突然届いた知らせは知名もえかの訃報であった。
岬明乃はその死を受け入れきれず、遂には現実から目を逸してしまう。
そんな明乃にましろを何を思うのか。
これは歪ながらも明乃が家族を得る物語である。


この作品はpixiv様にも投稿しています。
こちらで投稿するのは初めてですが、よろしければ暇つぶしにでも読んでやってください。
またモカちゃんが亡くなっているという設定ではありますが、私自身がモカちゃんを嫌っているということではないです。ですのでアンチ・ヘイトは付けませんでしたが、もし付けた方がいい思われた場合は言って頂けると幸いです。


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貴女の家族は私だけ

「――うそ。もかちゃんが、なんで、どうして」

 武蔵の艦長である知名もえかが亡くなったという通信を受けたのは、異常行動の原因がウイルスによるものだと発覚してしばらくのことであった。

 今回の騒動を重く見た学園側は本職のブルーマーメイドにも応援を要請し、事態の鎮静へと乗り組んだ。幸い晴風衛生長である鏑木美波によって、ワクチンは作られており、艦内へと侵入することができればワクチンを投与することで学生の暴走を止めることができるようになっていた。

 ウイルスによって好戦的となった感染者たちの行動を考えれば、これ以上学生たちを危険に晒すわけにはいかないというのが学園側の判断であり、帰投できる艦には帰投を、帰投が難しい状況にある艦には待機が言い渡された。

 さて、岬明乃を艦長とする晴風はというと現在の艦周囲の状況を考慮した結果、待機が命じられていた。

 そして、待機命令から二日ほどたった頃、明乃に対して酷く残酷な事実が伝えられた。言うまでもなく、親友である知名もえかの死である。

 こうして物語は最初の場面へと戻る。

 突然告げられた訃報を明乃はすぐに信じることができなかった。いや、信じるというよりも理解することができなかったという方が正しい。

 知名もえかは明乃にとってただの友達ではなかった。

 明乃は幼い頃に両親を無くしたという過去を持つ。今でこそ明るく笑顔を振りまいているが、両親を失った当時は己の行動の遅さが両親の命を奪ったとひたすらに自分自身を責め、とてもじゃないが笑顔など浮かべられる精神状態ではなかった。

 家族を失い寂しさと自責の念に苛まれる中、彼女が預けられたところは一つの児童養護施設であった。そして、そこで出会ったのが同じく家族を失い、自分と同じ痛みを持つ知名もえかその人である。

 彼女らはすぐに仲良くなった。当初は暗かった明乃の表情を徐々に明るくしていったのは彼女の力によるところが大きいであろう。しかし、彼女に大きな希望を、笑顔を与えたのは一つの言葉がきっかけだった。

『海の仲間は皆、家族なんだって』

 寂しそうにする明乃にもえかは言った。亡き母がよく言っていた言葉。家族がいないことに顔を曇らせる明乃に光が灯ればいい。そう考え、ブルーマーメイドのことを話した。そしてそれは明乃にとって新たなる希望となった。失った自分でも再びそれを得ることができるのだと。そうして、彼女らは誓い合った絶対ブルーマーメイドになろうね、と。

 夢と希望と温もりをくれた知名もえかという存在は一度家族を失っただけにある種亡き両親よりも大きな存在となった。

 もう二度と失いたくないと思っていたのに。よりにもよって一番大事な人がいなくなってしまった。彼女、明乃の心中が如何なるものかなど、想像に難くないであろう。

 明乃の心は深く深く沈んでいく。もかちゃんからの救援知らせが来た時、武蔵を発見した時、自分が行動していれば何か変わったかも知れないのに。

 負の考えは彼女を追い詰める。思考の尽くは彼女の心を傷つけ、ついには脳の防衛本能からか、意識を失ったのだった。

 

☆

 

 知名もえかに関しての連絡から三日経った今も未だ艦は待機を命じられている。

 その事件にショック感じたのはなにも明乃だけではなかった。

 交流があった訳ではないものの同級生が死んだという事実は晴風に乗る全ての者に衝撃を与えた。何度となくあった危機。もしかしたら自分たちも命を落としていたかも知れない。とても他人事ではないそれは晴風の乗員を悲嘆に暮れさせた。

 

