「あのぅ、灰原さん」
帰りの会が終わり、先生への挨拶が終わった僕は一目散に席に着いている灰原さんに声を掛けました。
「なに?」
優しい声の灰原さんはカバンの中から今日の宿題を出していました、。
「あの、そのぅ、なんと言いますか」
言いたい事ははっきりしているのですが、やはり学校では言い出しにくい。喉が乾いてねばねばとしてしまいます。
「あの、お願い出来ませんか?」
「なにを?」
ノートを広げた灰原さんは鉛筆の芯でコツコツと机を突いています。
機嫌が悪い訳では無いみたいです。見たことも無い柔らかな笑顔でこちらを見ていますから。
「哀ちゃん」
職員室から帰ってきた歩美ちゃんがランドセルを背負って近づいて来ました。
「帰ろ」
「ちょっと待って。光彦くんが用事があるみたい」
歩美ちゃんがこちらを向きました。
「あ、あの~」
「変な光彦くん」
灰原さんの腕を歩美が引きます。
「光彦くん、私とエッチなことしたいらしいわ」
「え?」
~~ッ!
確かにそうですがそれを言うタイミングが最悪です。
「あ、そうなんだ」
あれっ?
予想に反して歩美の反応は薄く、それ以上の追及もありません。
「何を恥ずかしがってるの」
心の中を見透かしたように灰原さんが声を掛けて来ました。
「いいこと教えてあげる。あなたがが一ヶ月悶々としてる間、源太くんは早々と私たちに声を掛けてきたわよ。ねえ?」
歩美ちゃんが頷きます。その事実に胸の奥がざわつきます。
まさか、源太くんに出し抜かれるとは思ってもいませんでした。
「彼の方が深く考えない分本能に素直なのかしら。夏休みが明けた次の週にはあなたと同じ台詞を口にしてたわよ」
「あの、それで」
「もちろん相手してあげたわ。用事も無かったし」
世間話をするように灰原さんが素っ気なく話します。歩美ちゃんも横で頷いています。
「もしかして、歩美ちゃんも」
「当たり前じゃない。源太くんは歩美の担当なんだから」
当然といった雰囲気で歩美ちゃんが言います。その声はどこか誇らしげにも聞こえました。
「でも、光彦くんが言わなかったから哀ちゃんが手伝ってくれたけどね」
歩美ちゃんが付け足します。
「それで、どうするの?」
静かにしていた哀さんが口を開きました。
「それでって……」
「決まってるじゃない。するのかしないのかを聞いてるの。」
話し方に棘がある気がします。
「しないなら帰って。私たち、これから用事があるの」
「用事?」
「病院に行くの」
答えたのは歩美です。
「もしかして足の、ですか?」
「そうだよ」
答える声がどこか嬉しそうです。
歩美ちゃんが足を怪我したのは今月の初め頃です。歩く分には問題は無いそうですが、走ったりの激しい運動はお医者さんから止められているそうで、体育をずっと見学しています。
「だから、あんまり相手してあげられないかな」
「いえっ、忙しいならまたの機会に……」
あんまりがっつくのは格好よくありません。余裕を持ちましょう。
「そんなだから、源太くんに出し抜かれるのよ」
灰原さんが何か言ってます。聞こえてますが、聞こえませんっ!
