怪我痛くねーし。
治ったのかなー?
+(0゚・ω・) + wktk!!
場面は打って変わり。
此処は、鬼兵隊本部の宇宙船内。
静かで、人気のない廊下。
しかし突然、その静寂は破られた。
原因は男がドタドタと廊下を走っている事。
男は、勢いよくドアを開く。
「晋助様!」
ハアハアと息を乱す男に、部屋の中の男は至って涼し気な表情で応えた。
「···どうした?」
「例の···あの組織に任せた仕事の話なんですが···」
「···ああ。奴らに、何か失敗でもあったのか?」
その話か、と呟き男の焦り具合からしくじりがあったのかと問う高杉。
が、意外にも男は複雑そうな面持ちでそれを否定した。
「いえ、その逆です···。失態どころか、むしろ利益が上がってます···。」
「···ほう。···なら何故そんなに焦っている?」
「いや、その、焦るというか、何と言うべきか···気味悪いんですよ。」
「気味が悪い?」
高杉はちらりと眉根をひそめた。
「···はい。此方の指示がある前に、此方が意図していた事をこなしてしまうんです。それも、恐るべき正確さと速さで。」
「···。つまり、俺の活動上の作戦を先読みしている···そう言いたいのか?」
煙管の煙をフッ、と吐き出しながら高杉が話の概要をまとめる。
「···そうです。」
男は意図が伝わった事にホッとしたらしく、やや安心した表情を浮かべる。すると、高杉はそんな事か、とやや引き締めていた声を緩めた。
「···別に、それくらいおかしな事じゃねェ。お前が俺にした話だと、組織随一の腕の殺し屋が担当してんだろ?···なら、寧ろ此方の動きはある程度読めなければ困る。一々指示を出さなきゃならねェ奴程面倒なものはねェからな···」
ククッ、と喉奥で笑う。
しかし、安堵の表情からは一転して、男は再び複雑そうな顔をする。
「それはそうなんですが···」
「···まだ何かあんのか?」
歯切れの悪い部下に、やや怪訝そうな高杉。
「実は、言ってなかったと思いますが···担当しているのは、まだ十五、六歳の少女なんですよ。」
「!ほう···。」
高杉は一瞬目に驚いたような色を浮かべたものの、すぐに何時もの落ち着いた目に戻る。男はその変化に気が付かなかった様だ。
「···ほんと、今にも倒れそうなくらい脆弱な見た目なんですけど···不思議じゃないですか?」
「···」
「···晋助様?」
やや顔を俯かせた高杉。前髪が顔にかかり表情は伺えないが、口元がうっすらと歪んだ。
「···面白ェ。」
「え?」
「···其奴は何処に居ンだ?」
「え、えーと······この時間なら遊廓に居ると思います。」
「···そうか。···お前、案内しろ。」
「え!?」
高杉の突然の発言に驚きを隠せない男。だが、高杉の命令は絶対だ。
「どんな奴か見てみてェんだよ。···遊女となれば、尚更その面拝まねェと···な。」
「···はあ。」
「···勿論、其処で仕事関係の話もできるんだろうな?」
「···はい。その為にたまに訪れますから。」
「···そうか。」
煙管の煙が途切れ、人気も途切れた。
△▼△▼
「···」
川、蝶、花の紋、金の帯。
紺、黒、朱、銀の簪。
漆の光沢。
塗った紅。
結った蒼髪。
鏡台に映るは、憂えた瞳の遊女。
「···情けない顔···」
ふっ、と自身を笑う。
それは自嘲的な"笑み"に他ならず、客に向ける"笑み"とは程遠いものだった。
何だ、この今にも泣き出しそうな顔は。
子供の素の表情を喜ぶ奴なんざ、此処には居やしねェってのに。
絢爛豪華な衣装着て、念入りに化粧して、花魁―遊女―"蓮"になったってのに。
何、馬鹿みてェに感傷的になってんだよ。
「···いくら化けても、所詮は私、か···」
誰かに聞かれる訳でもない、独り言を呟く。
···
遠くから鐘の音が響いた。
客が来るのは、もうそろそろだ。
人の気配が濃くなる。
此処に近付いてくる。
襖が、開く。
「遠所遥々、よくお越しくださいました――···」
△▼△▼
「···ほう。」
座礼の形が、綺麗だった。
背筋がスッ、と伸びていて、下げられた頭の高さも、手の形も、適当だった。
