※この作品はR-18です。

オトマリ if   作:浅倉椎

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中編

 小咲は夢を見ていた。

「どうして初恋の相手が、俺だといいなって思ったんだ・・・?」

「えっ・・・」

 予想外の質問に、小咲は思わず振り向いた。裸の楽の背中が視界に入り、慌てて視線を正面に戻す。

「そ・・・、それは・・・」

 いろいろな思いが頭の中をぐるぐると巡るが、小咲は意を決して顔を上げた。

「い、一条君のことが・・・、すっ、好きだから!」

「えぇっ!」

 今度は、楽の方が驚いたように声を上げた。

「一条君のことが好きだから。だ、だから、思い出の男の子が一条君だったらいいなって、ずっと、ずっと思ってたの」

 小咲はひといきに言い切ると、胸の前で両手をぎゅっと握った。心臓がこれまでにないほど高鳴っているのがはっきりと分かる。

「小野寺・・・」

「き、急にこんなこと言ってごめんね。一条君だって困るよね・・・。でも、でも・・・」

 楽の返事を聞くのが怖くて、小咲はもう自分が何を言っているのかよく分からなくなってきた。一気に感情が噴き出してきてしまい、なぜだか涙が溢れてきた。

 そのとき、背後からわずかに水音が聞こえたかと思うと、そっと背中から抱きすくめられた。

「俺も、小野寺のことが好きだ」

 楽が優しい声で耳元で囁いた。

「うそ・・・」

 思わず否定の言葉が喉を突いて出る。自分が泣き出してしまったから、優しい楽はそう言ってくれたのではないかと疑ってしまう自分がいた。

「本当だ。俺も中学の頃から小野寺のことがずっと好きだった。だから、あのとき秘密の場所で、小野寺が10年前の約束の子かもしれないと分かったとき、本当に嬉しかった」

「ほんとに・・・?」

「ああ」

 肩を抱くように回された楽の手にきゅっと力が入る。小咲もそれに応えるように、回された楽の腕に自分の手を重ねた。

「一条君・・・」

 触れ合った肌から伝わる温もりを感じながら、幸せをかみしめるように呟いた。

―――って、え・・・?肌・・・?えええっっっ!

 幸せも束の間、今置かれた状況を認識すると、小咲は一瞬で茹で上がった。

「あっ!あの・・・、い、一条・・・君っ!」

「なに?」

「な、なに?じゃなくて・・・、私たち、い・・・、今、は・・・ハダ・・・カ・・・」

 最後の方は、ほとんど消え入りそうな声になりながら現状を訴える。一方で楽の方は、そんなことはどこ吹く風と言った態度で、いたって冷静に見える。

「それで?」

「それでって・・・、恥ずかしいよ・・・」

 小咲は、もぞもぞと体を動かして楽から離れようとするが、楽にしっかりと抱きすくめられて身体を離すことができないでいた。

「小野寺は、俺とこうしてるのが嫌なのか?」

「い、嫌じゃないけど・・・、でも、私たち、まだ・・・」

「俺は、小野寺とずっとこうしていたいし、もっと小野寺に触れてみたい」

 相変わらず楽は耳元で冷静に囁いている。そのあまりも大胆な楽の態度に小咲が戸惑っていると、小咲の身体を抱いていた手がふっと緩んだ。やっと離してくれるのかと小咲が安心したのも束の間、楽の右手がすっと下に降りて、小咲の左の乳首を指先で転がした。

「ひゃんっ!」

 突然の出来事に、思わず変な声が出てしまった。「可愛いな、小野寺は」と、笑みを含んだ声で囁かれるが、小咲は恥ずかしさで死んでしまいそうだった。その間も、楽の手は動きを止めることなく、小咲の乳房を包み込むようにして優しく揉みながら、指先で乳首を転がしている。

「あっ、やだ・・・、一条君、おねがい・・・、んっ、やめて・・・」

 小咲は、楽の手を掴んで訴えるが、掴んでいる手に全く力が入らない。

「やめてって言う割には、小野寺のここはどんどん硬くなってきているみたいだけど?」

 楽が指先で小咲の乳首を摘みながら、意地悪く囁いた。事実、小咲の乳首は芯が入ったように、ぴんと硬く勃起してしまっていた。

「だ、だって・・・」

「それに、もうそろそろこっちも触って欲しくなってきてるんじゃないの?」

 そう言いながら、楽はゆっくりと小咲の肌をなぞるようにして手を下に這わせていった。

「あっ!だ、だめっ!」

 楽の手がどこに向かって行っているのかを察したが、不思議なことに身体が動かなかった。さらに驚いたことには、楽の手を迎え入れるかのように、気付かないうちに大きく脚を開いてしまっていた。

―――え・・・?うそ、どういうこと?

