【Rewrite】星の階(きざはし)を昇った先に 作:千月華音
「篝……」
名を呼ぶ。
数えきれないほど。
これで最後だと思うと、これしか想いを伝える術がない。
彼女の名は――生きる意味そのものだから。
「っ! 、、っ!!」
……怒ってた。
無理もない。
まともなセックスなどしていないのだから。
だけど……。
(ごめんな……)
普通に愛し合うこともできなくて。
共に極みを昇ることができなくて。
そうしてしまうと。
彼女を壊してしまうから。
「………………、…………」
篝は次第に。
怒りをおさめていき、身を委ねてきた。
慣れてしまったというのもあるのかもしれない。――後ろに。
そう。
いま使っているのは、後ろの穴だった。
でも彼女のそこは、瑚太朗をぴったりと包み込んで、キツさと熱さがたまらなく心地良かった。
排泄に使うわけでもないのに、収縮と伸縮が交互に押し寄せてきて、絶えず刺激をもたらしてくれる。
抜かずにずっとそこで動き続けていた。
それが……。
篝の快感を麻痺させていた。
いや。
わざとそうしていた。
心の中でずっと謝っていた。
でも……感謝もしていた。
篝の優しさに。
(気づいているよな……たぶん)
瑚太朗の本質。――篝を脅かす、敵であると。
思えば。
最初の出会いのとき、その片鱗がすでにあった。
彼女は最初に瑚太朗を存在ごと消滅させた。
一番効果的な殺害方法。
あそこで散ってしまえば、それで何も問題なかった。
だが、収束してしまった。
それだけの事象密度をすでに持ってしまっていたから。
その後、心臓を壊し、首を刎ね、マグマで溶かし、……ありとあらゆる方法で殺害しようとしたがどれも失敗。
篝はやがて諦めた。
研究の邪魔をしないのなら放っておいても害はないだろうと判断した。
だが。
今度は瑚太朗が愚痴を言い出した。
精神的揺さぶりをかけようとしているのかと篝は思っただろう。
それで、――とどめを刺そうとした。
命の理論。
その本質の一部を垣間見せ、収束も不可能なほどのダメージを与えようとした。
それも失敗した。
本質の一部を瑚太朗が理解してしまったからだ。
そこで初めて篝の興味が瑚太朗へと傾いた。
実験材料として。
――そう。
敵を料理しようとした。篝の知的探求心に火がついてしまった。
そして、拾いあげた。
知の領域の彼方で彷徨っていた瑚太朗を。
被験者を失うわけにはいかなかったから。
それが……。
瑚太朗の想いを導いてしまったことに、篝は気づかなかった。
そして、因果律の歪みを正そうと枝世界の一部を消滅させたとき――初めて。
瑚太朗の想いに気づいた。
気づいたときには、もう手遅れだった。
因果律を正してしまったのだから、その原因を作ったのは自分だと――。
篝の涙。
あれは手遅れでどうすることもできない表れだった。
篝にはもう……。
頼れる人が、瑚太朗しかいなかった。
敵で、被験者で、そもそもの元凶の瑚太朗を頼るしかなかった。
それは――やっと叶った、想いの成就だけど。
破滅への序曲にしかならなかった。
だから……。
(さよならだ――)
篝の髪。サラサラな手触りを感じながら、彼女の中を断続的に動いていた。
篝の手が瑚太朗の手を、膣内へと導こうとする。
それに逆らわず、濡れた蜜壷を優しく掻き混ぜる。
だけど後ろだけで突いていつまでも抜かずにいる瑚太朗を、篝が恨めしそうに睨みつけた。
ごめんな、と小声で謝ると。
許さない、と彼女が声にならない声で言った。
でも篝は許してくれていた。
与えられる刺激に満足はしていなかったが。
瑚太朗が篝への想いを精一杯伝えようとしているのが、わかっているようだった。
(そんな優しくすんなよ……)
酷いことをしているのに。
物分りが良すぎる。
高次元の生命体であるのに。
人間なんかに――優しくするなんて。
「篝……」
口づける。
彼女が弱い耳の裏や、うなじを指で愛撫しながら、濃厚な熱い口づけを交わしていた。
