※この作品はR-18です。

月虹の元で生くる者達   作:名も無き呟き

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何これ···。

神威の過去をほぼダイジェスト同然にすると彼女さんが大変になるって···


其々の過去
過去···故きを温ねて新しきを知る


「···ねえ、私を此処に呼んだ理由は来てもらおうと思っただけじゃないんでしょ?」

 

「ん、まあね。」

 

俺の部屋のベットに腰掛けながら、彼女は鋭い視線を俺に向ける。俺は、軽い調子で返事を返す。

 

「···。何か、アンタに纏わることね。それも、過去話とかそういう感じの。」

 

彼女の言葉は、的を得ていた。それに驚きつつも、もっと驚いたのは、声色に優しげな響きが篭っていた事だった。

 

「そっ。···知りたいよね?俺の過去。」

 

すると、彼女は軽蔑する様に笑った。

 

「アンタが言いたいだけでしょうに。···まっ、暇潰しには丁度いいから聞くだけ聞いてあげるわよ。」

 

異常なまでに辛辣で、皮肉の篭った言葉。

歪んだ口元からは、軽い侮蔑さえ見えた。

 

不自然すぎる程、傲慢な態度だ。

 

けれど、俺はそれを気づかなかった事にして、過去を話した。

 

自分が生まれた時の事。

 

父親と母親の事。

 

妹がいる事·········

 

とにかく、全てを洗い浚いに白状した。

 

自分でも何故言いたくなったのかは不思議だが、話す限りは嘘をつきたくなかったのだ。

 

俺の話を聞きながら、彼女は考え込んだり、此方を憐れむ様に見たり、小さく相槌を打ったりしていた。

 

妹の事を話すと、彼女は俺に質問をした。

 

「···妹って、神楽ちゃんの事?」

 

「そう、神楽だよ。···気づいてなかった???」

 

「薄々そうじゃないかな、と思ってたわ。···そっくりだし。」

 

口元をやや緩ませて、目を細める彼女。

 

笑ってはいた。けど、笑ってはいなかった。

 

怒る訳でも、悲しむ訳でも、蔑む訳でもない。

 

そこには、何一つ感情が存在せず、

 

ただ、虚のみがあった。

 

「···藍華···?」

 

「···」

 

俺は戦慄した。

 

此処まで心を閉ざし、他人を近づけないようにしている彼女を、付き合ってる今も、付き合う前も、見た事がなかったからだ。

 

無言で、遠くを見つめている。

 

その眼には、何一つ感情が映っていなかった。

 

その顔には、何一つ表情が存在してなかった。

 

時間にすればほんの数秒だろうが、それでも怖くて仕方がなかった。このまま、藍華が儚く消えてしまいそうで。

 

「···アンタの言いたい事はわかる。···気にしないで。ほんの少し、感傷に囚われてただけだから。」

 

俺の視線に気がついたのか、窓の外へと向けていた視線を俺に戻す。何時もの、少し冷めたような眼に戻っていた。

 

心の底から、俺はホッとした。

 

「···。私の事を心配するより、アンタ自身の顔をどうにかしなさい。そんな辛そうな眼で見られたら、嫌でもどうにかしたくなるじゃない。」

 

「···そう。」

 

彼女は、じっと俺を見つめていた。非常に、素っ気ない返事を返した俺を。次の瞬間、彼女の口から出たのは、慰めでも励ましでもない言葉だった。

 

「···人生ってゲームは、コンティニューもリセットも不可能なのよ。あの時ああしておけば良かったとか、言っておけば良かったとか···悩む位ならそれを忘れなさい。今更後悔しても、何も変えられないわ。」

 

「···っ!」

 

あろうことか、彼女は今完全に俺を否定したのだ。

冷たく、突き放して。

 

俺の心には、悔しさと悲しさが浮かんでいた。

 

やはり、彼女は俺の事なんてどうでもいいと思ってるんだな、と非常率直に感じてしまった。

 

「···」

 

「···!」

 

半ば投げ槍に溜息を吐くと、何か温かくて柔らかいものが、俺を包み込んだ。一瞬何が起こったか分からず、辺りを見回すと、彼女の顔が目に入った。俺の真上に、彼女の顔があった。

 

「···言ったでしょ。嫌でもどうにかしたくなるって。」

 

ギュッと彼女は俺を抱き締める。

 

「···」

 

俺は、奇妙な恥ずかしさに襲われていた。

ただ、藍華から抱き締められただけで、別に大した体の接触じゃないのに。

 

「···」

 

···そうか、彼女は優しいんだな。

 

素直になれないだけで。

 

だって、俺を抱き締める手はとても温かくて。

 

だって、俺の唇にそっと触れた指は柔らかくて。

 

とても、愛溢れる行為だったから。

 

「···藍華···」

 

「···ん?」

 

「···抱いていい?」

 

「···やだ」

 

「···えー」

 

「···キスならいい」

 

「···えー」

 

「···文句言わない。此処は人目が多いんだから、出血大サービスよ。」

 

扉に誰もいないのを確認し、彼女は俺の唇にそっと自分の唇を重ねる。触れ合うだけの、本当に軽いキスだったが、とても甘くて幸せだった。

 

「···うん。アンタはそうやって少し笑ってるくらいが丁度いい。引き篭もってる神威は、神威じゃないもの。」

 

ニッコリと微笑む彼女。

 

「···ん。そうだね。」

 

胸の奥には微かな疑問が渦巻く。しかし、それらを打ち払った。目の前の幸せを手に入れるのに、夢中だった。

 

···それが、後に悲劇を呼ぶと知らずに。




次回は30話。
話と共にご報告することがあるのでお伝えします。

(ポッキーゲームやりたなぁ、ってつくづく思う。)
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