※この作品はR-18です。

Darkness Of The Game   作:斬刄

7 / 12
深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。
byフリードリヒ・ニーチェ



【どうあがいても絶望】ネタバレ注意

 

ファブは心底、驚いていた。

あの男が介入したことでラ・ピュセルは助けられ、クラムベリーが死ぬとは思ってもない。

 

敗者に下らない罰ゲームをさせるだけの能力かと最初は思っていたが、コインゲームによる命の駆け引きを聞き、この勝負なら音を判断できるクラムベリーの方が有利かに思えていた。

 

(不味い…こんなことになるなんて思ってなかったっ⁉︎)

 

 

だが、結果はどうだろう。

クラムベリーは死亡し、あの男が勝って生き残っている。

ファブは、彼の能力を過小評価しすぎた。

魔法少女とは何の関係のない彼が積極的にルーラ達と協力し、戦いに割って入ってからどんな行動をするのかずっと様子を見ていた。

彼の能力が、この殺し合いにどう関与してくるのか。

 

 

百歩譲って彼がラ・ピュセルの身体を弄ったり、ルーラだけを生かしただけの下らないことならまだ良かった。だが、流石にマスターであるクラムベリーを脱落させられたことで危機感を感じ、看過することができなくなった。

一部始終を見て、あんなヤバい能力だったのかと理解する。

 

 

今の彼はラ・ピュセルに気を向けている以上、失わせまいと動いている。奴の能力で今後守っていくのなら、命の奪い合いも罰ゲームで生かされることで意味を成さなくなり、逆に運営の判断で彼の気に入った魔法少女を始末しようとすれば、必ずこの殺し合いの根幹に、ファブにたどり着こうとするだろう。

 

「冗談じゃないポンっ…!」

 

たとえそれが、合法的な理由であったとしても奴は動く。

 

仮にファブじゃなくとも、もし他の魔法少女がラ・ピュセルを殺そうとするのならば、今回と同じように殺そうと襲ってきた魔法少女にまでその力を存分に振るう。こんなぶっ壊れな能力を持ったヤバい奴がこの殺し合いを悪い意味で引っ掻き回しているのだから、すぐにでも排除するしかない。

 

ファブは大至急、魔法少女同士の殺し合いを中断し、レイドイベントとして生き残った全員で輝明の抹殺を頼もうと案を考える。

しかし、

 

「ハアァァロオオォォォ?」

『ァ…⁉︎』

 

ファブは驚いて、すぐ端末に戻ろうとする。

もし輝明のような臆病者で決断も遅い人物であれば、放っておいても良かったのかもしれない。

 

ハイド(悪魔)は、クラムベリーを倒した後、とっくにファブの存在にも気づいていたのだから。

 

このまま黙秘を続けつつ、魔法少女に助けを求めようとする。だが、いくら魔法少女に呼びかけようとしても声が全く出ない。

 

(なんで、なんで掲示板の利用や連絡ができないポンっ…⁉︎)

 

しかも、ハイドに関する掲示板の記載や連絡が全く出来なくなっていた。魔法少女達に知らせるのも、余りに対応が遅すぎた。

 

ハイドが、どれほどの脅威だったことを全く知らなかった。運営側のシステムにまで干渉し、ファブの行動を制限させる。

 

「…初めまして、かな?」

『…』

「フ・ァ・ブ・くん?黙っても無駄だ。

君のことは輝明の記憶から知ってる。この魔法少女達の殺し合いを運営してるんだって?

 

そんな管理者専用端末の中に奥歯ガタガタ震えてないで、出てきなよ」

 

ハイドは落ちている端末を手に取り、再びファブが出現した。

『…お、お前。

一体何処まで知ってて…何が目的だポン』

「え、どこまで知ってるか?お前が催した選抜試験のことか?

それとも魔法の国のこと?まぁ今のところは心底どうでも良いが…

 

個人的な目的があるとするなら…面白いからかなぁ。

そこんところは森の音楽家のクラムベリー…だったかな。

そいつと似てたな、うん。

さっそくだけど俺の質問に答えてもらおうか」

『へ、返答したら…ファブを信用してくれるポン?』

「あぁ、信用するよ。

だから慎重に言葉を選ぼうな?」

 

ファブはどうしてそんな事まで知っているのか色々とツッコミたいことは山程あるが、とにかく今はその場凌ぎの無難な返答をするしかない。ハイドが小声で殺意が入り混じったような声をしていたが、何とか必死に言いくるめようとするファブには何も聞こえてない。

