「やはりいつもの面子ですか」
リビングに移動した老人は良く見知った仮面姿を見て一人ごちる。
先ほどまでの暗室から煌々とした空間に移り目を細めた。廊下に明かりがなかったせいか光が余計に眩しい。
部屋には二人の男がソファーに座っていた。
「まあ少女趣味の人間が男とセックスしろって言われたら引きますよ」
四十代らしき男はグラスにワインを注ぎながら話し掛ける。
樽のような腹まわり加えて顔の脂肪が仮面からはみ出している。
「個人的にはあの位の年頃なら性差なんて些細な問題でしたから」
「誰でもが私たちみたいなスキモノという訳じゃないんですよ」
意見もわからないではない。
確かに膣とアナルでは具合も相当に違う。
それに、やはり生来受け入れる女と比べると本来は押し込む側だけに反応が薄くなる。
「別にいいじゃないですか。多人数だと一回に割り当てられる時間も少なくなるんですから」
ワインを飲んでいるのとは別の小柄でやせぎすの男が会話に入ってくる。
「そうだな」
老人には下手に出ていたが、やせぎすの男を下に見ているのかワインを飲んでいる男はグラスをくゆらせながら同意する。
「ところでお二人は肉と魚のどちらを選びました?」
「私は肉です」
「私は魚を」
ワイン男が肉の、やせぎすの男が魚の札を出す。
「これをどう見ます?」
「どうって、さっきの扉の選択じゃ」
廊下のドアが勢いよく開き園子が老人の元に歩み寄り腕を身体に絡ませる。
「久しぶり」
老人も腕を伸ばすが、その手は園子の乳房を掴むと揉みしだいた。
「また大きくなったんじゃないかな?」
園子は払いのける様子もなく、むしろもっととせがむように胸をつき出す。
それに応えるように老人の骨張った指が乳房に沈む。
ブラをしていないのか胸の形が楽々と変わる。
「おや、久しぶりだね」
入ってきた若者が園子の姿を見ると手を上げて挨拶をする。その姿は友人に対するそれと変わらず、先に部屋にいた人間からすると意外に思えた。
彼女は上手に行くことはあっても対等や下手に出ることはなかった。それはプライドが高いというよりも生来の性分から上手に出てしまうのだろう。
だからといって彼女の性癖を矯正する人間はいない。マゾにわざわざ作り替える手間を取るよりも最初からマゾの人間を抱いた方が手間が無いから。一々調教するほど暇な人種ではないのだ。
彼女が夏前に縄で縛られた跡を見ているが全員がプレイの一環としか思っていない。
「これで全員だよ」
若者の後ろからカルロスが姿を表す。
「四人か。ちょっと少ないわね。これの倍ぐらいは予想してたんだけど」
「まあいいじゃないか。彼女たちは結局前座なんだから」
カルロスの気安い口調は歩美を責めている時から知っており、これが彼なりの日本語なのだろうと老人たちは納得している。
「そうね。二人とも入ってきて」
歩美が哀の乗った車椅子を押して入ってくる。
哀は薄地のワンピースを着ていて、歩美は老人を出迎えた時と変わらず裸エプロンだ。
傍らにはバイタルモニターが帯同して無機質な音で心拍を報せている。
哀はしっかりと覚醒しており、車椅子の脇息で指を叩いていた。
「怪我かい?」
老人が尋ねる。
「いえ。逃げようとしたからちょっとペナルティ。明日には歩けるわ」
振り返って哀を一瞥しながら園子が答える。
「たまにはこんな志向もいいんじゃない」
ニヤリと笑ってだらりと力なく垂れる哀の足を持ち上げる園子とは対照的に男たちのほとんどが雰囲気はどこか硬い。
「残念ながら私たちはそんな趣味ありませんよ」
「ありゃ」
「俺はやるぞ」
ワイン男が手を上げる。
「こんな珍しいシチュエーション逃すなんてもったいない」
興奮しているのか仮面越しに目が爛々としているのが判る。
「あっちは興味津々って感じだけど?」
「そうみたいですね」
老人は感情の読めない声で嘆息した。
「まったく、あのじいさんも温いよ」
侮るような口調でワイン男はさっきまで一緒にいた老人を評した。
ここはリビングとプレイルームをつなぐ廊下の間にある一室。六畳ほどの広さのフローリングだ。
加湿器が蒸気を吹き、エアコンは三十度に設定されていて蒸し暑い。
部屋の一角には様々な道具が置かれ、中央には短足で人が乗る部分に金属が貼られた三角木馬が威圧感たっぷりに鎮座していた。
「趣味じゃないだって? 冗談。いつもは監視があるから従ってるんだ。好きにしていいって言われてるのにわざわざ手を出さないバカがどこにいる」
会の格付けは園子の親愛度という曖昧な物で第一印象がそのままでなかなか上下することはない。
その中で老人は園子の胸を一言もなく揉んだことからも解るとおり相当に気心が知れた仲であり、会の意向も彼の志向で決まる場合も多かった。
「しかし、今回は俺の好きにしていいんだよな」
誰に確認するわけでもなく男は哀を見下ろして独り言を口にする。
車椅子から降ろされた彼女は壁を背にして人形のように足を伸ばして座っている。それは自分の意思ではなくそうしないと満足座れないからだ。
