あちらを消して此方という手もあったのですが、話を大幅に改変することになるのでやめました。
今後はこちらのような感じでやりますかね。
傷心···私の力は弱い
まるで、悪夢を見ているようだ。
絶え間なく身体に刃物が突き立てられ、激痛が狂った様な波長となって私の意識を手放させない。
自分の血が、絶え間なく流れ落ちる。
「おい···いつまで刺してるつもりだ?死ぬぞ?」
「死なねぇよ。こいつは多分···俺の身体に半分入ってる夜兎族だ。」
「だからって此奴の傷が治るわけじゃないだろ?アルタナに取り憑かれた化物じゃあるまいし。」
「ちょっとした余興だって。···憎いだろ?」
「······。そうだな。」
朱眼の男は憎らしげに私を睨む。
「まあまあ。あんたらは不意を突かれたからやられたんだろ?不意を突き返せたんだからいいじゃねえか。」
もう1人の朱眼の男は私を見下してせせら笑う。
「にしても···呆気ないほど弱かったぜ?半分しか夜兎族じゃねえ俺にさえ大したダメージ与えらんねえで捕まってるんだ。相当力の弱い出来損ないだよな。」
―――力の弱い、出来損ない―――
返す言葉なんてない。
頭に血が上り、手に力が籠るのがわかる。
さっきの言葉で、完全にキレてしまったのだ。
唸るような勢いで、眼前に血の華が咲く。
「ッ!!!!」
叫ぶ間もなく、首から上が完全に潰れたのだ。
「人間ぐらいなら殺せるってのか。おーおー、熱り立っちゃって。」
眼前の奴を殺す。
ただそれだけで動いた。
冷静さも、正面戦闘に向かないのも、かなぐり捨てて、殺気全開の本気の力で、殴りかかった。
「身の程知らずだな。これだから弱者は···」
当たる、そう思った瞬間············
「そんな弱っちい殴りが効くか。」
受け止められ、逆に、口から内蔵が飛び出そうな程の力で殴られた。
こみ上げてくる酸っぱい味と、強烈な吐気。
堪らず口内の不快感を消し去ろうと口を開けば、出てきたのは濁った液体。
尚も押し寄せる嘔吐感を何とか堪えようと、歯を食い縛る。
「はっ、そんなに痛かったか?汚いもん吐きやがって。」
情けない事に、今の一撃がかなり深刻なダメージを身体に与えた。悲鳴をあげた腸、立つことがやっとで、震える膝。頭はクラクラとし、指先には全く力が入らない。
「しかしまあ···弱い事で。子供か?」
軽口を叩いて煽る奴を睨む事しか出来ない。
意識が若干朦朧とする。
迫ってくる朱眼すらぼやける。
「せめて楽に逝かせてや············!!」
突如、目の前に朱とは違う赤が映る。
見慣れた長い三つ編みの髪だった。
「···間に合ったみたいだ。」
どこぞのヒーローみたいなタイミングで現れたのは、私のよく知る夜兎だ。が、いつもと雰囲気やら声色は全く違う。
凍てつく吹雪のような殺気が、辺りを包み込む。
「······誰だ、貴様は。」
若干の焦りを滲ませつつ、男は尋ねた。
「···お前ら人間に名乗る必要は無い。」
彼は、低く、冷たい声でばっさりと斬り捨てた。
「何処のどいつだか知らんが···その女を庇うなら殺すぞ。」
男は、本格的な焦りを出しながらも、脅しをかけた。
「その言葉、そっくりそのまま返す。藍華にこれ以上手を出すなら···いや、これ以上手を出さなくても全員を殺す。」
逆に、更に怒気と冷たさの籠る声で返事を返した。
「なっ···」
焦りと驚きを満面に出した男は、絶句している部下達の元へと後ずさる。
「冥土の土産に教えてやる。俺の名は神威。精々、苦しんで消えろ。」
言い終わるか、言い終わらない内に、大虐殺が始まった。
口から内蔵が飛び出し、肉が裂けて白い骨が顔を覗かせた。飛び出た内蔵はえぐられ、破裂した顔から眼球が、さらに黒い液体を撒き散らした。
断末魔の叫びを上げることさえ叶わず、胴から手脚をもぎ取られ、残った胴も穿ち尽くされる。
非常に残虐な光景であったけれども、真っ紅な、血の華だけが、鮮明な映像となって、私の心を捕えた。
そしてそれを作り出してる今の彼は、圧倒的な強さを誇っている。
大量の血を浴びても、それらは全て相手の血。
自分の血じゃないのだ。
人間は強い。
それを嘲笑うかの様に、肉を裂き、内蔵を抉り、骨を砕いた。
かつて、彼は言った。
『俺は、女でも男でも強い奴が好きだ。だって、俺よりも強いなら、倒し甲斐も戦い甲斐もあるじゃないか。だから、俺が望むのは、強い奴と、付き合う事なのかもしれない。』
「······っ、·········」
私は、こんな無様な姿を晒して、弱小である筈の人間に負けている。
―私は···神威、あんたが言う程強くない。寧ろ、弱い。あんたの好きな······強い奴には、到底、及ばない。
何処までも残酷で、何処までも悲惨な現実。
余りにも情けなくて、涙が出そうだ。
いや、正確には透明な雫が目から零れた。
悔し涙は留まることを知らなかった。
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暫くして、辺りが妙に静かだ、という事に気がついた。
いつの間にか、あの阿鼻叫喚の渦は消えたらしい。
再び酷くなってきた眩暈とぼやける視界の中で、彼が、ゆっくりと此方に近付いてくる。
白い肌も、黒いチャイナ服も、全てが赤く染まった姿で。
ガバッ、と私を抱きしめた。
かなり強い力。
そして強烈な血の匂いと、僅かな陽だまりの匂い。
何も言わなかったが、彼の激情を、抱き締め方が物語っていた。
鉛のように重い腕を、何とか動かして彼の背中に手を回す。とても弱々しくだが、抱き締め返す事は出来た。
短いようで、長い時間。
多分、5分程度だろうが、私には1時間位に感じた。
それ程までに、悲鳴をあげ続ける身体は深刻だった。
徐々に力が抜けて背中から手を離した時、彼は耳元で一言だけ呟いた。
「···好きだ。」
胸が震えた。奇妙な高揚感も同時に味わった。
私の異常に、気づいたのか、気づかなかったのか、わからないが、目を閉じた後の私の口に、柔らかい何かが当たった。
ファーストキス。
それは余りにも、甘くて、優しくて、熱くて、切なかった。
けれど、私の意識はほぼ無いに等しくなり、余韻に浸る間もなく、唇を一瞬離して何かを言った彼の言葉を聞き取ることも出来ずに、無の世界へと落ちた。
残酷な描写は下手くそなので気にしなくて大丈夫です。むしろ、後半のキスシーンに力入れてます笑