※この作品はR-18です。

Darkness Of The Game   作:斬刄

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WARIING!
この話の前に【どうあがいても絶望】の話も読むことをお勧めします。

ーーーーーーー

【この物語を読む前に、輝明の転生前の出来事を覚えているだろうか?】

邪神は輝明に転生の内容を説明し、神の言う通りに頷いた。転生先の世界を告げられ、力を授かり、そのまま世界へ生きることとなった。

【だが、それは本当に輝明自身の意思で、邪神の返事を全て返したたのだろうか?一から十まで、全て神に仕込まれたものだとしたら?】

ーー輝明がその能力で活躍できたのは、寺に住ませてもらうために使った最初の時だけである。転生される前に、初めから【ハイドにとっての舞台装置】に動かされたことも知らずに。

スムーズに事が進んだのは最初だけで、後々の展開はハイドという裏人格者が乗っ取ろうとしたことから狂わされていく。

もうハイドの人格が現れる以前に、既に輝明自身の肉体と精神が半分以上侵食されているということも、全く何も知らないまま。

一体いつから、邪神から貰った特典と、転生後の施し、ここまでの転生後の活動が…輝明だけのものだと錯覚していた?



ーーーーーーー



NO DRAWN(後編)

 

 

「どういうことだよ、それ…何も聞いてないぞ。

引き分けになったら全滅するなんて…そんな肝心な事、どうして話してくれなかったんだ⁉︎」

『おう、そうだな』

 

勝負の結果が引き分けになるという言葉に、全員が驚愕する。能力を所持している輝明ですら、こんな事になるとは誰も思わなかった。

 

「輝明、お前っ…‼︎

スイムスイムだけじゃなく、ここにいるウチらの命まで巻き込もうとしてたのか!」

「いや、違っ。俺はそんなつもりじゃあ…」

 

ミナエルが輝明に詰め寄ろうとするが、攻撃できないというゲームの能力から見えない壁によって阻まれてしまう。

 

『あー…コホン。それを輝明に問い詰めても、全く意味はないぞ』

「誰だ!」

 

大きな鏡に写っている輝明は大きな欠伸をして、呆れた様子でゲームの映像を眺めている。

 

声は寺内に響き、ウインダープリズンは発声源を探そうと周囲を見渡す。

声のする方向に目を向けても、見つからない。

 

『まず俺が何者なんて聞くより、自分の身のことを案じたらどうなんだよ』

 

その能力について、特にハイドを知らない人達からしたら言いたいことが山程ある。

 

 

「ハイドっ…こんな事になるならなんで言わなかった‼︎事前に話しておけば慎重に」

『話さなかった俺が悪いって指摘してるようだが…それは全然違うなぁ。

お前もお前で、こんな事態になる前に何回も試行してこなかったんだから』

「元々呪いの力なんだから、そんな危ない事出来るわけ無いだろ⁉︎

そもそも俺の意識を無理矢理奪っておいて、その上に僅かな時間で試すなんてできるわけないじゃないか‼︎」

『それもそうだな、じゃあご愁傷様』

「なっ…⁉︎」

 

今までに無関係な一般人ではなく、魔法少女相手だけにその能力を使用している。その能力を乱用すれることに躊躇し、使う程にハイドの優位になってしまうのではないかと恐れていた。

 

意識がハイドに入れ替えられてから、輝明に戻ってから能力を試す時間は限られている。

 

 

ウインタープリズン達からしたら、彼が人間の身でありながら、何故魔法少女との関わりを持つことが出来ただろうか。

 

『そこにいる輝明も含め、ここにいる全員、聞きたいことはある。

特にウィンタープリズンと、シスターナナの二人にとって俺とは初めてだよな?

俺が何者なのか、この能力は一体何なのか。

人には見えないようになっている魔法少女と、どうして関われるのか。

その事を、知りたいはずだと思う。

 

 

だが今はそういった詮索は、全員が生き延びてからにしようぜ。

命がかかってんだから」

「余計だと…?」

『お前らの質問に答えるのは、とても容易い。

だが今こうして生死の賭けに巻き込まれてるのに、俺が何者なのかなんて聞いてどうなるつもりだ?

 

まぁ質問の返事なら幾らでもするけど、俺の返事に期待するだけ無駄だと思うね。

今の状況は、命を天秤にかけられている。

俺への質問は、そんなにも自分の命よりも大事な事か?」

 

ハイドの言っていることは最もだった。

疑念を抱いているが、自分達の命が危ういことになっている。話を聞いたところで、このまま生きて戻れる保証は何処にもない。

 

『まぁ中断もできないし、引き分けは全員が死ぬっていうのは本当のことだ。

それは、俺が保証するよ。

 

仮に中断して生き残れるのなら、態々俺がこの場に出てくる必要ないだろ』

「本当なのですか…?」

『ここで嘘言って、意味あるの?』

ゲームでの引き分けになった場合に、結界内の全員が死ぬのなら、ここで何か言っても本当なのか確かめる保証は何処にもない。

 

 

ならゲームを観戦している側からすれば、生きる為には絶対に引き分けにならないよう祈るか、賭けた相手を説得することぐらいしかできない。

 

それは、スイムスイムと輝明の二人によって委ねられている。これ以上、今の状況でハイドにいくら質問しても真面に答えてもらえる様子はない。

 

質問するよりは、自分達の命がかかっているこの場を切り抜けることを最優先にしなければ意味がないことも。

 

『さ、輝明。さっさとゲームを続けてくれ、日が昇っても知らねーぞ』

「…ッチぃ‼︎

輝明お前っ…何がなんでも引き分けにするなよ!」

 

