鈍いわけじゃないから気づいてしまいます。
「···ん?」
気がつくとあの雨は止み、雲間から綺麗な満月が顔を覗かせていた。いつの間にこんな時間が経ったのかと驚きつつ机を見ると、開いたまま置かれた小説が目に入った。
情けないことに、本を読んでいたら眠ってしまったらしい。
「···月がちょうど真上にあるって事は、真夜中ね···」
変なうたた寝をしてしまったものだ。これじゃあ、この後寝ることも出来ないだろうに。
苦笑いを浮かべつつも、再び同じ本を読み始めた。
―少年は言う。「月が綺麗ですね」、と。隣に座ってる少女はそれを聞いて、目を丸くした。なぜならかの女の名前は月と書いてルナと読ませるものであり、また、今宵の様な満月を深く愛していたからである―
この話の主人公達は美しい青春を繰り広げている。お互い本心をぶつけあって、泣いたり、怒ったり、笑ったりとても楽しそうだ。
実際の恋愛なんて、そんな単純じゃないのに。
美男美女が付き合うとか、美男が普通の女の子に猛アプローチするとか···そんなのは夢物語。
それに、私は自分の恋愛への興味はない。別に結婚願望とか子供が欲しいとかそういうのはないし、恋人だっていなくて構わない。いたら楽しいのかもしれないが、何時死ぬかわからない身だ。
そう、私は普通ではない。
夜兎族、という事も一理あるが、それよりも闇稼業···つまり、
他人を殺さなければ生きていけない。だから、怨恨を抱く者も少なくない。真っ当な仕事をしてないのだ。
だから、少なくとも、今後もし付き合うならば同じ様な事をしている人に限られるだろう。常人にはとても耐えきれる事をしていないから。
「とはいえ···相手なんかいるわけないものね。」
少ない知り合いを思い浮かべてみるが、コレといって特別な感情を抱いてる奴はいない。まあ、所詮浅い付き合いしかしてないし、彼処からも私の素性に深入りをさせていない···筈。
「···ハッ!何であいつの顔が浮かぶのよ···」
神威の顔が浮かんだ自分を笑う。
ただの純粋馬鹿になぜ惚れる。
からかったりして思い通り操るのは楽しいが、それ以上でもそれ以下でもない···筈だ。
「こんなことを考えるなんて···どうかしてる。」
一人になると、どうも妙な考えに取り憑かれるらしい。
···そう、だって私が惚れたのは、私が恋をしたのは、あの方だけだから。
煙管の良く似合う、あの御方だけだから―――
色々と変えました