三月五日
昨夜の、悪戯兼ねて盛った薬はうまく効いてくれたようだ。何処からどう見ても、処刑で死んだ様にしか見えない。
「···」
死刑執行人も俺と同じく死んだと思ったのか、首からロープを外して傍にいる助手に死体を渡した。興味津々にする助手に何やら低い声で指示を出す。どうやら、霊安室に運べと言っているらしい。
死体を解剖したそうに眺める助手に、執行人が釘をさした。不満げな助手だが、処刑台を指さされて慌てて指示に従って運んだ。
後について霊安室に入る。
すると、何やら解剖道具を漁り始めたので背後から傘を突きつけた。
「ファッ!?」
「何しようとしてンだ?手前の上司に報告すんぞ?」
「そっ、それだけは勘弁してくれ!わかった、止めるから。なんでもいうこと聞くからァ!!!」
「んじゃ、後で第七師団の団長と副団長が死体に面会するって上に言っとけ。後ついでに此奴の遺品もってこい。」
「わ、わかった!!頼むから言わないでくれよ!!?」
道具を放り出し、大慌てで駆け出していった。
ったく、少しは我慢という言葉を覚えろ。
何奴も此奴も、忍耐力ってのが無さすぎる。
さて話は変わるが、まだ薬の効果がきれてない彼女の顔は完全に死人だった。まあ、仮死状態だから死んでんのとほぼ変わんねェわけだが。
色んなことを考えてると、あの助手が戻ってきた。手に中華服とナイフと番傘を抱えている。本人曰く、「これ以上のものは没収された」との事。他に何か持っていたのだろうか。
「他にも何かあったのか?」
「銃弾とか、手榴弾とか、火薬とかが服に仕込んであったらしいですよ。···怖いっすねー。」
「···」
成程ね。流石にある程度の下準備はしていたという訳か。というか、先程から何か此奴の肩は小刻みに震えている。
「···あー、やだなー、もー、なんでバレたんだよぉ···」
「何があった。」
「···貴方に言われるまでもなく、バレたんですよ。上司に。はー···今回は何ヶ月解剖禁止なんだろう···」
常習犯の癖に懲りずに続けているのだろう。上司の苦労が目に見える。まっ、俺も苦労という意味じゃ上を行けるかもしれない。···何言ってんだか。
以下空白
おっと、忘れる所だった。こんな所から書き始めるのもアレだが、まあ、その辺はいいだろう。
ちょっとあの後の事は割愛させてもらうな。団長が発狂したってことぐらいしかないし。詳しくは本編読め。
···逸れたな。
本題に入らせて貰うと、あの後無事彼女は宇宙船に乗って脱出した。やれやれ、予定より少し遅かったが、無事に作戦Bは成功したようだ。
因みに、格納庫に行ってみると置き手紙があった。内容に大したことは書かれてなかった。通信機の周波数がかなり小さな字で書かれていた。そして、痛烈な皮肉も。
隣にちゃっかりと虫眼鏡を置いていったのだ、彼奴は。
しかもご丁寧に、「よかったら使ってください」なんてメモ書きまで残して。
全く、俺はまだまだ老眼とは程遠いってのに。
今度、会って倍返しにしてやろうか。
···また会えんのは、一年後だな。
オマケ
藍華と神威が出会ったばかりの頃の手記。
×月×日
目を離したら、すぐにどこかに行きやがる。全く、ほんとに迷惑なやつだ。仕事全部俺に丸投げして、自分は好きかって遊んでやがる。何処のチンピラだよ。
と思ったら帰ってきた。何故か、上機嫌だ。
また新しい獲物でも見つけたのだろうか?はあ、また殺しちまって俺が事後報告すんのかね。はた迷惑なもんだ。
最後のやつは前半の話を阿伏兎目線で語ったもの。
手記は三話位続きマース