【Rewrite】星の階(きざはし)を昇った先に 作:千月華音
②と③を続けて投稿します。
――数日前
「与太郎くん」
「……」
もういい加減慣れたとはいえ。
訂正するのもバカバカしくなり、持っていた鉈を横に置いて手渡されたタオルで汗を拭いた。
ちなみに薪割りの最中。この家にはなぜか暖炉があるが、薪は用意されていないらしい。使いたければ自分で作る以外になかった。
なぜか丸太の在庫は裏の倉庫に山ほどあった。
「ちはやさんに頼まれたんですか」
「違う、自分からやるって言った。そろそろ寒くなるから用意しておいたほうがいいだろ」
「今朝の不始末の謝罪ですか」
――ぐぬぬ。
聞いたのなら最初からそう言えばいいのに、この男は相変わらず回りくどい。
「夜這いをかけたそうですね」
「朝だから夜這いとは言わないだろ」
「同じことです。寝込みを襲おうとして、逆にちはやさんに突き飛ばされて窓から落ちたとか」
「悪かったよ! だけど途中まではうまくいってたんだ。なのにちはやのやつ……!」
はあ、と咲夜が深くため息をついた。
はいはい、どうせ俺が悪いとでも言いたいんだろ。こいつにちはやのことを言ったところで、どうせ庇うに決まって……。
「……このことについては、私の責任でもあります。与太郎くんには頑張ってもらうしかありません」
……あれ?
なぜかいつになく、しおらしい。
ていうかこいつが俺に謝るなんて、今まであっただろうか。
「瑚太朗、だ。……おまえの責任ってなんだよ?」
「ちはやさんとはまだ一線を越えてないのでしょう」
「…………。なんでわかる」
「わかりますよ。もしそうなれば、ちはやさんの顔を見れば一目でわかります」
「顔で処女判定ができるのか?」
「いったい何年、一緒に暮らしてきたと思っているのですか。表情や態度、細かな仕草、醸し出す雰囲気、言葉遣い、瞬きの回数まですべて把握しています。そんなことがあれば一瞬で察知できますよ」
…………。
恐ろしい。
こいつのちはや観察力は俺なんかとは比較にならない。
もっともそうでもなければ、ちはやと長年契約などできないのかもしれないが。
「ちはやさんには、性教育をまったくしていません。初潮のときも私に相談に来ましたが、婦人科に連れて行きました。いまだに生理を病気だと思っているほどです」
「…………。おまえのせいだったのか。なんかちはやの反応が、感じてるって反応じゃないんだよ」
「当然です。肉体的な触れ合いは徹底的に避けていました。しかしそれ以外はちはやさんを大切に大切に扱ってきたのです」
「なんでそう極端なんだよ! あいつとキスするのも苦労するんだけど?!」
「与太郎くん。仮にちはやさんが私を異性と認識してしまったら、どうなりますか」
「……え?」
「契約は破棄されてしまうでしょう。ちはやさんの魔物ではいられなくなります。私は咲夜であり続けなければならなかったのです。男でも魔物でもなく、――咲夜にです」
「…………」
「ですから、ちはやさんが普通の恋愛をしているのをとても喜ばしく思っていたのですが、……どうやら普通ではなかったみたいですね」
「……キスから先がどうしてもダメなんだよ」
「これを使ってください」
昨夜が内ポケットから取り出したチケット。――航空券と、温泉宿の宿泊券?