 そんな誰もが同級生の死に悲しみを覚えている頃、私こと宗谷ましろは言いようもない苛立ちを感じていた。

 同級生の死は確かに悲しかったが、それ以上に晴風の艦長である明乃が、その死をきっかけに塞ぎ込んでいる事実がどうしようもなく腹立たしかった。親友が亡くなったのだから当たり前だと頭でわかってはいても、この苛立ちは到底抑えきれそうにない。自分でも酷い思考をしているということは良くわかっていた。

 どうやら自分は顔すら知れぬ、今は亡き同級生に対して強い嫉妬を抱いているようなのだ。

 今までもこんな気持ちになる場面は多くあった。シロちゃんと私を呼ぶくせに何かあれば、もかちゃんもかちゃんと口にする艦長。知名もえかの危機的状況を知るやいなや自身を危険に晒そうとも助けに行こうとした鬼気迫る顔。

 その全てが知名もえかの存在の大きさを表しており、それはましろにとって決して越えることのできない壁のように思えた。

 不謹慎な話であることは十分承知しているが、私は知名もえかの訃報を聞いたとき、ほんの少し喜びの感情が湧いたのが事実である。今までツイていない人生であったけれど、これを機に艦長を独り占めできるのかも知れないと思うと、今回ばかりはツイている、とそう思ってしまったのだ。

 だが、実際はどうだったろうか。死んでなお知名もえかという存在は艦長の中に居座り、今もあの人の心を、感情を独り占めにしている。

 結局のところ私は運が悪いままだ。

 まあ、それでもチャンスということには変わりがない。顔も合わせたことがない亡き同級生に対し、すまないなと一言心中で謝る。艦長は貰っていくぞという気持ちを込めながら。

「少し、艦長のことが心配だ。私は艦長の様子を少し見てくる。何かあった時はすぐに呼んでくれ」

 そう他の者達に告げるとましろは艦長のいる部屋に向け歩き出したのだった。

 

☆

 

 ましろは艦長のいる部屋の前に立ち、軽くドアをノックした後、返事が返って来ないことを承知でドア越しに語りかける。

「艦長? お加減はいかがでしょうか」

 数分待っても返事はない。

「勝手ながら入らさせていただきますね」

 半ばわかっていたことだと、ましろは扉を開き、部屋へと入っていく。

 電気が点いていないためか、部屋の中は暗かった。

 艦長はどうしているのかと部屋の中を見渡すと、ましろの耳に微かであるが、寝息が聞こえる。

「何だ寝ているのか」

 あれだけショックなことがあったのだから疲れて眠ってしまっていても何ら不思議ではなく、寧ろそうなっているのは当然だった。

 ましろは電気を点け、部屋を照らすと、明乃の方へと歩いて行く。

 嫌な夢でも見ているのか、苦悶の表情を浮かべるその姿はあまりにも痛々しい。

「艦長? 大丈夫ですか? 艦長」

 そんな姿を見たくなくて、ましろは明乃を揺り起こす。

「……ん、ぅうん。誰?」

「私です。艦長、宗谷ましろで――」

「もかちゃん?」

「……え? 艦長? どうしたんですか? 私はましろです。知名もえかさんでは――」

「もかちゃんだぁ」

 困惑するましろに置き去りに、明乃は表情をこれでもかと緩めると、甘えるようにましろに抱き着いた。

「もかちゃん、怖い夢を見たんだ。もかちゃんがね、その……死んじゃう夢。すごく怖くて怖くて、もしかしたら本当のことなんじゃないかって思っちゃうぐらいリアルなの。でもよかったぁ! もかちゃんはやっぱり生きてた。本当によかったぁ……」

 寝惚けているのか、自分を知名もえかだと思っているような発言にましろは眉をひそめる。

「艦長? 寝ぼけているのですか?」

「どうして? もかちゃん。私、寝ぼけてなんてないよ? もかちゃんこそ口調が硬いよ。いつもみたいにミケちゃんって呼んで」

 どこか様子のおかしい明乃は、そう言ってすりすりとましろの胸に頭を擦り付ける。その様はまるで甘えてくる多聞丸のようでとても可愛らしく思わず明乃の頭に手が伸びる。

「ふわ、くすぐったいよ~」

 こんなことをしている場合ではないだろうと内心に突っ込みを入れるも、ましろの手が止まる気配は勿論ない。それから約二分ほど至福とも言える時間を堪能すると、やらなければならないことがあるだろうと叱咤し惜しいと思いつつもましろは手を引っ込める。