 

「…君は、魔法少女達のことをどう思ってるのかな?」

『ま、魔法少女のことはちゃんとリスペクトしてるポン』

「殺し合いをしてるのに?」

『ファブは魔法少女に意地悪してたように見えたかもしれないけど、それは全部クラムベリーの命令でやってたことポン』

「質問を変えよう…今度とも、俺が気に入ったラ・ピュセルや他の魔法少女を殺すつもりなのか?」

『贔屓にすることは、出来ないポン。よく考えて欲しいポン。

…特定の人を持ち上げたり、扱いを悪くしたら選抜試験の意味がないポン』

 

ファブが質問に返答する度に、ハイドの胸元から奇怪な音が鳴る。さっきから煩くて仕方がなく、その音を止めてほしいとお願いしようとする。

 

『…さ、さっきから何の音だポン?質問する度に鳴らしてるならやめて欲しいポン。

それにちゃんと質問には返答しているのに、これでもファブのことを信用してないポン?』

「あぁ、今の質問聞いてたけど…全く信用してないよ?

だってこれ嘘発見機だから」

『⁉︎』

 

ハイドが鳴らしている理由を明かし、ファブの返答が全部嘘をついていたことがすぐバレる。

ハイドの背後に大きな門が展開され、その門が開かれた。

門を見ると呪詛を纏った異形な怪物達と、魔銃魔剣魔槍の数々を目の当たりにする。魔法の国と比較して、歪で醜悪な武器が展開されている。

 

ファブに対して流れるような追い込みをかけるよう、門に右手を入れて禍々しい剣を取り出す。

 

『あ、待っ』

「じゃ、テメーのこと消すね?

流れる因子を刀身に込めて…お前を殺す」

 

ハイドは満面の笑みで、剣先を端末に向ける。

ファブにあるマスター用の端末は他の魔法少女に渡している端末とは違い、魔法の国で作った武器でなければ破壊することはできない。

 

破壊しようと、彼の身体に流れている禍々しい邪念が刀身に込めている。

 

 

ーーー瞬間、ファブは自分自身の走馬灯が見えた。

 

 

ハイドに端末を滅多斬りにされた絶望的な光景を。今ここで命乞いしなければ、【絶対的な死】がやってくる。システムだけが残り、ファブの意識が、激痛を伴ってゆっくりと消えていく様を。

 

その【いともたやすく行われるえげつない行為】を以って、酷く凄惨な末路を。

 

 

『ま、ままままっ…!待って…!

待つポンっ‼︎‼︎‼︎』

 

トドメを刺される直前にお願いし、ハイドは手を止めた。

 

「…え?なんだって?」

『れ、冷静に考えるポン。もしこの端末を壊したら選抜試験は…』

 

ファブは端末を壊したら選抜試験は終わらないかもしれないと嘘をつこうとするが、結局ハイドの持つ嘘発見機の機械音が鳴っていく。ため息をつけ、もういくら誤魔化しても無駄だと白旗を上げた。

 

『こ、降参するポンっ…こ、これからは言うことを聞くポン。

だ、だから殺さないでほしいポン』

「別に俺はね…この催しで誰も殺しちゃダメだなんて言ってない。かといって…俺の気に入った奴が訳の分からない奴に殺されるのもってなるとそうも言ってられないんだ」

 

ファブには薄く見えていたが、ハイドの背後に黒いマントと全身骸骨、目の当たりを光らせ、歯をずっとカタカタと鳴らしている。

背後にいる【何か】もまたファブに近づき、脅しているようだった。

 

「特にホラ。今君がやろうとしたのは、本当に…非常に笑えないことなんだ。俺の討伐を、魔法少女達に連絡しようとしてたんでしょ?

それは冗談抜きで笑えないんだ…他の全員の誰かが俺に挑戦させ、誰が生きて死ぬかをこれから選定させなくちゃあいけないっていうのに。

 

でも、今の俺は君を許そう。

こんなに追い詰めて、冷静になれなくて激情に駆られていたのかもしれない。

だが今後、 ファブ(お前)もこの殺し合いの誰かが俺の選定を踏み躙るような下らない真似をしたら…

 

 

ファブ(お前)も、それを実行した魔法少女も、この舞台から完全に排除しなくちゃあならない。

 

俺の言いたいこと…分かるだろ?」

『うん、わ…分か、る…よ』

 

返事をして、1分間の沈黙が続いた。

ハイドは顔を近づけ、ファブもポン言葉を忘れて情緒不安定のまま萎縮している。脅されてる最中に引っ込めれば端末を破壊、破壊よりももっと悍ましいことをされてしまうだろうかと。

 

こうなっては嘘をつくより、どんな理由であっても機嫌を損ねないようイエスマンになるしかできない。

 

「…そんなに怖がらなくても、いいじゃぁないか?

