間に合わなかったぁぁぁぁ!!!!
五月二日
時の流れってのは早いもんだ。彼女が逃亡を始めてから、もう二年が経っちまった。二年···長いようで短いもんだ。···さて、ここら辺かな?去年一度会い、今日は二度目の再会だ。
今回不思議なのは、会う場所である。
何故か、彼女が電波を飛ばしていたのは、惑星・洛陽。団長の故郷でもある、この場所で会おうなんてどういう風の吹き回しだろう。ただの偶然か、将又意図的なものか。
「あ、やっほー旦那。」
「···久しぶりだな。」
「一年ぶりー。」
満面の笑顔で、彼女は手を振っていた。二年経っても、相変わらずの美人。パネェ。
「お前さん、洛陽に何か用でもあったのか?」
「いやー、用はないんだけどさー、実はねー···」
結論から先に言わせてもらおう。
俺は、爆笑した。
なんとも間抜けな話。掻い摘んで語らせてもらうと、気まぐれから洛陽に立ち寄ってみれば、其処で揉めてた宇宙船の乗組員同士の抗争に巻き込まれ、宇宙船を奪われそうになって発砲。そしたら、運悪くそれが自分の宇宙船のエンジン部分に命中し、爆破。木端微塵になったのがついさっきという訳だった。
「···お前さん、帰れんのか?」
「その船に乗っけてもらうことになった。お詫びって。」
「自分で自分の船爆破したのにか?虫のいい話でよかったなァ。」
「···るさい。たまたまの事故だし。たまたま当たっちゃっただけだし。というかそもそも揉めてたヤツらが悪い。」
不機嫌そうに唇を結ぶ彼女は、とても23歳には見えない。五年前に、一度だけ見せた不機嫌な顔と何一つ変わらないその表情が。
「責任転換は良くねェぞ?お前さんの責任だからな。」
「···旦那の宇宙船爆発させるよ?」
「怖ェ事言うな。お詫びにいい所連れてってやっからよ。」
「···!やったー、旦那とデートだぁッ!」
無邪気で、太陽の様に眩しく、美しい笑顔。前はここまで感情表現が豊かではなかったのに。どうやら、時の流れは人を変えるらしい。
「別にデートじゃねェけどな。墓参りだし。」
「墓?」
「団長の母親の墓の場所、教えてやるよ。どうせなら行って代わりに墓参りしてやれ。」
「···」
団長、と言った瞬間、笑顔が消えた。そして一気に、寂しさが漂う悲しげな雰囲気となった。···彼女の本心がちらりと除いた瞬間だ。別に嫌いになってはなく、今でも好き。けど、会えない。会いに行けない。寂しい。会いたい。そんな感じだろうか。
「···ほれ、行くぞ。花くらい売ってんだろう。」
「···」
やっぱ黙り込むか。当たり前だな。此奴の立場としては、惚れた男の死んだ母親の墓参り。決して気分の良いものではないだろう。
お互い無言のまま、街を歩いた。途中花屋により、彼女に献花を選ばせると、意外にも百合の花を選んだ。真っ白な花弁に、僅かな赤色の混じった百合の花。
本人曰く、「神威が好きな花だから」だそう。健気な愛情が感じられる。これなら、来年辺り会わせられるかもしれない、そう心の奥底で思った。
サクサクと歩いて、墓の場所に着く。彼女は、百合の花を置くと、暫く眼を瞑って何かを祈っていた。果たして、それはなんなのだろうか。既に故人である義母への挨拶か、それともその息子である自分の情人への思いか。彼女しか知り得ることは出来ない。
「···」
透明な雫が一つ、彼女の頬を伝って百合の花へ落ちた。泣いてんのか?と聞いても首を横に振って否定された。ポロり、と彼女が言葉を漏らす。
「···神威、会いたい···」
なんとも切ない言葉だった。団長は、既に彼女が故人だと思い込んでる為あまり彼女の名前自体口に出さないが、それでも時折名を呼んで歯ぎしりしている時はある。
···もうそろそろ、潮時だな。
ほとぼりも冷めた。二人の想いの強さも確認できた。邪魔するものは、何も無い。
今年はもう無理だが、来年こそ二人を引き合わせよう。団長は、俺が無理矢理連れてくればいい。
「···旦那、ありがと。」
「···ああ。元気でな。」
遥か遠くから、彼女が礼を言ったのが聞こえた。それに別れの挨拶を返す。
···もうお前さんらなら間違えねェだろう。こんなにも強く思いあってンだから。
再会の日は、そう遠くない。
もうお察しでしょうが···次回再開編です。
阿伏兎の手記ではなくなります。現在進行形になるので。