※この作品はR-18です。

腐女子の宮水さん。   作:添牙いろは


原作:君の名は。
タグ:R-18 宮水三葉 立花瀧 瀧三 腐女子
もし、二人が再開した時、三葉さんが腐女子だったらどうなってたか、妄想してみました。

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腐女子の宮水さん。

 今回の読者様は、普段と活動ジャンルが異なるため――はじめまして、の方も多くいらっしゃるかもしれません。ですので、しばらく自分語りをさせてください。

 とはいえ、喋りすぎると特定されてしまいそうなので、当たり障りのないところだけ。少なくとも、私があの糸守町の出身であることは、既に何度かお話しておりますので構わないでしょう。

 ということで、この本について糸守町の関係者に話すことは固く禁じます。何卒ご協力の方をよろしくお願いいたします。今のところ、多分バレてないです。身内にも。

 さて。

 当時は大きな騒ぎとなりました彗星落下事故ですが、今ではすっかり鳴りを潜め、私も東京で平穏な生活を送っております。

 私はあの日、すべてを失いました。

 しかし、それは古きを捨て去るための新たな一歩になったのかもしれません。

 家族で東京に移り住み――そこで最も驚いたのは、店々の数でした。

 カフェやブティックなどは勿論、地元では車で街に出ないとお目にかからないような規模の書店が、あちらこちらにいくつもそびえ立っているのです。

 インターネットを用いれば本を購入することだけはできますが、陳列棚がないのでは話題の本しか知ることができません。

 壁一面に並んだ背表紙を眺めながら新規開拓していく――それもまた、本に対する楽しみ方の一つではないでしょうか。

 人は、自分の想像し得る範囲でしか本を探すことはできません。

 だから、これまで知りようもなかったのです。

 まさか――あんな古いアニメがいまさら漫画化されていたなんて……!

 喜び勇んで即買いしたのですが――いえ、私も、表紙の絵柄が何だか違うな、とは思っていたのですけど――それを読んで驚愕しました。

 そこには――かつての私が思い描いていた物語が綴られていたのです!

 あの子とこの子が、こんなことしてたらいいのになー、という妄想が、漫画となって出版されていたなんて……!

 驚きのあまり――翌日の学校帰りにカフェに寄った際、友人SとTに報告しました。

 ……あ、ここでいう友人Tは、これまでのフリートークにちょくちょく出てきたバスオタの彼女とは別人で、男子です。SもTも、同じ高校に通っていた一般人の友達なのですが……これ以上は特定されそうなので勘弁してください。田舎は狭いので。

 二人とも糸守にいた頃からの友人で、今回驚愕したネタについては、放映当時にも話していました。とはいえ、あの頃はまだ熱量も控えめだったので『あの後、こんなことになってたような気がしない?』くらいの当たり障りのないノリでしたが。

 それだけに、Sちゃんの方はすっかり忘れていたようです。アニメ自体にあまり興味がなかったみたいですし。

 ですが、T君の方は……元々マニアックなところがあったからかしっかり覚えていて、そんな感じの本がたくさん置いてある店がある、と教えてくれました。

 Sちゃんの食いつきが悪いので、その場では『気が向いた時に行ってみるね』くらいの軽さ応じてみたものの――さすがは東京、といいますか。T君がサクっと調べただけで、近くに支店の一つがあることが判ってしまいました。

 ということで、早速三人で行ってみたのです。

 一階は普通の商業誌のフロアでしたので……肩透かし感はありました。

 その時点では、SちゃんもT君も、漫画専門店、くらいに捉えていたようです。

 しかし……

「ちょ……ちょっと覗いてみても……いいかな……?」

 私は、友人らと来ていたことに少しだけ後悔しつつも、やはり、一緒にいてくれて良かった、と思いました。

 もし、独りで来ていたら……正気を保てなかったでしょうから。

「お……俺は上の階に行ってみるわー……」

 踊り場から見える範囲だけでも凄まじい雰囲気で、T君は脱落してしまいました。

 何しろ……

 綺麗な男の子たちのイラストがひしめき合っていて、

 それでいて、みんな熱っぽい表情で……

 この世にこんな本がこんなにたくさんあったなんて……思わず放心してしまいそうです!