「艦長。少し一緒に行って貰いたいところがあるのですが、いいでしょうか」

「う、うん。大丈夫だけど、やっぱり変だよもかちゃん。顔が怖いよ……」

 ありがとうございます、というと明乃の手を引き、部屋の外へと連れ出した。

 目的地は鏑木美波の居る医務室である。

 

☆

 

 知名もえかを失ったという事実を消化し切れなかった彼女の脳が、明乃の心が壊れるのを防ぐために『知名もえかが死んだ』という出来事を忘却に近い形で封印し、つじつまを合わせるようにましろの姿を知名もえかだと認識させているのではないかというのが鏑木美波に聞いた明乃に関する結論であった。

 カウンセリングが必要なことは明白であったが、現在の状況からすぐに病院に運ぶのは難しく、またなにかのきっかけで明乃の心が決壊するのかわからないため、しばらくの間は部屋から出さず、慎重に様子を見ようというのが美波とましろ、二人で話し合った結果である。

 一方、学園からの連絡はというと未だ待機を命じたまま変わりがない。それでも着々と事態は沈静の方向に進んでいるらしく、もう何日かすれば帰還できるようになるかも知れないという連絡は貰っていた。

 状況は確実に良くなっている。ただ一人、明乃を除いて。

 

★

 

 明乃の部屋に訪れるのは主にましろ一人である。これは変に刺激するのはよくないからと訪問を制限したためだ。

 といってもこれは表向きの理由で、本当の理由は艦長を独り占めしたいというましろの独占欲から来るものである。

 その明乃の部屋に向かう中、ましろの浮かべる表情は妙に暗かった。

 原因は無論、明乃に関してだ。

 最初こそは無条件にこちらに甘えてくる明乃に言い知れぬ優越感を感じたものだが、それも日が経つに連れ苦痛へと変わり始める。自分に向けてくる笑顔も実はましろに対してのものではなく、亡き知名もえかに対するものなのだから、当たり前だろう。

 日数的にはまだ五日間ほどだが、されど五日間だ。好きな人物が他の者を思いながら自分に抱きつき、甘えてくるのを許容できるほど、我慢強くはない。

 いや、明乃のことを考えるのならば今はまだそれを受け入れるべきなのはましろも理屈ではよくわかっていた。しかし理屈でどうこうできないのが恋というものだ。

 

 変化の兆しは刻一刻と顔を見せ始めていた。

 

☆

 

「ねぇ、もかちゃん」

 ましろに寄りかかりながら、寝間着姿の明乃は笑顔でましろに話しかける。知名もえかと過ごした思い出話や、別れてからの自身が体験したことだったりとその内容は様々である。

 しかしながら、その様々な話の中に晴風に乗ってからのものはなかった。

 まるで晴風のこと自体がタブーになっているかのように頑なに口にしようとはしない。口にしたら最後、未だ目をそらし続けている真実に行き着いてしまうことを明乃の心はわかっているのだろう。

 あるはずのない幸せ。それを享受できる明乃は確かに幸せであるが、与える方にとってはその限りではない。

 湧き上がる嫉妬心と独占欲はましろの心をひたすらに掻き回す。

 理性と本能がぶつかり合う。艦長のことを一番に考え今は耐えるべきだと理性は言う。それに対して本能は叫ぶ、ましろとしてあの人に愛されたいと。

 より強い感情が勝利するという条件下での戦い。そして、激しい攻防の末、勝ったのは本能であった。

 それにより抑えることができないほどの強い感情がましろの内から漏れだした。

「――私は、私は!! 知名もえかではありません!!!」

 ましろの声が部屋に響く。悲痛さが入り混じった怒声に似た叫び。叫んだ本人は今にも泣き出しそうで、潤んだ瞳は私を見てと切実に訴えていた。

 突然の大声に肩をビクりと震わせた後、ぽかんとした表情を浮かべ明乃はましろの顔を見る。そんな彼女を視界に入れつつ、やってしまったと内心呟くも、取り返しはつかない。

 けれど、これでいいとましろは思った。

 このまま知名もえかという幻影に囚われ続ける明乃を見るぐらいならば、いっそこの手で彼女の心ごと壊し、自分の物にしてしまおう。全く正常な思考じゃないなと自嘲するように笑う。

