※この作品はR-18です。

月虹の元で生くる者達   作:名も無き呟き

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はい、過去編最後···だと思われるやつ。

わかんね、追加あるかもしれない。


真実③

――『アンタなんか、榮蘭じゃない!!!』

 

――『俺の女に···何してくれたんだこのクソガキ!!!』

 

あの日、両親が俺に向けて放った罵声を、今でも鮮明に思い出す事が出来る。

 

···辛かった。辛いとしか、言い様がなかった。

 

大好きで、尊敬していた筈の両親の豹変ぶりが、俺の心を酷く抉っていた。

 

そして、その傷は未だ癒えない。

 

だって、そこに――

 

△▼△▼

 

「お兄ちゃん、今日、お父さんとお母さん、遅いね。」

 

「うん?うん。多分、忙しいんじゃないかなぁ?」

 

「また仕事なのかなー···。大変そう···。」

 

「だな。···そうだ!帰ってきたら、肩揉んであげようよ。俺が母さんで、藍華が父さん···」

 

「···あー!お兄ちゃんずるーい!私じゃお父さんの肩に手届かないの知ってるくせにー!」

 

「···えへへ、バレちゃったか···。いいよ、俺が父さんの肩揉む。藍華は、母さんの肩揉んであげて。」

 

「···やったー!お兄ちゃん、ありがとー!!!」

 

――これは夢だ。あの日、あの惨劇が起こる前の···俺達(・)の記憶――

 

···まだ7、8歳の俺と、4、5歳の藍華が、無邪気に笑っている。

 

逃げろ、逃げてくれ!

 

そう叫ぶが、場面は次へと移り変わる。

 

❮バンッ!!!!!!❯

 

物凄い音が、ドアを隔てた玄関から響く。

 

「っ!?お、お兄ちゃ······」

 

「しっ!静かに···」

 

藍華が、不安そうに俺の顔を見上げる。

 

そんな藍華の頭を撫でてやりながら、俺は、ドアの向こう側へと耳を澄ました。

 

バンッ!バンッ!と激しくドアが鈍器か何かで殴打されている音が響く。

――!――!と叫ぶ男達の声が響く。

 

「···こ、怖いよぉ······」

 

「···何が起こって······っ!?藍華、後ろに下がっ······」

 

❮バーーーンッ!!!!!❯

 

一際激しい音と共に、ドアが内側に倒れてくる。

 

「いやあああああ!!!」

 

藍華が絶叫する。すると、その声を聞いて、壊した"奴ら"は、ニヤリと笑った。

 

『···へっ。ちょうど獲物が目の前にいるなんて、俺達ついてんな。お前ら、さっさとこの子供達縛り上げるぞ!!!』

 

『おー!!!』

 

男の言葉の意味は、ほとんど理解出来なかった。

 

だが、藍華と俺が危険に晒されている――その事だけは、本能が理解していた。

 

『何だァ?この子供、俺達の事睨んでやがるぜ?生意気だな。』

 

『おい、お前。大人しくしろ。然もないと···お前の後ろの妹を殺っちまうぞ?』

 

『馬鹿野郎。殺したらだめだ。生け捕りにしねぇとボスに殺されるぞ?』

 

『おー、怖い怖い。さっさとやろうぜさっさ······っ!?』

 

俺が、包丁をヤクザの方へと向ける。

 

「···今、何つった?」

 

『は?』

 

「···今、何と言ったか言えと、言ったんだ。」

 

『何こいつ。子供の分際で俺に命令?ふざけんな······!』

 

怒りを顕にする奴らに、俺は冷然と告げる。

 

「···ふざけるなは、お前達だよ。この外道共めっ···!」

 

身体の内側から、ムクムクと力が湧いてくる。

 

もう一人の誰かが、俺の身体を支配する。

 

《さあ、狂宴(パーティ)の始まりだ》

 

△▼△▼

 

···今思えば、あの悲劇は回避できたのではないだろうか?

 

もしもあの時···彼らを傷つけるだけで済んだなら······!