 そこでバランスを取ってくれたのはSちゃんでした。

「東京って……怖い……」

 T君ほどの拒否反応を示すことはありませんでしたが、やはりその熱気には若干引き気味な様子。彼女が隣にいてくれたお陰で、私は『興味本位で見物に来た一般人』を装うことができました。もし、彼女がリミッターになってくれなかったら……下手すれば、これまで貯め込んできた預金を一日で使い果たしていたかもしれません……!

 そして何より――

「ダメだよ! そっちは……!」

 こっちの棚は、18歳未満禁止、と。

 女に生まれて、こんなことで悔しい思いをするなんて夢にも思っていませんでした。

 こんなのは、おバカな男子が苦しむだけだと冷めた目で見ていたのに。

 まさか私自身が、Sちゃんから冷めた目で見られるとは……!

「いや、ほら~……どういう本があるのかなー……って興味ない?」

「ないよ! こっち側の本だって充分すぎるほどヤバイもの!!」

 その一言によって……思い知らされたのです。

 私が密かに思い描いてきた妄想が……充分すぎるほどヤバイものだったということを。

 キスはともかく、抱き合うくらいなら全然普通だと思ってたのに……

 Sちゃんには、それすらも恥ずかしいものとして映っていたようです。

 でも。

 私の好奇心は止められません。

 世間的な評判はよろしくないと知りながらも、止められません。

 ですから……今後、この話は控えておくことに決めました。

 少なくとも、家族や学校、趣味の合わない人たちの前では……。

 ちなみに、T君が別行動中に何をしていたのか、私たちは知りません。

 紳士な彼は、決してそのことを話そうとしなかったので……。

 私も、Sちゃんも、自分たちのフロアの様子からなんとなく察してはいましたが。

 

 ともあれ、これが私の人生のターニングポイントになったようです。

 入り口さえ知ってしまえば、あとはひたすら調べるだけ。その先には際限なく薔薇色の世界が広がっていました。

 私の生活は徐々にそっち方面へとシフトしてゆき、即売会やオフ会に参加するようになると、徐々にSちゃんたちとの関わりも減っていってしまいました。

 高校卒業後に会ったのは、二人の結婚式、だったような気がします。不覚にも『Sちゃん、生えてないけど構わないのかな……?』などと本気で心配してしまったのを今でも覚えています。

 さて、東京にはこのような素晴らしいもので溢れているのですが……その分、家賃は高めですね。引っ越しの際に、妹と一部屋でいいよ、と気を使ってしまったことを、その時になって後悔しました。これでは、折角見つけた宝の山を収める場所がありません!

 ですから……私の本当の冒険が始まったのは、大学に進学して一人暮らしを始めてからといえましょう。

 実は――これも過去の後書きで何度かお話しましたが――

 彗星によってすべてを失ったあの日以来、ずっと悩んできたことがありました。

 何か大切なことを忘れてしまったような……そんな、喪失感。

 ですが、それは漠然としていて――何を探していたのかずっと判らなかったのですが――ふと我に返って気づいたのです。

 書棚には愛すべき本たちが並び、

 壁には推したちが一面に敷き詰められ、

 スケジュール帳には新刊やイベントの予定がギッシリと。

 最早、何かが欠けた――などと悔やんでいる暇もありません。

 むしろ。

 これこそが私の中で欠けていたもの――それを埋め合わせたい、と渇望していた――と理解したのです。

 ならば、心の内が求めるままに追い続けるしかない――私は導かれるようにその書店でアルバイトを始めていました。主に、女性向けフロア担当として。最初は、何と素晴らしき目の保養だろう――と幸福感に浸っておりましたが……まあ、仕事ですからね。楽しさばかりではなかった、ということだけは付け加えておきます。多くは語りませんけど。社会人ですから。

 とはいえ。

 そのまま社員として採用されるに至ったのですから、きっとこの仕事は私に合っていたのでしょう。

 

