※この作品はR-18です。

月虹の元で生くる者達   作:名も無き呟き

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捕まった話の正規版です。

あちらを消して此方という手もあったのですが、話を大幅に改変することになるのでやめました。

今後はこちらのような感じでやりますかね。


月夜の下の二つの影
傷心···私の力は弱い


まるで、悪夢を見ているようだ。

 

絶え間なく身体に刃物が突き立てられ、激痛が狂った様な波長となって私の意識を手放させない。

 

自分の血が、絶え間なく流れ落ちる。

 

「おい···いつまで刺してるつもりだ?死ぬぞ?」

 

「死なねぇよ。こいつは多分···俺の身体に半分入ってる夜兎族だ。」

 

「だからって此奴の傷が治るわけじゃないだろ?アルタナに取り憑かれた化物じゃあるまいし。」

 

「ちょっとした余興だって。···憎いだろ?」

 

「······。そうだな。」

 

朱眼の男は憎らしげに私を睨む。

 

「まあまあ。あんたらは不意を突かれたからやられたんだろ?不意を突き返せたんだからいいじゃねえか。」

 

もう1人の朱眼の男は私を見下してせせら笑う。

 

「にしても···呆気ないほど弱かったぜ?半分しか夜兎族じゃねえ俺にさえ大したダメージ与えらんねえで捕まってるんだ。相当力の弱い出来損ないだよな。」

 

―――力の弱い、出来損ない―――

 

返す言葉なんてない。

 

頭に血が上り、手に力が籠るのがわかる。

 

さっきの言葉で、完全にキレてしまったのだ。

 

唸るような勢いで、眼前に血の華が咲く。

 

「ッ!!!!」

 

叫ぶ間もなく、首から上が完全に潰れたのだ。

 

「人間ぐらいなら殺せるってのか。おーおー、熱り立っちゃって。」

 

眼前の奴を殺す。

 

ただそれだけで動いた。

 

冷静さも、正面戦闘に向かないのも、かなぐり捨てて、殺気全開の本気の力で、殴りかかった。

 

「身の程知らずだな。これだから弱者は···」

 

当たる、そう思った瞬間············

 

「そんな弱っちい殴りが効くか。」

 

受け止められ、逆に、口から内蔵が飛び出そうな程の力で殴られた。

 

こみ上げてくる酸っぱい味と、強烈な吐気。

 

堪らず口内の不快感を消し去ろうと口を開けば、出てきたのは濁った液体。

 

尚も押し寄せる嘔吐感を何とか堪えようと、歯を食い縛る。

 

「はっ、そんなに痛かったか?汚いもん吐きやがって。」

 

情けない事に、今の一撃がかなり深刻なダメージを身体に与えた。悲鳴をあげた腸、立つことがやっとで、震える膝。頭はクラクラとし、指先には全く力が入らない。

 

「しかしまあ···弱い事で。子供か?」

 

軽口を叩いて煽る奴を睨む事しか出来ない。

 

意識が若干朦朧とする。

 

迫ってくる朱眼すらぼやける。

 

「せめて楽に逝かせてや············!!」

 

突如、目の前に朱とは違う赤が映る。

 

見慣れた長い三つ編みの髪だった。

 

「···間に合ったみたいだ。」

 

どこぞのヒーローみたいなタイミングで現れたのは、私のよく知る夜兎だ。が、いつもと雰囲気やら声色は全く違う。

 

凍てつく吹雪のような殺気が、辺りを包み込む。

 

「······誰だ、貴様は。」

 

若干の焦りを滲ませつつ、男は尋ねた。

 

「···お前ら人間に名乗る必要は無い。」

 

彼は、低く、冷たい声でばっさりと斬り捨てた。

 

「何処のどいつだか知らんが···その女を庇うなら殺すぞ。」

 

男は、本格的な焦りを出しながらも、脅しをかけた。

 

「その言葉、そっくりそのまま返す。藍華にこれ以上手を出すなら···いや、これ以上手を出さなくても全員を殺す。」

 

逆に、更に怒気と冷たさの籠る声で返事を返した。

 

「なっ···」

 

焦りと驚きを満面に出した男は、絶句している部下達の元へと後ずさる。

 

「冥土の土産に教えてやる。俺の名は神威。精々、苦しんで消えろ。」

 

言い終わるか、言い終わらない内に、大虐殺が始まった。

 

口から内蔵が飛び出し、肉が裂けて白い骨が顔を覗かせた。飛び出た内蔵はえぐられ、破裂した顔から眼球が、さらに黒い液体を撒き散らした。

 

断末魔の叫びを上げることさえ叶わず、胴から手脚をもぎ取られ、残った胴も穿ち尽くされる。

 

非常に残虐な光景であったけれども、真っ紅な、血の華だけが、鮮明な映像となって、私の心を捕えた。

そしてそれを作り出してる今の彼は、圧倒的な強さを誇っている。

 

大量の血を浴びても、それらは全て相手の血。

 

自分の血じゃないのだ。

 

人間は強い。

 

それを嘲笑うかの様に、肉を裂き、内蔵を抉り、骨を砕いた。

 

かつて、彼は言った。

 

『俺は、女でも男でも強い奴が好きだ。だって、俺よりも強いなら、倒し甲斐も戦い甲斐もあるじゃないか。だから、俺が望むのは、強い奴と、付き合う事なのかもしれない。』

 

「······っ、·········」

 

私は、こんな無様な姿を晒して、弱小である筈の人間に負けている。

 

―私は···神威、あんたが言う程強くない。寧ろ、弱い。あんたの好きな······強い奴には、到底、及ばない。

 

何処までも残酷で、何処までも悲惨な現実。

 

余りにも情けなくて、涙が出そうだ。

 

いや、正確には透明な雫が目から零れた。

 

悔し涙は留まることを知らなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

暫くして、辺りが妙に静かだ、という事に気がついた。

 

いつの間にか、あの阿鼻叫喚の渦は消えたらしい。

 

再び酷くなってきた眩暈とぼやける視界の中で、彼が、ゆっくりと此方に近付いてくる。

 

白い肌も、黒いチャイナ服も、全てが赤く染まった姿で。

 

ガバッ、と私を抱きしめた。

 

かなり強い力。

 

そして強烈な血の匂いと、僅かな陽だまりの匂い。

 

何も言わなかったが、彼の激情を、抱き締め方が物語っていた。

 

鉛のように重い腕を、何とか動かして彼の背中に手を回す。とても弱々しくだが、抱き締め返す事は出来た。

 

短いようで、長い時間。

 

多分、5分程度だろうが、私には1時間位に感じた。

 

それ程までに、悲鳴をあげ続ける身体は深刻だった。

 

徐々に力が抜けて背中から手を離した時、彼は耳元で一言だけ呟いた。

 

「···好きだ。」

 

胸が震えた。奇妙な高揚感も同時に味わった。

 

私の異常に、気づいたのか、気づかなかったのか、わからないが、目を閉じた後の私の口に、柔らかい何かが当たった。

 

ファーストキス。

 

それは余りにも、甘くて、優しくて、熱くて、切なかった。

 

けれど、私の意識はほぼ無いに等しくなり、余韻に浸る間もなく、唇を一瞬離して何かを言った彼の言葉を聞き取ることも出来ずに、無の世界へと落ちた。




残酷な描写は下手くそなので気にしなくて大丈夫です。むしろ、後半のキスシーンに力入れてます笑
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