···遊女らしい。姿勢が良い女だ。
「···今日は俺だけでなく晋助様も居られる。そして、仕事の話がある。だから奥へ下がっ···「待て」···!」
女を、奥に下がらせようとする部下を止めた。
どれだけの美人なのかを拝む為、そして仕事に対するものを調べる為。
現時点では使える駒、というかかなり重用できそうな駒という認識が俺の中である。
それが間違っていないのか、この目で見て確かめたいのだ。
「···」
女は、依然として頭を下げたまま。
驚く程に周りに馴染んでいるが、何処かピリピリした様な雰囲気があった。
「···お前、顔上げろ。」
そう言われ、女はゆっくり顔を上げた。
「···」
率直に言えば、美人だった。
奴の言う通り、十五、六歳の脆弱な見た目の少女なのだが、その顔は人をハッとさせるものがあった。
やや鋭く細い金色の瞳に、細やかで艶やかな蒼髪。
雪の様に白い肌と、それに映える真っ赤な唇。
濃い睫毛。
「···ほう。中々美人だな。」
「···恐悦至極に存じます。」
俺の
···まるで、人形みてェな奴だな。
笑ってはいる。そう、確かに此奴の顔は"笑い"の表情を浮かべている。だが、演技だ。一度でもボロを出せば、一瞬で砕け散る硝子の仮面。ペラペラの紙一重。無理やり貼り付けられた、ハリボテ。
よくもまあ、こんな危なっかしいまま貫き通せるものだ。
それは此奴の腕なのか、技量なのか、将又偶然の賜物なのかわからないが、感心してしまう。
「···お前さん、名前は何だ?」
「······。蓮、です。」
やや間があって、少女―蓮―が答える。
接客の笑みを、相変わらず顔に貼り付けたまま。
自覚は無し、か。
「そうか。」
「···。また後で来ますので、ごゆっくり。」
空気を読み、俺が言葉を切ったタイミングを上手く掴んで此方の望むであろう動きを判断する。
行動は決して的を外さない。
成程。この動きのしなやかさからして、引き際が良さそうだな。
そして、敵の行動を読むことも得意そうだ。
偵察任務も難無くできそうだ。
中々どうして、役に立ちそうな駒が手に入ったもんだ。
△▼△▼
「···それで決まりだな。」
「···はい。」
終わった、か。
隣室で待機していた私は、立ち上がって襖を開く。
「···怪しい輩は居りません。盗聴の心配は、まずないと思います。」
当たり前のように、当たり前の事を報告する。
ああ、きっと今の私の笑みは心底冷たいんだろうな。
「そうか。···おい、帰るぞ。」
「はっ!······」
「···いつでもお待ちしております。」
△▼△▼
二人を見送った後、私はその場にへたりと座り込んだ。
綺麗に結い上げた髪が解け、はらりと顔にかかる。
俯きながら、私は冷笑を浮かべた。
···狼の様に、鋭い、心の奥底まで見透かそうとするような、使えるかどうか品定めするような、冷たい冷たい氷の眼。アレが、今回の依頼の主、"高杉晋助"···か。
くっ、と喉奥から笑いが漏れる。
見たか?あの眼。
私を、本当に"道具"としてしか見ていなかった。
ただ、其処に居て、命令すればそのままの動きをする人形として見ていた。
その通り、ご名答。
私は道具。
役に立てなきゃ即捨てられる、道具。
命令されたことをひたすらこなす、操り人形。
「······バーカ···」
ふと口から言葉が漏れる。
それは"嘲り"でもあり"蔑み"でもあった。
私は人間じゃなくて、使える手駒。
五臓六腑、この身全てを命令遂行の為に使う、そんな便利な"道具"に、
それ以上何を望もうか?
それ以上何を望めようか?
所詮、私の存在価値はそんなもの。
いやむしろ、それが無ければ存在価値すらないのかもしれない。
需要と供給。
――誰も、私を"私"としては見てくれない。
「作者···その額の逆三角形の布何?」
ほえ?······あ、ほんとだ。つーか服も白い着物?
「死装束じゃねェか!!」
···わーお。俺氏もしかして呪縛霊?
「···うわ。···(ガサゴソ)ほれ!」
うおっ!?塩撒くな塩!危ねーだろ!?
「さっさと成仏させてあげるー♪」
嫌だァァァァァーーッ!!!