※この作品はR-18です。

阿笠博士の爛れた日常   作:マグダス

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8月17日(水)「ナイトメア・ジャーニー 1日目」(中編)

 目的地に到着した博士たちは車を止めて降りた。

 

 避暑地として有名な場所だけに東京よりもずいぶんと涼しい。肌を撫でる風も都会の生温い熱風ではなく心地よい涼風だった。

 

 園子が借りた貸別荘は平屋のレンガ造りで非常に趣のある建物だった。

 

「雰囲気ありますね。」

 

 光彦が両手の人差し指と親指で四角を作り、風景を切り取った感想を口にする。光彦の言う通りで木に囲まれたシチュエーションはいかにも映画に使われそうな雰囲気がある。それが恋愛映画かサスペンス映画か、それともポルノ映画かは知らないが。

 

 少なくとも女性陣にとってはいい思い出にならないのは確実だろう。道中既に博士から「いたずら」されている彼女たちにすれば博士との三日間はどんな醜態を晒すことになるのかわからないのだ。

 博士たちは荷物を担いで玄関のインターホンを押した。待つこと十数秒、玄関の鍵が開く音がして扉から息の上がった園子が迎える。

「い、いらっしゃい。」

 

 息の乱れはほんの少しだったが博士はそれで状況を理解した。

 

「お楽しみ中だったかな?」

 

 博士の問いに園子は珍しく顔を赤くする。彼女が自慰をしていたと踏んでいた博士だったがまさかこういう風な反応が返ってくるとは思わなかった。

 

「ささっ、入った。入った」

 

 園子は赤い顔を誤魔化すように博士たちを招き入れた。

 

「「「うわぁ」」」

 

 光彦と元太、それに歩美が声を揃えた。やたらと広いリビングにキッチンが併設されている。両端には扉がありそこが寝室であることはなんとなくわかった。

 

「男子は向かって左、女子は右ね」

 

 園子の案内に不満がある人間はいなかった。

 

 博士、光彦、元太の三人は左の部屋に入る。室内には箪笥や鏡台などの最低限の家具と二段ベッドが2つあるだけのシンプルな内装だが宿泊施設として利用する分には十分だった。

 

「元太くん、どうします?」

 

「もちろん探検するぜ!」

 

 荷物を置いてひと息ついていた博士は二段ベッドの上段に荷物を投げて部屋を出ていく光彦と元太を見ていた。

 

「歩美、灰原、探検しに行かねぇか?」

 

「二人とも行きましょう」

 

 扉を開けっ放しにしていったので反対の部屋の扉の前で女子を誘う声が良く聞こえた。

 

 それに対する回答は博士には聞こえなかったがどうやら断られたようで二人は少し肩を落として部屋に戻ってくると帽子を荷物から出して、地図を確認している。

 

「ここは?」

 

「はい、いいと思います。そこから探して見ましょう」

 

 気を取り直したのか、二人は地図とにらめっこしている、

 

「あー、盛り上がっているところ悪いんじゃが」

 

 博士は光彦の手から地図を取り上げた。そしてポイントらしきマークが付けられている場所を見て渋い顔をする。マークが付けられている場所は確かに木々が生い茂っている。だが、少々子供達だけを行かせるには不安があった。万が一遭難でもされたら今回の計画が水の泡になる。

 

「返して下さいよ」

 

 光彦が声を上げる。

 

「君たち、このマークの場所に行くのかね?」

 

「ああ、そうだぜ。デカいカブトムシを見つけるんだ」

 

 元太が答えた。

 

「その計画は悪いが中止じゃ」

 

「「えー」」

 

 博士の言葉に二人は不満げな声を上げた。

 

「確かめなかったワシも悪かったが君たちの目的地はここより更に奥じゃないか。親御さんから君たちを預かっている立場からこの計画は見過ごせん。」

 

「大丈夫だよ。こんな森くらい。な、光彦。」

 

「はい。これくらいの林なら迷いませんよ。」

 

 博士の忠告も二人は意に介さなかった。どうやらこの一年は二人に変な自信を与えてしまったらしい。

 

「……仕方ない。ワシも着いていくから明日の朝早くに採集に行かんか。君たちに怪我でもさせたら悪いからな。下手をするとこうやって旅行に連れていってあげられなくなる」

 