ミナエルとユナエルも手の出せない輝明を睨み、ゲームが終わるのを見届けることしかできなかった。

 

*****

 

【ib】というゲームの物語には、本来イヴという名前の女主人公と話が進むにつれてギャリーやメアリーという二人のキャラが出てくる。

ギャリーはイヴと同行し、青いバラを持って一緒に回る事になるのだ。

 

メアリーはゲルテナの作品集として出展されており、そしてibの世界では架空の存在でしかない。

 

ただし、最後で進むわけではなく途中まで生き残れば問題ないだけである。

 

それでもゲームにおいて知っている輝明が圧倒的有利であり、ゲームの物語を知らないスイムスイムにとって不利である。

 

彼ならばスイムスイムの持っている薔薇が彼女の命である事も知らずに、悪い方向へ展開を進むように囁きつつ、薔薇を減らすように誘導すれば彼女はルール通りに死ぬだろう。

 

(これなら俺は、このゲームに勝利して生き残れる…スイムスイムを、俺の手で葬って。

 

俺が生き残ったとしても…こんな形でスイムスイムを陥れたこと、ミナエルとユナエルは邪魔した事を怒られるだろうけど…)

 

ーーーこの魔法少女育成計画の世界は非情であり、闘わなければ生き残れない。ならば、ハイドみたいに自分だって卑劣な手段を取っても別に良いじゃないか。

 

もし彼の良心でスイムスイムもどうしても生き残らせたいのなら、自分が死ぬしかない。助けようと思っていたはずなのにと、輝明の表情が暗くなっていく。

 

このゲームの勝利条件はあくまで【ゲームをクリアする】というだけだ。スイムスイムが勝利条件を満たそうと、ゲームクリアに向けて刻々と迫ってきている。それに対し、輝明が死にたくなければゲームクリアさせないようにすれば良いだけ。

 

『負けの場合は俺とスイムスイムのどちらかが死ぬ。引き分けなら全員が死んでしまう…お前は本当に優しいなぁ輝明。

残念ながらこの力は王道には絶対に向いてない。

呪いの力であり、褒章と代償が付き纏う。

結局、お前は勝利の為にクズになりきれなかったようだけどな?』

 

ハイドはベラベラと喋り続け、輝明はスイムスイムの動向を黙ったまま眺めている。

 

「…」

 

ハイドの挑発に対し、輝明は黙ってスイムスイムの監視を見続けている。彼はどうすればいいかを葛藤して迷っているうちに、彼女は輝明の指示どうりに前進していく。

 

スイムスイムは青、緑、猫、黄の間を淡々と攻略し、1時間かけた勝負の結末は。

 

『あーあ、自分が仕掛けたゲームで自分を滅ぼしやがった。

しょーもな。

流石に、こんな残念な結果になるだなんて。

皮肉以外の何物でもないなこれは』

「…ただいま」

 

スイムスイムはゲームをクリアし、スクリーンから出てきた。これで賭けに勝ったスイムスイムは生き残り、賭けに負けた輝明は死ぬ。

説明を聞いた限り、二人のどちらかが死ぬということとなっている。

 

ーーーその、はずだった。

 

『…もう1分は経ってるはずなのに、全員が死なないな?』

「引き分けなら、全員死ぬはずって…お前が言ったんだぞ」

 

ゲームが終わったことで結界は解かれ、数分経っても輝明もスイムスイムに変化することはない。

 

『あぁ…そのゲームに予め設定された正規のゲームクリアとは違う、別の方法でクリアしてしまったから引き分けにも負けにも勝ちにもならない。

 

 

これで、全員の死を回避したってわけか?』

「そうだ」

 

輝明は、辛うじて新しい抜け穴とゲームクリアを用意して何とか逃れることが出来た。

クリア条件とは、先ほどの間を達成し、その上で輝明の指示に全て忠実に従うことが条件だったことだ。

 

その1時間で、クリアの方法を新しく書き換えれば良いのではないかと。この方法でクリアした場合として勝者と敗者というだけで代償と報酬は無かったことになると。

 

「…確かにスイムスイムはゲームクリアした。

そして、条件外での方法で俺が死ぬこともない」

【中断というわけでもなく、ゲームに設定されたクリアとは違う方法でクリアした。

そのクリアには損得することもなく、ただ純粋な勝ち負けというだけの結果だけが残るのみ】

輝明はそのゲームに設定されたクリア条件を無視し、この窮地を脱したのである。

 

『これなら勝ちも負けも、引き分けもない。

中断もダメ…ならゲームのシステムとは違う方法でクリアして、無力化したのなら大丈夫だとそう考えた訳だ』

「なっ…ハイドは俺がこの方法で掻い潜ったことに驚いてないのか…」

『いいや、何にもおかしくねぇよ?

こんなしょーもない結果になるのも俺の予想通りだ…だが、実際それも引き分けなんだよな。

こうして無事生き残れたのも俺のおかげであり、計算通りに事が進むことが出来た。

なぁ輝明…どうして確証もないのに、別の方法でクリアすれば問題無い、回避できるって自信を持って思えたんだよ?

