空は光なき雲に覆われ雨が気分を沈ませるかのような量で降り続けている
周りは隙間ない多くの木に囲まれた森
その中に忍び装束の若い男が静かに片足を引きずりながら歩いていた。
彼の名はタダカツ、彼はとある忍一族の1人だが、彼は一族に依頼された諜報任務を相棒のポケモン達と彼の仲間と共に行っていたが敵の罠にはまり、敵との激戦の末仲間は戦死し、残されたのは瀕死状態の相棒のポケモン達と全身傷だらけで逃亡した彼1人だけだった。
「いったいここはどこなんだ?私はこのような場所で死ぬのだろうか?」
彼は仲間を失った絶望感を強く背負ったまま歩き続け、やがて森を出た。そこは和洋折中のデザイン建物が多く並ぶ街であった。
「ここは・・・?とりあえず人目のつかないところで休むか」
彼は小さな花畑のある敷地の木の下で木にもたれながら座った。
「傷がさらに深くなってるな。ポケモン達も動ける状態ではないし、このまま私はのたれ死ぬのか・・・。皆すまなかったな」
彼はそのまま意識を失ってしまった。
「ああ・・・。私はとうとう死んだのか。死とはこんなに暗く温かいものか。ん?温かい? この温かさはやけに現実味ありすぎるぞ」
彼は静かに目を開けてみるとそこは木の板の天井に、襖や畳が敷かれた広い部屋で彼はフカフカの布団の上に寝ていた。
「ここはいったい?それにこの包帯はいったい誰が?」
彼の全身の傷には綺麗に包帯が巻かれていて、布団のそばには相棒の入ったモンスターボールが綺麗に並べてあった。
「・・・・・・・・」
すると、部屋の襖が開き、そこから女性が現れた。
「あら、忍者はんお目覚めになられたんやか?」
そこに現れたのは艶のある長い黒髪に蝶の髪飾りを付けて、和洋を合わせたかのようなデザインの振袖を着たそれはそれはとても美しい女性であった。
「あんさん、家の側の花壇で傷だらけで倒れていたはんよ?」
彼女曰く、傷だらけで気を失っていたタダカツを散歩の途中で見つけて、家の中に仲間の人と共に運び、さらに医者に診てもらったりして、看病していたらしい「見ず知らずの私にこのような看病して頂き誠に感謝し申し上げます。ですが、私は誰とて親しく話をする資格はありませぬ。長居するとあなた様に迷惑かけてしまうため、これにて失礼いたします。」
タダカツはすぐに部屋を出ようとしたところ、
「お待ちよし!」
彼はビクッとして振り返った。
「あんさんまだ怪我がほとんど治っておらんのよ。治るまで家で泊まっておりんさい」
常に優しい笑顔で話しかけてくれた彼女はとてつもない気を出して彼を説得した。その強い気に打ち負けた彼は素直に従って布団に戻った。
「あんさんその体ではあまり自由に動くことはできんやろ?うちのことは気にせんとゆっくりしときんさい」
「そういえば、紹介がまだどしたね。うちはマーシュこのクノエシティのクノエジムのジムリーダーをしてはんよ」
「申し遅れた、拙者の名はタダカツと申す。どこから来たかや目的は訳あって答えることはできませぬが、ご覧の通り忍びの道を極めるため、ポケモントレーナーをしているものでございまする」
彼女は先ほどの強い気を出してたのが嘘のように静まって穏やかに話しかけてくれた。
「あんさんのポケモンはん達はあんさんが寝ている間にポケモンセンターで治療してもらってたんよ」
「そうでありましたか、それは大変お世話になり申した。このご恩は一生忘れませぬ」
「そんなに固くならなくてもいいんよ。今日はお身体もまだ癒え始めたばかりやから、ゆっくり休んでおくれやす」
そして、彼女は静かに部屋から出て行ってしまった。
タダカツは部屋の壁に掛けられているカレンダーを見ると、気を失った日から3日も経っていることに気づいた。