 博士という足が無くなるのは困るのか二人は渋々頷いた。

 

 

 

―――

 

 

 光彦と元太が探検に出発し、別姓に女子と博士だけになると蘭にリビングへ別荘に残る全員が集められた。

 

 リビングのテーブルに全員が着くと蘭が声を上げる。

 

「博士、もう止めてください」

 

「何をかな」

 

「とぼけないでください!車の中で私たちにしたことです。歩美ちゃんや哀ちゃんはまだ小学生ですよ?」

 

「だから?」

 

 博士にしてみれば些細な問題である。なので蘭の言葉に対する答えはそっけない。

 

「じゃあ、蘭くんが変わるかね。君がその二人の代わりをやるならワシは手を出さんよ。」

 

「園子にも手を出さないでください」

 

 

 蘭は静かに付け加える。

 

「私としては博士とのセックスは楽しいから好きなんだけどね」

 

 博士の隣で肘をついていた園子は平然と答えた。

 

「園子、あなたには京極さんがいるのよ。」

 

「だから?」

 

 園子にとっては彼氏の有無はあまり関係ないらしい。

 

「もちろん京極さんは好きよ。愛してる。だけどそれはそれ。女を磨くには男を知るのが一番楽だからさ。セックスシンボルってやつ?」

 

「だからって博士にっ!」

 

「蘭も薄々気付いてたでしょ。私の援交。」

 

 園子の告白に蘭は眉をひそめる。

 

「……やっぱりなの?」

 

「正直、タダにしてあげてもいいんだけどね。割り切りの関係だから仕方なく貰ってるのよ。この別荘を借りたのもそのお金からだし」

 

 園子の言葉に蘭は驚いたのか言葉が出ないようだった。

 

「別にいいのよ。使い道なかったし。」

 

 呆気に取られていた蘭に園子は平然と言い放つ。

 

「園子お願い正気に戻って。そんなの普通じゃない。」

 

「何をもって普通にするかは人によるよ。蘭くんの普通は世間一般の倫理観に過ぎん。園子くんの考え方は世間の倫理観とは違う所にあるからな」

 

「博士、良いこと言った!」

 

 蘭の言葉に博士が答え返した。事実、園子の思考は性欲が倫理を大きく上回っていると博士は確信している。園子も自覚しているのか博士に賛同した。

 

「……京極さんはそのことは?」

 

「言ってないわよ、もちろん。でも会う度に照れてる彼が可愛くてもっと頑張る原動力になるからたぶん気付いてくれるまで言わないかな。あ、蘭も内緒にしててね。」

 

 園子が人差し指を唇にあてる。

 

「京極さんがかわいそうよ」

 

「でもさ、性欲って抑えられないじゃない?蘭もオナニーくらいはしたことあるでしょ?」

 

「……まあ、一応」

 

 蘭は顔を紅くした。

 

「でも、博士は駄目よ」

 

「どうして?」

 

 園子は首を傾げた。

 

「だって小学生にエッチを無理矢理させるのよ。園子もいづれひどい目に会うわ」

 

 蘭の言う「ひどい目」というのがどの程度なのかは博士にはわからないが、少なくとも蘭の想定よりも園子の現状が歪だとだけは博士にも解った。

 

「歩美ちゃんは私が面倒見てるのよ。この意味、解るわよね。」

 

 園子が口を開く。暗に博士に加担していると言いたいのか、それとも状況を自慢したいのか。

 

「…本当なのね?」

 

 どうやら道中の博士の説明を蘭は信じていなかったらしい。だが、こうして本人の口からの暗にそれが事実だったことを知らされた蘭は黙ってしまう。

 

「正確には歩美ちゃんを博士から守ってあげてるんだけどね」

 

「嘘つきはいかんよ。園子くんもノリノリだったじゃないか」

 

 博士は園子の脇を軽く衝いた。

 

「でも、そっちの子よりマシなはずよ。」

 

 園子は灰原を指差す。

 

「まあ、身体的負担だけを見たらな。聞けば園子くん、君は歩美ちゃんに援交させたそうじゃないか。」

 

「未遂よ、未遂。一応キープしているうちで一番小さい男性(ひと)を選んであげたのよ。」

 

 つまらなかったといわんばかりに淡々と話す園子に蘭は悲しそうなにしている。

 

「蘭が代わる?」

 

