※この作品はR-18です。

月虹の元で生くる者達   作:名も無き呟き

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やっと次話だ···。
表現の工夫って難しい。
頑張ってみましたが言葉が難しくて時間かかりました。

ええとですね、今回は藍華の1人舞台です。
自分に悩むって話。



"愛"は抗え難い束縛
雷雨···己の弱さは消えぬもの


ザーザーと激しい雨が地面を打ち付け、強風で窓がガタガタと揺れた。夏にしては珍しく肌寒いくらいの気温。それは、この気候がいかに荒れているかを示している。

 

ふいに、窓辺に華奢な白い手が置かれた。その手はゆっくりとガラスの縁をなぞる。慎重に、少しずつ、少しずつ下の方へと降りていく。外側で伝う雫が着く頃に、手の動きが止まった。

 

何かを確かめるように、そして何かを求めるように何度も同じ動きを繰り返す。一回、二回、三回···と、しばらく続けた所で、ようやく少女は窓から手を離した。

 

凛とした佇まい。キリッと結ばれた口元には、黒いほくろが見える。目つきはやや鋭いが、全体的に美麗な顔立ちで、左眼の目元にも、二つの黒いほくろが見える。

 

そして、明かりに照らされた髪は蒼い彗星の如き輝きを放ち、瞳は琥珀色に近い金色をしている。

 

歳相応の可憐さはなく、むしろ大人びた妖艶な魅力を持っていた。しかしながら男好きにするような抜群のプロポーションは、美貌と少しズレがあった。

 

この少女―藍華は、先程から何処と無く寂しげで儚げな雰囲気をか持ち出していた。普段他人と一歩距離を置いて付き合い、仕事を冷徹にこなすその姿からは想像出来ない程、悲哀を滲ませている。

 

はあ、と深い溜息をつく。その溜息は白い息となり、空気中で霧散した。

 

「まるで···私の虚しさを表してるようね。」

 

幽かに、虚ろな笑みを浮かべて呟いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

空虚感が心を満たしている。振り払おうにも、振り払う事の出来ない感覚。何もかもが灰色に霞んで、儚くて、脆くて、ココロが崩れてしまいそうで、とめようにも、孤独感が阻害する。

 

偽り続けた己が、何をしているのかと嘲笑い、奥底に閉じ込めた、本当の自分が、ひび割れる。

 

ひび割れた穴からは、虚しさだけが溢れ出てくる。

その虚しさの正体は、わかりきっている事。

 

―――余りにも、本心を隠しすぎたせい―――

 

こんな馬鹿らしい事を悩むのは無駄過ぎる。ただの時間の浪費。

 

もう···慣れたはずなのに。

 

とっくに、素直で、純粋な本心を明かして生きていけなくなっているんだ。だから···

 

「心を···耐えきれない程の孤独感で満たすのを···やめてくれ。遠い昔に失った大切な時間や、大切なモノを思い出させないでくれ。」

 

次々と目に浮かぶ光景を、無理矢理頭の奥へと追いやる。

 

ああ、こうやって私はまた自分と向き合わない。

 

本性、という真実を突きつけられるのを恐れて逃げる。

 

これまで幾度なく心が発してきた警告を斥けて、偽りの自分という"幻想"に隠れる。

 

でないと、弱い自分が出てきてしまいそうで。

でないと、凍りつけた時が動きそうで。

 

止めて、壊して、捨ててきた。

 

甘さや情が蘇るのを防ぐため、どんなに己が傷つこうとも、またどんなにそれを求めても、我慢し続けた。

 

―――他人との温もり―――

 

どこまでも、脆くて、儚くて、熱くて、幸せなあの感覚。かつていくらでも手に入れることができ、また求めることも出来た。アレは抗え難い幸福を与えてくれる。

 

―でも···それを求めて受け入れてしまえば弱みとなる。

 

愛や友情ほど、暗殺屋として抱いてはいけない感情はない。···人を、殺せなくなるからだ。

 

もしも私が受け入れてしまったらどうなるのだろうか。

 

恐らくそれは、組織からの離脱か解雇を意味する。

 

多分、そんな道を選んでしまったらあ(・)の(・)方(・)は大いなる失望を示すに違いない。

 

「嫌···。それだけは嫌···!」

 

震えて、掠れた声しか出なくなる。主様の役に立てなくなるのだけは嫌だ。あの方が、今の、私の、全てだ。

 

「···っ······主様·········」

 

いっその事、私をロボットのように変えてくれたらいいのに。命令を遂行する事以外、何も考えられぬように。こんな余計な事を考えて、求める浅ましい欲を消せるように。

 

「······ーーーー······」

 

雨は、まだ止む気配がない。でも、止む頃にはこの弱さも流してくれるだろう。

 

···いまだ、人の温もりを求めてしまう私を···




純粋さを失った訳じゃない。
失おうと必死になればなるほど気づいてしまうだけ。

―内に秘めた、熱く焦がれる想いを。
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