恐れることは無いんだよ」

『ヒッ…‼︎』

「会って早々、どキツイことを言って傷つけたりしてごめんな?一つ、仲直りしないか?

 

 

ファブくん…友達になろうよ?」

 

ハイドの態度と顔が、急に一変する。

小声で優しい言葉をかけられるが、まだ怯えていた。言葉一つ一つに危険な甘さがあり、また何か裏があるんじゃないかと恐れている。

 

「…友情関係には3つの【U】が必要なんだ。一つ目は嘘をつかない、二つ目は恨まない、そして三つ目は相手を敬う。

 

良いだろう?友情の三つの【U】だ。

素晴らしいと思わないか?」

 

だがそれは表向きの話で、一方的に裏切るな、不満を吐くな、敬えという理不尽な要求に応えろということだ。これを横暴だと批判的な言動をするなら、あの走馬灯のような惨たらしい末路を迎えるのだから。

ファブは詮索するようなことを言えず、優しくされても黙って彼の話を聞くしかない。

 

「友情を裏切らない限り…もしかしたら俺の気分次第で、君のことを守るだろう。

 

かといって、俺から君にゲームバランスを崩壊するような理不尽なことを命じたりしない。

あの子を消せとか、気に入らないから能力を下げろとか。

当面は君の選抜試験は様子を見て、宿主から解放されたら俺が管理するよ。

システム管理は俺がやる際に、不都合な干渉したら…分かるよな?

 

俺はまず…まだ、この街で選定されてない魔法少女達だけで楽しむからさ……お互いの為に、良い友好関係を築こうじゃぁないか?」

 

ハイドの笑顔(マジキチスマイル)は、余りに狂気的だった。マスターだったクラムベリーの方が、一体どれだけ良かったことか。

 

ーーー仮にハイドが提案したゲームなんて断り、力づくで襲ったとしても結局勝ち目なんて絶対になかったのかもしれない。こんな規格外な力を見せつけられて、勝つ想像なんて思い浮かべられない。

 

ハイドの実力を、知ってしまった時の絶望は計り知れず身体が硬直する。今のファブは、ただ笑うことしか何も出来なかった。

 

「これでファブが友達になるんなら話せる範囲で目的を話そうか、誰にも言っちゃダメだよ。まぁまず、第一の俺の目的はーーーーー」

『わ...ァ…ァ』

 

この選抜試験をこんな訳の分からない男に掌握されるなんてこと思いもしない。この場からすぐにでも逃げだしたいのに、誰かに助けを求めたいのに、もう泣きそうになっている。

 

「俺も…独り立ちして自由になりたい。

そこから、本格的に動こうかと考えてるんだ。

 

…だから、そろそろこの身体の宿主である安立輝明の魂を追放するのに協力してくれないかな?」

 




ーーまとめ

ハイド?がファブを発見、運営側が動き出したことにより即対処(システムジャック)及び圧迫面接。
(ここから先は、慎重に言葉を選べ)』
↓ファブ、息を吸うように嘘ついたことが発覚。
ハイド『お前を殺す(絶許)』
↓ファブ、生存本能により懸命な命乞い。
ファブ『ごめんなのだ…ごめん、なのだ。
ううっ…ぶたないで…ぶたないで欲しいのだっ…うぅぅっ』
ハイド『今の俺は、君のことを許そう。
だが今後の俺が、許してくれると思うなよ。
(ファブが邪な企みを持ち、邪魔をしてきた場合)』
↓
(スイムスイムと一緒に帰ったハイドと、それとは別にもう一人のハイド?がファブを回収)
↓
衝撃の真実と絶体絶命、試行錯誤【本編】
※もし、ラピュセルがシエスタ44に殺害された場合、輝明の魂追放よりも先にハイドがシエスタ44とカラミティ・メアリを最優先で祟り殺すこととなる。
↓
NO DRAWN【本編】

今年はlimitがアニメ化決定されたとのことで、六年ぶりですが久しぶりに投稿しました。
まとめとして本編と、今回の話でハイドが【なぜ二人もいるのか】についてですが、それはNO DRAWNで明かされます。

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