◎
「それで?」
「それで終わり。光彦くんったらとぼとぼって帰っちゃった」
助手席に座る歩美は膝の上にある自分のランドセルの肩ベルトで遊びながら今日の出来事を話してくれた。
聞けば、幼なじみの男子二人と関係があるらしく、それはセフレと呼ぶには些か拙い関係のように思える。
「それは哀もかい?」
バックミラー越しに後部座席に座っている少女に話題を振る。彼女は車に乗ってから一度も口を開いていない。
「ええ」
顎を手に乗せて外を見たままの態勢で哀が乾いた声が帰ってきた。鏡越しに見えるその姿はやけに似合っていて、年端もいかない少女とは思えない色気があった。
顔の下半分がガラスより低い位置にあったのはご愛嬌である。
今乗っているこの車は一般に高級セダンと呼ばれるタイプだ。黒塗りの車体は威圧的に見えるけれど、相応に内装は凝っている。
本革のシートは座り心地が良く、大型の車体と相まって二人は悠々としている。現に歩美は靴を脱いで足を伸ばしても余裕がある。
歩美が誰とセフレになろうと構わないが、こうして話を聞くのはある種の楽しみになりつつある。
聞けば、トラウマになりそうな経験をしているみたいだが本人はあまり気にしていないようだ。どんなプレイがきつかったかは良く聞くけれど、嫌いという言葉を一言も聞いていない。
「それで、約束守ってるかな?」
「うん!」
歩美がスカートをたくしあげる。
スカートの下には何も着けていない。日焼けが引いて少し白くなった下半身が露になる。
「いい子だ」
左手を伸ばすと、歩美が身体を傾けて手の下に頭を持ってくる。そのまま撫でると気持ち良さそうに目を閉じた。
「あっ」
手を離すと、名残惜しいと言わんばかりに歩美が短い声を上げる。
手のひらを歩美に見せるとランドセルからリモコンを手に置いてきた。
縦に細長いリモコンは液晶と強弱の調節ボタンだけのシンプルな物だ。手のひらに簡単に収まるサイズは歩美のような子供が持っていれば防犯ブザーと勘違いしてしまうだろう。
しかし、実際には違う。
「んっ」
リモコンの『強』のボタンを押すと隣から悩ましい声が漏れる。運転しているので盗み見る形に歩美を見ると前屈みになっていた。
律儀にワレメが見えるようにスカートの前部分を両手で押さえている。
「んんっ」
続けて『強』のボタンを押すと、歩美は更に身体をくの字に折る。電源を切る。
「あーっ、せっかく気持ち良かったのにぃ」
不満の声が漏れる。
「ごめん、ごめん。でも、目的地に着いたから降りようか」
エンジンを止めてドアを開く。
「帰りに続きしてね」
車から降りる間際に歩美からそんなことを言われた。
◎
「それで、目的は何?」
長椅子の隣に座っている哀が唐突に話しかけてきた。
外来診療は既に終了しているので待合スペースに人は自分達だけだ。受付の格子のシャッターから小さく光があるだけで照明は消えている。窓からオレンジの光が差し込んでいた。
彼女とは身体の関係は無い。ほっそりとした身体つきは好物のはずなのに、不思議なことに抱きたいと思わない。仕草は色っぽいとは思うけれど、それはアダルトビデオを見ている感覚に近い。
「目的って?」
「決まってるじゃない。こうして歩美ちゃんに優しくしてる目的よ。まさか、単純に親切っていうの?」
面と向かずにお互いの視線が同じ方向を向いている。そのせいで相手の顔色が窺えない。
目的と言われても、強いて言えば歩美の怪我の理由が自分だからということだろうか。カルロスは自分が面倒役を買ってくれたけれど、興味が沸いて世話を買って出たというのが真相だから勘繰られても困ってしまう。
「歩美ちゃんがかわいいからじゃ理由にならない?」
「……あなた、歩美ちゃんが好きなの?」
「どうかな」
「汚れてるわよ」
哀がこちらを見た。その目は鋭い。
「そんな風に言わない方がいい」
多分男性経験の数とかアブノーマルなプレイの事を言っているのだろう。
「生憎と自分も汚す側の人間だからね。あんまりそこは気にしないかな」
哀は顎に手を当てて何か考えている様子だったが、ふと袖を引っ張って来た。
「だったらお願い。歩美ちゃんを助けてあげて」
「それは無理だ。園子からの借り物だから何をするかは彼女に決定権はある。多分君は園子から歩美ちゃんを引き離して欲しいんだろうけど、そんなに強く出られないよ」
「でも、あなたとしてから歩美ちゃんにはお呼びが掛かってないわ」
「それは彼女が怪我してるから……」
「つまり、あなたの言うことなら聞くのよね」
「解釈が飛躍してない?」
「してない。私よりは意見が通る位置に居るって事実が大事なの」
なんとなく言いたい事が解った。
「幸い彼女は私たちをおもちゃ程度にしか見てない。拘ってないから他人からの意見一つでどうにでも転ぶわ」
「なるほど」
