと違って、嫉妬しているらしいティリアは、不機嫌そうにぷいっと横を向く。

 

「なんだよ、伯爵の娘で聖女だからって……」

 

 不満げにつぶやくティリアに向かっても、聖女セシリアは宣言する。

 

「お二人の子は、未来の勇者となるさだめです。いや、お二方だけでなく、健太様のお子はみんな未来の勇者であるとの女神フェラルーナ様の神託が下っております!」

 

 副団長のペシミアには申し分ない話である。

 ペシミアは、健太との子は私生児となると言われたので少し不安であった。

 

 しかし、教会から勇者の子と認められれば、たとえ生まれてくる子供が自分のように女子であっても将来は安泰だ。

 ペシミアは跪いたままで、高らかに言う。

 

「それは、ありがたきこと! このペシミア・テッサロニキ! 女神フェラルーナ様のために、勇者の母体としてこの身を捧げる覚悟はできております」

 

 歓喜のペシミアに比べて、不満げなティリアは「ちぇ、なんで、聖女様だけ結婚してもらえるのさ」と口を尖らせている。

 ペシミアは、そんなティリアをたしなめる。

 

「よさないかティリア」

「だって……」

 

 対照的な二人に、聖女セシリアは正妻の余裕で言う。

 

「私と結婚すると健太様がおっしゃっていただいたのは……。きっと、私は最初に健太様の子を産みましたので、配慮してくださっているのでしょう。健太様はとてもお優しい方なのです……」

 

 ティリアは、なおも不満げに言う。

 

「それはおかしいよ!」

「ティリア。聖女様の御前だぞ、いい加減にしないか!」

 

 健太をこよなく愛するティリアだって、特別なペガサスナイトの血筋なのだ。

 聖女にだって負けてないと思いたい。

 

「うう……」

 

 しかし、聖女セシリアのほうが先に健太と出会い、最初に子を産んでいるという主張は否定し難い。

 だから、セシリアとの結婚にくちばしを挟むために、側にいたもうひとりの女性を利用した。

 

「聖女様が健太様の子供を最初に産んだっていうのなら、ユリア様もそうでしょう? むしろ、ユリア様のほうが先に産んだって聞いたよ、しかも男の子でしょ!」

 

 ティリアの言う通りであった。

 旅先の馬小屋にて、聖女セシリアとSランク戦士ユリアはほぼ同時に健太の子を産んだのだ。

 

 しかし、健太の子を産んだのはユリアの方がタッチの差で早かったのだ。

 父親が同じ子が同時に産まれたため、双子であれば後に産まれた方を長子とする伝統に従ってユリアの産んだ男の子を弟、セシリアの産んだ女の子を姉とされたのだ。

 

 これは、かなり無理な話であり、だからこそ王都の街でも噂となっていた。

 聖女セシリアの子こそ勇者の長子としたい、そんな神殿の思惑が感じられる。

 

 聖女セシリアが最初に健太の子を産んだから結婚できるというなら、Sランク戦士ユリアこそが健太と結婚してもいいはずだ。

 Sランク戦士ユリアは、軽々とセシリアと自分の赤子を抱いてその場でポロンと胸を出して乳を吸わせながら静かに言う。

 

「騎士ティリアとやら、それは違うぞ。結婚相手は、アラド殿が決めることだ」

 

 百合の傾向のあるユリアは、むしろ健太よりもセシリアが好きなのだ。

 セシリアを差し置いて結婚したいわけではない。

 

 だから、ティリアの言うことは大きなお世話だった。

 

「でも、健太様の正妻があの英雄、剣鬼なら……。私達、戦う女の憧れSランク戦士ユリア・アクスシャート様だったら、私達だって納得いくのに……」

 

 ティリアも、なんとはなしに健太には想い人がいるとわかっていたので、自分が結婚できるとは思っていなかった。

 ただその相手が、自分と同じ赤髪の戦士で尊敬しているユリアだったら良かったのにと思っていた。

 

 これは、ティリアのただの女の意地だ。

 もっと言えば、ただの可愛らしい少女のわがままである。

 

 それがわかっているから、心情的に余裕のあるユリアは、ティリアの猫のように柔らかい髪を撫でて言ってやる。

 

「騎士ティリア、私達が仲良くやらないとアラド殿だって困ってしまうぞ。女神様の信託ゆえのこととは言え……たくさんの子を持つ親であるアラド殿は、ただでさえ心苦しいお立場なのだから」

 

 そういうユリアに助けられた思いで、健太は声を合わせて言う。

 

「そうだぞティリア。みんな、仲良くな」

 

 睡姦で孕ませて子まで産ませてしまったユリアに善意でそう言われると、健太の方が少し心苦しくなる。

 ユリアだって、セリシアとともに健太のために戦ってくれたのだ。

 

