【Rewrite】星の階(きざはし)を昇った先に 作:千月華音
篝の機能を取り戻す。
そのために必要なこと。
(彼女の本質……)
それを知る必要がある。
本質というより本来の性格といってもいい。生命そのものである篝に本来人間に備わっている人格や性格は存在しないが、篝という存在が持つ意思はある。生きる意味を探ろうとする意思。それが彼女の持つ資質であり、本当の意味での性格だ。
今までの彼女の言動(言葉そのものはないが、伝わってくる意味や行動)から分析してみると。
篝というのは――。
(かなりいい加減でアバウトだ……)
それも無責任という折り紙つき。けっこう我儘で我欲が強い。そしてプライドもかなりある。
そして、――ここが一番肝要な部分だが。
執念深い。
これを喚起させるしかない。
つまり……。
怒らせる。
あと、それだと殺されるので、真摯な気持ちを訴える。
これをワンセットにしないと、本当の篝を取り戻せない。
(どうするか……)
篝をベッドに運びこみ、彼女を愛撫しながら目が覚めるのを待って裸で抱きしめていた。必要な道具もすぐ近くに置いてある。すでに準備万端整えた。
女を怒らせるのに最も効果的なのは、嫉妬だ。
だがそれだと、人間的な感情を誘発する。
今回、篝がこうしてメイド姿でもてなしたのは、――おそらく。
(並列世界での俺を見たから……)
嫉妬した。
数多の世界にいる俺が、いろんな女に手を出しているのを見て、我慢できなくなった。……そんなところだろう。
それを素直にぶつけないのが篝という女の面倒くさいところで。
これならまだルチアのほうがわかりやすい分可愛げが……。
そんなことはどうでもいい。
とにかく、篝が嫉妬を覚えてしまったため、彼女の生体機能の一部がエラーを起こした。
今回メイド姿での奉仕は、そのエラー修正過程のデバッグといったところか。
女の研究をして、俺の趣味嗜好を把握した上で、大胆に誘いをかけてきた。気をひいて自分だけのものにして、他の女の立ち入る隙など与えないように。
このへん、篝の性格が出ているといえなくもない。
人間性はそのデバッグ作業で必要だからプログラムしただけなのか。
(いや……)
名前を呼んだ。
あれが決定打になっている。
篝が――『天王寺瑚太朗』を固有名詞として存在を認識した。
それは個としての捉え方。
篝は個人ではない。すべてに通じる、全としての個。だから感情は必要ない。でなければ。
命の研究など出来ない。
思えば厄介な存在に惹かれてしまった。
後悔も何もないけれど。
まず、彼女の人間性を排除しないと。
それには彼女の本質を喚起・誘発させないといけない。
篝を見下ろす。
最初の性交のとき……。
(胸が小さいのを気にしてたな)
それも人間的といえなくもないが、どちらかというとあの時はまだ、篝はまだ己を保っていた。
篝は胸を気にしている?
それくらいいくらでも大きさを変えようと思えば出来るはずだが……。
それともそうしたくない理由でもあるのか。
胸に触れてみる。
弾力があって、柔らかくて、……気持ちいい。
唇で吸い上げる。
素直に反応し、乳首を指と舌で転がした。揉みながら舐めまわす。吸い付いて痕を残す。
ありとあらゆる愛撫を施し、胸だけで感じるまでそれを続けた。
膣の湿り具合で判断するが、やはり濡れてきている。今まで篝が嫌がるからあまり胸に触れなかったのを今さらながら後悔する。
(ちゃんと感じるのに……)
なぜ嫌がるのだろう。胸は男でも感じやすい部分だ。女なら尚更。
それとも。
感じるのが嫌なのだろうか。恥ずかしいところを見せたくないから?