「ど、どうしたの? もかちゃん、いきなり大声だして、わたしびっくりしちゃったよ、えへへ」

「艦長、私は知名もえかさんではありません。知名もえかさんは……知名もえかさんは亡くなったんです……もう、いないんです」

「……なに、言ってるの? だってもかちゃんは――」

 明乃の瞳から輝きが零れ落ちてゆく。あの日から逸し続けていた事実が脳裏に浮かび上がり、明乃は堪らず両手で顔を覆う。その指の隙間からは涙が流れ落ち、声にならない叫びと相まって、彼女の姿はとても痛ましい。

「泣かないでください、艦長」

 ましろは顔を覆っている明乃の両の手を外すと、彼女に顔を近づけ流れる涙を舌先で舐め取った。頬に伝わる舌の感触にくすぐったそうにほんの僅か身を捩らせる明乃を見て、ましろは笑みを浮かべる。我慢が利かなくなったのか、舐めるの止め、明乃の唇へと自身のを重ねた。

 最初は軽く触れる程度のキス。それは徐々に過激さを増していき、三度目のキスをする頃にはお互い舌を絡めあっていた。

「ぁ、ふ」

 明乃から声が漏れ、部屋にはぴちゃぴちゃと唾液が交じり合う淫靡な音が響いていた。

 音はどんどんと激しくなる。ましろの舌が明乃の口内を犯し、明乃はましろの舌に翻弄されながらも空気を取り込もうと苦しげに、それでいて気持ち良さそうにもがく。

「――っはぁ、はぁっはぁ……」

 ようやく唇が離れる。離れた口からは唾液が糸を引いていた。明乃は酸欠になりかけていた脳に酸素を送るべく、必死に呼吸する。

 そんな息も絶え絶えな明乃に構うことなく、ましろは明乃の服に手を掛け、寝間着のボタンを一つずつ外していく。

 明乃の呼吸が落ち着いた頃には既にボタンは全て外されていた。ましろはシャツの中に手を入れ、ブラのホックを外すと邪魔だと言わんばかりにベットの上に投げ捨てる。

 そしてシャツを捲り上げ、明乃の胸に右手を伸ばした。

「ぁあっ……」

 始めは乳首に触れないように周囲を円を描くように撫で回す。

 描く円は徐々に狭まっていく。五回ほど描かれ、ついに指は明乃の乳首へと到達した。強弱を付けつまみ上げる。優しく強く、強く優しく、優しく優しく、目一杯強く。不規則な強弱の波はそのまま快感へと変換されて明乃を襲う。