その脱出経路も、結局アウトだからな』

ゲームが何事もなく終わったらことに安堵していた輝明に対し、ハイドは輝明がどういう行動をとるかをさも分かっていたかのように嘲笑っていた。

 

「…え、アウトって…なんで⁉︎

ゲームクリアだって、例外があればクリア出来たとしても…こうして全員生きているなら」

『本来なら想定外であろうとクリアの時点で、お前は問答無用で死んでるの。その想定外のクリアに、俺が契約書を使って細工をしました。

 

前からお前の頭の中と、仕掛けるゲームも予め知ってたから先手を取った』

 

何故笑っていたのか理解できない輝明は、ハイドを恐れていた。確証もなく自分とスイススイムの命を生還してクリアができると過信していた。

 

自分自身の思考に、違和感があることにようやく気づく。

 

「な、何が言いたいんだよ、さっきから話を聞いても全く意味が分かりない⁉︎

お前…俺に何かしたのか⁉︎

それに契約書って…⁉︎」

『俺を警戒しても、もう無意味だ。

2度言うが、お前は俺の思った通りのことをしてくれたよ。

いやぁありがとう、俺を解放してくれて。

 

特殊な試合結果の達成により、第三者ことハイドが判決を下す。双方、この世界からdarkness of the gameの中へ追放する。

 

そして誓約書に基づき、俺と宿主を分離させる』

「……は?ちょっと待てっ…‼︎

何でこのゲームに関与してないお前が判決を勝手に決められるんだ⁉︎」

 

そして次の瞬間、ハイドの下した判定がdarkness of the gameに反映されていく。ゲームを始める前から、既に何かしら罠を仕込んでいたことにようやっと気づいた。

 

『…この結果と俺の宣言によりゲームを終えた以上、これで輝明にもスイムスイムにも決定権はない。そして、スイムスイムと輝明の賭けを無効に仕向けるように用意したのは俺だ』

 

スイムスイムが、ハイドの方に顔を向ける。

ゲームが終わってからも彼女はずっと冷静だったことと、まるで輝明がゲームを発動して賭けに挑む事を事前に知っていたかのようだった。

「…どういうこと?」

『スイムスイム、お前はこの結果に不満に思うかもしれない。だが…もし仮に俺に勝てば、お前の目論見通りに事が進み、夢を叶えることが出来ていただろう。

 

でも残念、そうはならなかったな。

お前は

 

ここまでの仕込みは俺がして、その上で実力で輝明に勝たなくちゃいけない。そしてゲームの行く末は、ほんのちょっぴりの運が輝明に味方しちまったな』

「…ちょっと待てよ。

その言い方だと、まるで俺じゃなくハイドがスイムスイムに賭けを申し込んだみたいな」

『まぁ、結果は出たことだし…そろそろ種明かしとするか?』

 

ハイドはそう言って、指を鳴らす。すると大量の情報が輝明の頭に流れ込んでいき、頭を石で殴られたような激痛に苛まれる。

 

「あ、がっっ…あぁぁあああぁっ‼︎‼︎」

 

そこは、魔法少女育成計画に転生する前の記憶が流れ込んでいく。転生前のところまで遡り、神とハイドとのやり取りを何度も聞かされていく。

 

『私が特典としてあるものを与えよう。

君には選択権はない』

『アニメに転生する権利を。それともう一つ、君にこの物を与えよう』

『魔法少女育成計画に転生させて欲しい』

 

ーー輝明の台詞は、転生する世界を自分でない誰かに言わされたような感覚だった。

 

魔法少女育成計画のことは知っていたが、冷静に考えて死んだ原因が酷かったのだから、転生するにしても生死の軽い世界へ転生する事を拒絶するだろう。

 

(そんな殺伐とした場所に転生しても生前の不幸で酷い目に遭ってきたのだから、なんで…よりにもよってなんで生き死に関わるような殺し合いの世界に転生されないといけないんだ?)

 

その世界に転生する事を、輝明は理由も聞こうとしないまま納得していた。

 

『まるで、ギャンブルのような能力だな。

成功すれば逆転、失敗すれば自分に降り注がれる…で?転移する場所を決めていいのか?

 

なら魔法少女育成計画でいい?』

(…話を聞いても何とも思っていない。

疑問も、反論もしない。

なんで…その世界へ転生することを分かったように納得しているんだ?)

 

 

ーー転生する話をしてから、輝明の思考がおかしかった。

 

冷静に考えると、自分の言動に対して違和感があることに気づく。いままでの自分の発言も、考えてることも思い返すと何かに誘導されているかのようにずっと邪神の施しに疑念を抱かず、返答をしている。

 

『俺の計らいで激痛を緩和させておいた、これで喋れるだろ。

 

…で、お前、俺に色々と言いたいことがあるんじゃないか?』

「…俺の頭の中に、一体何を仕込ませた。

いつ俺が無意識だった時に動いてたんだ‼︎無効になればどうなるかってことも、そもそも誓約書があることすら俺は知らなかったんだぞ‼︎」

転生の準備段階以降から今までの体験を何回も見せられ、不自然な行動をしている事で必死に気持ち悪くなるのを堪えている。

何も考えたくない、そんな筈がないと否定したかった。

 

【たとえ輝明自身が魔法少女育成計画の原作を知っても、あんな不幸で災難だらけな場所が頻繁に起きる世界に望むわけがない。今度は殺し合う世界へ関与しようとは思ってなかったのだから、それどころか転生で貰った力も、相手依存の運任せの能力を活用したいとは思わない。

悪運で死んだのだから、死んだ後でも更に酷い目に遭うような世界で生きていたいとは思わない。

寧ろ、平和に過ごしたいのなら市役所に訪ねれば良いだけだ。それなのに、自分の都合の悪い方へ流れに身を任せている。

魔法少女の殺し合いに深く関与し、今でも状況を引っ掻き回しているのだ。

 