 

△▼△▼

 

「はあっ···はあっ······?」

 

気がついた時には、もう全てが手遅れだった。

 

真っ赤な視界。

 

腕で目を拭うと、辺りの景色がハッキリと、残酷に映し出された。

 

「···あ······ああ·········!」

 

両手は、液体によって真っ赤に染まり、服も同じように染まっていた。

 

片手に握りしめていた包丁からは、その液体が、ポタッ、ポタッと滴り落ちる。

 

「······え·········なに······これ······血······?」

 

手から包丁が落下する。

 

バシャン、と水音が響く。

 

それは血だまりだった。

 

文字通り、血でできた水溜りが、彼方此方にあった。

 

そして、その傍らには―――

 

「······あ······う、うそ·········」

 

人間の、頭が。腕が。脚が。

 

全て、ほぼ原型を留めずに、落ちていた。

 

どれも、なにか鋭利な刃物で切り裂かれたように、綺麗に切れていた。

 

厭だ!違う、やったのは、やったのは、俺じゃない!

 

やったのはっ···やったのはっ···!

 

《君だよ。他の誰でもない、"俺"だよ。》

 

ゾッとする程、俺に良く似た少年が俺の目の前に立っていた。にこやかに笑っているが、その身体は真っ赤な血に濡れて――いや、塗れていた。今の俺と、そっくりそのままに。

 

《やあ、もう一人の俺。こんにちは、――と言うより初めましてかな?まあ、とにかく会えて嬉しいよ。》

 

「誰だよ、お前···!なんなんだよ、もう一人の"俺"って···!!」

 

《そのままの意味さ。君は俺。俺は君。一心同体、表裏一体。同じ存在だよ。》

 

「同じ存在、だって···!?」

 

《あー、うん、まあ、同じ存在って言うのは厳密に言うとちょっと違うけどね。俺は、君の中にある夜兎族本来のモノ···俗に言う"本能"ってやつかな?それを、君の想像によって声と肉体を得た存在さ。》

 

「夜兎族本来の······本能···?」

 

戯けた調子で俺に返事をし続けていた"俺"は、急に表情を変えてグッと顔を近づけてくる。眼が爛々と輝き、口元は興奮したように釣り上がっていた。

 

《そう。僕···いや、僕達は、夜兎族の血を引くものになら全て宿る存在。世間一般の、夜兎でない者達は、僕達をこう称す"夜兎族の破壊衝動"とね。》

 

「破壊衝動···だと?」

 

《ああ。···ついさっき、君は目の前の奴らを殺(・)し(・)た(・)い(・)と願った。だから、僕はその願いに同調し、"君"を"僕"に切り替え、奴らを破壊し、殺した。》

 

「······!······だったら、お前が·········」

 

再び穏やかな顔に戻った"俺"は緩やかに俺の言葉を指定する。

 

《おっと、勘違いしないでくれよ。確かに僕は君の意識を奪った。けど、その原因を作ったのは誰だい?そして、僕は君の中のもう一人の"君"だ。···言いたいこと、分かるよね?》

 

「違っ······違う·········!俺じゃ·········俺じゃ············!」

 

俺じゃない。そう叫びたかった。

否定したかった。目を背けたかった。

でも、それは、不可能で―――

 

《厭かい?認めたくないかい?···君の好きにするといいさ。でも、これだけは覚えておいてよ。僕が支配したのは、あくまでも君の肉体だ。そして、支配した理由は···君が僕を望んだから、という事をね···》

 

ククッと笑いながらもう一人の"俺"は姿を消していく。

 

後には、俺一人が残された―――

 

△▼△▼

 

「···」

 

あの日から、俺の中で、家族は藍華ただ一人になった。

もう、両親の事は憎む事しか出来ない。

恨む事しか出来ない。

 

なのに―――

 

「···この写真を俺に送るなんて、藍華、お前は俺に何を伝えたいんだ···?」

 

―『ありがとう』

 

たったそれだけを書いた手紙と一緒に、これを送った思惑は?

 

「···俺に、両親を憎む事をやめて欲しいってことか······?」

 

写真をじっと見つめる。

幸せそうな家族写真だった。

とても、幸せそうな―――

 

「···俺は······」

 

写真を引き裂きたい衝動に駆られた。

だが、幸せそうに笑っている藍華が写っている手前、如何しても破れなかった。

 

「···あれ?」

 

ハッと写真を見直す。

 

そうだ、この写真で幸せなのは藍華だけじゃない。

 

幸せなのは―――

 

「···そうか。そういう事なんだな、藍華。···お前のメッセージ、受け取ったよ。」

 

――お前は、何時だって俺の自慢の"家族"だ。




よし、次回から子供編やってくぞー。

まあ、まずは妊娠発覚からね。
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