「え?」

 

 園子は笑顔で蘭に提案を持ちかける。。博士はこの笑顔は園子の仮面だと思った。何かを悟られないようにするための仮面なのだと。

 

「歩美ちゃんの代わりになるの。私も乱交仲間が欲しかったのよね。」

 

 園子の提案に歩美はすがるような目で蘭を見上げる。

 

「ふざけないで!」

 

 蘭は静かな口調だったが、口にした言葉には軽蔑の色が混じっていた。

 

「信じられない!園子がそんな風に私を見てたなんて」

 

 感情のコントロールを放棄したのかその後の蘭の口からは園子への罵倒と軽蔑でほとんど占められた。

 

 園子も最初は面食らい、悲しそうな表情をしていた。しかし、むしろそれが彼女が蘭へ向けていた「友情」を消し去ったのか、今の園子の目から蘭への親愛の情は失わている。園子は笑顔のままだったが蘭へ対する視線はオモチャでどう遊ぶかを考えている子供のそれだった。

 

「蘭お姉さん」

 

 蘭の服の袖を歩美が引いた。どうやら園子の視線の意味はこちらが理解しているらしい。当然だろう。蘭と違い歩美は園子の同じ視線を散々浴びている。

 

「大丈夫。お父さんや目暮警部に相談しましょう?大丈夫。大丈夫」

 

 蘭は歩美の頭を優しく撫でた。歩美は言うタイミングを外されて困惑している。

 

「別に言いけどさ。蘭はいいの?」

 

「どういう意味?」

 

 園子の言葉に蘭は手を止める。

 

「そのまんまよ。新一くんにバレるわよ、間違いなく」

 

「……別に新一は関係ないでしょ」

 

「蘭の処女が博士に奪われた。理由は酒の勢いでってなったら、彼、蘭をどう見るかしら」

 

 蘭が園子の方に振り向く。

 

「……あれは記憶が曖昧だったから。それに博士のやったのは強姦よ」

 

「それは蘭の主観でしょ。あそこには私もいた。悲しいけど私は博士の虜。私の証言次第で博士は蘭への強姦は無くなる可能性が高い。まあ、ガキンチョたちのは問答無用で強姦だけどね。」

 

 博士も頷く。

 

「博士も深い傷になるけどさ、それ以上に蘭にとって致命傷になるんじゃない?」

 

「…私を脅すの?」

 

 蘭は冷静さを取り戻していた。

 

「そうじゃない。あ、いや、そうなるか。早い話が蘭が黙ってたら全てが丸く収まるのよ」

 

「私がそんな言葉に負けると思う?」

 

「思わないわよ。でもそこで蘭の袖を引っ張ってる子は違うみたいよ」

 

 園子の言葉で蘭は歩美を見下ろす。歩美は涙目になり首を大きく横に振る。

 

「コナンくんにバレちゃう。」

 

 歩美は今にも泣きそうな声でそれだけ言うと蘭の袖を離す。

 

「で、そっちは?」

 

 園子は灰原を指差す。

 

「嫌いじゃない」

 

 灰原は短く答える。

 

「ほら、蘭が黙ってたら良いだけ!」

 

 園子は両手をパチンっと打つ。

 

 それと同時に蘭が立ち上がる。

 

「私、帰る。歩美ちゃんと哀ちゃんも一緒に帰ろ?」

 

「おや、男の子たちはどうするのかね?」

 

「探して一緒に帰ります!当たり前でしょう!」

 

 感情の爆発したのか、蘭は言葉使いはいつも通りだがその声は怒りに満ちていた。蘭の言葉の覇気に歩美が怯えている。

 

 しかし、蘭が歩美と哀を促しても二人は一向に席を立とうとしない。

 

「どうしたの?」

 

 蘭が歩美に視線を合わせる。

 

「歩美、帰らない。」

 

「大丈夫よ。博士と園子からは私が守ってあげるから。」

 

 蘭の言葉を聞いても歩美は席を立とうとしない。

 

「……ビデオ…」

 

「え?」

 

「ビデオにたくさん撮られたの。だから、無理」

 

 歩美の言葉に博士は園子の方を向く。園子は博士が自分を見ていると分かるとそれまでの仮面の笑顔を脱いでイタズラっぽい笑みを浮かべた。

 