 小咲が混乱している間にも楽の手は下がって行き、ついには下腹部に到達して小咲の割れ目をすっと一撫でした。

「あんっ」

 性器から電流のような快感が走り、思わず甘い声を上げてしまった。いつの間にか楽も息を荒げていて、無言のまま遠慮がちに小咲の割れ目に指先を往復させていた。

 楽の指先から紡ぎ出される快感は、あまりにも甘美で何度も声を上げそうになったが、羞恥心でなんとか押さえつけた。

「はあっ、はあっ・・・」

 いつの間にか、耳元で聞こえていたはずの楽の息が少し離れたところから聞こえるようになっていた。しかし、不思議なことに楽の吐息は、徐々に鮮明になっていき、逆に目の前に広がる温泉の風景はかすんできていった。そして、視界が完全に真っ白になってしまった瞬間、現実の世界に戻ってきたらしいと自覚する。

―――そっか・・・、夢を見てたんだ・・・

 まだ、ぼんやりとした頭でそんなことを考える。

―――で、あれ・・・、わたし、一条君とお風呂で会って・・・、お話して・・・、それからどうなったんだっけ・・・

 身体が火照っているせいか、頭がしっかり働かない。夢の中で楽に愛撫された性器には、まだ快感が残っていて、楽の息も聞こえているからまだ半分、夢の中にいるのではないかと思ってしまう。

 一方で、その感覚はあまりにも鮮明で、声こそ上げないものの時折、快感で身体がぴくんと震えてしまう。

―――ちがう!これって夢じゃない!

 今度こそはっきりと小咲は覚醒した。おそらく自分は、お風呂の中でのぼせてしまったのだろうという考えに至った。

―――じゃ、じゃあ、この感覚は何なの・・・?

 小咲はおそるおそる、うっすらと目を開けた。まず目に入ってきたのは、白い天井と蛍光灯の明かりだった。背中にはやや固い感触があるから、おそらくは脱衣所のベンチに横たえられているのだろうと思い当たる。

 視線を下に移すと、自分が着ていた浴衣が身体に掛けられているのが見えた。そして、その先には見覚えのあるくせ毛の頭、楽の頭が動いていた。

―――一条・・・君?そこでなにしてるの・・・?んっ!

 再び下腹部に甘い電流が走った。それは自分もよく知っている感覚で、さっきまで夢の中でも感じていた、そして月に二、三度してしまう自慰の時に感じる性感だった。

―――え?じ、じゃあこれは一条君が・・・?うそ、うそ

 楽がこんなことをするはずがないという気持ちと現実とがぶつかり合う。しかし、下半身に意識を集中してみると両足は大きく開かされ、身体に掛けられている浴衣は下半身まで覆っていないということがはっきりと分かった。そしてこの感触。間違いなく楽は小咲の性器に触れている。しかも、そこはさっきまで見ていた淫夢のため、濡れてしまっているかもしれないのだ。

―――は、恥ずかしい・・・お願い、一条君、もうやめて・・・

 自分が寝ている間に悪戯をされるという行為に怒りを覚える前に、猛烈な羞恥心が沸き起こってくる。自分の一番恥ずかしい部分が、自分の一番好きな人の前に、しかもこんなに煌々とした明るい場所で晒されているのだ。自分でもはっきり見たことがない場所が、楽に見られ、触られているということを考えると、今すぐに消えてしまいたい気持ちになる。

 確実に楽の行為をやめさせるには、目が覚めたふりをすれば一番早い。しかし、それをしてしまうと間違いなく二人の関係は壊れてしまう。そう考えると、今の小咲には、楽がやめてくれるまで、ひたすら耐えるしかなかった。

―――お願いだから早く終わって・・・

 そのとき、小咲の願いが通じたのか、楽の指がすっと離れていった。しかし次の瞬間、再び楽の指が性器に触れる感触があり、信じられないことに性器を割り広げられてしまった。

―――う、うそ・・・。そんなところ、広げて見ないで!