 このように日々奔走していた私ですが――ある時、衝撃的な事件が私の身に降りかかりました。

 まるで、これまでの人生を寸断するような出来事。

 それが、何の脈絡もなく。

 突如として。

 あの日もいつもと同じように通勤列車に揺られ、私は扉に押し込まれていました。

 流れてゆく景色を眺めながら、次の本のネタを詰めたりして。

 ただ、ぼんやりと。

 しかし。

 次の瞬間、私の意識は繋ぎ止められました。

 並走していた隣の電車の、同じ窓際。

 そこに乗車していた一人のスーツ姿の男の人――

 どこかで見覚えはあるのに、どうしても思い出せない。

 そして――

 このまま手放してはならない――そんな焦燥感に急かされるも――

 彼はそのまま別の路線へ……

 私は思わず次の駅で途中下車し、彼の乗った電車の向かう先へと走り出していました。

 自分でも、何をしているのか分かりません。

 こんな広く入り組んだ街並みで、たった一人を見つけることなんてできるはずがないのに。

 だとしても――そうせずにはいられなかったのです。

 もし、ここで何もしなかったら絶対に後悔する――そう直感して。

 皆さんだって、もしも通勤中のリアル推しに出逢ったら、脇目も振らず追いかけるはずです。

 いえ、創作上のキャラなら、わざとらしさを感じてそこまではしなかったかもしれません。

 ですが、私が見たのは――オリジナル。

 誰が真似をすることも、演ずることもできない、た(・)だ(・)ひ(・)と(・)り(・)だったのです!

 二次ではなく、三次。

 監督も脚本家もいない、生身の。

 どの作品でも出逢ったことのない、初めてのキャラ。

 そして何より――

 彼もまた、私に気づいていました。

 電車と電車を隔てて、こちらをじっと見つめていました。

 きっと、彼にとっても私は、ある種の推しだったのでしょう。

 逢えるという確信もないまま、

 それでも、何故か逢えるという確信を持って、

 私は辺りを走り続けました。

 そして、高台から下り階段へと差し掛かった時――二度目の邂逅……!

 私は上から彼を見下ろし、

 彼もまた下から私を見上げ――

 僅かな間でしたが、間違いようもありません。

 私たちは、ようやく巡り逢えたのです!

 しかし……

 掛ける言葉が見つかりません。

 どこかで見たことがあるような気はするのですが、

 どの作品だったか思い出せません。

 顔形はあの子に似ていますが、

 雰囲気はどちらかというと攻めの子の方に近い気がしますし。

 階段を下りながら――私は逡巡し続けます。

 しかし、何も言えないまま、一歩、また一歩と。

 ただ、偶然そこを通りがかっただけのように。

 彼もまた同じように、石段の下から淡々と上へと目指していきます。

 そしてそのまますれ違い……もうダメかもしれない――そう諦めかけた時――

「あの……どこかで逢ったことがありませんか……!?」

 その一声を聞いて、私は足を止めました。

 辛うじて、奇跡は繋がったのです。

 なので、私も彼に応えました。

「私も……逢ったことがある気がします……!」

 そうなのです。

 彼はアニメのキャラでも、

 特撮モノの俳優でもありませんでした。

 私と同じ次元を生きる一人の人間――

 だから、どんなにアニメに傾注していても見つかるわけがなかったのです。

 どうやら、私が探し求めていたのは

 推しでも

 神作品でもなく……

 私の心を埋めることができるのは、この世界に存在する彼という一人の男の子だったのです!!

 

 つまり。

 

 自分の中で欠けていたものとアニメには何の関係もなく、

 普通に好きだっただけです。

 理由はありません。

 ただ、それが好きで、

 好きなキャラと好きなキャラが(性的に)イチャイチャしていると、見ている私もドキドキする――それだけのことでした。

 ですから。

 彼と出逢い、心が満たされたところで――アニメはアニメ、であり。

 代替にはなり得ません。

 まさに、別次元。文字通りに。

 どちらも、私にとって掛け替えのないものです。

 しかし……

 これまではアニメ作品に愛情のすべてを注いでいましたが、これからは、彼にも注いでいくことになります。

 むしろ、出逢った当時は、私も浮足立っていましたから――彼を優先していたことは否めません。

 少しでも彼の傍にいたかったので……リアタイの視聴は諦めました。多分、一緒に観るにもテンションが違うと思うので。突然感極まって叫び始めたら、彼だって怖がるでしょうし。

 一昨年の冬に、不覚にも新刊を落としてしまいましたが……それは、このような事情があったのです。スイマセン。

 ですが、私も辛かったのです。

 いえ、彼と一緒にいられて辛かった、というのも酷で贅沢な話ではあるのですが――

 彼に見せられない自分を“抹殺”する必要があったのです。

 何しろ私の部屋は――

 本棚の五割は男の子と男の子が絡み合う薄い本ですし、

 四割は男の子と男の子が絡み合う厚い本ですし、

 壁の半分は綺羅びやかな男の子のポスターやらタペストリーで埋まっており、

 残りの半分は肌蹴た際どい男の子の――!