なんだこれは。
「貸し切りの露天風呂がある高級旅館です。これでちはやさんと旅行に行ってみてください」
「いいの?」
「この際です、雰囲気も大事でしょう。ちはやさんをその気にさせるためにも与太郎くんが頑張ってください」
「…瑚太朗な。……いいのかよ、本当に。あんたの大事な娘を奪われても」
「奪われるつもりなどありませんよ。たとえちはやさんが与太郎くんの子供を身籠っても、私はそのお世話をするだけです」
「気がはやいな!!」
「それくらいのつもりで事に及びなさいと言っているのです」
…………。
チケットの値段を見ても尋常じゃない金のかけようだ。こいつは本気でちはやと俺を後押ししている。
言われずとも。
ちはやをいつだって抱きたいと思っていたんだ。
「……帰ってきたら、ちはやとは同室にさせてもらうからな」
「そうなることを願ってますよ」
舌が痺れてきた。
そろそろ酔っぱらってきた頃合いだ。ちはやの舌が痙攣している。それを追いすがるように吸い上げると、わずかだが応えるかのように舌を伸ばしてきた。
だいぶ――キスが上手くなった。
最初の頃はこんなふうにキスすることもできなかった。咥内を掻きまわしただけで嫌がられた。キスというものをわかっていない。それをわからせるまでかなり時間がかかったが。
これならいける。
処女を頂くつもりだけど、ただそれだけにするものか。俺のことを感じさせてやる。
もっとも、俺も経験があるわけじゃない。
小鳥を無理やり押し倒したこともあるけど、挿れる寸前で急所を蹴られた。あっという間に逃げられてしまった。嫌われなかったのがせめてもの救いだ。
逃がしてたまるか。
ちはやとは相思相愛になったんだ。何も知らないのなら俺が教えてやる。俺のことしか考えられなくさせてやる。
「あ……ふぁ……」
「ちはや、……俺の、触って」
抱きしめ、胸を愛撫しながら、ちはやの手をギンギンに漲っているペニスに触れさせた。
ビクン――、と一瞬躊躇うように震えたが、やがておずおずとそれの形を辿っていく。
そうしながらもキスを繰り返していると、次第に手の動きが大胆に擦るような動きに変化していった。
いいぞ……。
もっとそこを、筋を辿るように……ほら、先端を指で穿るんだ。もっと全体を撫でまわすように、そうだ、いやらしく動かしてみろ。
ちはやが両手を使いだしてきた。
陰茎だけではなく陰嚢も揉みほぐすように触れている。拙い動きだが、むしろその不規則な動きが快感になる。やがてビクビクとした脈動が激しくなるのを感じたのか、ちはやの手がギュッと強く握りしめてきた。
「う…」
「い、痛いですか?」
「いや、そのくらいでいい……はあ、ちはやの手、……すごくいい」
「いいの……です?」
「気持ちいい。今度は口で味合わせてくれ。ちはやの口で」
「あ、……う……うぅ」
「ちはや」
「し、ないと……ダメですか」
「まだ酔ってないな」
「あ、も、もう……フラフラです……こ、こんなのを、口で……?」
「こんなのってなんだよ」
「だ、だって、これ、瑚太朗の……」
「俺の、なに?」
「ううう……っ! い、言わせないでくださいっ」
「ちはや。これでちはやを貫きたいが、準備がいるんだ。もっと大きくならないと」
「こ、これ以上大きくなる必要が?!」
「俺の最大勃起時のデカさがわかってないな」
「そ、そんな…」
「約束する。絶対にちはやを痛くさせたりしない。大きいほうが気持ちいいんだ、気持ちよくさせてやるから」
「は……う」
「やり方を教えてやるよ。次第に俺のを咥え続けていたくなるようにしてやるから」
「そ、そんな…」
「ほら、俺の股の間に、頭を乗せて」
岩風呂の上に腰掛けると、ちはやの身体を挟みこみ、目の前に陰茎を突き出した。
実はもうとっくに準備はできている。いつでも挿入は可能だし、いい具合の勃起状態だ。……だが。
ちはやをもっと淫乱にさせてやりたい。
俺のペニスの味を、口から全身で味わって欲しい。
普段なら絶対にしそうもないが、温泉の湯とアルコールのせいでちはやの焦点がぼやけている。こんな絶好の機会を逃す手はない。
だいぶ酔いがまわってきているのか、ちはやは物珍しそうにペニスに触れると、そっと舌を伸ばして筋を辿った。
「あ……なんか、てっぺんから、透明な雫が出てきました」
「先走りだよ。感じると出るものなんだ」
「そう、なんです? これ、おしっことかじゃ……ないんです?」
「それも出そうと思えば出せるけど、今はちはやの口を味わいたいからな、出すのは勘弁してやるよ。ほら、先端を咥えるんだ」
「んっ…」
咥えた。
