「それでは、蘭くんの健闘を祈って、乾杯。」
『かんぱ~い』
博士たちは手に持ったジュースの入ったコップを掲げると、乾杯の音頭を取った。
それに少年少女たちの声が続く。今日は蘭のインターハイへの壮行会を博士の家で行っていた。
蘭のインターハイへの出場は去年もあったが今年は最後の出場で、光彦と源太、それに珍しく歩美が久しぶりに一緒に来たと思ったら壮行会を開きたいと博士に持ち掛けた。
博士としてもそれに反対する理由は無かったのでお菓子とジュースで軽いパーティーを開くつもりだった。
しかし、園子がそれでは味気ないとケータリングを注文し、博士の家はホテルのバイキングと見紛うばかりに料理が並べられている。
「よっしゃ、食うぞぉ。」
「源太君、今日の主役は蘭さんですよ。」
真っ先にローストビーフの皿に箸を伸ばす源太に光彦が追いていく、歩美は灰原の近くにいるがまだ園子からの命令が続いているのか話しかける様子はない。
「食べてるか、ボウズたち。」
園子は赤い液体の入ったグラスを持って光彦たちに話しかけた。
「うめぇよ。なぁ、光彦。」
「はい。すごくおいしいです。」
二人は皿の上にローストビーフを追加しながら答えた。
「そんなに急がなくても。」
園子の隣でコップを持っていた今日の主役、毛利蘭がパクパクと一心に食べている源太をなだめる。
「そうですよ。今日は蘭さんのインターハイの壮行会なんですから。少しは控えましょうよ。」
「あ、わりぃ。つい旨くて。」
珍しく源太は光彦の言葉を素直に聞き入れ箸を進めるスピードを緩めた。
「あ、いいのよ。気にしなくて。ちょっと食べるのが早すぎて心配になっただけだから。」
蘭はあわてて詳細を言い直した。
「そうよ。バイキングなんだから遠慮しないの。」
本日のスポンサー、鈴木園子は手に持ったグラスを一気に傾けると蘭の言葉に同意する。
「それじゃあ、遠慮なく。」
年上二人からの許可を得て源太は再び箸を進めるスピードを上げて、次々と料理を胃に納めていく。
「しかし、豪勢じゃなぁ。」
皿にチキンと小鉢を乗せた博士は園子に近づき感想を口にする。パーティーの参加者に対して料理の量が多すぎる。
「せっかくのパーティーなんだから派手にいきたいじゃない。」
園子はテーブルからサラダの入った小鉢を手に取ると口に運ぶ。
「しゃべらなければお嬢様なんじゃがなぁ。」
博士の感想に蘭が苦笑いしていた。当の本人は気に様子も無い。
★☆★☆
「それじゃあ、蘭さん頑張ってください。」
「頑張ってくれよぉ。」
パーティーを終えた源太と光彦は園子が呼んだハイヤーに乗って帰った。二人は初めて乗る高級車にテンションが上がり切っている。
「じゃあ、よろしくお願いね。」
園子の言葉にドライバーは頭を下げて返事をする。
二人が帰り博士以外は女子だけが残る。
「それじゃあ、片付けましょうか。」
送り終えた園子が家に戻ってくると蘭が散らばった料理を片付け始める。
「いいの。いいの。明日にしましょ。」
皿を片付けている蘭を制して園子は冷蔵庫からガラスボトルを取り出すと慣れた様子で引き出しを開ける。
「あら?」
しかし、彼女の予想に反して目的の物は引き出しには入っていなかった。
「博士、ここに置いといたオープナーは?」
「オープナー?ああ、コルクの栓抜きか。」
博士はソファーから立ち上がり近づくと、彼女の開いた引き出しの一つ下の引き出しからオープナーを取り出し園子に渡した。
「言ってくれればいいのに。」
「ワシもご相伴になろうかと思ってな。」
そう言って博士は調理台の後ろの棚からワイングラスを3つ出した。
「ちょっと二人とも!ダメよ、歩美ちゃんと哀ちゃんがいるのに。それに園子は未成年じゃない。」
蘭の言葉よりも園子がボトルに口をつけた。
「固い事言わないの。せっかくだし蘭も一緒に飲まない?」
「…結構です。」
冷たい言葉で引き離した蘭はもくもくとパーティーの後片付けをしていく。
「いいのか?」
ワインをグラスに注いでいた園子に博士は耳打ちする。
「いいの。これも計画だから。はい、博士。それじゃ私たちはあっちで飲みましょ。」
園子はボトルを持ちながら博士の座っていたソファーを指して博士の背中を押していく。