特典については邪神に選ばれていたが、転生先の選択権ですら、輝明自身が選んでいるかのように誘導していたのだから】

『それじゃあ、そろそろネタバラしするか。

お前が転生する準備段階の時に、既に俺は頭の中に寄生しつつ、誘導していた』

「………………え?」

『輝明、何言ってるんだってキョトンとした顔をしてるみたいだが、もう神から特典を与えるって言われる前から、死んだ後に目を覚ました時点で既に特典は与えている。

 

その時に、俺はお前の脳奥深くに寄生してたんだよ。

例えで言うなら、ハリガネムシは蟷螂に寄生して入水自殺させたり、ロイコクロリディウムはカタツムリに寄生して鳥の目につきやすい日向に移動させたりする。

 

それと同じように…俺がテメーの頭の中に誘導させるよう指示したわけだ。呪いの能力を納得させて、転生先も魔法が関与している生殺与奪の世界を選ぶように仕込んでおいた』

「…待て、ちょっと待て、待ってくれ。

意味が…わからない。

と、特典を貰う前に脳に住みついてた?

さっきから全然、お前の言っていることが全く意味が分かっていない。

一体何を言っているのか、全く意味が…大体お前がいたのは、能力を得て転生した後に」

『逆に聞くが…一体いつから俺と邪神が何もしてないって錯覚してたんだ?』

 

話を聞けば聞くほど、転生前から輝明はハイドに寄生され、都合の良いように動かされている。ハイドが輝明を人形のように指定し、危険な場所へ移動し、その通りに行動した。

転生する前は、まだ輝明の脳内を調べてる最中だったから本当に知らなかったのもあったかもしれないが、後半になってからは物語の事を聞かなくても大体のことは理解してた。

 

「他の魔法少女の動向や、ファブが知らないって。ラピュセルの性別だって、俺の記憶を探ってたのならあんな窮地に」

『最初転生した時までは全部を知ったわけじゃあかったが…2日前に身体の複製が可能になってから後々知ったくらいだ。

 

 

ただし、魔法のある世界に誘導したが正確な世界を指定することはできない。

 

なんせラ・ピュセルの性別については、マジに知らなかったんだからな」

 

ハイドはそう言って、管理者フォンを見せつける。黒幕であるファブの存在を知らなかったのも、本当であれば、嘘でもあった。

 

考えるだけでも吐き気を催すような、かなりエグい方法で輝明の言動は操られていた。

 

「その端末はっ…どうして持ってるっ…⁉︎

いや、それを持っていたことも俺に黙っていたのか」

『クラムベリーを殺した後、複製体に持って帰らせてもらった。お前の活躍は、俺からしたら唯の茶番だったんだよ』

 

住む場所が無いのなら、空き地になっている安全なルーラ達のいる住処に住ませてもらった方が都合が良いのも、能力で調子に乗っていたのも寄生による影響だった。

宿主の意識が目覚めても、誘導されている事に気づいていない。

 

「…じゃあ、ゲームの結果がこうなる事くらい分かって」

『あぁうん、分かってた。

お前とスイムスイムの賭けだと思い込んでいるだけで、実際は俺がお前を賭け金としてスイムスイムと挑んでいる』

「つっ…⁉︎」

 

輝明は理解できないような顔で、息を呑む。

ハイドが事実を淡々と発言し、この場にいる殆どが彼に同情していたことにも。

 

『いやーっと、解放されたぁ…宿主の身体から出て、シャバの空気を吸うのは最高に良いな!

 

 

もう一度言うが、俺の為に頑張ってくれてどうもありがとう‼︎」

 

人格に潜んでいたハイドは、輝明の影から突如として出現する。輝明の身体を模倣し、輝明の精神から現代へと姿を現した。

 

「え、嘘っ…輝明さんが、二人⁉︎」

 

そう声に出したのは、たまだった。

スイムスイム以外の5人の魔法少女は輝明に目を向けて驚いている。

 

「…こんなの、馬鹿げてるだろっ!ゲームの死を回避したのに、今度は幽閉されるなんて…す、スイムスイムだって‼︎

こんな糞食らえな条件、呑めるわけ」

「…そのスイムスイムは俺との契約も、賭けに負けたことも納得してるみたいだけど?」

「………まさかスイムスイムも、騙したのか?」

「このハイドと結託して、証拠として誓約書に記してある。こうなる前に、スイムスイムと事前に話を済ませてた。

 

ゲームを発動する流れになったら輝明の勝ち負け云々関係なく、俺が3人をこの殺し合いから無事脱出できるよう交渉は済ませるようにしてる。

 

ミナユナとたまの3人にも、他言しないように黙ってもらうことも呑んでくれたしな」

 

スイムスイムの顔がハイドの話を聞いて表情一つ変えてないのが、何よりの証拠だからだ。

 

「うん。脱出してもらえる証拠も見せてくれて、その話に私も納得した」

「え、マジ…でも輝明だけじゃなく、私達3人にも黙ってたのって」

「言ったら、この話は無かった事にして全員にバラすってハイドに言われたから」

「なんで、俺なんだよ…そもそもスイムスイムに恨まれることなんて何一つやってない。

どうしてこんなやつの取引に…!」

「私も、貴方に恨みはない。貴方を通じてハイドに勝てば…ルーラになれるから」

「俺は…どうでも良かったのか?

