夏に出すほんのお試し版
これはふたりが新婚当初の話。
あのときと同様に、掃除中にあるものを見つけた式は当時をふと思い出す。
───
「これは……」
発見したのは猫耳がついたヘッドドレス。
大きなフリルのホワイトブリムをベースにした、猫耳以外はクラシカルスタイルなメイドの装飾品である。
これは入籍前、婚約期間にデートで赴いたテーマパークで売っていたもので、そのときは素っ気ない態度をとってはいたが内心では滅茶苦茶惚気ていたのを式は覚えていた。
「アイツ……案外こういうベタなのが好きなんだよな」
式本人がメイドのコスプレに興味があるわけではない。
幹也がメイドのコスプレをした自分の姿を喜んでいることにたまらない嬉しさを感じてしまう。
そしてそんな幹也が幸せポイントを振り切らせた日の夜は決まって強引だ。
あの日も帰宅後には〝お盛ん〟だったなと、式はお腹を撫でながら思い返す。
「そんなにメイド好きだったのかよ、幹也」
事後、裸同士のまま。
性欲が落ち着いたタイミングで式は幹也に尋ねる。
「いいや。でも式がメイドの格好をしたら、ものすごくかわいいから……ヘッドドレスだけでも自分を抑えきれなくなっちゃったよ。しかも猫耳まであって似合ってたし、なにより式だってまんざらじゃないみたいだったし」
「莫迦」
自分だって「幹也が嬉しそう」だから喜んでいたのに、お前も同じなのかよ。
そう認識した式は込み上げるものを幹也にぶつけて、幹也もまたそれに応じる。
デートの思い出とともに、そんなふうに毎晩のように求めあっていた発情期のことまで思い出してしまった式のお腹には、後に末那と名付けられる娘が宿っていた。
そしてその日の夜。
帰宅した幹也を出迎えた式の頭には件のヘッドドレスが乗っかっていた。
衣服はいつもと同じ和服。
妊娠して膨らんだお腹が苦しくないように緩めに巻かれた帯。
そこに猫耳ヘッドドレスというアンバランスな格好をした式を目にした幹也の顔は赤くなってしまう。
(急にどうしたんだ?でも滅茶苦茶かわいい)
そんな感情を幹也は抑えられず……
「おかえりなさい、旦那様。ご飯に致します?それとも……って、おいっ!」
ロングスカートをたくし上げる仕草を真似て、ふざけ気味に幹也を出迎える式。
それが幹也の理性を決壊させた結果、彼はいきなり抱きついた。
「お風呂!」
「ば、莫迦」
愛妻の妊婦和服メイドなんて格好を見れば仕方がない。
ふざけて質問するくらいなので当然ながらお風呂の準備もしてあり、そのままふたりは風呂に向かった。
広々とした浴室、浴槽はふたりで入るのも余裕だが、そういうことは妊娠前にさんざんしているのでこの頃はご無沙汰。
一緒に風呂に入るということ自体が実質夜伽の隠語に近いのもあり、丸裸になった幹也の股間は当たり前のように反り返っていた。
妊娠してから最後に抜いてあげたのはいつだったか。
何枚か〝妊娠してセックスレスの間に使うオカズ〟として、画質こそ粗いが交尾中の写メを撮っていたのもあり、おそらくひとりで抜いているのであろうが、それでも足りていないのは式の目にも明らかである。
そんなモノを見せつけられて式の喉が鳴るのも仕方がない。
大きな音なので恥ずかしくなるほどの生唾を聞いた幹也がピクンと反応し、うっすらと先端から先走りが滴っていた。
そして目線が合うふたりの目元は互いに溶けている。
浴室に入るとアイコンタクトで意思を疎通したままに、当たり前のように立ったまま唇を重ね合わせた。
「ん……」
式の身体を受け止めた幹也は浴室のタイルのうえに寝そべり、身重の式のための肉布団となる。
そのまま貪るように幹也の口を求める式を抱きしめながら、幹也はそそりたつおちんちんを式の身体に擦り付けた。
抱きしめる肉の感触。
火照りで温かくも、たぎりのある局部よりは冷たいためひんやりと感じるふとももの温度差に幹也のモノが蠢く。
キスをして舌を絡め合うだけで頭の中が心地よさで溶けていくのに、ドキドキと動悸の激しい胸には柔らかくも少し張って硬さを伴う乳房が重なり、乳首の勃起すら肌で感じられるほど。
挿入など要らない。
キスしながら抱きしめるだけで射精しそうな幹也のおちんちんがヒクヒクとすすり泣くように先走り汁を垂れ流す姿はソレを物語っていた。
(キスだけでイキそう)
そして感じているのは式も同じ。
妊娠中で挿入できないからこそ〝いつ射精しても無駄打ちになってもったいなくない〟という感情で我慢する考えがない幹也が今にも射精しそうな仕草をオカズにして、式もまた肌を重ね合わせるだけで果てそうになっている。
自慰すらする気もなく性的な行為は長らくお預けだった影響もあるのだろうか。
気持ちよさの前に式の身体からはイく度に一瞬ガクンと力が抜けて、幹也にかかる重さが増えていた。
(式もイったのかな?それどころか僕もさすがにこれ以上の我慢は……)
3回目の脱力で式の様子を幹也も察するが、そもそも既に先走りの量は汗よりも多い。
風呂場の湯気と汗と互いのホルモンが入り混じって、しっとりとした式の太ももを発射台にして、幹也も限界を迎えた。
「どびゅっ!」
唇を貪る最中、無意識に太ももの内側で式は幹也を挟み込んでいる。
この状態でさながら発射台に固定されたかのように上向いていた幹也の鈴口は黄色がかった白濁の精液を勢いよく吐き出した。
挿入していないとはいえ久々の生えっち。
溜め込まれていた射精はクリームのように濃くて熱い。
イキながら身体を預けている夫が果てる様子と共に空を舞った精液がポタポタと落下して焼きゴテのように降りかけられた式は深い絶頂を迎えて幹也を抱きしめた。
───
「流石にアレは若気の至りだな」
そして現在。
あのときお腹に宿っていた命は今でも元気に娘をやっている。
アレからも、そして現在でも、式と幹也は常識の範囲内で子作り生えっちに興じているが、まだ二人目は妊娠していない。
もしかしたら妊娠中の挿入しないえっちのときに精液を無駄にしすぎてしまったのだろうか。
あのとき幹也は「メイドの式が可愛すぎるのが悪い」と言い出して、逆上せるまで風呂場で何度も射精していたくらいだ。
後に反動があっても不思議ではない。
「それとも……またコレをつけたら幹也のやつも……」
あの日のようにアホほど射精して、今度はお腹新しい命が宿るまで止まらなくなるかもしれないな。
そう思いながら久方ぶりにヘッドドレスを被った式は恍惚の笑みを浮かべており、娘が生まれてからの普段の顔である母親ではなく、雌の顔をしていた。