※この作品はR-18です。

月虹の元で生くる者達   作:名も無き呟き

36 / 67
じゃんじゃん進めるぞー


修羅場···噛

地獄絵図の様を傍に見ながら、俺は駆け抜ける。

途中突っかかってくる馬鹿な敵を殺しながらも、意識は一点に集中させる。

 

―『確実に、一人以上夜兎は居るかと···!!』

 

「どこだー?」

 

ひたすら走る、走る、走る。

 

一際、血なまぐさい場所に着いたとき、奴は居た。

全方位敵に囲まれても、すぐに全員倒してしまう。

その鮮やかな戦い方、圧倒的な『強者』の匂いに、一瞬当てられる。

 

コイツだ、夜兎は。

 

深く考える間を与えず、奴に向かって突撃していく。

目だけをこちらに向けた奴は、素早く其処から飛び後退った。

 

正面に着地する。

 

よくよく奴を観察する。

 

フードを被り、日除けの布を巻いた顔は、表情が読めない。ただ、金色の眼だけが氷のような感情をこっちに突き刺してくる。

 

白金の髪に、白い中華服、金の縁取りがしてある。ズボンは黒。女か?

 

「ねー強いー?」

 

「確かめればいいだろ、自分でさ。」

 

くぐもった声。

 

「そうだねーまーアンタより俺の方が強いよー」

 

「···話してるヒマなんて無いの、こっちには。」

 

いきなり、鉄パイプが降ってきた。

正確に言うと、奴が振り下ろしてきた。

 

やはり読み通り、夜兎らしい。華奢な腕して勢い良く、こっちを狙ってきやがる。

 

難無く避ける。また狙ってくる。避ける。足下に振り落とされた。

 

「そんなんじゃ殺せないよー」

 

また頭を狙って振り落とされた鉄パイプを、今度はしっかり手でつかむ。

 

ガッ、バキンッ!!

 

そのまま手で、真っ二つに折ってやる。

 

「ーーー!!」

 

「ね?言ったでしょ?」

 

ブンッ!!

 

勢い良く、奴に向けて折った鉄パイプをぶん投げた。

 

ドンッ!!

 

と衝撃波が地を走り、爆発音が宙に轟く。

 

突然、爆煙の中から乾いた破裂音がした。

 

シュンッ!!

 

奴が放ったであろう、弾丸が空を裂き、俺に向かって飛んでくる。さっきので死ななかったとは、強者なのか、それとも幸運だっただけか。

 

「銃とかじゃ殺せないって、判ってんでしょー?」

 

正確に頭部を撃ち抜こうとする弾丸を、手で握って止めた。

 

「効かねェ弾は撃たねェよ。」

 

すぐ近くで声がした。

 

瞬間、背筋がぞわっとする。

 

とっさに、後ろに飛んだ。

 

身体を見下ろすと、服が斜めに大きく斬り裂かれ、そこの皮膚から血があふれ出ていた。

 

―いつの間に?

 

俺が弾に意識を集中させた、その僅かな瞬間、そこで一息に俺の間合いに到達し、斬ろうとしたと言うのか。

 

前を見て、奴をみる。さっきまで持っていなかった筈の短剣を、今は両手に二本、しっかりと握っていた。フードは外れ、布が巻かれた顔が露になっている。息は乱れてすら、ない。

 

この瞬発力だけで言うと、俺をも凌ぐ可能性がある。

 

―こいつは、強い。

 

斬られた部分だけでなく、全身の血が煮えたぎる。

 

「···イイネ。」

 

久し振りに、楽しめそうだ。

 

俺は笑った。

 

△▼△▼

 

ガキッ、ギャンッ!!

 

金属と金属がたたきつけられ合う音。

骨に響く、互いの蹴りの衝撃波。

殴ったり、蹴ったり、斬ったり、発砲したり。

 

戦っていて、気づいたこと。

 

・奴は女である。

 

・スピードは俺よりも勝るが、パワーは格段に劣っている。

 

・身の使い方、武器の使い方、それを用いた戦い方、応用力にも富んでいる。

 

・おそらく、本業は暗殺者である。

 

気になるのは、暗殺者のところ。

 

なぜ、正面戦闘を主とせず、どちらかと言うと隠密性を求められる暗殺者が、夜兎とは言え俺の相手をしているのか。

 

奴の瞬発力や高い凡庸性など、正にそれではないか。

 

敵の大将の意図が読めない。

 

考えながらも、攻撃を続ける。

 

当たったり、かわされたり。

 

相手の攻撃も同様に、当たったり、かわしたり。

 

とある一撃、奴が姿勢を低くした。足を狙うつもりか。

 

―チャンス、しめた!

 

頭ががら空きなのだ。殴れば一発で終了できる。

 

拳を振り上げた。そのまま、奴の後頭部に振り下ろす。

 

だが、避けられ、それは布と皮膚をかすった。

 

足に痛みが走る、ふとももを刺されたらしかった。

 

『この野郎···!!!』

 

お互いの声が重なった。

 

見ると、今まで顔を覆っていた布がさっきの一撃でほどけたらしく、やつの顔面から滑り落ちていっていた。

 

「曝すつもりはなかったのに···ったく。」

 

奴は顔面を上げた。そして、ゆっくりと笑った。

 

「···久し振りー、やほ、神威。」

 

「······お前······ッ!!」

 

白金の髪。

 

白い肌。

 

金色の眼。

 

間延びした声。

 

それに反して、氷の笑みを含かべた顔。

 

「藍···華·········ッ!!!!」

 

奴は、紛れもなく、彼女だった。




こ、小指が悲鳴を···
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。