今までずっと黙って…スイムスイムが、ハイドの話に納得して、お前も除け者にしようとしてたのか。

ルーラ以外どうでも良くて、無関心だからってことで…こんなついで扱いで。

俺のことを助けたじゃないか‼︎」

「分からない。貴方に興味を持つことも無くて、最初はどうでも良いって思ってた。

 

ルーラを脱落させて、次に貴方のゲームでルーラに勝った者を倒す。

私の目的の為に、貴方を助けただけ。

ハイドに、またゲームを挑んでくるって言われた。

 

勝てば今度こそ、私はルーラになれるから」

 

スイムスイムの言葉に、ハイド以外の全員が静まり返る。

初めは疫病神の呪詛と悪魔に取り憑かれ、助けようとしたはずの幼女は、地獄に行かせるための案内人に過ぎなかったことに。

血の気が引いて、青白い顔をしていた。

 

「人の心が、無いのか……⁉︎」

 

輝明は何を言っているのか全く理解できないと青ざめた顔で、スイムスイムを見つめている。

 

「あー…んんっ‼︎輝明、これで会うのも最後かもしれねーから予め言っておくわ。

 

今盛大に吐き出してる気持ち表明は、ただ俺の寄生で精神操作されて言わされてるんじゃなく、お前自身の本心の言葉だ。

それは本当のことだし、俺が保証しよう。

 

 

 

まぁそれはこうして現界出来るようになった俺にとって、お前の心境なんて知っても得にならんし心底どうでも良いけどな」

 

そんなことを今になって保証されても、死地に放り出される者に対して余計に怒りを買うだけなのだから。

 

スイススイムは、納得して勝てなかったことを代償を素直に受け入れている。だだ何も聞かされなかった輝明とは、全く違う。

 

ーーーーこれはもう輝明の賭けではなく、スイムスイムとハイドの二人だけの賭けに過ぎなかった。

いや、この賭け自体すら茶番でしかない。

ゲーム開始の宣言し、出来る限りの範囲で殺し合いをどうにかしようとした彼の立場は無い。

 

出来る範囲どころか輝明自身の意思を操作されているのなら、初めから終わりまで何もしていない。

 

負けたらスイムスイムの宣言通り死ぬことになり、どれだけ頑張って無効にしても第三者のハイドが下されるだけ。

 

輝明が止めようとした行動は予測され、彼の救おうとする意思は茶番による生贄の下準備に過ぎなかっただけ。

彼が何もしなかったら、彼は生きて魔法少女同士の殺し合いが目の前で行われるだけのこと。

 

「ゲームにおいて勝敗を必ず決めるこの能力、Darkness Of The Gameもとい…DOTGを一番理解しているのは俺だけだ。

 

 

実際は俺とスイムスイムの勝敗であって、お前は俺の賭け金にされてただけ。ただまぁ…自分の命だけでも助かりたいだけなら、良心なんて捨てて【勝利】して、スイムスイムを死なせれば良かったのに。

 

そしたら、まーだ生き残れたかもしれないのになぁ」

「ふ、ざ、けるなっ…」

「この能力を碌に知らない癖に、主人公面出来ると思い込んでたのか?

随分と、頭がおめでたいもんだなぁ」

輝明が納得いくような勝利は、なかった。

勝つ方法を用意されたとしても、ハイドが勝たせないように脳を弄られる。輝明は寄生虫の宿主にされてしまった使い捨ての駒であり、都合の良い道化だったのだから。

 

「ふざけるな…ふざけるなっっ‼︎‼︎

なにがお前自身の本心の言葉を俺が保証しようだ‼︎こんな、惨めな思いをしたいわけでも…踏み台みたいな扱いされたくて転生したんじゃないっ‼︎‼︎‼︎

 

これじゃあここに来る前から、俺の意思や決断すらも、お前に操作されただけの茶番扱いじゃないかっ‼︎‼︎

 

ここに転移して、この寺へ移動したのも全部お前の」

「短い間だったが、世話になったな。

責めてibの世界でスイムスイムと二人仲良く、化け物に襲われる恐怖に怯えながら余生を過ごしてくれ」

納得する訳がない輝明は、ハイドの胸ぐらを掴もうとする。しかし、

 

「え、っ…⁉︎」

「あぁ、そろそろだよな」

 

その掴んだ手は透化していき、徐々に二人の身体が消えようとしている。

 

「そんな…」

「つっ⁉︎」

 

ウィンタープリズンやシスターナナも赤の他人とはいえ、彼の操り人形にされていたことに同情している。内輪揉めで、スイムスイム達による騙し討ちを阻止したことだけは感謝しているが、二人とも内心は複雑だった。

 

「いや…結果的にウチら、助かったけどさ…」

 

ミナエル、ユナエルの二人はシスターナナ達を殺す計画を邪魔され、怒りに身を任せて感情的に怒鳴っていた。だが、話を聞いた今となっては真相を聞いて怒りが収まり、その末路に引いている。

話の内容を察するに死んだ後でも考えた末に結局道化を演じられいましたなんて、どう言葉にして良いのか全く分からない。

 

殺し合いをどうにかしようとしていた男が結局自分の首を絞めて、取り憑かれた悪魔の呪縛から解放しただけという、最高の皮肉を見せられているのだからドン引きしている。

 

「そんなっ…こんなのあんまりだよっ…!

これじゃあ輝明さんも、スイムちゃんもっ…」

 

たまは彼の絶望だけではなく、彼含めたスイムスイムの二人がいなくなってしまうことに悲しんでいる。

 

「…三人とも、巻き込んでごめんなさい」

「は…?おい、何だよっ…お前だけ、何納得した顔をしてるんだよ⁉︎

俺には何の謝罪もしないのか⁉︎

こんな事になるって、こっちは本当に知らされてなかったんだぞ‼︎

なんでこんな下らないことにっ…‼︎」

 

スイムスイムはピーキーエンジェルズやたまの3人に寂しそうな顔をしつつも別れを告げる。

ただし、ずっと嘆いている輝明には全く顔を向かなかった。

 

 

輝明は敵味方とか関係無く、必死にスイムスイムとハイド以外の全員に助けを求めるよう近づく。

 

「お、おいっ…⁉︎」

「だれか、だれか、誰でも良い!