「いやっ。やめて、もう、やっ……ぁあっ!」

 恥じらい気味に拒絶を口にしていた明乃の体が微かに跳ねる。

「胸気持ちいいんですか? じゃあもっとやってあげますね」

「えっ……やめっ――」

 開いていたもう一方の乳首に口を近づけ、先端を強めに噛む。双方の胸からくる刺激は明乃にとって経験したことがないものだった。

 強めに噛みすぎたの少し赤くなった乳首を見て「少し強く噛み過ぎましたね」と謝ると口に含み、口内で飴を転がすように舐めていく。

 左は舐められ、右は摘まれる。そんな淫らな光景がそこにはあった。

 ましろは乳首を弄っていた右手を徐々に下へ下へと下げていく。

 お腹を通過し下腹部へ。寝間着のズボンのその更に中、下着の中に手を突っ込むと、仄かに水気を帯びた秘所に触れる。

「濡れてますね。感じてしまったんですか? 全く仕方がない艦長ですね」

「そんなこと言わな――あっああっ!」

 明乃の声を遮るように指を滑らせ、われめを撫でる。

 胸とは比べものにならないほどの快楽の波に明乃は更に体を震わせた。

 撫でるように動いていたましろの指は、つぷりと音を立て、中へ入っていく。入り口ほどのところを掻き回すようにして指を動かす。

 明乃の絶頂が近づきつつあるのがわかると、ましろはいっそう動きを速めそれに導く。

「我慢しなくていいんですよ」

 甘く耳元で語りかけながらそっと耳を軽く噛む。噛まれたことの快感で明乃の体はぴんと仰け反り嬌声を吐き出した。余韻に浸る明乃は、普段見ることのない雌の顔をしていた。

 ましろの中の支配欲が高ぶっていく。こんな顔、誰にも見せてはやらないと、艦内に居る自分以外の艦長慕う者の顔を思い浮かべては優越感で心を満たす。

「気持ち良かったですか? 艦長」

 優しくましろが話しかけると明乃は頭を縦に振る。

「それは良かった。初めてだったので上手くできているか少し不安だったんです。では、艦長。次は私のことも――」

 気持ちよくさせてくださいね、そう言い終えるかどうかのところで、ましろは明乃の背に両手を回して抱きつき、そして、後ろへと倒れた。

 ましろは自ら服を捲り上げ、ブラを外すと「さあ、舐めてください」と明乃に乳房を押し付ける。

 明乃の唇がましろの胸に触れる。さっきと真逆の構図ながらも支配権は変わらない。明乃はあくまで奉仕者なのだ。

 ちゅうちゅうとまるで母乳を吸うかのようにましろの乳首を吸う。幼き頃に亡くした母性にかぶりつくように懸命に吸い上げる。

「――っはは。まるで大きな赤ちゃんですね、艦長は」

 雛鳥が餌を求めるように、その行為は続く。

「良いですよ。もっと吸って、私はここに、艦長の傍にずっと居ますから」

 ましろは子供にするように頭を撫でる。

 取り残される経験は明乃にとって忘れることのないトラウマだ。だからこそ彼女は二度目の別れに対して耐えることができなかった。依存していたからこそ起きた問題、それを正攻法で解決するのは難しい。

 しかし、正攻法でなければ方法もあった。依存によって生じた問題ならば、依存によって解決してしまえばいい。歪さを肯定した間違った方法ではあるが、今のましろにとって、正しいとか間違いといったものは瑣末な問題でしかない。

 そして、ましろは明乃のすべてを受け入れる意を示す。知名もえかに対して抱えていた依存心が自分へと移るようにと。

「――しろ、ちゃん」

 湧き上がる感情がなんなのか、明乃にはわからなかった。だってそれは、友達でも仲間でも、ましては恋人に対して抱くような感情とは全く別なものだと思ったから。

 わからなくてとも、明乃はいいと思った。いま名前を呼べば、しろちゃんはずっと私と一緒にいてくれる、ただそれだけが重要なことなのだから。

「しろちゃん、しろちゃん」

 明乃はましろの名前を何度も呼んでは、ましろの乳房を吸い上げる。ましろを欲するように何度も何度も。

 呼ぶたびに明乃の秘部から蜜が零れる。しろちゃん、と呼んでいるだけなのに、どうしようもできなくて切なげな声が明乃の口からは漏れでた。

「――ぁ、しろちゃぁん」

 明乃は胸から口を離すと上目使いでましろを見る。

 ましろを気持ち良くさせるための行為は、再び明乃の快楽の蓋を持ち上げゆく。もういっかいやって、口に出した訳でもないのにその言葉をましろは聞いた気がした。

「どうしたんですか? また気持ち良くなりたくなってきましたか? では」

 ――一緒に気持ち良くなりましょう。そう続けようとしたところで言葉は「副長、連絡が入りました至急戻ってきてください」という通信によって遮られた。

 まったくこれからだと言うのにツイてないと、ましろは軽く愚痴を零す。

「少し行ってきます。私が戻るまで大人しくしていてくださいね」

「う、うん」

 明乃が頷いたのを確認して、ましろは部屋を出る。

 タイミング悪く邪魔は入ったものの苛立ちを感じたのはさっきの一瞬だけで、今のましろの中にそれはない。

 彼女をモノにしたましろにとって、この程度のことなど些末なものに過ぎなかったからだ。

 そう二人は特別となった。親友も恋人もこの関係を表すのには適切ではない、そうあえて言うのなら『家族』だろう。

 決して離れることのない関係。

 今日この日、歪ながらも二人は『家族』となったのだ。




モカちゃんの死の状況を書いていないのは実は生きていた展開を書けるかも知れないなんて思惑があったりなかったりします…。

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