 あとで、何かユリアにも報いてやらねばなと健太は思う。

 正直なところ、女騎士にも尊敬されているらしい英雄ユリアがまとめてくれて助かった。

 

 ここで健太がセシリアが一番好きだから正妻だなどと言っても、ティリアは意固地になるだけだろう。

 

「ありがとう、助かったよユリア」

「アラド殿、女の嫉妬というのは怖いから注意するのだぞ」

 

 そんなことをいたずらめいた顔で言われて、健太も苦笑するしかない。

 

「あ、ああ……」

 

 ユリアに言われるまでもない。

 その怖さをたった今、たっぷりと味わったところだ。

 

「それより。この子がセシリアの産んだ女の子のアリシア。この男の子が、この私が産んだカインだ。アラド殿も抱いてやってくれ」

 

 健太は、そう言われてゴクリと生唾を飲むと、女の子の方を抱いてみる。

 ああ、赤ん坊の体温はなんて高いのだろう。

 

 これが、自分とセシリアとの間に産まれた命かと思うと、健太はしばし呆然としてしまう。

 これまでずっと孕ませると言ってきたが、自分の赤ん坊を初めて抱いたのだ。

 

「おぎゃあおぎゃあ!」

「おおっと、泣かせてしまったか」

 

 こうなると健太もしどろもどろ。

 ここ最近の活躍で培った自信もどこへやら、我が子をあやすこともろくにできない新米の父親に過ぎない。

 

「いや、お腹が空いているのだろう」

 

 そう言ってユリアは笑うと、その場で胸をぽろんと出して赤子に乳を吸わせる。

 後ろからセシリアが言う。

 

「旅先ゆえに子供の名前は先に決めてしまったのですが、よろしかったのですか……」

 

 セシリアが申し訳なさそうに言う。

 いつまでも名無しというわけにはいかず、近所の教会で命名の儀をやってしまったらしい。

 

 もちろんだとうなずいて、健太が名の由来を尋ねると、アリシアは始まりの聖女と言われる教会を作った聖女から。

 カインも、かつての勇者から名付けたそうだ。

 

「ふむふむ、それは縁起のいい名前じゃないか。俺もセシリア達が決めてくれた名前でいいよ」

 

 父親として責任を取れるわけでもないし……。

 そんなことをつぶやいて、子に乳を吸わせている大きくなったユリアの乳房を、健太が(やっぱり乳首が黒くなっているが、それがユリアにはよく似合うなあ)などと考えながら、いやらしくチラチラ眺めている。

 

 それに気がついていても、ユリアは笑っている。

 ユリアは、健太のことをちっとも悪く思ってはいないのだ。

 

 ちょっとスケベで情けないところはあるが、健太が優秀な商人でありダナンの街を救った篤志家であると知っているからだ(それも、ほとんど勘違いなのだが)。

 しかし、セシリアとユリアの冒険者パーティー『エターナル・メイデン』には、あと二人伝説級の英雄がいる。

 

 Sランク魔術師レディシアと、Sランク武闘家ミスズ・ミズキだ。

 寡黙な仮面の少女レディシアは、端的にミズキに尋ねる。

 

「……ミズキ、あのアラドって人、どう思う?」

「全体的になんかなよっとしてるぞ。女神に選ばれた勇者の父という評判とぜんぜん違う」

 

 レディシアとミスズの二人は、聖女セシリアとSランク戦士ユリアにさんざんと健太のいい評判を聞きまくっていたのだ。

 いわく篤志家の大商人である、貧者の孤児にも施しを配る慈愛の人である。

 

 新兵器でモンスターをまたたく間に倒して街を救った英雄である、などなど……。

 王都での健太の評判が悪すぎたので、セシリアはそれを補うために無理めに褒めたのだが、ちょっと褒めすぎてしまったのかもしれない。

 

 完全にハードルの上がりきった状態で、会ってしまったのだからレディシアとミスズには拍子抜けと思われるのはしょうがない。

 

「……スケベそうで下賤」

「おい、レディシア。そりゃ酷いんじゃないか。弱っちそうなおじさんだけど、悪い人じゃないんだろ?」

 

 それにしたって、酷い言いようである。

 健太だって、内心でカチンと来てしまう。

 

 それよりも、自分の男がバカにされて顔を真っ赤にして怒ったのは聖女セシリアであった。

 

「二人共、勇者の父であられる異世界よりの救世主! 聡明にして慈善の心にあふれる王国一の大商人である健太様になんてことを言うのですか!」

 

 聖女セシリアが怒ってくれたので、健太は怒りを抑えて笑顔で言った。

 

「いや、自分など、ただ女神様に与えられた役割を果たしてるだけの男にすぎませんから……」

 