助けてくれっ…‼︎

俺は、俺は、ただあの二人に騙されてっ…!」

 

だが、現実は非情だった。

身体が透明になっているの、触れることすらできなくなっている。彼らには可哀想な目で輝明を見ることしか何もできなかった。

 

「嫌だ…何でこうなるんだ…よ。嫌な事ばかりだったから…せめて生まれ変わったらって思って。

目が覚めてからずっと、こんな奴の騙されて…」

 

輝明とスイムスイムの身体は、透明となって消えていく。ゲームの結果によってこの世界からDarkness Of The Gameの中へに転移されて閉じ込められた。

 

スイムスイムはこのゲームから脱落し、輝明の持つ力と共に閉じ込められた。全員が二人の末路を見届けて、数分間の沈黙が続く。

 

「あぁ…まだ殺し合いしてたんだろう。

割り込んでて申し訳なかったな?

見てて胸糞悪かったろ?

 

取り敢えず、今日は俺の元宿主がスイムスイムを道連れにしたってことで手打ちにして、お引き取り願ってくれないか?

 

今度はそっちから3人を襲うというのなら、まず俺のゲームに入門して貰おうか。

なんなら今所持しているトランプで勝負する?それとも」

「…黙れ。

これ以上喋るな、外道」

 

こんな空気にさせたのは一体誰のせいだと思ってるんだと、ウィンタープリズンとミナエル、ユナエルの3人は不快感を露わにする。

 

シスターナナは得体の知れない彼の力に、ウィンタープリズンの背後に隠れつつバイトに怯えている。ウィンタープリズンはルーラ組の3人も命を狙おうとしたから許せなかったが、ハイドという男についてはあの光景ですぐ彼も敵だと判断した。

 

ましてやファブのように人の命を軽視し、玩具のように楽しんでいる男のゲームに参加しようとは二人とも全く思っていない。

 

「……えぇ、そんなひっどいこと言う?」

「ハイドと言ったか?

その賭けの能力だけじゃない…そこにいる3人の命を保障するとも約束していたみたいだが、どういうことだ?

 

もう命懸けのゲームとやらも終わったんだ、いい加減僕達の質問に答えてもらうぞ」

「どうしても俺の能力と…さっきの発言のことも知りたいの?でも本当のことを言ったところで俺の得になるわけでもないんだよなー。

 

…そんなに俺のこと知りないなら、今ここでゲームする?」

(これ以上コイツに何を言っても無駄かっ…それに、今はシスターナナが怯えている)

「なんてっ…なんて、こんな悍ましいことを…」

 

シスターナナは目の前で起きた惨状に手で口を押さえつつ、身震いしていた。ハイドの能力が未知数で、完全に把握できてない。

 

さっきの命懸けの賭けにシスターナナを巻き込む訳にはいかないと、彼女をお姫様抱っこする。

 

ハイドの挑発には乗らずに、冷静にこの場から立ち去ろうとする。安い挑発に乗れば、騙されて消された彼と賭けに負けたスイムスイム達の末路を辿ることを危惧している。

 

駆け引きの能力、契約書のこと、そしてスイムスイムと一体何の話していたか気になるところもあったが、

 

「……撤退しよう、ナナ。

これ以上、こいつの相手にするだけ無駄だ。

その悪趣味なゲームの誘いは、断らせてもらう」

「ふーん、あっそ」

「おい、ちょっ!待てよ‼︎」

 

シスターナナの手を掴んで、逃げることを選んだ。得体の知れない彼に挑むよりも、怯えている彼女を尊重して撤退する。

その二人を追いかけようとミナエル・ユナエルが動くが、ハイドが懐から拳銃を取り出して動けないようにする。

 

どの道、輝明が横やりしたせいでシスターナナ達の二人を暗殺する計画は失敗に終わってしまった。

「…大人しくしてろよ。でないとスイムスイムとの契約を、今度はお前らがぶち壊すことになるんだけど」

「ふざけんなっ…アタシらに話さず、勝手に決めようとしてたくせに!」

「まぁそれは謝る。でもお前ら、輝明とスイムスイムの恩義を無駄にする気か?あの二人のお陰で、こうして生き残れることができたんだから」

 

前に輝明でのゲームで敗北しているため、

攻撃する意思を持って手を出そうとすれば、弾かれてしまう。ゲームに負けてしまった二人の攻撃は、ハイドには全く届かない。

 

「仮に奇襲をしたかったのなら…俺を責めるより、止めてきた輝明と俺に協力したスイムスイムにしてくれよ。

 

ま、もう二人はここにはいねーけど」

「それに…もう殺し合う必要がないなんてって言ったんだよな‼︎

アレもどう言う意味なんだよ⁉︎」

「スイムスイムには証拠も見せたし、納得もしてもらった。じゃなきゃ計画の邪魔をする前に、輝明を始末しようとするだろ?」

「えっと…本当なん、だよね…?」

「あぁ、もう他の魔法少女に命を狙われることに怯える必要はない。

 

狙われるのなら、今度は俺が君らを守ろう」

 

ファブの殺し合いが無くなる証拠を、3人に全て見せる。ハイドの手元には、管理者用端末と契約書があった。

それらを3人に見せる。

「いや、信じらんねーよ…運営からは何も聞かされてねーし」

「うん…そんなの私達ですら全く聞いてない」

「ハイドさんの言ってたことが本当ならもう魔法少女を減らされることもないのかな…」

「まぁ待て待て、信じられない気持ちもわかる。最後まで話聞けよ、半分まで減らすとかもあったが…少なくとも魔法少女同士の殺し合いは、もう今日限りで終了。

今後の減らす方法は、俺の賭けに乗るか乗らないかで決めるつもりだ。

少なくとも、魔法少女同士の殺し合いは無い」

「……全く話が見えないんだけど。

魔法少女の殺し合いが禁止されるなら、今度は誠心誠意殺す殺さないせずに前みたいにキャンディ集めしろってこと?