 今から思うと、通勤中は一般人仕様にしておいて本当に助かりました!

 初対面でバレていたら、百年の恋も冷めかねません!!

 私は泣く泣く、それらすべてを……トランクルームへと押し込みました。

 そして、自室に残ったのは、推しが使っていた目覚まし時計や、作中に登場したティーカップくらいのものです。

 すっかりガランとしてしまいました。

 抱き枕もないのでは、もう独りでは寝られません!

 彼はこんな私の部屋を見て、よく片付いている、と褒めてくれました。

 ですが……彼は知らないのです。

 私が毎日のようにトランクルームに立ち寄り、魂を浄化(汚染?)していたことを。

 

 そんな私の苦労の甲斐もあり――

 交際はトントンと進み、数ヶ月後には同棲するようになり――引っ越しは、楽でした。ええ、本当に――更に一年後には入籍するに至っていました。交際から一年余りのスピード結婚です。

 しかし、私たちに迷いはありませんでした。

 お互いこの人しかいない、と思えましたし、そして何より、もう二度と離れたくない――そんな存在になっていましたから。

 もし、彼にアニメや特撮を観るのをやめろ、と言われたら、死を選ぶ――そのくらいの覚悟で、愛しています。

 

 懸命な擬態の甲斐もあって、彼との生活はごくごく一般的なものでした。

 深夜の方は録画しておいたものを仕事の休憩時間に観て――控室なら感動のあまり涙を流していても、珍しくないこととして心配されないので助かります――日曜日は彼がゆっくりと寝ている間に声をひそめて楽しんでいました。

 

 このように、二つの人格を使い分ける生活が半年ほど続いていましたが――やはり、自分に嘘はつけませんね。私はついに、致命的なミスを犯してしまったのです。

 

 それはとある夜、彼と映画を観に行った時のことです。アニメ映画ではありましたが、一般層も巻き込んで話題になっていたので、彼と一緒に観賞することができました。二人の共有の思い出ができて、私もとても嬉しいです。

 人気作ということで遅い時間まで公演されており、私たちが観たのはその日最後のレイトショーの回でした。終電はないこともありませんでしたが……週末ですしね。ホテル街も歩ける範囲にあるようだったので、私たちは夜の街を散策してみることにしました。

 この辺りは住宅地の真ん中で再開発が行われ、駅の周りにだけ綺麗な高層ビルが群生しています。夫の仕事は建築デザイナーですから、このような建造物には興味が尽きないのでしょう。何やら熱心に上から下まで見回していました。

 一方、私も私で――そこは、俗に言う『けしからん決戦前夜』のロケ地、といえば通じると思います。

 通じなければ字面から何となく察してください。

 とにかく、私としても一度は見てみたい現場だったのです。

 彼が、建物そのものの造形や配置に心を奪われている隣で――私は原作に想いを寄せていました。

 実際はチェーンの飲食店が入っている商業施設なのですが、彼らにとっては宇宙に向けた前線基地。

 ちょうどあの場所で二人して星空を見上げていたなぁ……などと思い出すと、私の気持ちも否応なしに昂ぶってきます。

 胸が高鳴るままに彼の腕にぎゅっとしがみつくと――彼は、私を抱きしめてくれました。辺りは小さな照明がキラキラと瞬いていて――とても神秘的な雰囲気でしたから。まさに、二二話さながらです。

