東京駅の構内は人でごった返していた。
東京から出ていく人、東京に来た人で通路が溢れていて、一度はぐれてしまうと通信手段なしでは再会するのは難しそうに思える。
年末のUターンラッシュにはまだ数日あるにも関わらず、スーツケースを引いた姿がちらほらと見える。
中にはスノーボードを専用のバッグに入れたボーダーらしき姿も見えた。
エスカレーターを上り、最上層にある新幹線ホームで博士は缶コーヒーに口を着けた。
「やはり、下で待たんか?」
遮る物がないホームには12月の寒風が容赦なく吹き付ける。
足踏みしながら弱音を吐く博士の隣でスーツケースを引いている蘭は直立したまま独り言のように呟く。
「あと10分程度で新幹線が来るんですから我慢してください」
「そうは言うが、老人にはなかなかきついものがあるぞ」
「妊婦が我慢してるんですから耐えてください」
白いダウンジャケットにデニムのスキニーパンツ姿はいかにも彼女らしくスポーティーだ。下に服を重ねているのに、見た目には着込んでいるようには見えなかった。
この数週間の蘭の変化で最も顕著なのは妊婦という状況を使って自分の優位を確保する言動が出てきたことだった。
最初は迫られた時に咄嗟に逃げの口実に使ったのだろうが、予想外に博士が労る様子を見せた事が彼女には有効な手段に映ったらしく、最近はこうして自分の妊娠を軽く扱える余裕が出てきている。 新幹線が到着し、清掃員が手早く車内を掃除していく。到着して数分で乗車の許可が下り、ホームに並んでいた人混みが新幹線へと吸い込まれた。
二人は指定席の車両の一番最後尾に座った。
「ああ、やっと一心地着けた」
シートのリクライニングを下げた博士は自分のリュックから錠剤の入ったケースを取り出した。
何もいかがわしい効能を持たないただのサプリメントだ。しかし、博士の手に錠剤があるというだけで隣でジャケットを脱いでいた蘭には心理的に不安なのか、素知らぬ顔で車窓から外を眺めていたが窓に反射した博士を窺っているのがバレバレだった。
席の七割が埋まった頃ゆっくりと新幹線は走り出し、車窓の景色が流れていく。数駅をらしくない速度で通過した後、ぐんぐんと加速して新幹線の領分の高速走行で目的地に向かって景色を置いていった。
「蘭君も食べないかい?」
駅弁を広げた博士が蘭にも同じ弁当を差し出す。
それを受け取った蘭は膝の上に置いて開く様子はなかった。
「喉を通らんか」
勝手に理由を解釈して博士は駅弁に箸を着ける。
やがて遠くに見える山々に雪を積もっているのが見えてくる。
ぱらぱらと窓の外に雪がちらつき始め、すぐに景色を白煙が遮った。
車内は乗客の話し声で賑わっていて、誰も他人に注意を向ける様子は無い。
廊下を挟んだ中央の席には推定70近くの老夫婦が座り、一席空いて、カップルが仲睦まじく肩を寄せていた。
首を伸ばし他の席の乗客が気になる動きをしていない事を確認した博士の唇が動いた。
「さて、それじゃあ蘭くん、ブラジャーを外してこちらに渡してもらおうか」
非常に小さな声だったが、蘭はブラジャーのフロントホックを外して脱いだジャケットを身体の前に掛けると、長袖のトレーナーの中に腕を引っ込めた。
身体の動きに合わせてジャケットが小さく波打つ。
蘭の身体が前屈みになり、次に背中がシートに凭れる。
袖から出てきた手に握られたベージュのブラジャーを博士に渡してジャケットを下ろした。
「いやー、ワシとしたことがカイロを忘れてしまって代わりになる物を考えておったら閃いてな」
ブラジャーをポケットにしまい、博士は求められてもいないのに理由を説明する。
蘭はその声を聞いていないようで、同列の乗客に注意を払っていた。
「堂々としてればバレないよ。……そういえば蘭くんは露出プレイはほとんど経験がなかったな」
「博士っ、声抑えて」
そっぽを向いていた蘭が口を塞ごうと博士の方を見た。
博士と目が合う。
「やっとこっちを見てくれた」
今日に限らず、蘭はこうして感情を閉ざし気味になるのは珍しくない。
コミュニケーション能力が高い分無視するというのは歩美以上に下手だ。
博士の存在を徹底的に無視出来ない現状がそれを物語っている。要求だけを聞く機械になれば何も考えずに済む分、精神的に楽になるのかもしれないのにこうして博士の煽りに一々反応してしまっていた。
「次はトイレでオナニーをしてきてくれ」
博士はリュックの中からディルドーを覗かせる。その横には白いスマホがあった。
半透明なピンクの疑似竿は威圧するように光を反射していた。
「もちろん、電話で実況してもらうよ。拒否しても構わないが、後から後悔することになりかねないからおすすめせんぞ」