 性器を広げられた瞬間、思わず身体が震えてしまい、一瞬、楽が息を詰める気配があったが、割り広げた指先を離してはくれなかった。

―――見られてる!全部見られてる!

 今までの経験から自分の性器が濡れていることは、もはや明らかだった。開かされた「そこ」がどんな形をしているのかは想像も付かないが、濡れていることだけは間違いなく楽にも知られてしまっただろう。

―――寝てるのに、感じて濡れてるなんて・・・絶対、いやらしい子だと思われてる・・・、んんっ!

 そして、羞恥心で死にそうになっている小咲に追い打ちを掛けるように、これまで感じたことがない異様な感触が性器を襲った。

―――え・・・?なに・・・これ・・・?何してるの、一条君・・・

 小咲の性器をなぞるように生温かい「何か」が蠢いている。指先とは明らかに異なる軟体動物のような感触だった。小咲は、うっすらと目を開いてみると、自分の股間に顔を埋めるように楽の頭が動いているのが見えた。そこで初めて、楽に股間を舐められているのだということを認識する。

―――や、やだ・・・一条君。そんなところ舐めないで!き、汚いのに・・・

 性器を口で愛撫するという行為があるというのは知っていた小咲だったが、それを自分がされていると思うと気が遠くなりそうだった。おまけに今日一日、ずっと忙しく動き回っていた上に、風呂に入ってすぐに楽と鉢合わせてしまったため、身体も洗っていない。いくらのぼせるまで湯に浸かっていたとはいえ、下着を脱いだときの汚れ方からすると、性器の奥は汚れているし臭いもしているに違いない。

―――ん、んんっ!もう・・・やだ・・・、んっ・・・、死んじゃいたい・・・

 途方もない羞恥心と初めて味わう強烈な性感に耐えながら、小咲は必死で声を上げるのを我慢し続ける。小咲にとってさらに不幸だったのは、寝たふりをし続けるということだった。弛緩した状態で愛撫を受けることが、こんなにも快感を高めることになるとは思ってもみなかったからだ。

 身体の奥から止めどなくぬめりが溢れてくるのが分かるが、小咲は声を抑えるのに必死で、もうそんなことまで気にしていられる状態ではなかった。

―――だ、だめ・・・。このまま、続けられたら、絶対にイっちゃう・・・よ

 このまま絶頂を迎えたら、小咲は声を抑えることができないかもしれない。そんなことを考えているときに、楽の舌先が勃起し始めた小咲のクリトリスの先端を舐め上げた。

「んっ・・・」

 思わぬ不意打ちに、思わず小咲は抑えきれずに小さく声を上げてしまった。その瞬間、楽の舌の動きがぴたりと止まると、性器から離れていき、ぎしりとベンチが軋む音がした。一瞬、目が覚めていることがばれてしまったのかと考えたが、どうやら小咲の気配を伺っているようだった。

―――よ、よかった・・・。お願いだから、このまま終わって、一条君・・・

 しかし、そんな小咲の願いとは裏腹に、楽がその場を離れる気配はなかった。代わりに、しゅるっという衣擦れの音に続いて、ぱさりと何かがベンチの上に置かれる気配がした。

 小咲は不審に思い、再び薄目を開けて見てみると、そこには全裸で小咲の脚の間に膝立ちになっている楽の姿があった。

 始め、小咲には「それ」が男性器だと認識できなかった。小咲の知っている男性器とは、小さい頃にお風呂で見た父親のだらしなく垂れ下がった芋虫のようなものだけだった。しかし、今、楽の股間に生えていたものは、蛇が鎌首をもたげて威嚇しているように屹立していた。

―――な、なにあれ・・・。男の人って、あんな風になるの!

