表現の工夫って難しい。
頑張ってみましたが言葉が難しくて時間かかりました。
ええとですね、今回は藍華の1人舞台です。
自分に悩むって話。
雷雨···己の弱さは消えぬもの
ザーザーと激しい雨が地面を打ち付け、強風で窓がガタガタと揺れた。夏にしては珍しく肌寒いくらいの気温。それは、この気候がいかに荒れているかを示している。
ふいに、窓辺に華奢な白い手が置かれた。その手はゆっくりとガラスの縁をなぞる。慎重に、少しずつ、少しずつ下の方へと降りていく。外側で伝う雫が着く頃に、手の動きが止まった。
何かを確かめるように、そして何かを求めるように何度も同じ動きを繰り返す。一回、二回、三回···と、しばらく続けた所で、ようやく少女は窓から手を離した。
凛とした佇まい。キリッと結ばれた口元には、黒いほくろが見える。目つきはやや鋭いが、全体的に美麗な顔立ちで、左眼の目元にも、二つの黒いほくろが見える。
そして、明かりに照らされた髪は蒼い彗星の如き輝きを放ち、瞳は琥珀色に近い金色をしている。
歳相応の可憐さはなく、むしろ大人びた妖艶な魅力を持っていた。しかしながら男好きにするような抜群のプロポーションは、美貌と少しズレがあった。
この少女―藍華は、先程から何処と無く寂しげで儚げな雰囲気をか持ち出していた。普段他人と一歩距離を置いて付き合い、仕事を冷徹にこなすその姿からは想像出来ない程、悲哀を滲ませている。
はあ、と深い溜息をつく。その溜息は白い息となり、空気中で霧散した。
「まるで···私の虚しさを表してるようね。」
幽かに、虚ろな笑みを浮かべて呟いた。
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空虚感が心を満たしている。振り払おうにも、振り払う事の出来ない感覚。何もかもが灰色に霞んで、儚くて、脆くて、ココロが崩れてしまいそうで、とめようにも、孤独感が阻害する。
偽り続けた己が、何をしているのかと嘲笑い、奥底に閉じ込めた、本当の自分が、ひび割れる。
ひび割れた穴からは、虚しさだけが溢れ出てくる。
その虚しさの正体は、わかりきっている事。
―――余りにも、本心を隠しすぎたせい―――
こんな馬鹿らしい事を悩むのは無駄過ぎる。ただの時間の浪費。
もう···慣れたはずなのに。
とっくに、素直で、純粋な本心を明かして生きていけなくなっているんだ。だから···
「心を···耐えきれない程の孤独感で満たすのを···やめてくれ。遠い昔に失った大切な時間や、大切なモノを思い出させないでくれ。」
次々と目に浮かぶ光景を、無理矢理頭の奥へと追いやる。
ああ、こうやって私はまた自分と向き合わない。
本性、という真実を突きつけられるのを恐れて逃げる。
これまで幾度なく心が発してきた警告を斥けて、偽りの自分という"幻想"に隠れる。
でないと、弱い自分が出てきてしまいそうで。
でないと、凍りつけた時が動きそうで。
止めて、壊して、捨ててきた。
甘さや情が蘇るのを防ぐため、どんなに己が傷つこうとも、またどんなにそれを求めても、我慢し続けた。
―――他人との温もり―――
どこまでも、脆くて、儚くて、熱くて、幸せなあの感覚。かつていくらでも手に入れることができ、また求めることも出来た。アレは抗え難い幸福を与えてくれる。
―でも···それを求めて受け入れてしまえば弱みとなる。
愛や友情ほど、暗殺屋として抱いてはいけない感情はない。···人を、殺せなくなるからだ。
もしも私が受け入れてしまったらどうなるのだろうか。
恐らくそれは、組織からの離脱か解雇を意味する。
多分、そんな道を選んでしまったら
「嫌···。それだけは嫌···!」
震えて、掠れた声しか出なくなる。主様の役に立てなくなるのだけは嫌だ。あの方が、今の、私の、全てだ。
「···っ······主様·········」
いっその事、私をロボットのように変えてくれたらいいのに。命令を遂行する事以外、何も考えられぬように。こんな余計な事を考えて、求める浅ましい欲を消せるように。
「······ーーーー······」
雨は、まだ止む気配がない。でも、止む頃にはこの弱さも流してくれるだろう。
···いまだ、人の温もりを求めてしまう私を···
純粋さを失った訳じゃない。
失おうと必死になればなるほど気づいてしまうだけ。
―内に秘めた、熱く焦がれる想いを。