初めてのちはやのフェラ……だが悪くない。口の中が酔いでちょうどいい温かさになっている。舌がおずおずと触れてきた。
「ちはや、その先端を吸ってみろ」
言われた通りに。
ちはやの舌が吸い上げだした。……うお。割れ目を穿る動きがやばい。あのちはやが、まさか俺のをしゃぶって吸い上げてるなんて……。もういつ死んでもいい。
はふ、と涎を零して口から離した途端、顔を顰めて俺を睨みつけてきた。
「苦い、です……」
「そう?」
「でもなんか……瑚太朗の味って感じ」
「ちはやで感じてるからだよ。さあ、もっと奥まで飲み込んでみろ」
「え、ええ…? こんな太いのを?」
「最初は先端だけでいい。徐々に口を広げていくんだ、ほら」
がっしりとちはやの頭を固定すると。
口を無理やりこじあけて咥えさせた。そのまま捻じ込むと、息苦しそうだが徐々に飲み込む動きに変わってくる。まだ酔いの影響が残ってるうちに、フェラで感じさせてやる。
はあ……。
ちはやの口。……小さな口だ。そこを無理やりこじ開けていくのがたまらない。歯並びもいいし、柔らかい喉肉が先端にあたって気持ちいい。
ちはやの手に手を添えて、陰茎を握らせた。
もう抵抗することなく口と手を使いながら俺の動きに合わせている。ドクン、ドクン――と脈動が激しくなっているそれを、ちはやが咥内で受け止めていた。舌がちょうどいいところにあたっている。そう、その括れのあたりがいいんだ。そこを舌裏で……あ、ざらつく感触がたまらない。
「あぅ……はっ、……んんあっ」
稚拙な動きだが、咥内で愛撫しだしてきた。
そんなちはやの目元を優しく指で撫でる。足でがっちり身体をホールドしてるが、逃げる様子はない。俺のを必死にしゃぶっている。もうここまでくれば……。
ほら。
最初の一発だ。……飲み込め。
ちはやに軽く笑みを浮かべ、我慢し続けた熱い精を喉奥へと浴びせた。
驚くちはやに構わず、顔を固定したまま止まらない射精を浴びせ続ける。
吐き出す様子はなく、そのまま喉の奥へと嚥下していった。
「は、……う」
ペニスを抜くと。
嫌がるかと思ったが……ちはやは陶酔したような顔でゆっくりとペニスを舌で辿っている。まさか、と思ったが残滓を舌で掬い上げていた。ていうか、舐めている。
一瞬唖然としたが、あまりの艶美なその姿に思わず背中から強く抱きしめた。
「はう……瑚太朗」
「俺の精液、美味かった?」
「精液……です?」
「はい?」
「おしっこじゃ、ないんです?」
「いや、小便も出そうと思えば……ていうか精液だけど、まさか」
「おしっこだと思ってました」
「…………」
「なんか苦みが……あ、でも、臭くはないですね。そうなんですか、これ、精液なんですね。で、……精液ってなんです?」
「……聞いたことないの?」
「……?」
「マジか……。あいつ、ホントに何も教えてなかったんだな」
「あいつ?」
「咲夜だよ」
「なんか咲夜の形とは、違うとは思いました」
「あいつの形……だと? 見たのか?」
「お風呂上りに、ちょっとだけ。すぐに隠しちゃいましたけど」
「…………」
「咲夜より、瑚太朗のほうがおっきくて……はう」
「もうあいつのことは、今だけ忘れろ。……教えてやるよ。今出したのは、精液って言って、子供をつくるために必要なものだ」
「子供……?」
「女が、子供を産むのは、男の出すこの精液がないとダメなんだ。ちはやの子宮に注がないと、赤ん坊がつくれない」
「そうなんですか……」
「ちはや、……俺と子供をつくろう。ちはやの中にたくさん注いでやるよ」
「それって……咲夜ともつくれたり、します?」
「…………」
「瑚太朗との、子供と……咲夜との、子供……ふたりとも、欲しいです」
「…………」
「瑚太朗?」
「ちはや。……それは無理だ」
「え?」
「咲夜とセックスすることは許さない。ちはやは俺のものだ。いいか、おまえは……俺だけのものなんだ」
「でも、」
「でもじゃない! 子供をつくるってのは、セックスするってことだよ。今からそれをしてやるから、咲夜のことは考えるな」
「あ、そういえば、咲夜に黙って行ってしまいましたよね。旅行、せっかく瑚太朗が誘ってくれたのに、咲夜にせめて一言……あっ!」
まだ言うか。
ちはやを抱きしめ再び口づけた。こんなことをしても、まだ……咲夜、咲夜。咲夜のことしか考えていない。
重ねた年月の違いか。俺ではあいつの足元にも及ばない。
ちはや。
その咲夜がな、おまえを抱けと、俺に言ったんだ。
おまえを咲夜の呪縛から解き放ってやる。
口づけは――。
荒々しく乱暴に、喉奥まで届くほど舌で掻きまわし、ちはやの口を封じさせた。