指を再び尻の窄まりに入れた。……すると。
乳首を甘噛みしたと同時に篝が達した。
ビクビクと痙攣し、達してようやく意識が戻ったのか、篝は目を覚ました。
「……っ?」
「おはよう」
自分が今どんな格好をさせられているのかわかったのか、篝の唇がわなわなと震える。その唇を塞ぎながら左手だけで尻穴と膣、両方を刺激した。
「っ……っ!!」
唇を塞いでいるから声は出せない。――出させない。
嫌がるように腕を突っぱねてくる。構わない。やめるつもりはない。
あらかじめ尻穴はたっぷりと潤滑油を塗ってある。そこに再びいきり勃った自身を挿入した。
「――――っ!!」
声にならない叫び。
同時に膣にあらかじめ用意してあったバイブを入れた。先ほど家から持ってきた。まだ残ってて良かった。
スイッチを入れる。
「――っ! ……っっ?!?!」
篝の混乱を微笑みながら見つめ、未知の振動に怯えている様子を落ち着かせるかのように優しく口づけていた。
挿入した自身が振動によって固くなっていく。動きを早めてバイブを奥まで潜りこませた。――すると。
「 !!」
数値的な――声。
正確には声ではないが、篝の感情が解析不能状態を表すときの声だった。……これを待っていた。
おそらく今、彼女の中で未知の感覚を必死に解析しようとしている。
バイブも役に立つことがあるのを思い知った。これ考えたの誰か知らないけどありがとう。
篝はひっきりなしに痙攣を続けていた。よほど気持ちいいのか、それとも気持ちよさを通り越しているのか、抵抗もできずに手で必死にしがみついている。そのまま掴まって離さないでくれ。
こっちも、もうとっくに余裕ない。
バイブの振動を最大にし、膣内を縦横無尽に動かしながら、篝の息がとまるほどの勢いで亀頭を潜りこませた。熱くてたまらない。嵐のような快楽の時。このまま死んでもいい――。
篝を片手で抱きしめる。
唇を重ね舌を絡ませながら奥深くで放つと、彼女も引き攣るような動きをして精液を搾り取ってくれた。同時に熱いものが股の間を流れていく。
とまることのない篝の潮吹きが快楽の深さを表していた。
バイブのスイッチを止めて引き抜くと、やっと篝が泣きながら怒り出した。
「……■■っ!! ■■■!!」
懐かしい、圧縮された言語。割れるように頭が痛いが、そんなことどうでもいいくらい嬉しかった。
戻ってくれた。
失われては……いなかった。
「……?」
篝が瑚太朗の涙を不思議そうに見つめ、指で掬い取る。
その手を取り、彼女の薬指に口づけ、そして自分の薬指のリボンにもキスを落とした。
誓う。
二度と彼女を失わないと。
この命かけて守り抜くと。
「篝、ごめん……。君を失くしたくなかった……。酷いことしたよな、すまない……」
「……」
謝ったが。
篝の機嫌は、当分おさまらないようだった。むくれたようにプイッとそっぽを向く。
そんなところも懐かしくて嬉し涙が出た。
篝に挿れている入口付近が、早く出ろというかのように押し出してきた。
その刺激に苦笑する。
「出たいけど……それ逆効果だから」
キツく締め付ける感触が気持ちいい。
篝を抱きしめる。
嫌がるように身を捩る彼女を、壊れものでも扱うかのように手で優しく愛撫した。
「あと一回だけ、……いいか?」
「……っ、……!!」
「うん。オッケーってことで」
「!!!!」
今は。
言葉が通じないことにしておいた。……言いたいことは伝わったけど。
ピアノの音がした。
ちはやの家にはグランドピアノが置いてある。よく咲夜と弾いていた。
それを横目で眺め、一緒に弾けないのを恨めしく思ったことも。
「……上手だな」
篝の演奏を聴きながら、懐かしくなって隣に座った。……今なら弾ける。彼女の演奏を見ただけでテクニックを習得した。
篝は。
少し迷惑そうな顔をしたが、弾けるものなら弾いてみろとばかりに、高音域を奏でる。
それに合わせて演奏する。
篝の口から声にならない声が空気の振動を伝えた。楽譜だった。なんだかんだ言って親切なところがある。
二人で連弾した。
音が拡がり、心を包みこむ。二人で奏でる――音。
それは。
ここにいてもいいのだと。
やっと辿り着いた場所なのだと。
教えてくれているかのような――音だった。
「……?」
篝が、演奏のとまった瑚太朗の指に手を乗せる。
わかっているけれど。
心が、震えて……。
「ごめ……。ちょっと、顔洗ってくる」
鍵盤を涙で汚したら申し訳ない。
そう思って立ち上がると。
篝が背伸びして、口づけてきた。
「……っ」
触れるだけのキスだったけれど。
まだ拗ねたような、怒ってるような、複雑な顔。
仕方ないから――キスした。
男のくせに泣くな。
そう言ってるような気がした。
篝の機嫌は、まだ直っていないけれど。
少なくとも……。
嫌われてはいないみたいなので、ホッとした。
「……ありがとな」
頭を撫でる。
嫌がって、手を振り払う。
だけどしつこく何度も頭を撫でると。
篝のリボンが手を払いのけた。これ以上やると怒りに触れる。
なので。
彼女の唇を、そっと盗んだ。
「……」
目を閉じる。
これが――最後のキス。
覚悟を決めた。
もう二度と、……彼女を失わない。
そして。
「少しだけ……離れるけど」
涙を振り払った。
「必ず戻るから、待っててくれ」
優しい嘘を――ついた。
to be continued……
次回以降、最終章となります。