神威くんsideだぜ
明方···昨晩の追憶
心地の良い微睡から、不意に現実に引き戻される。
俺は、ゆっくり目を開けた。
まだ寝足りない。
いつもならそう感じて寝てしまう時間帯の筈なのに、不思議と目が冴えて起きてしまった。
今日は、何かあっただろうか?
いや、違う。
そういう感覚があって目が覚める時とはまた違っている。
じゃあ、何が―?
暫く目を凝らし続けると、答えは案外早く見つかった。
闇の中、ぼんやりと浮かび上がる雪の様に真っ白な肌。
規則正しいリズムを刻む呼吸。
天使の様に美しい寝顔。
俺の隣で寝ている···愛しい愛しい女のせいだった。
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一人で起きていると、昨夜の記憶が酷く鮮明に流れる。
そう···彼女が捕まりそうだ、と阿伏兎が教えてきたあの時から、早送りされたビデオの様に世界がめぐるましく動き始めた。
俺が現場に着いたのは、丁度藍華が相手の頭を吹っ飛ばした時だった。いつもの周りから一歩引いたような冷めた目ではなく、殺意と怒りを漲らせた目だった。
それにゾクゾクしたことはしたが、それよりも殺されていない事にホッとしている自分がいた。狼狽えながらも、その時、心の奥底に閉じ込めていた想いが突如として形を成した。
バラバラになってた、ジグソーパズルのピースが全部組み合わさって、"愛"というモノに。
なんで···今更気がついたんだろう。自分の
タイミングを見計らう為様子を伺っていると、藍華は壁際まで吹っ飛ばされた。何のことは無い。殴りかかった相手にカウンターで腹を殴られたのだ。
その瞬間頭が真っ白になった。殴られた衝撃のせいで蹲り、苦しげに身を震わせている彼女を見るや否や、俺は殴った男の前に姿を現した。
いつもなら楽しい筈の殺戮も、全く楽しくなかった。藍華を傷付けた奴ら全員、殺してやるという怒りだけで動いた。脆いガラス細工のように、粉々になって、絶命する奴等。
最後の一人を殺した後、俺は彼女に向き直った。両手を使うことでどうにか身体を支え、焦点の定まらない目でこちらを見ていた。今にも崩れ落ちそうな程、弱った彼女を見たのは初めてだった。
すぐにあいつらを殺していれば―!
激しい後悔と罪悪感。そして、無事だった事に対する安堵感。それらの意味を込めて、思いっきり藍華を抱きしめた。
すると、弱々しくだが藍華も抱き締め返してきた。
しかしそれは僅かな間で、藍華の腕は俺の背中から滑り落ち始めた。もう意識が危ないのだろう。
それならそれで、伝えたい事は伝えてしまおうと「好きだ」と耳元で囁いた後、藍華の唇を奪った。
その後、意識を失った藍華を背負って藍華の家に行き、寝かせた。壁に凭れかかって、藍華が目を覚ます時を待ち続けた。
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目覚めて真っ先に彼女がした事は、俺に対する"謝罪"だった。俺の望む女にはなれない、と。
別にそれを聞いても、俺の想いは冷めなかった。寧ろ、それなら俺が守る──と思えた。最悪守れないなら···一緒に死ねばいい、と。
その事を伝え、本日二回目の口付けを交わした。そのまま行為に移っても良かったが、避妊具やら風呂に入りたいとの事で30分程時間を空けてから、本番に移った。
初めてなのは少し意外だったが、何となく嬉しかった。行為自体は余り詳しく覚えてない。
欲望の赴くまま無抱した気もするし、ある程度の気を使った気もするのだ。
どっちにしろ、甘くて美味しい···幸せな時間に変わりはなかったが。
だから、俺はこの現実が少し恐ろしい。昨夜の幸せな時間は、もう無いような気がして。勢いで抱いたから、彼女も拒絶せず受け入れてくれたわけであって、本当は、俺の事なんてなんとも思っていないんじゃないかと。
「···藍華、君は俺の事···愛してくれている?」
口から付いて出た疑問。当然、返事はない。そう思っていたのだが······
「······神威·········」
「!?」
急に名前を呼ばれ、慌てて横で寝ている藍華を見た。けれど意味不明なことをゴニョゴニョと二言三言呟くと、寝返りを打ってしまった。どうやら、只の寝言らしい。
「···寝言か。でも、寝言でも俺の名前を呼んでくれるんだね···。」
思わずニヤケ顔になる。
―ひょっとして、さっきの呟きを聞いていて名前を呼んだんじゃないかな?それなら藍華らしいけど···
起きてる様子は見受けられない。
起きそうな様子でもない。
「···全く、これじゃあ起きたくても起きられないじゃないか。···藍華、君を起こしちゃったら寝顔見られないからね。」
とある早朝の出来事であった。
寝顔は天使···!
そして寝言で自分の名前···!
みんなの憧れるシチュエーションですね✨✨✨