どうやら身体の麻痺はへその下辺りから始まっているらしく、自力での座位は腕を床に着いて支えないと非常に不安定だった。
「とりあえず名前を聞こうか」
「まず自分が名乗りなさいよ」
反抗的な哀に男はたじろいだ。歩美と同じ性奴隷のはずなのにこれほど気位が高いのは予想外だったからだ。
男は気を取り直す。
「ここでは名乗らないのがルールなんだよ。君も知っているだろ?」
「知らないわよ」
男に疑問が浮かぶ。
「知らないって。君はこの会に参加したことないのか?」
「ないわ。こんな悪趣味な集まりなんて」
「そうかそうか」
男の顔が喜色に染まる。まさか初参加だとは思わなかった。調教されていないとは考え難いが彼女の反応から自分が手を付けられる部分があるように思えた。
「ほう」
哀のワンピースを捲った男はショーツからはみ出している半透明な管を見て声を上げる。やはりそれなりの調教を受けているらしい。
管を摘まみ手前に引く。引っ掛かる手応えがあり、確かに尿道に固定されているようだ。
「おしっこしたい?」
「勝手にすれば」
哀が強がりとも思える冷たい口調で答える。
男は部屋に置いてある紙オムツを一枚手に取り哀の股の手前に敷いた。
管のキャップを外す。
すぐさま薄い琥珀色の液体が管を通り白のオムツを黄色く染めた。
アンモニア臭が狭い室内に充満する。
「我慢してた?」
排尿が無くなるまで待って男が尋ねる。
哀は蔑むように男を見た。
「そうね。すっきりしたわ。ありがとう」
哀は嫌がる仕草が男たちを悦ばせると解っているようだ。
しかし、哀の誤算は目の前にいるのはこれまでのような変質的な人物らとは違うある意味で正当なサディスティックな小児性愛者ということだった。
男はワンピースを脱がせると哀を抱えて、三角木馬に股がせた。
足の動かない哀は腿で挟むことが出来ずに体重が全て股に集中する。
曲げた膝が床に触れるが、木馬は哀の膝上の長さよりも高く、割れ目に木馬の鋭角が食い込む。
足の動かない哀は腿で挟むことが出来ずに体重が全て股に集中する。
おまけに下半身がそんな調子なので前傾姿勢で木馬に手を着いてバランスを崩さないようにしていた。
「落ちないのはさすがだな。痛くないかい?」
「あいにく、へそから下の感覚が無いから痛みも無いわ。残念だったわね」
澄ました顔を崩さない哀だが、痛覚は消えても身体が危険信号を上げているのか腕に蕁麻疹が浮いている。
男がその凹凸を撫でる。
「この場合は身体は正直だとでも言っておくかな」
「さっさとしなさいよ」
「言葉使いに気を付けろ。このまま縛って放置してもいいんだよ」
男は哀の額に浮かんだ汗を指で拭うと彼女を前倒しにしてアナルに逸物を突き入れた。
容赦のない抽挿が哀の菊門を蹂躙する。挿入すれば哭き声が上がり、引けば皺が逸物に付いていき山なりに盛り上がる。
アナルを犯されるのは珍しく無いがこれほどまでに乱暴にされたのは哀は初めてのことだった。
これまで相手したどの男よりも下手で、それだけに扱いも雑を極めていた。哀の反応込みで愉しんでいた連中と違い男は自分の快感のみを求めている。
こそぎ取るようなピストンがアナルを責める。
「オラッ、どうだっ、まだ生意気な口を聞けるかっ」
哀の両手を掴んで弓なりに身体を反らせて逸物を抽挿する男の動きに、腕の支えの無くなった哀の身体は人形のようになすがままに追随する。
顔は見えないが動きに合わせて派手に頭が揺れる。
「いくぞっ」
男は哀の腕を離すと胴に腕を回し、彼女を抱きすくめるように自分の方へ寄せてアナルに射精する。
精が身体の中に放出されても哀の身体はぴくりとも反応しない。
見れば意識をほとんど失っており、白目を剥いて口の端から泡立った涎が垂れていた。
「歩美を解放する?」
寝そべっていた先客が老人の言葉をオウム返しに口にする。 先客に股がって騎乗位で逸物を慰めていた歩美の動きが止まる。
しかし、後背位で歩美のアナルを犯すやせぎすの男のピストンの動きが静止した身体を突き上げると悲鳴じみた嬌声が響く。
「ええ」
老人が頷く。
「えらく急ですね」
「結構前から頼まれていたんですけど、区切りがいいので新年度で解放するチャンスをあげてもいいかなと思いまして」
「チャンスということは絶対に解放するわけじゃないんですね?」
「それは歩美ちゃんの頑張り次第です。今日来ているメンバーに了承を取って条件を提示しようと思いまして」
「代わりに新しい子が入るなら私は構いませんよ。そちらの方は知りませんが」
若者がやせぎすの男を見上げる。
覚えたての猿のように単純作業的にアナルで逸物を犯していたやせぎすの男は二人から注目を浴びていることに気が付くと挙動不審に陥る。
彼は哀を犯している男よりもほんの数日早く会に入った下から二番目に格の低い人物だった。
「あえっ、いいんじゃないんですか」
一心不乱に腰を動かしていたやせぎすの男はそんな答えを返した。