「彼女はそんなに私のことを看病してくれて、その上私のポケモン達まで治療してくれるとは、彼女は一体なぜ見ず知らずの私をここまで診てくれたのだろうか?」
そう疑問になりながらタダカツは再び寝床について眠りに入った。
その後、タダカツがマーシュにお礼を述べた日から三週間以上が経ち彼の傷はほぼ完全に動けるほど回復していた。
ある日タダカツはマーシュの家の近くの広い場所にて相棒のポケモンの一匹であるゲッコウガと共に肉体を鍛えるための修行をしていた。
厳しい修行を終え、マーシュの家に戻って自室に向かっていると、マーシュの着ていた振袖とよく似た色鮮やかな振袖が無数に服掛けに並べられており、近くには彼女のものと思わしき仕事部屋があった。
タダカツは興味を持ったのかそれらの無数の振袖を一つ一つじっくり見ていた。
「これはポケモンをイメージしてデザインしたのか、露出度はやや高いが、色鮮やかで可愛らしいな・・・」
「タダカツはん、振袖に興味がありんすか?」
「・・・・・!?!?」
タダカツは突然横に現れたマーシュを見て余りにも驚いたのか思わず声が出なくなってしまった。
「これはマーシュ殿、驚きましたよ」
「あら、驚かせるつもりはなかったんやけど、驚かせてしまったならごめんな」
「いえ、それは特に気にしていませんので謝らなくても大丈夫ですよ。それより、この可愛らしい振袖は全てマーシュ殿がデザインし、作ったものですか?」
「ええ、うちはジムリーダーだけやのーて、デザイナーもしてはんよ」
「そういえば、街に出かけている時、時々ここにあるような振袖を着た若い女性を多く見かけたのだが、全てマーシュ殿が作っていたのですか」
「そうとは知らず見ず知らずの私を匿ってもらったばかりか、食事や寝床それに私のポケモン達の世話までしてもらって、本当に何とお礼を申し上げてはいいのかわかりませぬ。これまでのご無礼をお許しくださいませ!!」
タダカツはとっさに床に正座して深々と土下座をした。
「そんな大げさにしなくてもいいんよ。うちは人として当たり前のことをしただけなんよ」
「マーシュ殿・・・・。ありがとうございまする!」
タダカツは感激の余り彼女の前で目から涙を流してしまった。
「そうや、タダカツはんしばらくうちのボディーガードをしてくれんけん?」
「ボディーガードでありますか・・・?」
「うちは今や全国で名のあるデザイナーでね、最近うちやジムのまわりに怪しい人やマスコミがしつこく追いかけたり、うろついたりしてはんよ。せやから、うちやうちの仲間の振袖トレーナーたちを守ってくれる人を探してはんよ」
「最近、タダカツはんの修行姿をひっそりと見してもらやはったやけどとても強そうで頼もしそうだったんよ。せやから、お願いでけへんやろか?」
「マーシュ殿には無数の御恩を受けた身、私も是非あなた様とジムの皆様に安心して生活を送れるように全身全霊でやらせてもらいまする!」
こうして、タダカツはマーシュとそのジムトレーナーを警護するために正式に住むことを決めた。生活に必要な住居はマーシュの紹介で見つけた古く安いアパートに拠点を置き、そこからマーシュの自宅やクノエジムさらにはクノエシティの治安を守るための警備活動を開始した。
だが、彼の心には人知れない闇が存在しているとはまだこの時点では誰一人知るよしはなかった。
「・・・・・・・・・・・。頭・・・・・・・・・皆・・・・・・・・・・・・・すまぬ。私は里に帰ることは決して許されないのだ。だから、遠いこの地にて、罪滅ぼしを兼ねて、余生を過ごすことにするよ」
彼の目から一粒の涙がツーっとたれ流れていた。
続く