「成長記録よ、成長記録。博士に撮っておくように言われたから」

 

 蘭は博士を睨む。

 

「そんなことも言ったなぁ。」

 

 博士にそんな指示をした記憶はなかったが、蘭の百面相が面白いので乗ることにした。

 

 蘭は強く机をたたいた。

 

「すぐに全部棄ててください。」

 

「無理じゃよ。クラウド化してあるのもあるが、ほとんどはオフラインじゃ。家に帰らないと消去出来んよ。」

 

 それまで無関心なスタンスでいた灰原が口を開く。

 

「そのクラウド化してるのってどれ?」

 

「哀くんのは撮ったの全部じゃよ。歩美ちゃんのはワシらが面白いと思ったのが数本。あとは、蘭くんの処女喪失記念映像くらいか。」

 

「哀ちゃん、クラウドって、まさか」

 

蘭の顔がみるみる白くなる。

 

「たぶん大丈夫。オンライン上にあるけど、私や歩美ちゃんの映像なんて公開したらすぐさま警察沙汰になるから。なってないってことはまだ大丈夫。」

 

 灰原は自分に言い聞かせるように蘭に説明する。

 

 博士は場をしのぐために吐いた嘘だったのだが、これほど灰原が動揺してくれるとは思わなかった。

 

 しかし、考えてみれば幼少の容姿でも組織に狙われた事のある灰原は自分の存命を明らかにする映像の重要さが蘭や歩美とは比較にならない。

 

「ふむ」

 

博士は1人納得すると帰ってからオンラインに映像を移す算段をつける。

 

 そうなると灰原や歩美の映像は十分だが、蘭の映像が無い。蘭の処女喪失記念映像なんてそれこそ流れで考えた出任せで実際には蘭を記録した映像は無い。

 

「じゃあ、提案じゃ。蘭くんがワシの相手をしてくれる度に一つ映像を削除しようじゃないか。ラストはもちろん蘭くんの処女喪失映像じゃ」

 

 博士の言葉に蘭が絶句する。

 

「……蘭お姉さん」

 

 反対に歩美はどこか期待した視線を蘭に向けている。

 

 灰原は目を俯せていた。

 

「…何を馬鹿なことを」

 

 蘭の拒否に歩美が悲しそうな顔をした。

 

「お互い知らない関係じゃないんじゃから今さら恥ずかしがらんでも」

 

「違います!」

 

 蘭は再び席に座る。

 

「席に着いたということは交渉の余地があると考えても?」

 

「この子たちのために今までの博士のやって来たことには私も目を瞑ります」

 

 博士の質問に答えずに蘭は淡々とした口調で話す。

 

「それは非常に助かるな。な、歩美ちゃん?」

 

「えっ!?う、うん。そうだね」

 

 歩美は狼狽える。

 

「なので…」

 

「蘭くんが相手してくれないなら仕方ない。歩美ちゃん、行こうか?」

 

 博士は歩美の手を引いた。蘭の時にはびくともしなかった歩美は博士の手を引かれ博士の部屋に向かう。

 

「ちょっと待って!どうしてそうなるんですか!」

 

「だってここへ来たのは哀くんと歩美ちゃんとで愉しむためじゃったからな。蘭くんは加わってくれたらラッキーぐらいの感覚じゃったよ」

 

 博士は続ける。

 

「しかし、君は帰ってしまうそうじゃないか。ならば仕方ない。仕方ないから歩美ちゃんで我慢してあげようという話じゃ」

 

 次の瞬間、蘭は博士に勢いよく跳び寄る。

 

 蘭はスカートであったにも関わらず脚を高く上げて博士を蹴り下ろそうとした。

 

 しかし、博士は腕に巻いていた時計、新一に作った麻酔銃を蘭に向けて発射する。

 

 麻酔針は蘭の首に当たり、蘭は気を失い博士の胸に飛び込むような形になった。

 

「危なかった。危うく大怪我をするところだった」

 

 蘭がまさかこんなに早い段階で暴力で訴えてくるのは予想外だったが、彼女が席を立った時点でこうなることは折り込み済みだった。

 

 博士は意識を失った蘭に肩を貸す。そして間取りが男部屋と同じな女部屋に蘭を寝かせると今度こそ歩美の手を引き自分の部屋に消えた。

 

 




次話は少しだけ博士の発明品を出す予定
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