 ですが――

 やはり、実際に体感してみると、その空気まで伝わってくるようです。放映版ではカットされていただけで……実際には、彼らがキスとかしていても不思議はないな、と。

 ですから、彼の近づいてくる唇を、私は拒むことはありませんでした。

 むしろ積極的に――あの子たちのことを思いながら――

 攻めの子は、きっと受けがモジモジしていたら誘ってしまうことでしょう。

 こうして――股間のあたりを撫でたりして。

 しかし。

 残念ながら私は男子高校生ではありません。

 彼に触れられる胸の膨らみで、自分が女子であることを嫌でも自覚させられてしまいます。

 とはいえ、それで気分が萎えることはありません。

 何故なら……私は私として、彼を求めていたのですから。

 キッカケは、妄想だったかもしれません。

 それはさておき、女としての私が、彼の性を感じたがっているのです。

 なので、大胆になっていく彼の指に、つい自分を委ねてしまいました。

 彼の指がブラウスの合わせを解き終わると、その隙間から両腕が滑り込んできます。

 外したいのかな、と私は彼の胸にピタリと寄り添うと、クイ、クイ、と慣れた手つきでブラを切り離してしまいました。

 こうなると、もう彼の手つきには遠慮がありません。

 私の胸を、乳首を、思う存分弄ぶのです。

 しかし、それが私の身体をさらに熱くし、興奮するほどに、つい彼らのことを彷彿とさせられてしまいます。

 きっと、あの子たちも同じように胸をドキドキさせて、

 そうしたら、絶対こんなことを――

「舐めて、あげようか?」

 攻めの子のことですから、きっとストレートに欲望を表現することでしょう。

 一方、受けでしたら、最初は恥じらって拒んでしまうはずです。

 男同士で、そんなことをするなんて、と。

 悦びと好奇心の間で揺れ動かされながら。

 ですが……

 私は女で、彼は男である上に夫です。彼とはこのようなことをするのも初めてではないので――喜々として愛撫を受け入れてしまいました。

 しゃがみ込んだ私の前に腰を突き出すだけでなく、うなじから腕の方へと撫でてゆき、私の肩を露わにしてしまうのです。

 それでも構わず彼を愛でていたので――きっと後ろからは背中が完全に見えていたことでしょう。

 それも男の人の股の前で。

 完全に、痴女ですね。

 ですが――

 ここは滅多に来るところではありませんし、

 誰かに見つかっても……それがお巡りさんや警備員さんでなければ……!

 だって、こんなに悦んでくれているのですから。

 彼は、何も言いません。

 ですが、しっかりと伝わってきます。

 私の手の内に、そして、舌先に。

 敏感な筋から根本まで――隈なく私を 性感(カン)じてくれているようです。

 割れた頭から染み出してくる透き通ったお露をチロリと舐め取り、

 皺の袋を優しく、手の内で捏ね回します。

 彼の、男の子の、すべてを。

 もしかすると私は、攻め気質なのかもしれません。

 散々刺激して、腰が引けてきたところで、少しその手を弱めてみました。

 その緩急に、彼の方も耐えかねたのか――

「……欲しい……」

 喘ぐように求められては……これ以上のお預けは可哀想ですよね。

 なので、私は彼にその場で横になるようお願いしました。

 ここで下になって押し込まれるのは……ちょっと痛そうなので。

 代わりといってはなんですが、私は着崩したまま彼に跨りました。

 ブラはずり落ち、胸も見えています。

 ですが、私はもう吹っ切れていました。

 誰かに見られても、掻き捨ててしまえ、と。

 何より、夫婦ですし。

 場所はよろしくないですが、本来は身体を交えるべき相手なのです。

 そして、子を成せと親からも言われてしまうような。

 セックスを、求められているのです。

 これはもう、推しカプ同然ではありませんか。

 そう考えれば……恥ずかしいことなんて、何も……!

「あ……はぁ……ん……あぁ……っ」

 声は抑えているつもりなのですが、静まり返ったビルの合間では、どうしてもよく通ってしまいます。

 漏れてしまった吐息ですらこうなのですから――

「凄くいい……可愛いよ……!」

 そんな彼の惚気けた呟きも、普段より大きく聞こえてしまいます。

 私もつい嬉しくなり――腰の動きもいつになく激しさを増していくようです。

 それに、私の 膣内(なか)でも彼が大きく、強く感じられます。きっと、私も興奮しているのでしょう。

 ですから――

「 射精(で)る……っ!」

 そんなことを言われても、私に止める気はありません。

 まだまだ 性感(カン)じていたいから。

 もっともっと、気持ち良くなれるから……!

