因みに、時代軸は動いて二年後。
出来れば三月中に本編は終わらせたい←←
決別···もう、戻れない
「やっほー。」
「ん?···ああ、神威か。」
「あ、髪切った?」
「前髪だけ。よく気がついたわね。」
「ま、いつも見てるし?」
「そう。」
二年経っても変わらない、生活に必要最低限なものしかない、殺風景な彼女の家。だが、今日はいつにも増して小ぢんまりとしている様に見えた。
「···。何か、いつもより片付いてない?」
「そうよ。」
「何で?」
「何となく?」
「ふーん。」
俺は、彼女の顔をまじまじと見つめる。
彼女も、俺の顔をまじまじと見つめる。
すると、唐突に彼女が切り出した。
「神威。」
「何?」
「私さ、明日からしばらく会えないから。」
「ん······えっ!?」
「長期依頼が来てんのよ。それこそ、一日二日じゃ終わらないような、ね。」
非常にあっけらかんに言い放った彼女は、ニコニコと笑っている。重要な感じは全くない。寧ろ、軽い。
「···いつ帰ってくるの?」
「んー······分かんない♪でも1年くらいはいないかな。」
「そっか。···寂しいな。」
つい本音が口に出た。
「···。じゃあ、その寂しさ紛らわせてあげよか?」
「···?」
戸惑う俺を他所に、彼女はそっと唇を重ねる。
そして、そのまま俺を押し倒す。
「···!!?」
「たまには攻守逆転、なんてどう?まっ、飽きたらやめるけど。」
彼女は軽く頬を上気させてククッ、と笑った。
「···じゃあ、俺も楽しませてもらうさ。」
敢えてそのまま、抵抗もせずに俺達は身体を重ねた―――
△▼△▼
窓の向こうから、薄く白みがった空が見えた。自分も驚く程白く骨ばった細い手で、窓を開ける。たちまち、鼻腔に朝の冷たく澄んだ空気がたち込めた。その冷たさと、布団の中の温もりが静かに、私を奪い合う。
その争いが刻々と激しくなり、体が引き裂かれそうになったとき、遂に私は冷たさに身を委ねることにした。
布団からそっと足を下ろし、爪先を床に立てる。冬程では無いが、ひやりとした感覚が一瞬私を襲う。
店に行く為、蓮の花や葉が金色で刺繍された中華服に身を包む。化粧は、着いてからで良い。
昨日市場で買った林檎に、牙を立て、わざと音を鳴らして噛み砕く。甘く透き通った汁が、唇から零れて顎に溜まり、床へと落ちた。
昨日も、この林檎の様に甘く、透き通っていた。
今、布団にくるまって寝て居る彼の肌は、闇の中でも白く、鎖骨ははっきりと浮かんでいた。瞳は、どこまでも蒼く、月光りを反射し時々サファイアの如く輝きを放っていた。温かい手は、彼の純粋な熱情をありのままに私へと注いだ。柔かい唇は、果てしなく濃く深い彼の悲鳴を私の胸に突き刺した。
全てが美しく、脆く、儚く、夢のような現実だった。
がりっ、と唐突に硬い物に当たった。吐き出して見ると、それは種だった。
芯迄全て喰らい尽くすと、芯をごみ箱へと放った。背後でがろんと、ごみ箱が揺れる音を聞いて、家を後にした。
必要な物を全て入れた鞄と、傘を携えて朝の街へと身を投げる。何処からか市場の喚声が聞こえる。活気溢れるその声も、今のどこか泣きたくなる気分を晴らすことはできなかった。
「···神威、愛してたよ。」
軽薄だね。
愛して無い訳じゃない。
が、背に腹は抱えられない。
忠誠を誓う主か、真愛を認めた者か。