蘭はリュックの中に手を入れ、ディルドーとスマホを手に取ると、ジャケットを目隠しにして車両から出て行った。
数分置いてスマホが着信を知らせる振動を立てた。
博士は通話用のベッドセットを装着し、着信ボタンを押した。
「くっ、あっ」
イヤホンから蘭の嬌声が響く。
博士は脇息に肘を着、音楽を聞くように声に耳を傾けた。
蘭は通話する要領でスマホを持っているのか、やけに吐息の声が大きく、あえぐ声を抑えているのか短い嬌声の後に深く息を吐いていた。
「ワシは実況するように指示したんじゃよ。そんなテレクラもどきみたいな事をさせるはずがないじゃないか」
あえぎ声が止まり、通話も切られた。
博士はメーラーを起動させて蘭にメールを送る。
『とりあえず今持っているディルドーを見ながら詳細な説明をしてもらえるかな。色、形、重さ、後は見た目の印象。出来る限りの言葉を尽くしてワシが興奮するプレゼンをしてくれるかな。』
博士は一度ここまででメールを送ると、
『後、長文は臨場感に欠けるから一文ずつ送ってくれ』
蘭をメッセンジャーのグループチャットに招待した。
リュックから八インチのタブレットを取り出し蘭に送ったリンク先のページを開いて待機する。
まだ蘭は入室しておらず、会話ボードはまっさらだった。
数十秒置いて画面の上方に蘭がグループチャットに参加した事を知らせるアナウンスが表示される。
それから更に数分待ってみるが、蘭からのメッセージは無かった。
時計を確認すると目的の駅に到着するまでまだ30分近くある。
『書きにくいならワシの目の前で声に出して実況するかい?』
『ピンクの博士のに似たプラスチック製で半透明な中心には機械があります。』
『取っ手はしろくてスイッチがあって、電源を入れたらピンクの部分が動きます。』
『形は博士のによく似ていて、ずっしりとしています。』
『以上です』
「芸がないなぁ」
浮いた腰を席に戻して画面に映る文字を見ていた博士はため息を吐いた。
素直に詳細を報告してくるのは初めから期待していなかったが、ここまで短文で済ませてくるとは若干予想外だった。
『じゃあ、そこでオナニーしてイったら報告と証拠写真を送って戻ってきてくれ』
メッセンジャーを閉じると灰原から別のメッセンジャーページへの勧誘が入った。
すぐさま勧誘に乗って入室する。
『どういうつもり?』
『どう、とは?』
『いきなり意味不明なメールが送られてきて、その先で待ってたら博士たちのプレイに付き合わされるってどんな罸ゲーム?』
『君が静かに聞き耳を立てているだけだったのは意外だったよ。てっきりオナニーをしろっていう辺りで一言入れるかと思っていたが』
『彼女、見られてるの知ってるの?』
『どうかな。案外ワシが二台持ちしてると勝手に思っているかもな。哀くんもワシもアイコンを登録してないし』
『白々しい』
『まあ、バレなきゃラッキーとは思っていたが、あちらが君の存在を承知でやったんだとしたら大した進歩じゃよ』
『それで?彼女を犯すの?』
『そうしたいのは山々じゃが、もうすぐ新幹線が目的地へ到着してしまうのでな。お楽しみは後に取っておくよ』
博士がメッセージを送り、ページを退出したのとほぼ同時に車両のドアを開いた蘭が足早に座っていた席に戻っきた。
出て行った時と同じようにジャケットを抱えている。
席に座った蘭は肩紐を引き博士からリュックを奪うと素早く手にしていたディルドーとスマホを中に放り込む。
博士がスマホを確認すると、
『いきました』
というメッセージとディルドーが腟に入っている写真が送られていた。
それを見た博士は、
「よくわからん」
と感想を口にすると、横からタブレットの画面に指が伸びてきて、
バキッ
摘まんだかと思った次の瞬間、画面が音を立ててひび割れた。
外のガラス部分は蜘蛛の巣状にひびが入り、奥の液晶は指が当たっていた場所から割れて画面の端の部分が映らなくなっている。
音が聞こえたのか隣の老夫婦が博士たちの方を心配そうに見ていた。
「あーあ」
老夫婦に手を翳しながら博士は大して気にする風もなくタブレットの画面を膝に伏せた。
目的地の長野駅に到着した二人は新幹線を降りると、改札を抜けて駅のロータリーに出た。
「寒いなぁ」
冬の晴れ間といった様子で厚い雲のすき間から太陽の光が降り注ぐ。
それでも山からやってくる寒風は身体を突いてくる。
駐車場に来た博士は黒いワンボックスカーを見つけると蘭が逃げないように注意しながら近づいていった。
運転席のドアが開き、帽子を脱いでスキンヘッドを撫でながら男、宮脇 高次が握手を求めてきた。