酔いしれて蕩けそうな篝をさらによがらせようと、子宮のある部分を目掛けて穿つ。
一方的に極めさせられ、満足できないというかのように、腸壁をキツく締め付け瑚太朗の精を絞り取ろうとしていた。
だけど同時に達することはもう、できない。
それでいい。
この想いは、一人で抱えて持っていく。
これ以上の贅沢は望まない。
こんなことまで許してくれた篝を……。
感謝したい気持ちでいっぱいだった。
「…………」
サイドボードに手を伸ばす。
そこには篝を怒らせるために使ったものがまだあった。
口づけに夢中になっている篝の隙を窺い、濡らす必要もないほど蜜で溢れているそこに――。
再び挿し込みスイッチを入れた。
「……っっ?!」
やめろというかのようにリボンが舞う。
だけどグリグリと押しこまれていく感触が、篝の抵抗を次第に削ぎ落とし、リボンが勢いをなくしていった。
モーターは弱のまま。これなら中途半端な刺激だけしか与えられない。
だけど感じてもらいたくて。
気持ちよくなってもらいたい、ただそれだけだった。
「っ、……っ! ……、――……」
痛みではない不思議な感覚に、篝は――陥落した。
腰をすり寄せ、求めるように瑚太朗の手を奥へと導こうと結合部に触れていく。
膣内の振動にビクビクと背を引き攣らせ、瑚太朗がバイブから手を離しても、自らそれを掴んで。
内部へと全ておさめていった。
快楽の極みを昇っていた。
(綺麗だ……)
その表情に喉が鳴るほど見蕩れてしまう。
こんな刺激でも篝は欲望に忠実で。
恥ずかしさとか屈辱とか、人間が感じる抵抗など、彼女にはなんの障害にもならない。
娼婦やAV女優などの開き直りなどとは違う。
そもそも開き直るような感情は持ち合わせていない。
強いて言うなら……。
(幽玄……壮麗……)
その境地に似ていた。
やってることは卑猥な行為なのに。
なぜそう思えるのか不思議でならなかった。
「篝……。気持ち、いいか?」
問いかけると。
篝は、これじゃ足りないというかのように瑚太朗に懇願する目を向けてきた。
欲しがっていた。
でも……。
「ごめんな……」
せめて……篝だけでも。
膣内のバイブを探り、スイッチを切り替える。
振動パターンを変えてみた。それまでの震えるだけのものから、それプラス回転させる動きに。
中で暴れまわる淫靡な感触に――篝は。
たまらないといった様子で、瑚太朗に両腕でしがみついてきた。
爪が背中に立てられる。皮膚が裂ける。
だがそれだけ篝が感じてくれている証。
嬉しかった。
満たされていた。
幸せを……感じていた。
(そう、か……)
なにも――性の快楽の共有に限らない。
篝と歓びを分かち合う。
それはこんな形でも出来たのだ。
娘に抱いた無私の愛。……それにも似た。
篝への限りない想いが、心の中を満たして溢れていくのを感じた。
(でも……)
こんな快楽を知ってしまったら、もう取り返しがつかない。
彼女がヤケにならなければいいのだが。
それだけが心配だった。
(でも、まあ……)
篝なら。
どこにいようと。どの瞬間であっても。
きっと可能性を見出してくれる。
彼女の深い深海色の瞳の奥に潜む、命の輝きが失われることは決してないのだから。
「篝……今度はそれ、後ろでも使ってみようか?」
もう篝は。
その言葉に抗う術もなく、ただ欲しいと頷いていた。
It leads to thirty-six chapter……
最後まで18禁につき合わせてしまいまして、申し訳なく思います。
本編にてカットしたシーンを厳選していたらこうなりました。
他にもありますが……。それを書くかどうかは定かではありません。
ひとまずこの話をもちまして完結とさせていただきます。
ここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
「小説家になろう」サイト投稿のほうもよろしくお願いします。