 聖女セシリアが怒り、健太がへりくだったのだ。

 当然、謝罪の一つもあっていいところ。

 

 しかし、レディシアとミスズの二人は……。

 

「……卑屈な男」

「おい、セシリア。国王の使者がさっきから待っているぞ。そんな男どうでもいいから、さっさと謁見を終わらせて飯にしようぜ」

 

 この発言である。

 聖女セシリアに「すみません、すみません」と何度も謝られたが……。

 

 健太は笑って何食わぬ顔でいて、実のところ許してはいなかった。

 こりゃ二人にも、後でたっぷりとお仕置きしなきゃならないなと、健太は目を細めて悪い笑いを浮かべている。

 

     ※※※

 

 国王ウェルトリクスとの謁見式は、国中の貴族が集まるなかで、聖女セシリア率いる伝説の冒険者パーティー『エターナル・メイデン』と合同で執り行われた。

 まず、高位魔族を倒して王国に平和をもたらせたセシリア達が、国王より黄金に光り輝く勲章を授けられて順々にお褒めの言葉をかけられる。

 

 次に、健太の番だ。

 

「アラド・ケンタ殿を、王国軍総統に任じ、また同時にアラド伯爵家を創設し、正式に王国の高位貴族として任じることとする」

「ありがたき幸せ……」

 

 侍従から伯爵の豪奢なマントと金のメダルを受け取った健太は、国王よりうやうやしく伯爵の叙勲を受けた。

 

「貴公の領地は、とりあえずダナンの街とやらでよいのだな。あとは、王国での商売を取り仕切る権利と免税特権……こんなもので良いのか?」

「はい、領地はいずれ自力で増やすつもりですので」

 

 健太の言葉に、居並ぶ王国貴族や官僚達に戦慄が走る。

 今回の内乱は健太とシコシュ宰相派の勝利となった。

 

 エリザベート王女やゴルディアス伯爵の派閥についてしまった貴族や官僚には厳しい処分がくだされることとなる。

 ちなみに当のエリザベート王女はと言うと、強引に恋人関係にさせられた元騎士団長のミレーヌと仲睦まじく参列している(王女の方は嫌々だが)。

 

 一度は健太の復讐によって騎士団の一番下まで落とされたミレーヌは、愛しの姫の夫に大出世したわけだ。

 健太はミレーヌに情が移ってしまったし、それがエリザベート王女への罰ともなるので、これでいいと思っている。

 

 横目でミレーヌ達を見ながらそんなことを考えている健太に、国王はそっけなく言う。

 

「さようであるか、良きにはからえ」

 

 国王ウェルトリクスは、なんでも良きにはからえとしか言わないので、はからえ王と影で言われている。

 このお人好しの国王は、ただのお飾りだ。

 

 健太はこれより王国の実権を完全掌握するために、場合によっては王国軍総統として軍を動かすことにもなるだろう。

 ま、それも後のことだ。

 

 今は、無事にアリシア王国の高位貴族になったことを喜ぼう。

 嬉しそうに駆け寄ってくる聖女セシリアも、健太を尊崇の眼差しで見つめてくる。

 

 フフフッ、これで俺も高位貴族の仲間入りかと健太は不敵に笑う。

 伯爵の地位を手に入れれば、これで名実ともに伯爵令嬢であるセシリアと並び立つこともできるというものだ。

 

「健太様……」

 

 聖女セシリアの肩を抱いて、健太は高らかに宣言する。

 

「国王陛下にも、ご臨席の貴族の方々にも聞いていただきたい! 俺、じゃないこの私、アラド・ケンタは、聖女セシリアを我が妻と迎えることをここに宣言する!」

 

 王都では大変な苦労をさせられたが、そのおかげで王国軍総統ともなり新しくアラド伯爵家を開くことが出来た。

 フェラルーナ教会には、すでに根回しは済んでいる。

 

 国王や王国の主だった貴族が列席している謁見の間で、健太は聖女セシリアと結婚することを正式に宣言したのだ。

 臨席の貴族達は、ざわざわと騒いでいる。

 

「アラド殿、この度は伯爵の叙勲と、ご結婚おめでとうございます……それで、あの、領地のことだが……」

 

 大きな腹を揺らしてやってきたのは、懐かしいドノパン伯爵だ。

 

「これは、ドノパン伯爵。久しいな」

 

 かつては、ドノパン伯爵のほうが健太より上であった。

 しかし、いまや王国の権力を握る健太と地位が逆転している。

 

「我が領土であったダナンの街は、本当にアラド殿の物になるのか? い、いや無論、今をときめく王国軍総統殿に文句があるわけではなく……」

 

 領地を削られるドノパン伯爵は、青い顔をしてぶつぶつと言っている。

 