 小咲は、薄目を開けたまま楽のペニスから目を離すことができなかった。初めて目にする勃起した男性器は、とてつもなく大きなものに見えた。陰毛をかき分けてそそり立つペニスは、まるで別の生き物のようにびくんびくんと震えている。そして、楽は小咲の股間を凝視したままペニスに手を添えると、ペニスを握ったままゆっくりと前後に動かし始めた。

―――え!うそうそうそうそ!何してるの、一条君!ま、まさか・・・

 男性の自慰行為に対する知識がない小咲にも、目の前で始まった行為が自慰だということは理解することができた。小咲は、自分が普段している女の子の自慰に比べて、男の子の自慰はひどく単純な行為だと思った。しかし、その単純な行為でも、楽の興奮と快感が高まっていることは、その荒い息づかいと、時折漏れるうめき声のようなものからも感じ取ることができた。

「小野寺・・・」

 突然、自分の名前を呼ばれ、小咲は一瞬どきりとした。もしかしたら自分が目を覚ましていることに気付いたのかもしれないと小咲は考えたが、どうやらそれは独り言のようだった。

「小野寺・・・、小野寺・・・」

 うわごとのように小咲の名を呼びながら、楽はペニスをしごいている。楽の息はますます荒くなり、ペニスをこする手の動きも心なしか速くなっているように見えた。

 一方の小咲も初めて目にする異性の自慰行為から目が離せなくなってしまっていた。もちろん、自分の性器が晒されていることは、とてつもなく恥ずかしいのだが、同時に自分の性器を見ながら楽が自慰を行っているということに強い興奮を覚えていた。

 楽の唾液と膣から溢れたぬめりとで濡れた小咲の大陰唇は、空気に晒されひんやりとしていたが、その奥は熱を帯びて新たなぬめりを生み出していた。わずかに開いた割れ目は小咲の興奮を顕すように、時折ひくん、ひくんとほんの微かに震えている。そして、割れ目の下端には、膣から溢れた露が小さく玉を作り、やがてつうっと会淫へと流れていった。

「うっ、小野寺・・・、小野寺ぁ・・・」

 楽の息がさらに荒くなり、ペニスをこする手の動きも速くなってきた。楽が絶頂を迎えようとしていることは、小咲にもはっきりと分かった。

「くぅっ、はっ、も・・・うダメだ、小野寺ぁ、好きだ、好きだ・・・あぅっ!」

 楽は、傍らに置いていたタオルを取るとペニスに被せた。直後に身体をくの字に折ると、がくんがくんと痙攣するように腰を震わせた。

「はっ、はっ、はぁっ・・・・」

 絶頂に達し、肩で息をする楽を小咲は呆然と見つめていた。

―――え・・・?なに?一条君、今・・・好きって・・・

 そのとき、楽が慌てたように顔を上げた。小咲も慌てて目を閉じると寝たふりを続けた。ぱさりと小咲の下半身に浴衣が掛けると、ばたばたと楽が脱衣所から去っていった。ほどなく廊下をぱたぱたとスリッパで駆ける音と共に「女将さ~ん!」という楽の声が聞こえた。

「ふう」

 小咲は、張り詰めていたものを吐き出すように息をすると、身体を起こした。身体に掛けられていた浴衣がぱさりと落ちると胸元が露わになった。

 身体の奥にはまだ熱が残っていて、全身がほんのりと桜色に火照っている。赤みがかった乳首は、小咲のこれまでの興奮を顕すようにぴんと勃っていた。

―――一条君があんなことするなんて・・・

 常に自分よりも周りのために全力でぶつかっている楽を間近で見ているだけに、さっきまでの楽の行動は小咲にとってショックだった。しかし、不思議と楽に対する怒りは沸いてこなかった。それは、もちろん楽への想いもあるのだろうが、小咲も月に二、三度とはいえ楽のことを想いながら自慰に耽ることがあるという事実がそう考えさせるのかもしれなかった。

「男のひとってあんなふうにするんだ・・・」

 さっきまでの楽の行為を思い出して、小咲はぽそりとつぶやいた。同時に自分がされていたことと、身体の反応を思い出してしまい、一気に顔が朱に染まる。恥ずかしさで身をよじった拍子に、ぬるりとした感触がお尻の下から伝わり一層顔が熱くなる。

―――う~~~、しかも、こんなに濡れてるし。ぜったい、いやらしい女の子だと思われてる・・・

 しかし、小咲が落ち着く暇を与えまいとするように、廊下から慌てたような足音が聞こえてくる。おそらくは楽が助けを求めにいった叔母のものだろう。

―――もう!このあと、どんな顔して一条君に会えばいいのよ~~~

 小咲は、胸元を隠すように浴衣を掻き揚げながらそんなことを考えるのだった。

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