 自分の奥で固まっているものを打ち砕くように、私は白い濁りの溢れ出す塔の天辺で貫き続け――

 ビクビクビクっ……と彼の上で絶頂に浸っていました。

 股下のジーンズを汚してしまいましたが、彼自身のモノですし、後で拭いて誤魔化すことにしましょう。

 ですが……

  絶頂(イッ)たはずなのに、すぐさま再び熱いものがこみ上げてくるのです。

 だって、私はしてしまったのですから。

 セックスを。

 あの子たちがしていた場所で、私も一緒に――!

 そう思ったらもう堪りません!

 だって、これまでずっと妄想してきたのですから。

 あんな状況で、

 こんなシチュエーションで。

 それを、自分の本に 認(したた)めてきたのですから……!

 賢者モードに入っているであろう彼に鬱陶しいほどに甘えて、何度も何度も 勃起(た)せます。

 手首の辺りで絡まっていた袖口は抜き去り、

 スカートも下げてしまいました。

 靴は履いていますが、事実上全裸です。

 彼も彼で、足首をつなげたピヨピヨ歩きは格好が悪いので、下半裸になってしまいました。

 そして、思うがままに、二人で性を謳歌するのです。

 今度の私は受け側のごとく。

 きっと彼も、ここの壁に押し付けられながら、立ったまま撞かれていたのだと思います。

 穴は違えど。

 作中でも、ハプニングとはいえあんなことになっていたのですから、その後ヤッたに決まってます!

 そんな場所で……私も……!

「 射精(イク)よ…… 膣内(なか)で……っ!」

「うんっ、いいよ……!」

 一度 膣内射精(なかだし)してしまったからか、彼の腰つきに迷いがありません。

 最後の最後まで私の身体を求め続け、そのまま最後まで果ててくれるのです。

 ゴムがなければ余裕を持って 膣外(そと)に出すしかなく、

 ゴムをつけると少し摩擦が物足りなくなってしまう気がします。

 その両方を、今は兼ね備えているのです。

 何より、じんわりとお腹が温かくなる感覚を……私は忘れることができないでしょう。

 もう少し先でいいかな、なんて言ってないで、本気で子供を考えてしまいそうになるほどに。

 その方が、ヒーローショーにも行きやすくなりますし。

 ここから更に二回戦を経て――

 そろそろホテルに――などと彼の方が後ろ向きになってきたので、 勃起(た)たなくなる前に……どうしてもやってみたことを最後にお願いすることにしました。

 それはいわゆる、うちの二冊前の本でやらかしたこと――あのベンチをベッドに見立てて、裸になって愛し合っていたシーンです。

 正直なところ――自分で書いておきながら、やりすぎだった気がします。

 特に閉鎖もしていないのですから、誰が通るか分かりません。

 そして、それは創作でも現実でも変わることはなく。

 ですが――

 ここまで誰も来なかったのです。

 それに、このような機会はおそらくもうないでしょう。

 だったら、やり尽くしておきたい……

 この『性地巡礼』を……!

 しかし、少し遠いですが車道の信号の灯りまで目視できてしまいます。

 そうでなくとも、近辺は開けていて……通路というより最早広場です。

 その中央にはあの大樹――エースパイロットとして選抜された受けの子が、ライバルから熱い抱擁を受けた場所です。

 その根本にあんな大きなベンチが据えられてるんですよ?

 これはもう……もうセックスするしかないじゃないですか!

 公式二次設定と言っても過言ではありません!

 私がその場所まで引っ張ってくると……敷地の外が見えたことで彼も少し躊躇したようですね。

 とはいえ……こっちは下半裸どころか全裸なのです。

 ここまでやってきたのですから……彼もすぐに覚悟を決めてくれたようです。

 私の本ではしっとりとキスから始まり、徐々に肌蹴させながら愛撫へと繋いでいきましたが、実際の私たちにはそのような余裕もなく、脱がす服もまともにありません。

 何より、いまさら前戯など必要がないほどにトロトロになっています。

 私が横になれば、彼はすぐさまのしかかって来ました。

 足を開いてもはみ出すことのない大舞台の上で……

 私たちは――あの子たちのように――!

「んっ、くぅ……っ!」

 そろそろ彼も限界かと思っていたのですけどね。

 これまでのようにコソコソと隠れてではなく堂々とした場所に移したことで、羞恥心や警戒心より、開放感が勝ったということでしょうか。

 まるで一日溜め込んだかのような硬さを取り戻しています。

 そして、私の興奮は言わずもがな。

 何せ……彼らと同じ場所でセックスしているのですから!