「ドノパン伯爵とは、これからも仲良くやってきたい。貴公よりダナンの街を譲り受けることとなるが、後にそれ以上の利益があると期待しておいてくれ」

「そ、そうか。これまでも、アラド殿は私に利益を与えてくれたものな。その言葉、信じよう! 私は、これからもシコシュ宰相や貴殿の味方である!」

 

 健太は、これでも昔からの仲間は大事にする方だ。

 立場が変わっても、健太に良くしてくれた貴族や官僚達は、そのままの付き合いで仲良くしていくつもりである。

 

 思い入れのあるダナンの街をどうしても自分の領地としたかったということもあるが、この処遇はドノパン伯爵が健太の味方をするか見極めるという理由もある。

 健太に快く(ではないかもしれないが)ダナンの街を譲ったドノパン伯爵は、健太のテストに合格したのだ。

 

 やけくそのような勢いで健太と握手するドノパン伯爵は、今後の政権の一翼を担う重要人物として抜擢されることなる。

 今後も味方となるならば、上手い汁も吸わせてやろうというものだ。

 

「アラド様! みどもはエルゲラ男爵家の嫡男ハイエク! お初にお目にかかる!」

「男爵風情が下がれ! アラド様! 私はパンプキン子爵家のロイドと申すもの。どうぞよしなに!」

 

 それなりの大領主であるドノパン伯爵が下がった後、有象無象の小貴族どもが健太のよしみを得ようと押し寄せてきた。

 

「まあ落ち着け、話ならば一人ずつ聞こう」

 

 ちやほやされるのは悪くないが、むさ苦しいおっさんどもが相手のあのは少し気が滅入る。

 しかし、王国軍総統とはいえ成り上がり物の健太に媚びを売る鋭敏な貴族達だ。

 

 中には有用な人材がいるかもと思い、健太は面倒くさらず相手をしてやることにした。

 こうして、実権を握った健太は『催眠の杖』を乱用するまでもなく、王国で一大派閥を築いていくのだった。

 

     ※※※

 

 その後、英雄である聖女セリシア達、『エターナル・メイデン』とともに、健太は聖女セシリアとの結婚のお披露目も兼ねて王都の街をパレードして練り歩いた。

 あらかじめアラド商会に命じて、市民には酒や料理を振る舞うようにしておいたので、市民の反応は上々である。

 

 パレードを眺めながら、祝いの振る舞い酒を飲んで気分も上々で市民が言う。

 

「新しい総統様と聖女様が結婚して! 市場にも活気が戻っている。物価が下がって、いいことずくめだ! あはは!」

 

 それに、商人らしき他の男が不満げに叫ぶ。

 

「何がいいものか! アラド商会の息のかかった王都で商人だけが商売できて、俺たちは排除されてるんだぞ!」

 

 商人の周りの男達が叫ぶ。

 

「お前の店が王都の混乱をいいことに、ぼったくってたからだろ。ざまあみろだ!」

「なんだと! アラドなんてひとつもいいもんか!」

 

 なおも不満げな商人の男は、そう叫んで暴れだした。

 それを周りの男達が囲んで殴りつけた。

 

「まだ言うかこいつ!」

「賄賂政治になって、アラドの良いようにされて! おかげで俺は破産だ、畜生め!」

 

 暴れだした商人の男が、囲まれてボコボコにされている。

 そんな争いを、健太はニヤッと笑いながら眺めてゆっくりと通り過ぎる。

 

 振る舞い酒だけではなく、アラド商会はしばらく安価で商品を配ってやっているので市民の評判はいい。

 しかし、中にはアラド商会の系列の商人だけが商売を独占しているため、自分の所の商品が売れなくなったと怒っている商人もいる。

 

 エリザベート姫の派閥に賭けたせいで出資したり物資を掛売りしたりして、大損こいて健太を逆恨みしている商人も多数いた。

 しかし、それがなんだ。

 

 もうアラド商会が王国での絶対的な権力を握ったのだから、遠慮はいらない。

 逆らう者は、権力を使ってバリバリ取り締まればいいだけだ。

 

 独占禁止法もくそもないのは、中世的政治の都合の良さである。

 ちなみに、賄賂と言われているのは健太が商会の商売を許可制にしてきちっと徴税させる制度にしたからだ。

 

 健太が《異世界交易チート》で金貨を使う都合上、多額の金貨が必要となるため、紙幣を発行して市場から金貨を吸い上げるシステムを確立したのだ。

 それは、あくまで健太の都合だけの話だったのだが、いち早く紙幣や証券の制度を確立したアレシア王国は他国よりも安定して発展していくこととなる。

 

 全てが健太の順調に進む。

 そして、その夜……。

 

 健太の今住んでいる屋敷に招かれた聖女セシリアは、旅の垢を落とすために湯浴みで身体を磨き上げると、健太の部屋にいそいそと訪ねて来たのだった。

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