それにファブが前に言ってたじゃんか。

魔法少女の数を増やしすぎたからこんな事になってるんだよね…それならウチらだって関与してる筈でしょ」

「いやいや違う違う。

あー…なんて説明すりゃ良いんだろうな。

俺のゲームに参加してない魔法少女に強制参加させる、今度は命の駆け引きとしてな。

だから、事前にやってたお前らはちゃんとこの件には例外な?ここに住まわせてもらうことを条件にしてるから。

 

1回目は輝明がイキって能力に翻弄されてたけど、命を取るまではなかった。まぁ若干トラウマを植え付けた所はあったろうけどな。

そして、この2回目で輝明がオサラバして俺が解放された事によって、今後の魔法少女育成計画はゲーム経験済みのお前らは除外されることとなる。

簡単に言えばファヴの私情で決めてたルールから、俺の私情にただ変わるだけ。

だから3人とも、このデスゲームの改正に貢献した輝明にはちゃんと感謝しろよ」

 

デスゲームを改正しようという発言に耳を疑った。

「いや、ちょっ…は、えっ?

本当に運営の弱みでも握ってるの?

とゆうより、殺し合う必要がもう無いってのが本当だったのなら…ウチらが頑張って作戦立てたの無駄だったじゃんか‼︎」

「そうだよ、取り越し苦労だったな。

まぁ無駄死にならなかっただけ良かったじゃん。

 

この選抜における生殺与奪は…もう俺が握っている。ファブも同様にな…もしかしたら俺が、そのファブが善の心に改心してルールを改めるよう提案したのかもしれないし、あるいは虐めてやろうかと酷いゲームをさせようかとも考えてるかもしれない?

 

どの道、明日の夜は俺の言ってたことが明らかになる。

とにかく、今日の脱落者はスイムスイムで確定だ。

 

これ以降は、魔法少女同士の殺す殺される云々からは解放される。

文句はねぇだろ」

 

ここにいるたまとミナエル、ユナエルの命の補償をしてもらえたことに少し安心した。だが今度は魔法少女達を、ファヴからハイドの掌の上で踊らさせようとしているという返事にもなる。

 

「…お、お前さ…一体何を企んでるの?」

「あ、そうだ。

ユナエル、言い忘れてた事があった」

「えっ、私?」

 

計画を邪魔されて怒っていた二人だったが、ハイドの話を聞いていくうちに段々と彼の存在を恐れてきている。

彼が、魔法少女育成計画そのものを改変しようとしていることに。

 

「だってよ。宿主の輝明があの場でしゃしゃり出てたせいでお前らも鬱陶しく思われてたけど、一応ソイツには感謝しなくちゃいけないんだぜ。アイツが作戦止めていなかったら、今頃ユナエルはウィンタープリズンに頭を掴まれて、魔法で作った壁に叩きつけられて死んでたから。

 

じゃ、俺はもう寝るわ。

あと今日のチャットには出るなよ、結果報告とメンテの連絡だけだから」

「……えっ」

「じゃ、3人ともお疲れさん。おやすみー」

ハイドの言葉にユナエルの背筋が凍り、ハイドの存在に恐れていた。

もう殺し合いを無くしたという発言に疑心暗鬼しながらも、何か他の事をさせられるのではないかと彼らは怯えていた。

 

*****

 

ファブは、重要なお知らせとして魔法少女全員にチャットに集まるよう連絡をしていく。

不参加でも良いけど、そこは自己責任だからという事も伝えていた。

 

『今から、二つほど大事なお知らせをするポン。

まず一つ目は、今日の脱落者はスイムスイムになったポン。

二つ目は明日からファブは急遽裏方のメンテナンスをしなくちゃいけなくて、ファヴの代役を用意するつもりでいるポン。メンテが終わったら魔法少女同士の殺傷と危害を加えるのは禁止、しかもキャンディー集めでの脱落もしないポン』

「代役って…一体誰が」

『……それは、また連絡するポン』

 

チャットにはたま、ミナエル、ユナエル、カラミティ・メアリの四人以外の生き残りが参加していた。

自分達の寿命を減らしてまでアイテムを買わせるように促し、散々魔法少女同士の殺し合いをさせようとしていた。

それを、中途半端に急に魔法少女の脱落を止めると宣言したのだ。

 

「…ファブ、聞きたいことがある」

『どうしたんだポン?』

「ルーラ達の中に、輝明…いや、ハイドという男性の協力者がいた。

彼は、ここにいる魔法少女達と関与していたようだな。

減らす云々以前に、魔法少女の存在は一般人に知られてはいけないというルールがあったことは覚えているな。

なのに私含めた他の魔法少女、そして彼も記憶にまだ残っていたままだ。

その事をファヴが黙認してることも。

 

そして今日、ハイドという名前の男が介入によって、スイムスイムと彼に乗り移っていた男性が陥れた」

ファヴが一通り説明を終えると、ウィンタープリズンからハイドのことについて質問をする。

 