「ぅ……ふ……ぁ……あぁ……っ!」

 興奮はしながらも、焦りもあるのでしょうね。彼の腰つきはいつになく激しくなっています。

 最後の力を、最後の一滴まで絞り出そうとするように。

 私はこれについ甘えてしまいます。

「いいのぉっ、もっと……もっとぉ……っ!」

 こんな凄いことに付き合ってくれるなんて……私は素敵な夫を持ったものです。

 それが、嬉しくてたまりません。

 ですが――

 その幸福感が最高潮に達した時、私はとんでもないことを口走ってしまったのです!

 あの話を執筆していた際の興奮が甦り――

 ここまでは、あくまで彼らの足跡を追っていただけだったのに、

 つい、受けの子が乗り移ってしまったようです!

 流し込まれる熱いものをおなかで受け止めながら――

「いいよぉ……ヤ(・)マ(・)ト(・)君(・)……❤❤❤」

 拙書中の台詞をそのまま漏らしてしまったのです!!

 これには……私の上で、彼の顔がみるみる曇っていきます。

 そして、完全に嫌疑の色に染まった時――当然のことを、私に問い質しました。

「ヤマトって……誰?」

 

 これはもう、ホテルで一泊――などという雰囲気ではありません。

 私たちがタクシーで向かったのは、自宅ではなく――私の夢が詰め込まれたトランクルームでした。

 彼に納得してもらうには――信じてもらうには、すべてを明かすしかありません。

 今日してきたことは、私の妄想を辿るためだった――と。

 本当は既刊から新刊まで逐一解説するつもりだったのですが……三冊目の時点で彼の方が陥落してしまったようです。

「わかった……もう、わかったから……」

 お陰で、一つの誤解は解けたようですが――これから私は、新たに生じた別の誤解を解かなくてはならないのでしょう。

 私は、決して、

 夫の尻穴を、他の男に狙わせるようなことは考えていない……と。

 

       ***

 

 これがキッカケで、すべてがバレてしまったわけですが。

 彼にも原作を観てもらった結果、それがアニメの影響だということも理解してくれたと同時に、私生活でこちらの機嫌が異様に良かったり、落ち込んだりしていた理由も何となく察してくれたようです。

 どうせバレてしまったのだから――と試しに本の表紙をお願いしてみたところ、作品自体はよく解らないのだけど――もちろん、原作の面白さは伝わっているのですが、何故そのような解釈となり、何故そこまで入れ込めるのかは解らない、と――何にせよ、表紙のデザインについては協力してもらえることとなりました。前回の表紙が突然綺麗になったのは、このような経緯があったのです。

 しかし、ならば次は挿絵も込みで、と夢も膨らむものですが、男同士の絡みは厳しい、ということで断られてしまいました。こちらについては明確に。

 まあ、性癖は人それぞれなので、無理強いするものではありません。ならば逆に、どんな性癖なら許容できるのか。こうなってくると……何としても彼が描いたエロ漫画を読んでみたくなってきます。

 そしてある晩、深夜のテンションでトントンと話し合った結果――ちゃんと物語があって、男女のカップリングであれば、という結論に至りました。そして、もし私がそういう話を作れたのなら、それを漫画として作画しても良い、と。

 そんなことを言われれば、是が非でも考えずにはいられないのですが……ダメですね。思い入れが強ければ強いほど、女が入ってきても邪魔にしかなりません。

 ですが、思い入れのないキャラで漫画を描いてもらっても楽しくありません。

 そこで気づいたのです。

 私は、彼が大好きだと。

 そして、彼であれば、女と抱き合っていても、受け入れられます。

 勿論、私に限定して、ですが。

 ということで、私はこの物語を綴りました。

 どこまでがリアルで、どこまでがフィクションか――

 それは、皆様のご想像にお任せします。

 ただ、情事のシーンとしてあの場所を選んだのは……お気に入りの背景なら作画も捗るかな、という計らいもあります。

 実際にやったら、犯罪ですけどね。

 あとは……彼の漫画を待たせていただきましょう。一読者として。

 まったくの別キャラにしてしまうのか、

 それとも恐ろしいまでに似せてくるのか……

 今は、それが楽しみです。

 


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