少し甘い展望にも思うけれど、園子が二人をおもちゃとして扱っているという点は同意見だ。でなければこんな風に出会う事も無かったろう。もっと業の深い人選は彼女ならば難しくは無い。二人が日常生活が不可能になるような事態もありえたかもしれない。
とはいえ、驚くのは隣に座っている哀だ。とても歩美と同い年とは思えない成熟した精神をしている。
哀は今は左手で目頭を押さえ、天井を仰いでいる。
姿勢が特に変わったわけではないが、肩の力が抜けているのが雰囲気で解った。息を深く吐く。
「実を言うとね、歩美ちゃんからあなたのことを聞いた時、かなり警戒したの。最初は優しくても、後から本性を剥き出してくる人間も少なくないから」
「で、実際会った感想は?」
「とりあえず、歩美ちゃんに危害を加える心配は無さそうっていうのが結論ね。これで私の心配も少し軽くなる」
「心配?」
「最近、歩美ちゃんと別々にされることが増えてきてるの。そうなると私の目が届かない場面も比例して増えてるわ」
「歩美ちゃんの保護者みたいだね、まるで。同い年なのに」
「否定はしないわ。妹みたいなものだもの、彼女」
そこまで話すと診察所のドアが開き、歩美と、白衣を着たカルロスがこちらに歩いてきた。
スーツのジャケットの代わりに白衣を着ているカルロスは嫌みなく似合っている。すらりと長い手足はシャツとズボンが既製品には見えない。
「経過は良好だよ」
隣の長椅子に座ったカルロスは話した。
歩美が哀の様子を窺うようにしながら隣に座って来る。両隣に二人が座る形になった。
「少し筋が固くなってる感があるけど、それは動かさなかったからだろうから明日からは体育に参加してもいいよ。あ、でもちゃんと柔軟をしっかりとしてね」 丁寧な様子は別荘の時と同じだ。しかし、今は諭すようにやさしい声で話しているせいか、立派な人間にみえる。
それは歩美も同じなのか、今のカルロスを見る目には以前のように怯えている様子は無い。
園子が絡まなければ無害なのかもしれない。
説明し終えたカルロスはまだ仕事が残っているらしく、処方箋を歩美に渡すと診察室に戻っていった。
「それじゃあ、帰ろうか」
「うん」
歩美は立ち上がり、何か考えている風の哀の正面に行き彼女の手を引く。
手を引かれた哀はゆっくりと立ち上ると、
「歩美ちゃんをお願い」
と囁いて二人は外に出ていった。
◎
「それで?」
「それだ、けっ!」
今日の出来事を話す灰原は身体を仰け反らせる。
二人は浴室で対面に座っていた。白い蒸気が靄になって立ち込めている。シャワーが灰原の体を洗った。
灰原は座面に凹みのある風呂椅子、スケベ椅子に座り足を開いている。博士は閉じられないようにその間に腰を下ろしていて、手には歯間ブラシが握られている。糸を張ったタイプではなくゴム製の毛が生えているタイプだ。鉤爪のように途中で曲がっている物ではなく柄を含めて一直線になっている。
「他には?!
「だーかーらー、それだけって言ってるでしょう」
呆れた風に話す灰原をよそに博士は歯間ブラシを灰原の尿道に差し込む。
両の手を後ろに縛られ、両の足を紐で繋いでいる彼女に逃げ場は無い。立ち上がろうとさっきから何度も足を地面に付けようとしているが博士があぐらに座っているせいでふくらはぎが博士の太もものうえにあり、それも徒労だった。
「んっ」
ゴムの毛が尿道に全て収まると博士はゆっくりと前後させていく。灰原の体は甘い反応を返した。
散々いじられた結果として灰原の身体は尿道責めを拒否しなくなっていた。
これは園子にも秘密の変化だ。彼女に知られてしまうとさすがにまずい。これ幸いと無謀なプレイをしかねない。
それと同時に言わないことで灰原に貸しを作っているつもりだった。
それは彼女も分かっているのか、博士にいくら尿道を弄ばれても拒絶したことは無い。
博士は病院の厄介になるわけにはいかないので細心の注意を払っている。
「しかし、園子くんの知り合いに理解ある医者がいるならもう少しリスキーなことをしてもいいかもしれんな」
博士にしてみれば治療の目処が付くならば園子に話しても構わない。
なにせ、彼女が一番恐れているのは動画や写真が外に漏れてしまうことで、いくら秘密を漏らしても、命を脅かすのに比べたらマシだろうと博士は思っている。
これまでの行動から彼女は捨て鉢にはなっても生きることを投げ出さない人間だ判断した。
歯間ブラシをぐらぐらと揺らすと、絶叫と共に手に温かな感触が伝わる。
両足が跳ねた。特に右足は感電したみたいにぶるぶると震えている。
後ろに倒れそうになる灰原の頭の後ろに手を回して博士は自分の肩に灰原を抱き寄せた。椅子の差があり、灰原の頭は博士の肩を越えて顔が博士の背中に来る。
尿道を抉るように歯間ブラシを抜いても灰原は爪を立てるのみで声を上げなかった。
デレマスやら、鰤やら、のんのんやらで書きたいけれど、それをやると今以上にスピードがダウンしそう。
(日付が祝日だったから修正したなんて言えない)