(アイツ…今度は何を企んでやがる…)

 

分かりきった事を質問されることに、ファヴは心の奥底でハイドに怒っている。

ハイドの存在が明るみになり、危険人物であることを言及されるのは分かりきっていたことだ。

 

『それは、知っているポン。

彼の正体は分からないけど…ただの一般人じゃないということだけは確かだったから、そのルールは破ってないポン』

「…仮にそうだったとしても、なぜ私達にハイドのことを伝えなかったんだ」

『い、言う必要がなかったからって事で…』

 

ファブは内心気に食わない感情を抱いたまま、質問を返していく。

彼の持つ能力が魔法少女と同等かそれ以上を持って、その上こちらに関与しているのなら黙っていないはずだった。

多少は様子を見ればいいかと思っていた。だが、クラムベリーが脱落した時点でヤバいと判断し、すぐさま生き残った魔法少女達や最悪魔法の国に救援を呼ぶのも遅かった。

 

ファヴの殆どの管理をハイドに無理矢理ジャックされ、こうして生殺与奪を握られている事も。

 

「…他に彼のことを知っている人はいませんか?」

「私達、知ってます。

2日目にルーラ組と一緒にいて、襲われました」

 

今度は、シスターナナが集まった人に聞いていく。まずスノーホワイトが返事し、不安ながらも可能な限り彼の知っていることを明かしていく。

 

「どうして彼のことをみんなに伝えなかったんだ?」

「…ご、ごめんなさい。

事情があって言えなかったんです」

『ファブも、その男についての詳細は殆ど分からないポン。邪魔にならなければ、放っておいても良いかなって』

 

今度はシスターナナが、スノーホワイトとラ・ピュセルに質問する。

 

「僕は時間稼ぎで三つのサイコロで出た目の数字の合計が高かったらとか…あとスノーホワイトが捕まえられた僕を助けるかどうかで」

「…それで、君達は賭けに勝てたのか?」

 

賭けの内容は聞いたが、その勝敗については輝明のような勝敗もない中断における第三者の決定のみしか判らなかった。スノーホワイトもラ・ピュセルも黙ったままだった。

 

『だけど、二人は負けちゃったポン』

「そんな…では彼に負けたらどうなるのですか?」

『何でもありポン。

死ぬとなれば、その通りに死んじゃうポン。

あとは勝者の好みに応じて、身体を改造されたりとか。例えばラ・ピュセルの身体には』

「やめてっ!」

中々返事しない二人に、ファブが代弁する。

簡潔に説明を聞いただけでも恐ろしい内容だった。スノーホワイトがこれ以上ファブに言わせないよう遮り、ラ・ピュセルを庇っている。

 

「…二人とも、僕らにどうしても言えないことなのかい?」

「…どうされたのかは言えません。

ごめんなさい…こればかりは、本当に」

 

負けたラ・ピュセルは体を改造(ふたなりに)され、スノーホワイトに強姦紛いのことをさせていたなんてことを全員に言おうとする前に返事した。

 

『まぁ二人とも心が傷つくようなことをされてたから察してほしいポン』

 

彼が宿主をボロ雑巾のように酷くて扱い、利用するような悪逆非道だったことは分かっている。ファブが上手いことハイドに負けてしまったことで、どんな目に遭わされたかを簡潔に話す。

 

「いやまぁ…その、なんていうか。私達もスノーホワイト達が何をされたかは知ってるんだけど…こればっかりは聞かない方がお互いの為だと思うかな」

「……チッ」

「そんな…既に彼がスノーホワイト達を陥れていたなんて…」

 

リップルはラ・ピュセルに精液をかけられ、ふたなりにさせた張本人を心底嫌悪し、ハイドに恨みを晴らさないと気が済まなかった。話を聞いて苦い顔をしていたトップスピードは二人の事情のことに気まずい反応をする。

 

「その様子だと…関わった魔法少女達は、大丈夫じゃないみたいですね」

「こうして生きれたとしても、僕らの知らない間に毒牙に咬まれたみたいだ。

余程…心に傷を負わせるほどの辛い目に遭ったんだろう。

 

すまない、僕達も配慮に欠けていた」

「…」

 

チャットに参加してる中で、ただ一人何も言わないまま黙っていた。

ハードゴア・アリスから何か圧を感じ、誰も彼女に話題を振ることも意見を聞こうともしない。

 

 

『ファブは事実を述べただけで、彼のことは聞かれなかったから言う理由がないポン。

とりあえず代役を用意するってことは伝えておくポン。

もしかしたら多少のルールが変わるかもしれないポンね』

 

ーーーー訳の分からない命懸けのゲームを見せられ、その上で理不尽な敗北によりホラーゲームの世界に放り込まれましたなんて、この場にいる全員が聞いて納得がいくだろうか。

 

なぜ魔法少女でもない男が、ファブや他の魔法少女達相手に容易に接触できていたのかが結局分からないまま。

 

ーーーーーファヴの言っていたことが仮に本当のことで、彼が【一般人ではない、人間じゃない】とするのならば、人間以外の別のナニカであるということである。

それが一体何者なのか。

 

いずれにせよ、その男に賭けを強制させられるということは確かだった。

負けた場合は屈辱的なことをさせられ、最悪命を奪われている以上、魔法少女達にとっても危険人物と判断して間違いない。

 

『質問は、それで終わりポン?』

「…あぁ」

 

もうこれ以上の情報は出ないと、ウィンタープリズンがファブに質問するのを諦めるしかできなかった。

 

 

 

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