※この作品はR-18です。

【Rewrite】星の階(きざはし)を昇った先に   作:千月華音

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第二十三章:即是

 

 

 色のない瞳。

 形のない想い。

 それは――永劫不変のものなど何もない、実体のない空虚さそのもの。

 なのに。

 なぜ俺は……それに惹かれてやまないのか。

 自らが空虚であるが故か。

 自らの本質が空であるが故なのか。

 手を伸ばす。

 そこには届かないと思っていた領域がすぐ目の前にあった。

 ずっと昔に切り離されていた場所。

 俺の本質は。

 きっとそこに――ある。

 

 

 

 

 

 

 海が見えた。

 海というよりそれは……何かのエネルギーの塊のような。

 自身の内部を漂う海。

 だけどあの海は、どこか別の場所に繋がっている。

 飛び込めばそこへ至るのかもしれない。

 だが……。

 

 

(怖い……)

 

 

 あの海は、今の自分には形のない物質に見える。数字の羅列。原子の集合体。

 こうして眺めているだけでも気が遠くなりそうだ。

 生命は海から生まれた。

 原初の命は形のない物質だった。

 もしもそれが、形のないものから生じたものなのだったとしたら……。

 なぜ形が生まれた?

 物質という形態を取るには、様々な奇跡の上に成り立つ。

 形のないまま存在するのなら、命は何も変化することが出来ない。

 変化……。

 

 

(変化を……求めていた?)

 

 

 命というのは、均一化された偏在するエネルギーを拡散するために増えたもの。

 ……なぜそんな考えが浮かぶのか。

 自分でもよくわからないが、そうとしか思えない。

 それは宇宙そのものの状態を意味する。

 宇宙の存在は、もしそれを認識する超越者がいたとするなら、エネルギーを拡散していく命という存在は――。

 

 

(危険因子になる……)

 

 

 だが宇宙は不確定性原理により認識することは出来ない。

 宇宙そのものの存在を捉えることは不可能だ。

 次元を超越でもしない限り……。

 

 

(俺は……)

 

 

 一度――そこを越えている。

 いつだ? どこで……。

 わからない。だが、あの海を越えた。ここにいる自分は、そこから出て形を得たもの。

 命を得た。

 ならば命とは、みなあの海を越えたものなのか。

 

 

(……いや、違う)

 

 

 エネルギーが偏向していくこの宇宙で、いまだ拡がりを続けている存在。それが命だ。

 オーロラの波。

 あれらは物質を求めて、つまり変化を求めて、拡がりを見せている。

 あの波のたゆたう先に。

 ひとつの集約された生命体の存在があった。

 

 

(篝……?)

 

 

 彼女は。

 命を一度形のないものにしたもの。

 それが意思を持った。

 意思を宿して、命そのものを存続させようとした。

 本能のようなものか……?

 だがそれだけなら、果たしてあれほど永い時を閉じ込めてまで模索するだろうか。

 執念のようなものすら感じる。

 命が増え続ける理由。

 それはやはり――変化が必要だということ。

 絶えず変化し続けねばならない。

 それがこの宇宙を偏向させている原因だ。

 命とは――。

 

 

(拡がり、増えていくもの……)

 

 

 熱的拡散。

 それは自分とは対極の存在であるかのように感じた。

 なぜそう思うのか。

 だが……。

 

 

(篝に惹かれている理由は……)

 

 

 あの瞳の奥に宿す意思。

 命そのものの発現意識。

 自分とは対極に位置するもの。

 それがそもそもの原点だった。

 

 

(守ってみせる)

 

 

 俺にはもう、それしかない。

 最初からそれがすべてだった。

 彼女の瞳を初めて見たそのときから。

 篝という存在は、あの冷えた海を越えた一人ぼっちの自分の、頼るべき道標だった。

 強くなりたい。

 彼女を守れる強さ。

 弱くて脆い自分を心の奥深くに沈めて。

 暗闇を照らす、あの星の煌きのようなたったひとつの命。

 

 

(――篝)

 

 

 彼女を想うこの鼓動の高鳴りを、ずっと信じて。

 守りたいと誓った。

 

 

 

 

 

 

to be continued……

 




即是……色と空を合わせてひとつにした一体不二であること。仏教用語。
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