「初めまして。阿笠さんですね?」
「宮脇さんで間違いないかね?」
「はい」
「しばらく世話になるよ」
「ええ。哀ちゃんには良くお世話になっているんですからそのお祖父さんの阿笠さんは私の身内みたいなものですから」
三人が乗ると、運転席の宮脇が車を発車させた。
博士と蘭は二列目の席に座っている。中心のシートのない七人乗りで二人の間には壁のように蘭が自分のスーツケースを置いて博士から身を守っていた。
「どれくらいで目的地に着くかな?」
「結構山の中ですから、慎重に行って二時間くらいですかね」
「やはりそれくらいかかるか」
「かかりますね」
「まあいいさ。着くまで蘭くんで遊んでいるよ。さっ、蘭くん、後ろに行こうか」
スーツケースを自分の前に移動させた博士は蘭の手を取って最後尾の席に移動する。
「レンタカーなんであまり汚さないで下さいね」
「わかっとるよ」
「それと途中で交代して下さい」
「それは構わんが、妊婦というのを忘れないでくれ」
「もちろん」
博士は後部席の中央に大股に座ると開いた脚の間に蘭を座らせる。
「まだ制服の上からは判らんじゃろうが、触った感じ大分お腹が出てきたな」
蘭の腹部を服の上からまさぐった博士はぽっこりと膨らんだ孕腹を指を沈み込ませる。
脂肪が着いた腹部は張りがあり、指の後が赤く残る。
身体のラインが丸くなったのに比べて顔は妊娠前とほとんど変わっていない。
蘭はダイエットと言って園子の息のかかったエステに通っている。
そのせいか血色は良く、肌はツヤが出ていた。
博士はその顔に指を這わせて自分の方へ振り向かせて唇を重ねた。
蘭は人形のように無抵抗に阿笠の指に従っている。
舌で唇をなぞると蘭が口を開く。そのまま博士は逃げる蘭の舌を自分の舌で捕まえた。
唾液が混ざり合う湿った音を立てていく。
蘭は目を閉じることなく、虚ろな目をして博士を見ていた。
博士の手がトレーナーの中に入り、乳頭に指を引っ掛けた。
寒気に晒されたことに加えてオナニーで性感が高められたのか、乳首は固く勃起していた。
「君も期待しているのかな?」
博士は掛けていた指で弾く。
「判ってるくせに」
唇を離した蘭は吐き捨てるように台詞を口にすると博士は乳首を強く摘まんだ。
蘭は一瞬顔を歪ませたが、すぐに澄ました顔を作る。
「じゃあ」
博士は蘭の脇に手を入れて中腰にさせると、スキニーパンツを下ろした。
ブラジャーと同じくベージュのマタニティショーツが露になる。
博士はじっとショーツを見たまま固まる。
「なんですか」
「いや、なんだかんだで胎児のことを考えてるんだなと思って」
「……自分のためです」
「無茶をして流産してしまうのを心配してるのかい? 心配せんでもそんな簡単に流産なんてせんよ」
「どうでもいいじゃないっ、痛っ」
立ち上がった拍子に天井で頭を強打した蘭は膝を抱えるようにうずくまる。
「急に立つから」
「触らないで!」
博士がこぶが出来ていないか確かめようと手を伸ばすと、蘭が殺気立った迫力で拒絶した。
やり場を失くした博士は仕方なく蘭が頭をぶつけた天井に手を当てた。
「異常なし。ま、当然か」
膝に掛かるスキニーパンツを上げて元の席に戻ろうとする蘭の手首を博士は掴んだ。
「何をしてる。これからじゃないか。妊婦だからといって麻酔針を使われないと高を括っとらんか?」
蘭は掴まれた手首を見つめて博士と視線を合わせない。
「それは君が従順だからじゃよ。抵抗がきついようなら迷わず針を打つのを忘れないでもらいたいな」
蘭の身体から力が抜け、引っ張られて博士の足下にひざまづいた。
「とりあえずフェラしてくれるかな。出された精子を全部飲めたら向こうで勉強する間手を出さないと約束してあげよう。いつもやっているから簡単じゃろ」
博士はファスナーを下げて逸物を外に出した。
既に臨戦態勢の逸物はいつもより元気に見える。反り返り、鈴口からは透明なカウパーが流れていた。
蘭は慣れた様子でカウパーを手に馴染ませると逸物を擦り始めた。
スポーツ選手らしく逸物を握る手の力が強く、逸物が折られそうだ。
しかし、形が変わるほどの力を込めはしても蘭はそれ以上力を加えない。
これまでの経験から得たテクニックを使い、博士の逸物を擦っていく。
丁寧な動きだが、口を小さくぱくぱくと動かしている。
逸物が脈打ち、白濁の精子が顔に飛び散った。
「あっ」
蘭は咄嗟に口を開いたが大半の精子は額や髪を汚して口内に入ったのはほんの少しだ。
顔に着いた精子を手で掬い口に運ぶ様子を見ながら博士はこれからのスケジュールを考えていた。
文章が分かりにくいような気がする。